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五章 聖地の守護者
85話
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日の出。暗い夜が明けて地平線の向こう側から太陽が昇り始める。
そして、それと同時にエルグランドの街も目覚めを迎える。
街中の教会の鐘が鳴り響き、朝焼けの空に美しい音色を奏でるのだ。
敬虔な信者達は鐘の音と共に目覚め、そしてすぐに支度を整えると二度目の鐘が鳴る前に教会へと足を運ぶ。
その人混みの中、すぐ隣を歩く黒髪の少女――変装したビャクヤは自分の姿を眺めてから、首を傾げた。
「いくら我輩でも分かるぞ。 目立っていないか?」
「まぁ、この街の人間からしたらすぐによそ者だって分かるだろうな。 服装だけはそれっぽくしたが……。」
魔素の入った盃を発見した翌日、俺達はこの街で流通している衣服に袖を通してレノシア教会へ再び足を運んでいた。
目的は当然、信者たちの集会に紛れ込むこと。
いや、紛れ込むことだったと言うべきだろうか。
「どう見ても浮いてるわよ。 無駄な抵抗はやめて、集会に集中しなさい」
俺達は見事なほどに周囲に溶け込むことに失敗していた。
黒髪のビャクヤに金髪のアリアは否が応でも目を引く。
双方ともに美しい相貌も、注目を集める原因となっているのだろう。
どうしても目を引く二人を連れているお陰で、密かに集会に入り込むという作戦は失敗した。
唐突に異国の情緒溢れる二人組が集会に参加すれば目立つことになる。
この後の作戦を考えれば、ここで目立つマネはどうしても避けるべきだろ。
結局、俺達は教会の外から内部の集会の様子を窺うにとどまった。
とは言え全面の扉を開けているため教会内部を見るには不便はない。
道の向かい側で集会の様子を見ていたが、特に変わった様子もなかった。
そして二つ目の鐘の音が街中に響き渡り、祈りの時間が始まった。
街中が静まり返り、そして神への祈りを捧げる。
その瞬間だけは、神が本当に存在するのではないか。
そんなことを考えさせるだけの神聖性が、街を覆いつくしていた。
◆
祈りの時間が終わり、神官の話が終わると、集会が終わり信者たちは帰路へ付く。
三つ目の鐘の音が響く頃には、集会は拍子抜けなほどなにもなく終わりを告げた。
中の様子を窺っていた限りでは、まったくと言っていいほど違和感は感じなかった。
以前、聖女ティエレと共に訪れた聖道教会の集会とさほど変わらない。
帰路につく人々の表情も晴れやかだ。
「至って普通の集会だったな。 神官も、見た感じは普通の神職者だ」
「それに結局、あの盃は使わなかったわね」
「だがあの場所に魔素があった事は確実。 確かめない訳にもいくまい。 アリア、人形はどうなっている?」
「準備万端よ。 逃げられそうな通路や窓は全て守らせてるわ」
「なら行くとするか」
集会が終わり、人気がなくなった教会へと足を踏み入れる。
先ほどまで灯されていたロウソクからは煙が立ち上り、室内には未だ信者たちの熱気が籠っているように感じた。
周囲を見渡せば奥の部屋へ入っていく神官の後姿が目に入る。
怪しまれない程度の速度でそれに続いていけば、神官は例の地下室へと入っていった。
視線を合わせてビャクヤとアリアに目くばせをすると、時間を空けて地下室の扉を叩く。
「すまない。 ここの教会の関係者に話を伺いたいんだが」
「誰だ?」
「流れの冒険者だ。 エルグランドの教義を聞いて興味を持ってな。 できれば詳しく話を聞きたいんだ」
即興にしては相当に筋の通った理由、のはずだ
いや、露骨過ぎたか。
少しばかり不安になって視線を背後に向ける。
「さすがに白々しいか?」
「いえ、感心したわ。 そんなすらすらと嘘が出てくるなんて、詐欺師の才能があるわね」
褒めているのか貶しているのか。恐らくは両方だろう。
再び視線を扉へ向けるが、開く気配は全く持ってしない。
それどころか先ほどの神官の声すら返ってこない。
もう一度だけ扉をノックしようとして、それをビャクヤが制止した。
「待つのだ。 中で物音がする」
そう言ってビャクヤは扉に耳を押し当てる。
角が扉にあたって相当な音を立てているが、そこは目を瞑ろう。
数秒の後、ビャクヤは背中に背負っていた薙刀を片手に、扉に足を押し当てた。
「それも、複数人の足音だ! 武装しているぞ!」
「ビャクヤ、扉を破れ!」
その瞬間、ビャクヤの一撃で木と鉄で出来た扉が弾け飛んだ。
凄まじい勢いで扉が吹き飛び、続けざまにビャクヤも中へ飛び込む。
「全員、動くな! 我輩の薙刀は手加減を知らぬぞ!」
昨日見た限り、地下室は余り広い空間ではない。
相手を制圧するのであれば、ビャクヤが入るのが最も適している。
俺も部屋の入口で剣を抜いて室内を見渡す。
するとそこには――
「どうも神職者の集会って訳じゃなさそうだな」
重武装をした兵士達が、武器を抜き放って待ち構えていた。
明らかに神に使える者という風貌ではない。
神官の男はと言えば、俺達が来ることを知っていたかのように、兵士達に守られていた。
「情報にあった、俺達を嗅ぎまわってる冒険者だ。 三人とも殺せ」
神官の言葉と同時に、兵士達が一斉に動き出す。
しかし部屋に飛び込んだビャクヤはそれを望んでいたかのように、あえて兵士の中へ突っ込む。
