青い猫が羽ばたく時に

ティオー

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会談の始まり

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鳥のさえずりと太陽の光で僕は目が覚めた。最初は見慣れない天井で困惑したが、すぐに思い出した。ルイクはもう起きているようだ。

リビングからいい匂いが漂ってきて、僕は気になって歩き始めた。
ルイクは本を読みながらコーヒーを飲んでいる。そういう所も真面目っぽくて少し面白くも感じた。
「おはよう!ルイク」
「おはよう...すんごい寝癖ついてるぞ」
「えっっちょ、ちょっと整えてくる!!」
僕は寝癖を直してまたリビングに戻る。僕の寝癖は昔からの癖毛みたいなものだ。毎日直すのに時間がかかるから切ろうか迷っている。
僕は椅子に座り、ルイクが作ってくれた朝ご飯のフレンチトーストを頬張る。

「ルイクって料理できたんだね」
「まぁな。一人暮らしなら当然だろ」
「あ!そういえば、ルイクの親ってどんな仕事してるの?」
「俺も詳しくは聞いたことないけど、外資系の仕事ってことだけ知ってる。」
「へー...」

そんな話をしながら僕は朝食を食べる。すると、ふと図書館でのことを思い出した。
「そういえばさ、ルイクと初めて会った時ルイクはかなり僕の協力に喜んでたよね?なのになんで握手は嫌がったの?」
「あの時のお前の目が俺を哀れんでいるかのような目だったからだ。」
「哀れんでなんかないよ!!!」
「いーや!少なくとも「あっ....」って目はしてたぞ!」
そう言われると無意識にそんな目をしていたような....となってしまい少し眉をひそめた。
「まぁ別にいいが、とにかく。さっさと食って準備しろ」
「あっ!そうだった!」

すっかり頭から抜けてしまっていた...今日は緑葎総合病院に行く予定だった。僕は朝食を急いで食べきり準備を始めた。正直、不安なことが多いけど今は自分が動かなくちゃいけない。もう弱虫から脱するんだ。
僕は荷物を持ち玄関へ向かうとルイクがもう待っていた。
「遅い!!!」
「ごめんごめん!ちょっと考え事してて、」
「はぁ...それじゃあ行くぞ」
「うん!レッツゴー!!」
こうして僕とルイクは緑葎総合病院に向かった。

バスを何度か乗り換えてやっとついた。とても大きな病院でおそらく10階以上はある。僕はその凄さに圧倒されていたがルイクはすたすたと病院の中へ行ってしまった。僕も急いでついていき中に入ると病院内もとても綺麗でたくさんの患者さんや部屋があった。ルイクはどうやら受付の人と話しているようだった。
(何を話しているんだろう...?)と気になりルイクに近づいた。

「....ですから、院長と話をさせていただきたいんです!」
「申し訳ありませんが、一般の方は無理なんです。それに院長もお忙しいので、」
「ぐぬぬ......」
どうやら交渉に苦戦しているようだ。ルイクは顔を顰めて拳を震わせている。すると、何か思いついたようで懐から何かを取り出した。
(学生証...?)

ルイクは学生証を突きつけ淡々と話し始めた。
「俺は国立魔法学校イネルティアの生徒、ルイク・ミセリアです。イヌイ院長への通達をアマミ学園長から預かっております。少々お時間いただけませんか?」
「イ、イネルティアの方だったんですね...!しょ、少々お待ち下さい。院長へご連絡します。」
そういえば、ルイクってかなり有名な名門魔法学校イネルティアの生徒だったなぁ...と思い出した。

「いいのルイク?後々絶対学園長にバレるけど...」
「内申が下がるだけだ。気にするな。」
「いやダメじゃん!!?」
「内申が下がるよりも大切なことだ。必要な犠牲ってやつだ」
なんか違う気が...となったけど、ツッコむとまた余計なことになりそうだからやめておこう。するとさっきの受付の看護師さんが戻ってきた。

「準備が完了いたしました。どうぞこちらへ」
と案内され、僕らがエレベーターに乗ろうとすると僕だけ看護師さんに止められた。
「えっ?な、なんですか?」
「すみません。半人半獣の方は立ち入り禁止となっておりますので...」
「ど、どうしてですか!!」
「....院長が猫アレルギーなんです。」

僕はあっ...となり、無慈悲にもエレベーターのドアは閉まっていった。閉まる前のルイクのなんとも言えない表情が頭に焼き付いた。
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少し気まずい緊迫した空気がエレベーター内に漂っている。レントには申し訳...いや、あいつなら絶対何かやらかすだろうからな...置いて行って正解だったか?エレベーターは最上階で止まり、ゆっくりと扉が開く。
目と鼻の先とも思える場所に院長室が佇んでいた。看護師が部屋の扉を開け、中にはカイ・イヌイ院長が座っていた。
「座ってくれたまえミセリア君。アマミからの通達とやらをじっくりと聞こうじゃないか。」

扉の閉まる音と同時に俺は息を飲む。眼の前の男は院長よりかは悪の組織のトップというのがお似合いな雰囲気を出していた。伝う汗、徐々に上がる心拍数。
有意義になって欲しい会談が今...始まろうとしていた。
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