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桜の舞う公園で
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*彩矢*
ゴールデンウィークも終わり、北海道もやっと桜の頃となった。
公園のすみに残っていた雪の塊もとけて、冬の間外されていたブランコが取り付けられていた。
連休中も潤一は、毎日病院へ患者を診に行っていたので、家族旅行などあるわけもなく、寂しく実家で過ごした。
優秀な脳外科医の俺と結婚できたおまえは、世界で一番幸せな女なんだと勝手に思い込んでいる潤一が憎らしい。
なにがセレブな奥様だ。
普通のサラリーマンの奥様たちの方がずっと楽しい休日を過ごしている。
グルメになど興味ないし、高級ブランドもなにもいらない。
欲しいのは寄り添ってくれる人。
家族を大切に考えてくれる人。
マンションに一番近いこの公園に、今日はじめて子供を連れて来た。
世間でよく言う、公園デビューの日。
今日はようす見に、少しだけにしておこうと思い、11時過ぎにやって来た。
お砂場には3組ほどの親子連れが集まって遊んでいた。
悠李が誰も乗っていないブランコを見つけて走った。
雪花を乗せたベビーカーを押しながら、ブランコに座ってこぎ出した悠李のところへ行く。
まだブランコをうまくこげない悠李の背中を押した。
一年半前、ブランコに座ったまま悠李を抱きしめて泣いていた佐野さんを思い出す。
だけど男親など結局あんなものだ。悠李のことなんてもう、どうでもよかったんだ。会わずにいる年月とともに忘れてしまうのだろう。
有紀との間にだって、もう子供が生まれているのかも知れない。
有紀はやさしくて子供が大好きだから、さぞ賑やかで楽しい家庭なのだろう。
いっしょに暮らす子どもの方が、可愛いに決まっているのだから。
悠李に会いに来てくれたなどと、なぜ勝手に都合よく思い込んでいたのだろう。
偶然うちの荷物があって、配達に来ただけにすぎなかったのに。
いつも忙しそうに荷物を置くと、目も合わせずに、慌てて出て行こうとしていた佐野さん。
そんな佐野さんにLINEの交換を申し込むなんて……。
悠李がブランコから降りて、お砂場の方へ歩いて行った。
知らない人ばかりが集まっているお砂場へ行くのは気がひけるけれど……。
仕方なくベビーカーを押して、悠李の後についていった。
砂のお山を作ったり穴を掘っているお友達をジッと見ている悠李に、バケツに入ったお砂場セットを渡した。
おしゃべりしていたママたちが一斉に視線を向けた。
「あ、こ、こんにちは」
オドオドと挨拶をする。
「こんにちは~!」
3人のママたちが元気に返事をしてくれたので、ひとまずホッとする。
「これ、ミミちゃんのおうち」
砂のお山をつくっている女の子が悠李に話しかけた。
「これ、雪花ちゃんのおうち」
悠李もお山をつくって女の子に言った。
「ゆきかちゃん? ミミちゃんはネコなの。ゆきかちゃんもネコ? 」
「ゆきかちゃんは、あかちゃん」
悠李がベビーカーに乗せられている雪花を指差した。
女の子がシャベルを放り出してベビーカーをのぞき込んだ。
なにを思ったのか、いきなり砂のついた手で雪花の頭をなでた。
「あ、ダメよ!」
と言ったけれどすでに遅く、雪花は火がついたように泣き出した。目に砂でも入ったのではないのか?
