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三章 人形と復讐の行方
47話
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「まさか、あの時の子供が今回の黒幕だったとはな」
古くなった絨毯の上に横たわる少女を見て、思わずつぶやいた。
少女は魔法かなにかで偽装していたのか。
気絶してからは貴族のような姿から、以前助けた時の素朴な姿へ変わっていた。
あの冒険者たちに人形を奪われていた少女、そのままである。
先ほどまでの高圧的な雰囲気からも一転、今ではごく普通の子供に見える。
そんなまさかの事態に、俺は行動を決めかねていた。
「どうするつもりだ? この事実をギルドに報告すれば、依頼は完遂したことになるのだろうが」
「それでも、この子から話を聞かないことには始まらないだろ。 捕まえてギルドに引き渡して、それで終わりってわけにはいかない。 ギルドは憲兵団に彼女を引き渡し、憲兵団は相応の罰を与える。 こんな子供であってもな」
「だが、お主も分かっているであろう。 その子供は人形を操って、人を殺めている」
「そこがある意味で問題だ。 どんな理由があっても人殺しが正当化されるとは思わない。 だがなぜ人を殺したのか、その理由は聞くべきだと俺は思ってる」
不満げなビャクヤの気持ちも分かる。
この少女は人形を操って何人もの犠牲者を出しているのだ。
それも街の中で、なんの罪もない人々から。
普通に考えれば許される行為ではない。
だが、この街での犯罪は憲兵団が取り締まる。権力や利権に屈しない法の守り手。
どんな理由があろうとも殺人は重罪であり、いくら子供であろうとも相応の罰が下されるだろう。
良くも悪くも、公平中立だ。
俺達が手を下さなくても、彼女の未来は決まっている。
だからこそ話を聞く価値はある。彼女がなぜ手を汚したのかを。
魔力切れで倒れたのなら、魔力を補充すればいい。
魔法薬を飲ませて数分。少女は目を覚ました。
そして周囲を見渡し、俺達を見て諦めたように笑った。
「負けたのね、私達は。 それで、これからどうなるの?」
「まずは色々と話を聞かせてもらおうと思ってな。 まずは名前を聞かせてくれ。 なんて呼べばいいのか。 おっと、抵抗しようなんて考えるなよ」
ビャクヤが周囲を見張っているが、相手の能力が分かっていない以上、油断はできない。
ただ転移魔法の長所として発動が非常に速いという物がある。咄嗟の対処なら人並み以上に自信があった。
だが少女は俺の警戒とは裏腹に、素直に口を開いた。
「そんな事しないわ。 私の名前はアリアよ。 私の、とても大切な名前なの」
「ならアリア。 自分が今、どういう状況に置かれているのか理解しているんだよな」
「大人の男性に縄で縛られて、廃墟に監禁されているわ。 この後どうなるか不安で震えてしまうわ、なんて」
小さな舌を出してふざけるアリア。
その様子から罪の意識は見て取れなかった。
「冗談を言っていられる場合か? 人形を使って人々を襲い、何人もの犠牲者を出した。 はっきり言って、到底許される行為じゃない」
「元より許してもらおうなんて思ってないわ」
「殺した理由も話せないのか? 憲兵団の追及から逃げ切る事はできないぞ」
「逃げ切る? それは違うわ。 間違っている。 本当に何も知らないのね」
脅しに近い言葉に対しても、アリアは表情を動かさなかった。
それどころかけむに巻くような言葉で、目的を隠してしまう。
ただ俺の言葉に偽りはない。憲兵団の手に渡れば苦痛による自白を強要される。
すでに何件もの殺人を犯している罪人となれば、向こうも手加減しないだろう。
「なぜそこまで言いたくないんだ?」
「疲れたの、なにもかも。 すべてがどうでもよくなっちゃった」
「ここで話せば、俺達がギルドへ口添えすることができる。 君を救えるかもしれないんだ」
