【完結】ゆるキャラ好きの悪役令嬢はオネエ公爵に拾われる

柊ハセル

文字の大きさ
52 / 55

聖女

「――その時です! ロベリア嬢に光属性の覚醒が起き、ケルビン男爵令嬢にあの素晴らしい伝説的な高位の聖魔法の封印を施したのです!! 闇属性と光属性の覚醒の瞬間を垣間見ることができるなど、なんたる幸運! なんたる幸せ!! その上、ロベリア嬢は一瞬にしてこの謁見の間にいる者すべてを浄化するその姿は、まさに聖女!! 私は聖女の誕生をこの目で見たのです!!!!」

 どうやら椅子が並べられていたのは、この演説のような講義を受けるためだったらしい……。

 物凄いテンションで国王陛下、王妃殿下をはじめ、私たちに力説するノルン辺境伯。
 しかも、あの時、魅了や靄に侵されていなかったのは、ノルン師団長とクレリオ様だけということもあり、説明からは、辺境領で幽閉という名の領主業に勤しむクレリオ様と考察に花を咲かせたことが伺えた。

 一方ランス様は、なぜかノルン師団長の説明が進むにつれて、どんどん愕然とした表情になっていく。

「……なぜ私はあの時、濃い靄になど包まれていたのでしょう。そんな素晴らしいロベリアの覚醒の瞬間を未来の夫である私が見逃すなんて……!!」

 彼の発した「未来の夫」という言葉に頬が熱くなる。
 なのに、勝手に盛り上がっている師団長は「照れる必要などありません! あなたはれっきとした聖女なのですから!」などと、明後日の方向の言葉をかけてきた。

(いや違う! そっちじゃない!)

 私がそう心の中で全否定した時だった。
 謁見室に見知った人物がよく知るかごを携えて入ってきた。

「ヘルマン? そのカゴはもしや……」

「グマー!!」
「クマクマー!!」

 カゴから二匹の「くま吉」が飛び出し、私めがけて一目散に飛んでくる。
 初めてこの二匹を見た国王陛下と王妃殿下は目を見開き、王妃殿下からは「まあ、可愛らしい」という声が上がった。
 私の元まで辿り着いた二匹は、陛下に向かって礼を取る。

「クマ、クママ」
「グ、グマ、グママ」

 どうやらルドのほうは少し緊張しているらしい。
 微笑ましい様子に思わず見入ってしまいそうになり、慌てて陛下に二匹を紹介した。

「こちらのサファイアの目をした方がリアで、エメラルドの目をした方がルドです」

「ほぉ……リアにルドか……。可愛いな。この二匹は魔法で使役しておるのか?」

 ジーッとリアトルドを眺め、名前を口にした後、陛下は意味深な笑みを浮かべながら一瞬ランス様を見た。
 またすぐに二匹に視線を戻すと、構造が気になるのか、首をあちこち傾けながら二匹を見る。

「少し変わっているそうなのですが、この二匹は私の聖霊です」

「聖霊か……はて、ノルン師団長。聖霊とは声を発するものなのか? そなたの聖霊は喋った記憶はないのだが……」

「そうなのです!! 普通の聖霊は念話はできても、声を発することはできません! その上、ロベリア嬢の聖霊はしっかり意思疎通ができるような喋り方をするのです!!」

 急に話を振られたにもかかわらず、待っていましたとばかりに師団長が答える。
 陛下は陛下で、師団長の話を聞きながらも、心はすでにリアとルドへの関心でいっぱいのようで、目を爛々とさせながら二匹に手招きした。
 一瞬こちらを振り向いた二匹は、私が頷くと、腹を決めたかのように手を繋いで陛下の元へ飛んでいく。

「クマ! クマクマ!」
「グ、グマ……グマママ……」

 どうやらルドは、緊張しいのようだ。
 動きまでロボットみたいにぎこちない。
 けれど、そんなルドの様子も陛下にとっては可愛いらしく、王妃殿下と二人、手のひらにそれぞれ乗せて、頬を緩めながら眺めている。
 幼い頃から婚約者として王宮には通っていたし、舞踏会などでお会いすることはあったけど、こんな陛下たちを私は知らない。
 そう思うと、なんだかとても複雑な気持ちになった。

 すると突然、陛下が驚きの発言をする。

「ロベリア嬢、私にも一匹聖霊を作ってもらうことはできぬか?」

「……えっとそれは……」

「それはできかねますよ。陛下」

 返答に困っていると、私の背後に控えていたランス様が即答する。

「聖霊は動かすために魔力を消費するもの、それも魔術師団の中堅魔術師の半日分の魔力が必要になります。その量を毎日注ぎ続ける状態になるのです」

「そんなに魔力が必要なものなのか……では、無理強いはできんな」

「ご理解いただき、ありがとうございます」

「まあ、特別な聖霊は聖女が連れてこそ、その価値が伝わるというものか……では、ロベリア嬢。そなたを正式に『聖女』として認定する。近日中にお披露目もしよう」

「お披露目!? えっと、それは……」

 突然の陛下の提案に思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
 承認されるだけでもザワザワするのに、お披露目なんて……そんな恥ずかしいことはしなくていい!!
 そう思っていると、またもやランス様が口を挟む。

「お披露目は善意だけでなく悪意も引き寄せます。神殿などへの報告だけではダメなのでしょうか……。それにあの日この謁見室にいた宰相や大臣たちは既に知っているでしょうから、わざわざお披露目をしなくても問題ないと思うのですが……」

「なるほど……して、本音は?」

「……ロベリアに悪い虫が付きそうで嫌です」

 どうやら陛下とランス様は旧知の間柄のようで、さっきから二人の会話が気安い。
 不機嫌な顔で答えているのか、ランス様の声が拗ねていてなんだか可愛く思えてしまう。

(というか、ランス様!? 私に悪い虫が付きそうで嫌って……まだ出会っていない相手に嫉妬!? 嬉しいけど、それを陛下に言われると、なんだか複雑な気持ちになるわ……)

 拗ねたランス様に陛下が笑い出して、和やかな雰囲気で、なんとかお披露目はなくなった。
 ただし、その代わり、定期的に王宮にリアとルドを連れて魔力測定と属性確認に来ることを約束させられた。
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない

As-me.com
恋愛
完結しました。 自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。 そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。 ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。 そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。 周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。 ※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。 こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。 ゆっくり亀更新です。

すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜

まりー
恋愛
   ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。  でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。 _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。    

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。 ――というのは表向きの話。 婚約破棄大成功! 追放万歳!!  辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。 ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19) 第四王子の元許嫁で転生者。 悪女のうわさを流されて、王都から去る   × アル(24) 街でリリィを助けてくれたなぞの剣士 三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ 「さすが稀代の悪女様だな」 「手玉に取ってもらおうか」 「お手並み拝見だな」 「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」 ********** ※他サイトからの転載。 ※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。