「うぎゃあー!!」
「あ、沙羅、何やってんの? ダメじゃない! 」
ママさんたちとおしゃべりをしていた女の子のお母さんが、慌てて飛んで来た。
「ごめんなさい!」
「い、いえ、大丈夫です」
ギャンギャン泣いている雪花の目を調べてみる。よく見えないけれど、これだけ泣いていたら涙で砂も流れるだろう。
泣き声がうるさいのか飽きたのか、子供たちは砂遊びをやめて滑り台の方へ走って行った。
お母さん達もその後に続いて行ってしまった。
ひとり取り残されて寂しく砂遊びをしている悠李。
「今日の公園デビューはちょっと失敗だったね」
悠李はポカンと意味がわからないという顔で、またブランコへ走って行った。
バケツにシャベルやレーキを片づけ、ベビーカーの後ろへ入れた。
泣いている雪花を抱っこしながら、ベビーカーを押して悠李のところへ行く。
ブランコに乗っている悠李の背中を押していたら、滑り台で遊んでいた二人の男の子がこっちへ走って来た。
ひとつ空いているブランコに足の速い男の子の方が座った。
ブランコを取られた男の子が悠李を見つめて言った。
「ブランコのせて!」
「…………」
悠李はそ知らぬ顔で乗っている。
ママさん達もこちらへやって来た。
「ブランコのせてよう!」
男の子がつぶやく。
悠李の背中を押すのをやめ、ブランコを止めた。
「悠李、そろそろ替わってあげようね」
「ヤダッ、ダメッ、ダメッ!」
「悠李!」
雪花を抱っこしたままだったし、いつも悠李には我慢ばかりさせていたこともあって、無理にブランコから降ろすことは出来なかった。
となりのブランコに乗っていた男の子が足を引きずって止まった。
「ブランコ、はい!」
男の子はそう言って、待っていた子と替わってあげた。
「ありがとう、陸くん! メッチャ優しい」
待たされていた男の子のお母さんがお礼を言った。
悠李が意地悪をしているようで気が咎めた。
少し乗ったら気がすんだのか、男の子はすぐにブランコから降りて言った。
「ママ、おなかすいた」
「あ、そうね。もう12時じゃない。じゃあ、そろそろ帰ろうかぁ」
そう言って3組の親子連れは、サヨナラも言わずに仲良く帰っていった。
公園デビューは完全な失敗に終わった。
「悠李もお腹すいたでしょ。そろそろ帰ろう」
「まだ、あそぶ!」
悠李はそう言って、滑り台に走っていった。
やっと泣きやんだ雪花をベビーカーへ乗せ、やれやれと悠李のあとを追う。
ひらひらと桜の花びらが風に舞っている。
こんなにのどかな春の風景に、孤独を感じて涙が滲んだ。
ゴールデンウィークも終わり、北海道もやっと桜の頃となった。
公園のすみに残っていた雪の塊もとけて、冬の間外されていたブランコが取り付けられていた。
連休中も潤一は、毎日病院へ患者を診に行っていたので、家族旅行などあるわけもなく、寂しく実家で過ごした。
優秀な脳外科医の俺と結婚できたおまえは、世界で一番幸せな女なんだと勝手に思い込んでいる潤一が憎らしい。
なにがセレブな奥様だ。
普通のサラリーマンの奥様たちの方がずっと楽しい休日を過ごしている。
グルメになど興味ないし、高級ブランドもなにもいらない。
欲しいのは寄り添ってくれる人。
家族を大切に考えてくれる人。
マンションに一番近いこの公園に、今日はじめて子供を連れて来た。
世間でよく言う、公園デビューの日。
今日はようす見に、少しだけにしておこうと思い、11時過ぎにやって来た。
お砂場には3組ほどの親子連れが集まって遊んでいた。
悠李が誰も乗っていないブランコを見つけて走った。
雪花を乗せたベビーカーを押しながら、ブランコに座ってこぎ出した悠李のところへ行く。
まだブランコをうまくこげない悠李の背中を押した。
一年半前、ブランコに座ったまま悠李を抱きしめて泣いていた佐野さんを思い出す。
だけど男親など結局あんなものだ。悠李のことなんてもう、どうでもよかったんだ。会わずにいる年月とともに忘れてしまうのだろう。
有紀との間にだって、もう子供が生まれているのかも知れない。
有紀はやさしくて子供が大好きだから、さぞ賑やかで楽しい家庭なのだろう。
