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禁断の愛
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途中、花屋に寄り、お年玉でバラの花束を買った。
せめてものお詫びのしるしに。
女性に花を買ったのは初めてだ。
小学生の頃、一度だけ母親にカーネーションを贈ったことはあったけれど。
喜んでくれるだろうか。
メールではあんなことを言っていたけれど、俺の顔などもう、見たくないかもしれない。
許してくれたとしても、こんな危険人物は二度とアパートへは入れてくれないだろう。
ダメならダメで仕方がない。
花だけでも渡して帰ろう。
アパートに着いたものの、ブザーを押すことに躊躇する。
花束を持って家に帰るわけにもいかず、思い切ってブザーを押した。
インターホンからの返事はなく、すぐにドアが開いた。
「入って」
怒っているのか許しているのかよく分からない無表情だったけれど、“ 入って ” と言われて少しホッとした。
靴を脱いでリビングに入り、
「あ、、こ、これ……」
後ろ手に持っていた花束をオズオズと差し出す。
「あら、きれい!! どうしたの、これ?」
真紅のバラに目を輝かせ、まるで無垢な少女のように微笑んだ。
「さっきのお詫びだよ。本当にごめん……」
立ったまま頭をさげて謝り、目のやり場に困る。
「いいのよ、悪いのはわたしの方だから。もう済んだことよ、気にしなくていいわ」
何事もなかったかのように、あっけらかんと言われた。
もう済んだこと……気にしなくていい?
なじられる以上にショックな言葉だった。
俺とのことは、けつまづいて転んだくらいのことなのか。
「お昼まだでしょう? 冷凍のドリアなんかでよかったらすぐに出来るわよ。それとも二人でお料理でもする?」
冷蔵庫をあけ、おどけたように笑って振り向いた。
「飯なんていらないよっ! もっと真面目に考えてくれよ! さっきは本当に悪いことしたと思ってる。だけど俺はマジで本気なんだ!」
どう言えばわかってくれるのだろう。
確かに俺はまだ若いけれど、もう子供じゃない。
「……真面目に聞いてたわよ、わたしあなたが出て行ったあともよーく考えてみたわ」
「そ、それで、、それでどうなんだよ」
平然と落ち着いて語る美穂先生に、言い知れぬ不安を覚えた。
「どう考えても、あなたは若すぎるってこと」
「もっと年の離れた年の差カップルだって、沢山いるじゃないか!」
俺のことが好きじゃないっていうなら諦めるしかない。だけど、若すぎるという理由だけでは納得がいかない。
「そういうことじゃなくて、今あなたが十七歳だってことが問題なの」
「あと一年もしないうちに十八になるじゃないか。大学に入ったら、結婚できるだろ? バイトじゃ稼ぎはよくないだろうけど、卒業して就職したらまじめに働く。それじゃあダメなのか?」
十七歳のなにがそんなに問題だっていうんだ!!
切実な想いで詰め寄る。
「メルヘンだわ、あなたのお話は」
先生は握った手を振りはらい、冷めたような顔でソファに腰をおろした。
「メルヘン? 俺のどこがメルヘンなんだよっ、バカにするな! 七歳年上がそんなに偉いのか ⁉︎」
「少し落ち着いたらどう? あなたは今、恋に夢中で他のことはなんにも見えていないの。そんな情熱がいつまで続くと思う? あなたがそのうち若い子に目移りするのは時間の問題よ。破綻するのは目に見えてるわ」
まるで予言者のように偉そうに語った。
「どうしてそんなことがわかるんだよっ、 一体俺のなにを知ってるっていうんだ ⁉︎ 分かったようなこと言うのはやめてくれ!」
こんなに好きだって言ってるのに、どうして分かってくれないんだ。
「多分わたしは、……あなたのその情熱が怖いんだわ。いつか冷めてしまうあなたを見るのが怖いのよ」
寂しげにそう呟くと、窓の外へ目をやった。
「そんなこと絶対にないから、俺を信じろよ。頼むから信じて」
俺はまた先生の手を握り、切実に迫った。
「……そうね、わかった、信じるわ」
俺の執拗さに諦めたかのように微笑んだ。
「本当に? じゃあ、本当に俺と結婚してくれるんだな?」
諦めかけていた夢が………
「あなたの気が変わらなかったらね」
「俺は、俺は医者の卵とは違う。浮気なんてしない」
今度こそ、、本当に俺のものだ。
「こんなに熱愛されちゃうなんてね。なんだか感動しちゃうな。わたしのほうが高校生に戻ってしまった気分よ。最低の教師ね、わたしは」
涙ぐんで、まっすぐに俺を見つめた。
「最低なんかじゃない。俺たちは愛し合ってるんだから。年の差は関係ないだろう? 医者の卵がまだ忘れられないなら、無理して忘れなくてもいい。俺はちゃんと待ってるから」
「彼のことはもういいの。傷ついてないわけじゃないけど、いつまでもしがみつくほどバカじゃないわ。わたし本当にあなたが好きよ。今まで生徒としか見てなかったけど、あなたはとても魅力的だわ」
「……美穂」
このとき感じた喜びは、言葉では到底言い表せない。
ソファの上できつく抱き合って、夢中でキスをした。
天にも登るような気分というのは、あんなことを言うのだろうか。
寝室のカーテンの隙間から、雪に反射した眩しい日差しが漏れていた。
あってはならない教師と生徒という禁断の関係が、尚のこと二人を燃えあがらせたのかも知れない。
カーテンを閉ざした薄暗い部屋で、俺たちは激しく求め合い、なんども頂点まで昇りつめた。
成熟した彼女はなにもかもが素晴らしくて、心も体もすべてが燃えつきてしまいそうだった。
これが夢ならいつまでも覚めないでくれ。
せめてものお詫びのしるしに。
女性に花を買ったのは初めてだ。
小学生の頃、一度だけ母親にカーネーションを贈ったことはあったけれど。
喜んでくれるだろうか。
メールではあんなことを言っていたけれど、俺の顔などもう、見たくないかもしれない。
許してくれたとしても、こんな危険人物は二度とアパートへは入れてくれないだろう。
ダメならダメで仕方がない。
花だけでも渡して帰ろう。
アパートに着いたものの、ブザーを押すことに躊躇する。
花束を持って家に帰るわけにもいかず、思い切ってブザーを押した。
インターホンからの返事はなく、すぐにドアが開いた。
「入って」
怒っているのか許しているのかよく分からない無表情だったけれど、“ 入って ” と言われて少しホッとした。
靴を脱いでリビングに入り、
「あ、、こ、これ……」
後ろ手に持っていた花束をオズオズと差し出す。
「あら、きれい!! どうしたの、これ?」
真紅のバラに目を輝かせ、まるで無垢な少女のように微笑んだ。
「さっきのお詫びだよ。本当にごめん……」
立ったまま頭をさげて謝り、目のやり場に困る。
「いいのよ、悪いのはわたしの方だから。もう済んだことよ、気にしなくていいわ」
何事もなかったかのように、あっけらかんと言われた。
もう済んだこと……気にしなくていい?
