六華 snow crystal 3

なごみ

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悠李のおしゃべり!

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*彩矢*

ガチャガチャに入っていた怪獣のフィギュアで、悠李は飽きもせずに遊んでいる。


そんなにそのオモチャが欲しかったなんて知らなかった。まだ三歳にもならない子なのに我慢をしていたのだろうか。


悠李は私に似て強情なところはあるけれど、自己主張の弱いところも似たのかも知れない。


悠李と雪花のプールで濡れた髪を拭いて乾かし、服を着せた。


大丈夫とは思うけれど、雪花が心配なので、病院へ連れて行くことにした。もしかしたら肺に水が入ってしまったかも知れない。


「悠李、雪花ちゃんを病院へ連れて行くから、お靴履いて」


雪花を抱っこして、オムツなどが入ったバッグを持った。


ガチャガチャの怪獣をしまって、フタが上手く閉められない悠李がカプセルを持ってきた。


「ママ、これ!」


カプセルをパチンとはめて渡す。


「悠李、これ欲しかったの? どうして今まで言わなかったの?」


「……しらない」


うつむいてそう言う悠李に、何か子供らしくない遠慮が感じられて、自分の子育てに自信がなくなる。


私の内向きな性格が影響しているんだな。





潤一が働いている総合病院の小児科を受診した。もう11時で遅かったのと、風邪のはやる季節でもないせいか、待合室は空いていた。


ナースに体温計を渡され測定してみたが、平熱の36.5℃で安心する。


「松田さん、松田雪花ちゃん!」


外来ナースに呼ばれ、抱っこした雪花と手をつないだ悠李とで、一緒に診察室へはいる。


小児科のDrはまだ若く、明るい子供好きにみえた。


こちらからは何も言わないのに、


「脳外科の松田先生の奥様なんですね?」


と言われ、驚く。


「あ、はい、主人がいつもお世話になりまして」


「いえいえ、こちらこそ。今日は雪花ちゃん、どうされました?」


「あ、それが、さっき家庭用のプールで水遊びをさせていたら、ちょっと目を離したすきに溺れてしまって。肺に水でも入っていたらと心配で……」


「そうですか。じゃあ、ちょっと肺の音聴きますね」


そう言ってDrは、雪花の胸と背中にステートをあてた。


「特に雑音ないので大丈夫と思います。レントゲンも抗生剤もいらないと思うな。熱が出たときのために一応、抗生剤だけ出しておきますけど、服用させる前に松田先生とも相談してみてください」


「あ、はい、わかりました」


「じゃあ、雪花ちゃん、お大事に」


「ありがとうございました」


やはり取り越し苦労だった。


わざわざ連れてくることもなかったけれど、乳児の急変は命取りになるのことがあるので怖かった。






夕方、潤一がいつもより早く帰宅した。


「あ~  暑いなぁ」


潤一はそう言ってひたいの汗を拭うと、リモコンをつかんでクーラーの温度を下げた。


「今日、雪花を病院へ連れてきたんだってな?  溺れさせたって?  一体、何やってんだよ」


おまえは何をやらせても鈍臭いな、とでも言いたげに笑った。


「もしかして肺に水が入ってたら怖いと思って、念のために連れてったの。なんでもなかったわ」


平静を装ってそう言い、豚肉の生姜焼きを大皿に盛りつけた。


「可哀想になぁ、雪花。苦しかったろう、ダメなママだなぁ」


呆れたように私を見つめて、潤一は雪花を抱き上げた。



「雪花ちゃん、宅配のおじちゃんが助けてくれたの!」


突然、思いついたかのように悠李が言った。


「ゆ、悠李!!」



口止めをしておくのだった。



今頃、気づいてももう遅い。



「……どういうことだ?」



潤一の目を見ることが出来なかった。



動揺を隠せず、緊張したままうなだれる。



「一体どういうことなんだ、ちゃんと説明しろっ!」



「……宅配の荷物が届いて受け取っていた時に雪花が溺れてしまって。悠李が泣いて知らせてくれたから、慌てて行ったら呼吸が止まっていて、そ、その人、救急医療に慣れてたみたいで、雪花を蘇生してくれたの」


潤一の顔色が変わった。


「な、なんだって?  呼吸が止まっていた?  一体どれだけ目を離していたんだよっ!」


自分で言っておきながら、ことの重大さにあらためて戦慄する。


「ちょっとの時間だったわ!  荷物を受け取っていただけなんだもの」


「それで宅配業者が家の中にまで入って来て、雪花の蘇生をしたっていうのか?」



その説明を全く信じていないことはあきらかだった。


「……そ、そうよ、その人がいなかったら、雪花どうなってたか」



「パパ、悠李、おじちゃんからこれもらった」



深刻な言い争いをしている大人たちを心配したのか、悠李は遊んでいたカプセルを持ち上げて見せた。



悠李のおしゃべり!   



どこまで余計なことを言うのだろう。



「…………」



ジッと私を見据えて、それ以上なにも聞かない潤一が不気味だった。






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