いっしょに暮らす子どもの方が、可愛いに決まっているのだから。
悠李に会いに来てくれたなどと、なぜ勝手に都合よく思い込んでいたのだろう。
偶然うちの荷物があって、配達に来ただけにすぎなかったのに。
いつも忙しそうに荷物を置くと、目も合わせずに、慌てて出て行こうとしていた佐野さん。
そんな佐野さんにLINEの交換を申し込むなんて……。
悠李がブランコから降りて、お砂場の方へ歩いて行った。
知らない人ばかりが集まっているお砂場へ行くのは気がひけるけれど……。
仕方なくベビーカーを押して、悠李の後についていった。
砂のお山を作ったり穴を掘っているお友達をジッと見ている悠李に、バケツに入ったお砂場セットを渡した。
おしゃべりしていたママたちが一斉に視線を向けた。
「あ、こ、こんにちは」
オドオドと挨拶をする。
「こんにちは~!」
3人のママたちが元気に返事をしてくれたので、ひとまずホッとする。
「これ、ミミちゃんのおうち」
砂のお山をつくっている女の子が悠李に話しかけた。
「これ、雪花ちゃんのおうち」
悠李もお山をつくって女の子に言った。
「ゆきかちゃん? ミミちゃんはネコなの。ゆきかちゃんもネコ? 」
「ゆきかちゃんは、あかちゃん」
悠李がベビーカーに乗せられている雪花を指差した。
女の子がシャベルを放り出してベビーカーをのぞき込んだ。
なにを思ったのか、いきなり砂のついた手で雪花の頭をなでた。
「あ、ダメよ!」
と言ったけれどすでに遅く、雪花は火がついたように泣き出した。目に砂でも入ったのではないのか?
「うぎゃあー!!」
「あ、沙羅、何やってんの? ダメじゃない! 」
ママさんたちとおしゃべりをしていた女の子のお母さんが、慌てて飛んで来た。
「ごめんなさい!」
「い、いえ、大丈夫です」
ギャンギャン泣いている雪花の目を調べてみる。よく見えないけれど、これだけ泣いていたら涙で砂も流れるだろう。
泣き声がうるさいのか飽きたのか、子供たちは砂遊びをやめて滑り台の方へ走って行った。
お母さん達もその後に続いて行ってしまった。
ひとり取り残されて寂しく砂遊びをしている悠李。
「今日の公園デビューはちょっと失敗だったね」
悠李はポカンと意味がわからないという顔で、またブランコへ走って行った。
バケツにシャベルやレーキを片づけ、ベビーカーの後ろへ入れた。
泣いている雪花を抱っこしながら、ベビーカーを押して悠李のところへ行く。
ブランコに乗っている悠李の背中を押していたら、滑り台で遊んでいた二人の男の子がこっちへ走って来た。
ひとつ空いているブランコに足の速い男の子の方が座った。
ブランコを取られた男の子が悠李を見つめて言った。
「ブランコのせて!」
「…………」
悠李はそ知らぬ顔で乗っている。
ママさん達もこちらへやって来た。
「ブランコのせてよう!」
男の子がつぶやく。
悠李の背中を押すのをやめ、ブランコを止めた。
「悠李、そろそろ替わってあげようね」
「ヤダッ、ダメッ、ダメッ!」
「悠李!」
雪花を抱っこしたままだったし、いつも悠李には我慢ばかりさせていたこともあって、無理にブランコから降ろすことは出来なかった。
となりのブランコに乗っていた男の子が足を引きずって止まった。
「ブランコ、はい!」
男の子はそう言って、待っていた子と替わってあげた。
「ありがとう、陸くん! メッチャ優しい」
待たされていた男の子のお母さんがお礼を言った。
悠李が意地悪をしているようで気が咎めた。
少し乗ったら気がすんだのか、男の子はすぐにブランコから降りて言った。
「ママ、おなかすいた」
「あ、そうね。もう12時じゃない。じゃあ、そろそろ帰ろうかぁ」
そう言って3組の親子連れは、サヨナラも言わずに仲良く帰っていった。
公園デビューは完全な失敗に終わった。
「悠李もお腹すいたでしょ。そろそろ帰ろう」
「まだ、あそぶ!」
悠李はそう言って、滑り台に走っていった。
やっと泣きやんだ雪花をベビーカーへ乗せ、やれやれと悠李のあとを追う。
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