なじられる以上にショックな言葉だった。
俺とのことは、けつまづいて転んだくらいのことなのか。
「お昼まだでしょう? 冷凍のドリアなんかでよかったらすぐに出来るわよ。それとも二人でお料理でもする?」
冷蔵庫をあけ、おどけたように笑って振り向いた。
「飯なんていらないよっ! もっと真面目に考えてくれよ! さっきは本当に悪いことしたと思ってる。だけど俺はマジで本気なんだ!」
どう言えばわかってくれるのだろう。
確かに俺はまだ若いけれど、もう子供じゃない。
「……真面目に聞いてたわよ、わたしあなたが出て行ったあともよーく考えてみたわ」
「そ、それで、、それでどうなんだよ」
平然と落ち着いて語る美穂先生に、言い知れぬ不安を覚えた。
「どう考えても、あなたは若すぎるってこと」
「もっと年の離れた年の差カップルだって、沢山いるじゃないか!」
俺のことが好きじゃないっていうなら諦めるしかない。だけど、若すぎるという理由だけでは納得がいかない。
「そういうことじゃなくて、今あなたが十七歳だってことが問題なの」
「あと一年もしないうちに十八になるじゃないか。大学に入ったら、結婚できるだろ? バイトじゃ稼ぎはよくないだろうけど、卒業して就職したらまじめに働く。それじゃあダメなのか?」
十七歳のなにがそんなに問題だっていうんだ!!
切実な想いで詰め寄る。
「メルヘンだわ、あなたのお話は」
先生は握った手を振りはらい、冷めたような顔でソファに腰をおろした。
「メルヘン? 俺のどこがメルヘンなんだよっ、バカにするな! 七歳年上がそんなに偉いのか ⁉︎」
「少し落ち着いたらどう? あなたは今、恋に夢中で他のことはなんにも見えていないの。そんな情熱がいつまで続くと思う? あなたがそのうち若い子に目移りするのは時間の問題よ。破綻するのは目に見えてるわ」
まるで予言者のように偉そうに語った。
「どうしてそんなことがわかるんだよっ、 一体俺のなにを知ってるっていうんだ ⁉︎ 分かったようなこと言うのはやめてくれ!」
こんなに好きだって言ってるのに、どうして分かってくれないんだ。
「多分わたしは、……あなたのその情熱が怖いんだわ。いつか冷めてしまうあなたを見るのが怖いのよ」
寂しげにそう呟くと、窓の外へ目をやった。
「そんなこと絶対にないから、俺を信じろよ。頼むから信じて」
俺はまた先生の手を握り、切実に迫った。
「……そうね、わかった、信じるわ」
俺の執拗さに諦めたかのように微笑んだ。
「本当に? じゃあ、本当に俺と結婚してくれるんだな?」
諦めかけていた夢が………
「あなたの気が変わらなかったらね」
「俺は、俺は医者の卵とは違う。浮気なんてしない」
今度こそ、、本当に俺のものだ。
「こんなに熱愛されちゃうなんてね。なんだか感動しちゃうな。わたしのほうが高校生に戻ってしまった気分よ。最低の教師ね、わたしは」
涙ぐんで、まっすぐに俺を見つめた。
「最低なんかじゃない。俺たちは愛し合ってるんだから。年の差は関係ないだろう? 医者の卵がまだ忘れられないなら、無理して忘れなくてもいい。俺はちゃんと待ってるから」
「彼のことはもういいの。傷ついてないわけじゃないけど、いつまでもしがみつくほどバカじゃないわ。わたし本当にあなたが好きよ。今まで生徒としか見てなかったけど、あなたはとても魅力的だわ」
「……美穂」
このとき感じた喜びは、言葉では到底言い表せない。
ソファの上できつく抱き合って、夢中でキスをした。
天にも登るような気分というのは、あんなことを言うのだろうか。
寝室のカーテンの隙間から、雪に反射した眩しい日差しが漏れていた。
あってはならない教師と生徒という禁断の関係が、尚のこと二人を燃えあがらせたのかも知れない。
カーテンを閉ざした薄暗い部屋で、俺たちは激しく求め合い、なんども頂点まで昇りつめた。
成熟した彼女はなにもかもが素晴らしくて、心も体もすべてが燃えつきてしまいそうだった。
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