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悠李とサッカーをして
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*遼介*
彩矢ちゃんに頼まれもしないのに、自分から悠李と遊ぶ約束なんてしてしまった。
悠李のガッカリした顔を見たら可哀想になってしまって、約束せずにはいられなくなった。
大丈夫かな? 俺。
午前の配達を終えて公園に停める。
ちょうど何組かの親子連れが帰るところだった。
砂場にしゃがみ込んで遊んでいる悠李と、雪花ちゃんを前抱きして立っている彩矢ちゃんが見えた。
途中、ホームセンターに寄って買ってきたビニールのボールを、砂場に向かって軽く蹴った。
コロコロと砂場に転がっていったプルーのボールを見て、悠李が顔をあげた。
「あ、たくはいのおじちゃんだ!」
悠李はボールを掴むと、嬉しそうに笑って駆けてきた。
「サッカーはしたことある?」
屈んで悠李に話しかけた。
「サッカー、テレビ、パパとみた」
「そうか、見たことあるなら大丈夫だな。ボールを蹴って、相手のゴールへ入れるんだよ」
「うん、ゆうりがやる!」
悠李はうまく蹴られず、力なくコロコロと転がった。
遠くまで転がっていかないから、その方が余計に走らなくていいので楽だった。
悠李と交互にボールを蹴りあう。
身体を使った遊びなら、何をしても楽しいのだろう。
ケタケタ笑いながら俺にまとわりついて、ボールを追いかける。
しばらくそんなやりとりをして遊んでいたら、蹴りそこなったボールに足を取られて、悠李が転んだ。
「うわーん!!」
「ごめん、大丈夫か?」
抱き上げて起こすと、膝小僧が擦りむけて、少し血が滲んでいた。
たいした傷ではないけれど、泣き出した悠李にどうしてよいのか分からず、少しパニックになる。
向こうから彩矢ちゃんが、小走りでやって来た。
「ご、ごめん。ケガさせてしまって……」
「大丈夫よ、このくらい。悠李、あっちに行って、傷を洗ってこよう」
捻ると水が上に飛びだす水飲み場の横についた蛇口をまわし、彩矢ちゃんは悠李の靴下を脱がせて膝を優しく洗った。
時計を見ると、もうあまり時間がなかった。
彩矢ちゃんがそのことに気づいて、
「佐野さん、ありがとう。もう大丈夫だから、仕事に行って」
泣いてる悠李を残して、このまま帰るのもなにか気が引けた。
「う、うん。あ、そうだ、肩車してあげるよ」
グスングスンしていた悠李に話しかけた。
「かたぐるま?」
なんだろうと不思議そうに見つめる悠李を、ヒョイと抱き上げて肩にかけた。
まだ、とても軽い。
「わぁ~ 、たかーい! ママ、みて! ゆうりママよりおおきいよ!!」
泣いていた悠李を喜ばせることができて安心する。
肩車をされたのは初めてなのか。
やっぱり、松田先生はそこまではしてくれないだろうなと思い、悠李が不憫に思えた。
だけど、こんな姿を有紀に見られたら、一体どうなってしまうのだろうと想像し、背筋に冷たいものを感じた。
夜、家に帰るとなにがあったのか、最近ふさぎ込んで見える有紀の憂鬱な顔。
やはり、有紀に主任はまだ早すぎたのではないかと思う。
だけど、有紀はそういうことではないと言う。じゃあ、なにがあったんだと聞いても答えてはくれない。
なにか隠していることは分かっているけれど、言いたくないことを無理に聞きだそうとしても意味がない。
俺にだって有紀には言えない秘密はあるから。
遅い晩飯を食べてからシャワーを浴び、スマホを開けると、彩矢ちゃんからLINEが来ていた。
『今日はありがとう。悠李とっても楽しかったみたいで、家に帰ってからもずっとご機嫌でした』
トークのやり取りには抵抗を感じ、ペコリとお辞儀をしたスタンプだけを送ったら、悠李の一歳にもなっていない頃の動画と写真も送られて来た。
ソファに座ってテレビを見ている有紀には、絶対に見られてはいけないものだ。
ありがとう! と、おやすみ~ のスタンプを続けて押してスマホを閉じた。
まだテレビを見ていた有紀をリビングへ残し、寝室へ入った。
ベッドへ寝ころび、悠李の動画をみる。
生後何ヶ月くらいなのだろう?
歩行器にまたがって ” うぐぅ、うぐぅ,, と言葉にならない声を出し、動きまわっている。
『悠李、悠李、こっち向いて!』
彩矢ちゃんの声も聞こえた。
よだれ掛けをした悠李の小さな口からよだれが流れていた。上と下に乳歯が2本づつ生えている。
きゃっきゃっと喜ぶ悠李のふっくらとした笑顔に癒される。
なんて可愛いんだろう。
こんなに可愛い時期を一緒に過ごせなかったことには、やはり少し残念な気持ちにさせられた。
この子のためならなんだってしてあげたい。
本当にそう思うけれど。
今年三歳になるのなら、来年からは幼稚園へ行くのだろう。
そう考えると悠李と遊んであげられるのも、今年だけなのかも知れない。
有紀が部屋に入ってきたので、慌ててスマホを閉じた。
有紀には申し訳ないことをしているので気が咎め、抱こうとするけれど、最近はいつでも拒否されてしまう。
もう、俺には冷めてしまったのか?
まさか、気づいていないよな?