「それこそ、冗談でしょう? 救えっこないわ。 誰も私を、私達を救ってなんてくれないんだから」
鼻で笑い、アリアは吐き捨てるように言った。
そこには一切の期待や希望と言ったものが無いように思えた。
廃墟に潜み、人形で街の人々を襲う。そんな彼女の行動原理はいったい何なのか。
その理由を考えてみても、常人には理解できないだろう。
だからこそ、知る必要がある。人を殺めた理由を。
そして何より、彼女の言葉を聞いたとき、唐突に理解した。
アリアの姿がなにかに似ていると思っていた。
それは、パーティを追い出された時の俺だ。
やけになって、自分は誰にも想われていない人間なのだと思い込む。
確かに彼女は絶対に許されるべきではない。
重罪人であり、そして罰を受けるべきだろう。
しかし、話を聞いてみたくもなった。
「わかった、なら考える猶予をやろう」
「ファルクス! その間に被害者が増えたらどうするつもりだ!」
吠えるビャクヤ。
確かに彼女のいう事は正しい。
しかし俺も馬鹿ではない。
「誰も自由に行動させるとは言ってないだろ。 俺達と一緒に行動してもらう。 魔力を制限する道具も着けてな。 それなら大丈夫だろ?」
「それは、そうだが……。」
「それとも人形が怖いか?」
「そ、そうではない! 断じてそうではなからな!」
「なら大丈夫だな。 ほら、アリア。 これを付けろ」
冒険者ギルドや憲兵団が使用する特殊な道具だが、今回の事件に合わせてギルドから支給されている。
それを取り出して、アリアの手首に嵌める。折れてしまいそうな華奢な腕だけに少し緩いが、それでも抜け出す可能性はなさそうだ。
腕輪を付けられたアリアはと言うと、憮然とした表情で俺を見上げている。
「どういうつもり? 私は感謝もしないし、この考えを改めることもしないわ」
「別にそんな事考えてないさ。 とりあえず、うまい飯でも食いに行こう」
追い詰められた時には、食事が心の余裕を作ってくれる。
経験者は語るという奴だろう。そんな経験は、しないに越したことはないのだろうが。
特に年端もいかない少女にとってそんな経験など、毒にしかならないのだから。
古くなった絨毯の上に横たわる少女を見て、思わずつぶやいた。
少女は魔法かなにかで偽装していたのか。
気絶してからは貴族のような姿から、以前助けた時の素朴な姿へ変わっていた。
あの冒険者たちに人形を奪われていた少女、そのままである。
先ほどまでの高圧的な雰囲気からも一転、今ではごく普通の子供に見える。
そんなまさかの事態に、俺は行動を決めかねていた。
「どうするつもりだ? この事実をギルドに報告すれば、依頼は完遂したことになるのだろうが」
「それでも、この子から話を聞かないことには始まらないだろ。 捕まえてギルドに引き渡して、それで終わりってわけにはいかない。 ギルドは憲兵団に彼女を引き渡し、憲兵団は相応の罰を与える。 こんな子供であってもな」
「だが、お主も分かっているであろう。 その子供は人形を操って、人を殺めている」
「そこがある意味で問題だ。 どんな理由があっても人殺しが正当化されるとは思わない。 だがなぜ人を殺したのか、その理由は聞くべきだと俺は思ってる」
不満げなビャクヤの気持ちも分かる。
この少女は人形を操って何人もの犠牲者を出しているのだ。
それも街の中で、なんの罪もない人々から。
普通に考えれば許される行為ではない。
だが、この街での犯罪は憲兵団が取り締まる。権力や利権に屈しない法の守り手。
どんな理由があろうとも殺人は重罪であり、いくら子供であろうとも相応の罰が下されるだろう。
良くも悪くも、公平中立だ。
俺達が手を下さなくても、彼女の未来は決まっている。
だからこそ話を聞く価値はある。彼女がなぜ手を汚したのかを。
魔力切れで倒れたのなら、魔力を補充すればいい。
魔法薬を飲ませて数分。少女は目を覚ました。
