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【番外編】わたくしのくまちゃん(ルイーゼ視点)
ロベリア様がアラベスク侯爵邸に戻られてからしばらくした頃、わたくし宛に荷物が届いた。
「奥様、ロベリア様より贈り物が届いております」
家令のセバスがわたくしに向かってそう告げながら、ちょうど両手に少し余るほどのサイズの箱を机に置いた。
置かれた白い箱には赤いリボンがかけられ、可愛らしいラッピングが施されている。
「あらあらあら。これは……例のアレだったりするのかしら? 来月には引っ越していらっしゃる予定でしょうに、きっと急いで送ってくださったのね!」
期待に胸を膨らませながら、その箱を開ける。
すると、中には予想した通り、ふわふわの綿に囲まれた、アメジストの「くま吉」さんが横たわっていた。
さらにその首元には同じく淡い藤色のリボンがついている。
「まあまあまあまあまあまあ! わたくしとおんなじ瞳……! それにリボンまで! やっぱりわたくしの『くま吉』さんですわ!」
ロベリア様にお願いしたわたくしのくまちゃん!
けれど、やっぱり二人の愛の力で動いたリアちゃんや、二人の愛の結晶であるルドちゃんと違って、わたくしの「くま吉」さんは、普通のぬいぐるみ。
「確かに可愛いのですけれど、やはりあの二匹を見てしまうと、理想が高くなってしまいますわね……」
少しため息をつきながら、「くま吉」さんと一緒に入っていた封筒を取り出し、封を開ける。
中から便箋を取り出すと、思いの外びっしりと書かれた綺麗な文字が現れた。
「あらあら。こんなに熱のこもったお手紙をくださるなんて……! 一体何かしら?」
そうして手紙に目を落としたその時だった。
「お、奥様……! くま吉様が……!!」
セバスの言葉に慌てて箱を見ると、綿の間からむくっと起き上がって、両手を上にあげて伸びをするような仕草をする「くま吉」さんの姿があった。
「まあ! ……あらあらまあまあまあまあ!! あなたも動きますのね!?」
大きな声を上げてしまったわたくしと、それに驚いた「くま吉」さんのアメジストの瞳が合う。
「マグー!」
「まあ! あなたもお喋りしますの!? あらあらあらあら、どうしましょう……!?」
「マグ?」
わたくしの言葉を聞いて小首を傾げる「くま吉」さん。
(ああー! もうもう、とにかく可愛いわ!!)
あまりの可愛さに撃ち抜かれつつ、必死に冷静さを引き寄せる。
あら……でも確か「くま吉」さんを動かすにはロベリア様の魔力が必要だと聞いている。
ロベリア様の魔力量が多いとは言っても、わたくしの単なる我儘で消費させるわけにはいかない。
「どうしましょう……セバス、ランスは今邸に居て?」
「いえ。ちょうどアラベスク侯爵邸へお出かけになられたところでございます」
「そう……」
本心を言うと、嬉しくて嬉しくてたまらない。
屋敷中を「くま吉」さんを抱えて走り回りたいくらいにはテンションが上がっている。
なんと言ってもわたくしだけの「くま吉」さんなのだから……!
そうね……
名前をつけて、仕立て屋を呼んで衣装を作らせて、色んな姿を見てみたいわ!
なんなら、リアちゃんとルドちゃんの分も仕立てて、三匹にお揃いを着せて、撮影会をしたいですわね。
ああもう、そんなの絶対可愛いに決まっていますわ!!
きっとリアちゃんは濃いマゼンタ色のふわふわしたお衣装が似合いそう……ルドちゃんは黒のタキシードとか、正装させたらカッコ良さそうね……。
あなたはどんなお衣装が似合うかしら……?
ああ……やっぱりそれより先に名前が必要よね!!
一体どんな名前があなたには合うかしら……?
そんな考えを脳内に巡らせていると、セバスの気まずそうな視線が痛い。
「……奥様、先ほどからお声が漏れております」
「あら? どこから聞いていました?」
「『仕立て屋を呼んで』の辺りからでございます」
「ほとんどじゃないの。わたくしったらもう、嫌だわ……」
少し冷静にならなくては……!
とにかくまずはロベリア様からのお手紙を読みましょう。
こちらを不思議そうに見つめるアメジストのつぶらな瞳を懸命に我慢して、手紙を読む。
わたくしの体を気遣う丁寧な挨拶文から始まるその手紙には、わたくしへの思いやりに溢れた義娘の可愛い我儘が書かれていた。
『――お約束していた「くま吉」を贈ります。お義母様のことを考えながらラッピングをしていたら、無意識に魔力を注いでしまっていたようで、魔法を使うほどの力はないのですが、喋って動くようになってしまいました。良ければこのまま側に置いていただけると嬉しいです。この子の名前なのですが――』
「お義母様の名前からとって『イルゼ』と付けたいのですが、ダメでしょうか? ですって。セバス、仕立て屋を呼んでちょうだい」
「かしこまりました」
仕立て屋を呼びにセバスが部屋を出る。
わたくしは目の前にいる、まだ箱の中から不思議そうにこちらを見つめるアメジストの瞳に話しかけた。
「あなたの名前は『イルゼ』というそうよ。これからよろしくね、イルゼ」
「マグー!」
「ふふふ」
名前に反応して嬉しそうに鳴くイルゼに、わたくしは手招きをした。
けれど、イルゼはリアちゃんやルドちゃんのようにふよふよとやって来ない。
あら……?