女の第六感は鋭いというけれど。
彩矢ちゃんに頼まれもしないのに、自分から悠李と遊ぶ約束なんてしてしまった。
悠李のガッカリした顔を見たら可哀想になってしまって、約束せずにはいられなくなった。
大丈夫かな? 俺。
午前の配達を終えて公園に停める。
ちょうど何組かの親子連れが帰るところだった。
砂場にしゃがみ込んで遊んでいる悠李と、雪花ちゃんを前抱きして立っている彩矢ちゃんが見えた。
途中、ホームセンターに寄って買ってきたビニールのボールを、砂場に向かって軽く蹴った。
コロコロと砂場に転がっていったプルーのボールを見て、悠李が顔をあげた。
「あ、たくはいのおじちゃんだ!」
悠李はボールを掴むと、嬉しそうに笑って駆けてきた。
「サッカーはしたことある?」
屈んで悠李に話しかけた。
「サッカー、テレビ、パパとみた」
「そうか、見たことあるなら大丈夫だな。ボールを蹴って、相手のゴールへ入れるんだよ」
「うん、ゆうりがやる!」
悠李はうまく蹴られず、力なくコロコロと転がった。
遠くまで転がっていかないから、その方が余計に走らなくていいので楽だった。
悠李と交互にボールを蹴りあう。
身体を使った遊びなら、何をしても楽しいのだろう。
ケタケタ笑いながら俺にまとわりついて、ボールを追いかける。
しばらくそんなやりとりをして遊んでいたら、蹴りそこなったボールに足を取られて、悠李が転んだ。
「うわーん!!」
「ごめん、大丈夫か?」
抱き上げて起こすと、膝小僧が擦りむけて、少し血が滲んでいた。
たいした傷ではないけれど、泣き出した悠李にどうしてよいのか分からず、少しパニックになる。
向こうから彩矢ちゃんが、小走りでやって来た。
「ご、ごめん。ケガさせてしまって……」
「大丈夫よ、このくらい。悠李、あっちに行って、傷を洗ってこよう」
捻ると水が上に飛びだす水飲み場の横についた蛇口をまわし、彩矢ちゃんは悠李の靴下を脱がせて膝を優しく洗った。
時計を見ると、もうあまり時間がなかった。
彩矢ちゃんがそのことに気づいて、
「佐野さん、ありがとう。もう大丈夫だから、仕事に行って」
泣いてる悠李を残して、このまま帰るのもなにか気が引けた。
「う、うん。あ、そうだ、肩車してあげるよ」
グスングスンしていた悠李に話しかけた。
「かたぐるま?」
なんだろうと不思議そうに見つめる悠李を、ヒョイと抱き上げて肩にかけた。
まだ、とても軽い。
「わぁ~ 、たかーい! ママ、みて! ゆうりママよりおおきいよ!!」
泣いていた悠李を喜ばせることができて安心する。
肩車をされたのは初めてなのか。
やっぱり、松田先生はそこまではしてくれないだろうなと思い、悠李が不憫に思えた。
だけど、こんな姿を有紀に見られたら、一体どうなってしまうのだろうと想像し、背筋に冷たいものを感じた。
夜、家に帰るとなにがあったのか、最近ふさぎ込んで見える有紀の憂鬱な顔。
やはり、有紀に主任はまだ早すぎたのではないかと思う。
だけど、有紀はそういうことではないと言う。じゃあ、なにがあったんだと聞いても答えてはくれない。
なにか隠していることは分かっているけれど、言いたくないことを無理に聞きだそうとしても意味がない。
俺にだって有紀には言えない秘密はあるから。
遅い晩飯を食べてからシャワーを浴び、スマホを開けると、彩矢ちゃんからLINEが来ていた。
『今日はありがとう。悠李とっても楽しかったみたいで、家に帰ってからもずっとご機嫌でした』
トークのやり取りには抵抗を感じ、ペコリとお辞儀をしたスタンプだけを送ったら、悠李の一歳にもなっていない頃の動画と写真も送られて来た。
ソファに座ってテレビを見ている有紀には、絶対に見られてはいけないものだ。
ありがとう! と、おやすみ~ のスタンプを続けて押してスマホを閉じた。
まだテレビを見ていた有紀をリビングへ残し、寝室へ入った。
ベッドへ寝ころび、悠李の動画をみる。
生後何ヶ月くらいなのだろう?
歩行器にまたがって ” うぐぅ、うぐぅ,, と言葉にならない声を出し、動きまわっている。
『悠李、悠李、こっち向いて!』
彩矢ちゃんの声も聞こえた。
よだれ掛けをした悠李の小さな口からよだれが流れていた。上と下に乳歯が2本づつ生えている。
きゃっきゃっと喜ぶ悠李のふっくらとした笑顔に癒される。
なんて可愛いんだろう。
こんなに可愛い時期を一緒に過ごせなかったことには、やはり少し残念な気持ちにさせられた。
この子のためならなんだってしてあげたい。
本当にそう思うけれど。
今年三歳になるのなら、来年からは幼稚園へ行くのだろう。
そう考えると悠李と遊んであげられるのも、今年だけなのかも知れない。
有紀が部屋に入ってきたので、慌ててスマホを閉じた。
有紀には申し訳ないことをしているので気が咎め、抱こうとするけれど、最近はいつでも拒否されてしまう。
もう、俺には冷めてしまったのか?
まさか、気づいていないよな?
女の第六感は鋭いというけれど。
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