もはや相手は袋のネズミだ。手加減をしないと決めたのか、ビャクヤは魔道具を解除して、本来の姿を表す。
「ほう、我輩を殺すか? 面白い! やって見せるといい!」
そして、それと同時にエルグランドの街も目覚めを迎える。
街中の教会の鐘が鳴り響き、朝焼けの空に美しい音色を奏でるのだ。
敬虔な信者達は鐘の音と共に目覚め、そしてすぐに支度を整えると二度目の鐘が鳴る前に教会へと足を運ぶ。
その人混みの中、すぐ隣を歩く黒髪の少女――変装したビャクヤは自分の姿を眺めてから、首を傾げた。
「いくら我輩でも分かるぞ。 目立っていないか?」
「まぁ、この街の人間からしたらすぐによそ者だって分かるだろうな。 服装だけはそれっぽくしたが……。」
魔素の入った盃を発見した翌日、俺達はこの街で流通している衣服に袖を通してレノシア教会へ再び足を運んでいた。
目的は当然、信者たちの集会に紛れ込むこと。
いや、紛れ込むことだったと言うべきだろうか。
「どう見ても浮いてるわよ。 無駄な抵抗はやめて、集会に集中しなさい」
俺達は見事なほどに周囲に溶け込むことに失敗していた。
黒髪のビャクヤに金髪のアリアは否が応でも目を引く。
双方ともに美しい相貌も、注目を集める原因となっているのだろう。
どうしても目を引く二人を連れているお陰で、密かに集会に入り込むという作戦は失敗した。
唐突に異国の情緒溢れる二人組が集会に参加すれば目立つことになる。
この後の作戦を考えれば、ここで目立つマネはどうしても避けるべきだろ。
結局、俺達は教会の外から内部の集会の様子を窺うにとどまった。
とは言え全面の扉を開けているため教会内部を見るには不便はない。
道の向かい側で集会の様子を見ていたが、特に変わった様子もなかった。
そして二つ目の鐘の音が街中に響き渡り、祈りの時間が始まった。
街中が静まり返り、そして神への祈りを捧げる。
その瞬間だけは、神が本当に存在するのではないか。
そんなことを考えさせるだけの神聖性が、街を覆いつくしていた。
◆
祈りの時間が終わり、神官の話が終わると、集会が終わり信者たちは帰路へ付く。
三つ目の鐘の音が響く頃には、集会は拍子抜けなほどなにもなく終わりを告げた。
中の様子を窺っていた限りでは、まったくと言っていいほど違和感は感じなかった。
以前、聖女ティエレと共に訪れた聖道教会の集会とさほど変わらない。
帰路につく人々の表情も晴れやかだ。
「至って普通の集会だったな。 神官も、見た感じは普通の神職者だ」
「それに結局、あの盃は使わなかったわね」
「だがあの場所に魔素があった事は確実。 確かめない訳にもいくまい。 アリア、人形はどうなっている?」
「準備万端よ。 逃げられそうな通路や窓は全て守らせてるわ」
「なら行くとするか」
集会が終わり、人気がなくなった教会へと足を踏み入れる。
先ほどまで灯されていたロウソクからは煙が立ち上り、室内には未だ信者たちの熱気が籠っているように感じた。
周囲を見渡せば奥の部屋へ入っていく神官の後姿が目に入る。
怪しまれない程度の速度でそれに続いていけば、神官は例の地下室へと入っていった。
視線を合わせてビャクヤとアリアに目くばせをすると、時間を空けて地下室の扉を叩く。
「すまない。 ここの教会の関係者に話を伺いたいんだが」
「誰だ?」
「流れの冒険者だ。 エルグランドの教義を聞いて興味を持ってな。 できれば詳しく話を聞きたいんだ」
即興にしては相当に筋の通った理由、のはずだ
いや、露骨過ぎたか。
少しばかり不安になって視線を背後に向ける。
「さすがに白々しいか?」
「いえ、感心したわ。 そんなすらすらと嘘が出てくるなんて、詐欺師の才能があるわね」
褒めているのか貶しているのか。恐らくは両方だろう。
再び視線を扉へ向けるが、開く気配は全く持ってしない。
それどころか先ほどの神官の声すら返ってこない。
もう一度だけ扉をノックしようとして、それをビャクヤが制止した。
「待つのだ。 中で物音がする」
そう言ってビャクヤは扉に耳を押し当てる。
角が扉にあたって相当な音を立てているが、そこは目を瞑ろう。
数秒の後、ビャクヤは背中に背負っていた薙刀を片手に、扉に足を押し当てた。
「それも、複数人の足音だ! 武装しているぞ!」
「ビャクヤ、扉を破れ!」
その瞬間、ビャクヤの一撃で木と鉄で出来た扉が弾け飛んだ。
凄まじい勢いで扉が吹き飛び、続けざまにビャクヤも中へ飛び込む。
「全員、動くな! 我輩の薙刀は手加減を知らぬぞ!」
昨日見た限り、地下室は余り広い空間ではない。
相手を制圧するのであれば、ビャクヤが入るのが最も適している。
俺も部屋の入口で剣を抜いて室内を見渡す。
するとそこには――
「どうも神職者の集会って訳じゃなさそうだな」
重武装をした兵士達が、武器を抜き放って待ち構えていた。
明らかに神に使える者という風貌ではない。
神官の男はと言えば、俺達が来ることを知っていたかのように、兵士達に守られていた。
「情報にあった、俺達を嗅ぎまわってる冒険者だ。 三人とも殺せ」
神官の言葉と同時に、兵士達が一斉に動き出す。
しかし部屋に飛び込んだビャクヤはそれを望んでいたかのように、あえて兵士の中へ突っ込む。
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