そして周囲を見渡し、俺達を見て諦めたように笑った。
「負けたのね、私達は。 それで、これからどうなるの?」
「まずは色々と話を聞かせてもらおうと思ってな。 まずは名前を聞かせてくれ。 なんて呼べばいいのか。 おっと、抵抗しようなんて考えるなよ」
ビャクヤが周囲を見張っているが、相手の能力が分かっていない以上、油断はできない。
ただ転移魔法の長所として発動が非常に速いという物がある。咄嗟の対処なら人並み以上に自信があった。
だが少女は俺の警戒とは裏腹に、素直に口を開いた。
「そんな事しないわ。 私の名前はアリアよ。 私の、とても大切な名前なの」
「ならアリア。 自分が今、どういう状況に置かれているのか理解しているんだよな」
「大人の男性に縄で縛られて、廃墟に監禁されているわ。 この後どうなるか不安で震えてしまうわ、なんて」
小さな舌を出してふざけるアリア。
その様子から罪の意識は見て取れなかった。
「冗談を言っていられる場合か? 人形を使って人々を襲い、何人もの犠牲者を出した。 はっきり言って、到底許される行為じゃない」
「元より許してもらおうなんて思ってないわ」
「殺した理由も話せないのか? 憲兵団の追及から逃げ切る事はできないぞ」
「逃げ切る? それは違うわ。 間違っている。 本当に何も知らないのね」
脅しに近い言葉に対しても、アリアは表情を動かさなかった。
それどころかけむに巻くような言葉で、目的を隠してしまう。
ただ俺の言葉に偽りはない。憲兵団の手に渡れば苦痛による自白を強要される。
すでに何件もの殺人を犯している罪人となれば、向こうも手加減しないだろう。
「なぜそこまで言いたくないんだ?」
「疲れたの、なにもかも。 すべてがどうでもよくなっちゃった」
「ここで話せば、俺達がギルドへ口添えすることができる。 君を救えるかもしれないんだ」
「それこそ、冗談でしょう? 救えっこないわ。 誰も私を、私達を救ってなんてくれないんだから」
鼻で笑い、アリアは吐き捨てるように言った。
そこには一切の期待や希望と言ったものが無いように思えた。
廃墟に潜み、人形で街の人々を襲う。そんな彼女の行動原理はいったい何なのか。
その理由を考えてみても、常人には理解できないだろう。
だからこそ、知る必要がある。人を殺めた理由を。
そして何より、彼女の言葉を聞いたとき、唐突に理解した。
アリアの姿がなにかに似ていると思っていた。
それは、パーティを追い出された時の俺だ。
やけになって、自分は誰にも想われていない人間なのだと思い込む。
確かに彼女は絶対に許されるべきではない。
重罪人であり、そして罰を受けるべきだろう。
しかし、話を聞いてみたくもなった。
「わかった、なら考える猶予をやろう」
「ファルクス! その間に被害者が増えたらどうするつもりだ!」
吠えるビャクヤ。
確かに彼女のいう事は正しい。
しかし俺も馬鹿ではない。
「誰も自由に行動させるとは言ってないだろ。 俺達と一緒に行動してもらう。 魔力を制限する道具も着けてな。 それなら大丈夫だろ?」
「それは、そうだが……。」
「それとも人形が怖いか?」
「そ、そうではない! 断じてそうではなからな!」
「なら大丈夫だな。 ほら、アリア。 これを付けろ」
冒険者ギルドや憲兵団が使用する特殊な道具だが、今回の事件に合わせてギルドから支給されている。
それを取り出して、アリアの手首に嵌める。折れてしまいそうな華奢な腕だけに少し緩いが、それでも抜け出す可能性はなさそうだ。
腕輪を付けられたアリアはと言うと、憮然とした表情で俺を見上げている。
「どういうつもり? 私は感謝もしないし、この考えを改めることもしないわ」
「別にそんな事考えてないさ。 とりあえず、うまい飯でも食いに行こう」
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