六華 snow crystal 3

なごみ

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悠李とサッカーをして

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*遼介*


彩矢ちゃんに頼まれもしないのに、自分から悠李と遊ぶ約束なんてしてしまった。


悠李のガッカリした顔を見たら可哀想になってしまって、約束せずにはいられなくなった。


大丈夫かな?   俺。


午前の配達を終えて公園に停める。


ちょうど何組かの親子連れが帰るところだった。


砂場にしゃがみ込んで遊んでいる悠李と、雪花ちゃんを前抱きして立っている彩矢ちゃんが見えた。


途中、ホームセンターに寄って買ってきたビニールのボールを、砂場に向かって軽く蹴った。


コロコロと砂場に転がっていったプルーのボールを見て、悠李が顔をあげた。


「あ、たくはいのおじちゃんだ!」


悠李はボールを掴むと、嬉しそうに笑って駆けてきた。



「サッカーはしたことある?」


屈んで悠李に話しかけた。


「サッカー、テレビ、パパとみた」


「そうか、見たことあるなら大丈夫だな。ボールを蹴って、相手のゴールへ入れるんだよ」


「うん、ゆうりがやる!」


悠李はうまく蹴られず、力なくコロコロと転がった。


遠くまで転がっていかないから、その方が余計に走らなくていいので楽だった。


悠李と交互にボールを蹴りあう。


身体を使った遊びなら、何をしても楽しいのだろう。


ケタケタ笑いながら俺にまとわりついて、ボールを追いかける。




しばらくそんなやりとりをして遊んでいたら、蹴りそこなったボールに足を取られて、悠李が転んだ。


「うわーん!!」


「ごめん、大丈夫か?」


抱き上げて起こすと、膝小僧が擦りむけて、少し血が滲んでいた。


たいした傷ではないけれど、泣き出した悠李にどうしてよいのか分からず、少しパニックになる。


向こうから彩矢ちゃんが、小走りでやって来た。


「ご、ごめん。ケガさせてしまって……」


「大丈夫よ、このくらい。悠李、あっちに行って、傷を洗ってこよう」


捻ると水が上に飛びだす水飲み場の横についた蛇口をまわし、彩矢ちゃんは悠李の靴下を脱がせて膝を優しく洗った。




時計を見ると、もうあまり時間がなかった。


彩矢ちゃんがそのことに気づいて、


「佐野さん、ありがとう。もう大丈夫だから、仕事に行って」


泣いてる悠李を残して、このまま帰るのもなにか気が引けた。


「う、うん。あ、そうだ、肩車してあげるよ」


グスングスンしていた悠李に話しかけた。


「かたぐるま?」


なんだろうと不思議そうに見つめる悠李を、ヒョイと抱き上げて肩にかけた。


まだ、とても軽い。


「わぁ~  、たかーい!  ママ、みて!  ゆうりママよりおおきいよ!!」


泣いていた悠李を喜ばせることができて安心する。


肩車をされたのは初めてなのか。


やっぱり、松田先生はそこまではしてくれないだろうなと思い、悠李が不憫に思えた。


だけど、こんな姿を有紀に見られたら、一体どうなってしまうのだろうと想像し、背筋に冷たいものを感じた。







夜、家に帰るとなにがあったのか、最近ふさぎ込んで見える有紀の憂鬱な顔。


やはり、有紀に主任はまだ早すぎたのではないかと思う。


だけど、有紀はそういうことではないと言う。じゃあ、なにがあったんだと聞いても答えてはくれない。


なにか隠していることは分かっているけれど、言いたくないことを無理に聞きだそうとしても意味がない。


俺にだって有紀には言えない秘密はあるから。





遅い晩飯を食べてからシャワーを浴び、スマホを開けると、彩矢ちゃんからLINEが来ていた。


『今日はありがとう。悠李とっても楽しかったみたいで、家に帰ってからもずっとご機嫌でした』


トークのやり取りには抵抗を感じ、ペコリとお辞儀をしたスタンプだけを送ったら、悠李の一歳にもなっていない頃の動画と写真も送られて来た。


ソファに座ってテレビを見ている有紀には、絶対に見られてはいけないものだ。


ありがとう!  と、おやすみ~ のスタンプを続けて押してスマホを閉じた。


まだテレビを見ていた有紀をリビングへ残し、寝室へ入った。


ベッドへ寝ころび、悠李の動画をみる。


生後何ヶ月くらいなのだろう?


歩行器にまたがって ” うぐぅ、うぐぅ,, と言葉にならない声を出し、動きまわっている。


『悠李、悠李、こっち向いて!』


彩矢ちゃんの声も聞こえた。


よだれ掛けをした悠李の小さな口からよだれが流れていた。上と下に乳歯が2本づつ生えている。


きゃっきゃっと喜ぶ悠李のふっくらとした笑顔に癒される。


なんて可愛いんだろう。


こんなに可愛い時期を一緒に過ごせなかったことには、やはり少し残念な気持ちにさせられた。


この子のためならなんだってしてあげたい。


本当にそう思うけれど。


今年三歳になるのなら、来年からは幼稚園へ行くのだろう。


そう考えると悠李と遊んであげられるのも、今年だけなのかも知れない。


有紀が部屋に入ってきたので、慌ててスマホを閉じた。


有紀には申し訳ないことをしているので気が咎め、抱こうとするけれど、最近はいつでも拒否されてしまう。


もう、俺には冷めてしまったのか?


まさか、気づいていないよな?


女の第六感は鋭いというけれど。

















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