虚空の支配者 ~元勇者パーティの荷物持ち、最弱魔法で無双~

夕影草 一葉

文字の大きさ
9 / 100
一章 純白の鬼

9話

しおりを挟む
「急ぐのはわかったが、理由も教えてもらえないのか?」

 前で揺れる白い髪を追いかけて、すでに短くない時間を費やしている。
 ビャクヤは当初とは比べ物にならないスピードでダンジョンの攻略をおこなっていた。
 しかし未だ次の階層への道は見つかっていない。それが彼女を急き立てているのだろう。
 一度は信じると決めた以上は、彼女を信じたい気持ちもある。
 しかし強行を続ける姿に疑念を抱くなと言うほうが無理筋だ。
 あの黒いアイテムについて何か知っているのか。
 それとも、鬼という種族特有の勘のような物なのか。
 急ぐ理由を説明してもらおうとしても、彼女は困惑気味に苦笑を浮かべて、返す。

「信じては貰えぬだろうが、急いだほうがよい。 不吉な予感がするのだ」

 ビャクヤは止まることなくダンジョン内を疾走する。
 そして入り組んだ十字路に差し掛かった時、その足が一瞬だけ止まる。
 それこそ、戦士としての勘だろうか。 
 ダンジョンの脇道から、鋭い一撃が振り下ろされた。

「なっ!?」

 慌ててビャクヤの肩を引っ張り、その一撃を回避させる。
 見れば、振り下ろされたのは巨大なハンマーだった。
 ハンマーは地面を容易に打ち砕き、破裂音を響かせる。
 一瞬、魔物の奇襲かと考えた。だが、そうではないとすぐに判明する。
 ハンマーの持ち主は、見知った顔だったからだ。
 わき道から姿を現したのはハーケインのメンバーと、そのリーダーであるバルロだった。

「おぉっと、手が滑っちまった。 わりぃな、おふたりさん」

 下卑た笑い声をあげる男たち。だがその眼は決して笑っていない。
 あのままビャクヤの腕を引かなければ、確実に武器は彼女にあたっていた。
 シルバー級の冒険者の、それも大型武器の一撃を食らえば、頑丈な鬼といえど相当なダメージを受けるだろう。
 当たり所によっては命に支障が出かねない。
 到底、看過できることではなかった。

「バルロ。 冒険者同士が武器で争うことはギルドの規則で禁止されている。 それを忘れた訳じゃないだろうな」

「だから手が滑ったっていっただろう? ワザとじゃねぇんだ、そう気を立てんなよ」

「我輩を狙ったのはわかっている。 言い逃れをするつもりか?」

 薙刀を握りしめて、バルロを睨み付けるビャクヤ。
 だがバルロは余裕の笑みを浮かべたままだ。

「言い逃れとは人聞きが悪いなぁ、おい。 
 この先に守護者が居やがるんでな。 俺達は準備のために地上へ戻って、体制を立て直す手はずなんだよ。 その途中で魔物に出会ったと思ったら、お前たちだったわけだ。 分かるか?」
 
 バルロの表情からして、それが嘘であることは明白だった。
 先ほどの攻撃には明確な敵意があったし、魔物を警戒するのであれば十字路で待ち構える意味もない。
 だが、バルロが俺達を狙ったと証明することは難しい。
 ギルドの窓口でバルロを訴えても、今と同じ証言をするだけだろう。
 歯がゆいが、意図的な攻撃だと立証するには物的な証拠が足りなかった。
 黙り込んだ俺を見て、ビャクヤがゆっくりと力を抜く。

「次は無いぞ?」

「はは、そりゃこっちのセリフだ、この妖魔鬼(トロール)もどきが」

 去り際の捨て台詞に、ビャクヤが顎を引く。見れば微かに肩を揺らしていた。
 怒りを抑え込んでいるのだろうか。最初に出会った時も、他の魔物と同一視するなと言っていたのを思い出す。
 ビャクヤは自分の鬼という種族に誇りを持っているように見えた。それを馬鹿にされて、頭に血が上っているのかもしれない。とはいえ、ここでバルロ達に切りかかるほど、自制心に欠けているわけでもないらしい。
 上層へ戻る道へ姿を消したバルロ達を見送ると、ビャクヤは小さなため息をついて、言った。

「ファルクス、聞いたか? この先には次の階層への通路があるらしい」

「あ、あぁ。 だが守護者が居るのか……。」

「思うにその守護者というのは、通路を守る魔物のことか」

「そうだ。 ダンジョンの規模にもよるが、守護者は通常の魔物より相当に手ごわい。 バルロが体制を立て直すといったのも、あながち嘘というわけじゃないだろう」

 人間としては最低だが、バルロ達は腐ってもシルバー級の冒険者だ。
 今は俺達よりも格上の冒険者であり、本気でぶつかれば勝機は薄い。
 そんな彼らが断念して体制を立て直すと判断する相手、それが守護者である。
 手ごわい守護者が待ち構えているのであれば、俺達が二人で戦っても勝敗がどう転ぶかは分からない。
 一抹の不安もあるが、ビャクヤは先へ進みたそうに、問いかけてきた。

「我輩達はどうする? 進むか?」

「俺達のパーティは2人しかいない。 なにか不測の事態に陥れば、すぐに瓦解するだろう。 人数の少なさは対応力の低さでもある」

 思えば今まで、窮地に陥ったことは少なかったように思う。
 それは勇者や賢者、聖女といった攻守に優れた最上位のジョブがパーティの中に揃っていたからだろう。
 しかし今では俺の転移魔法と、ビャクヤの物理攻撃スキルに頼るほかない。
 物理攻撃が一切効かない相手が出てくれば、確実に積むことになる。
 
 だが、ビャクヤの先ほどの言葉が気になっていた。
 急いだほうが良い。彼女はしきりに、そう言っていた。

「だが、ビャクヤが急いだほうが良いというなら、少しばかり守護者の顔を拝んでいくのも悪くはないだろう」

 信じてみようと決めたのだから、最後まで信じてみよう。
 俺の判断に、ビャクヤは屈託のない笑みを浮かべた。

「流石は我輩が見込んだ男だ!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

処理中です...