魔法が使えないってこういうことなのね。
わたくしの表情を心配そうにイルゼが見る。
「大丈夫よ。手がかかる子ほど可愛いというのよ~ふふ。まずはカゴが必要ね」
そうしてわたくしは、出て行ったばかりのセバスをまた呼び出したのだった。
「奥様、ロベリア様より贈り物が届いております」
家令のセバスがわたくしに向かってそう告げながら、ちょうど両手に少し余るほどのサイズの箱を机に置いた。
置かれた白い箱には赤いリボンがかけられ、可愛らしいラッピングが施されている。
「あらあらあら。これは……例のアレだったりするのかしら? 来月には引っ越していらっしゃる予定でしょうに、きっと急いで送ってくださったのね!」
期待に胸を膨らませながら、その箱を開ける。
すると、中には予想した通り、ふわふわの綿に囲まれた、アメジストの「くま吉」さんが横たわっていた。
さらにその首元には同じく淡い藤色のリボンがついている。
「まあまあまあまあまあまあ! わたくしとおんなじ瞳……! それにリボンまで! やっぱりわたくしの『くま吉』さんですわ!」
ロベリア様にお願いしたわたくしのくまちゃん!
けれど、やっぱり二人の愛の力で動いたリアちゃんや、二人の愛の結晶であるルドちゃんと違って、わたくしの「くま吉」さんは、普通のぬいぐるみ。
「確かに可愛いのですけれど、やはりあの二匹を見てしまうと、理想が高くなってしまいますわね……」
少しため息をつきながら、「くま吉」さんと一緒に入っていた封筒を取り出し、封を開ける。
中から便箋を取り出すと、思いの外びっしりと書かれた綺麗な文字が現れた。
「あらあら。こんなに熱のこもったお手紙をくださるなんて……! 一体何かしら?」
そうして手紙に目を落としたその時だった。
「お、奥様……! くま吉様が……!!」
セバスの言葉に慌てて箱を見ると、綿の間からむくっと起き上がって、両手を上にあげて伸びをするような仕草をする「くま吉」さんの姿があった。
「まあ! ……あらあらまあまあまあまあ!! あなたも動きますのね!?」
大きな声を上げてしまったわたくしと、それに驚いた「くま吉」さんのアメジストの瞳が合う。
「マグー!」
「まあ! あなたもお喋りしますの!? あらあらあらあら、どうしましょう……!?」
「マグ?」
わたくしの言葉を聞いて小首を傾げる「くま吉」さん。
(ああー! もうもう、とにかく可愛いわ!!)
あまりの可愛さに撃ち抜かれつつ、必死に冷静さを引き寄せる。
あら……でも確か「くま吉」さんを動かすにはロベリア様の魔力が必要だと聞いている。
ロベリア様の魔力量が多いとは言っても、わたくしの単なる我儘で消費させるわけにはいかない。
「どうしましょう……セバス、ランスは今邸に居て?」
「いえ。ちょうどアラベスク侯爵邸へお出かけになられたところでございます」
「そう……」
本心を言うと、嬉しくて嬉しくてたまらない。
屋敷中を「くま吉」さんを抱えて走り回りたいくらいにはテンションが上がっている。
なんと言ってもわたくしだけの「くま吉」さんなのだから……!
そうね……
名前をつけて、仕立て屋を呼んで衣装を作らせて、色んな姿を見てみたいわ!
なんなら、リアちゃんとルドちゃんの分も仕立てて、三匹にお揃いを着せて、撮影会をしたいですわね。
ああもう、そんなの絶対可愛いに決まっていますわ!!
きっとリアちゃんは濃いマゼンタ色のふわふわしたお衣装が似合いそう……ルドちゃんは黒のタキシードとか、正装させたらカッコ良さそうね……。
あなたはどんなお衣装が似合うかしら……?
ああ……やっぱりそれより先に名前が必要よね!!
一体どんな名前があなたには合うかしら……?
そんな考えを脳内に巡らせていると、セバスの気まずそうな視線が痛い。
「……奥様、先ほどからお声が漏れております」
「あら? どこから聞いていました?」
「『仕立て屋を呼んで』の辺りからでございます」
「ほとんどじゃないの。わたくしったらもう、嫌だわ……」
少し冷静にならなくては……!
とにかくまずはロベリア様からのお手紙を読みましょう。
こちらを不思議そうに見つめるアメジストのつぶらな瞳を懸命に我慢して、手紙を読む。
わたくしの体を気遣う丁寧な挨拶文から始まるその手紙には、わたくしへの思いやりに溢れた義娘の可愛い我儘が書かれていた。
『――お約束していた「くま吉」を贈ります。お義母様のことを考えながらラッピングをしていたら、無意識に魔力を注いでしまっていたようで、魔法を使うほどの力はないのですが、喋って動くようになってしまいました。良ければこのまま側に置いていただけると嬉しいです。この子の名前なのですが――』
「お義母様の名前からとって『イルゼ』と付けたいのですが、ダメでしょうか? ですって。セバス、仕立て屋を呼んでちょうだい」
「かしこまりました」
仕立て屋を呼びにセバスが部屋を出る。
わたくしは目の前にいる、まだ箱の中から不思議そうにこちらを見つめるアメジストの瞳に話しかけた。
「あなたの名前は『イルゼ』というそうよ。これからよろしくね、イルゼ」
「マグー!」
「ふふふ」
名前に反応して嬉しそうに鳴くイルゼに、わたくしは手招きをした。
けれど、イルゼはリアちゃんやルドちゃんのようにふよふよとやって来ない。
あら……?
魔法が使えないってこういうことなのね。
わたくしの表情を心配そうにイルゼが見る。
「大丈夫よ。手がかかる子ほど可愛いというのよ~ふふ。まずはカゴが必要ね」
そうしてわたくしは、出て行ったばかりのセバスをまた呼び出したのだった。
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