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一章・二人が出会いまして
『マジックバッグ』
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「おおお…、これがマジックバッグか」
セドナ達が持ってたのよりも形が違う。
ベルトに固定して、前方に付けるのか。
しかも足の方にもベルトがあるから揺れないと言う、スリ防止仕様。
「見たところ、あんたソードマンじゃなさそうだったからね」
「見て分かるもんなんですか?」
「ソードマンは、普段から剣を体の片側に付けているから、重心が微妙にずれるもんなんだよ」
「言われてみれば確かに…」
思い返してみれば、セドナを始め、ソードマンは筋肉の偏りがあった。
そうか、あれは下げてる剣の重さと釣り合いを取る為なのか。
「あんたはがっちりしてるから、シールダーだろうと。どうだ?シールダーで正解だったろ?」
魔術師の視線が俺の盾に注がれてる。
「お見それしました」
やっぱり魔術師一筋系は観察眼が鋭いな。
ターリャが俺のマジックバッグの隣にあった小さいバッグを指差した。
「これはターリャの?」
「そうだよ。お揃いのデザインだけど、君のはワンピースだから肩掛けにしたんだ。勿論腰にベルトで固定してやればスリ防止にもなる」
「かわいい。お花ついてる」
「お?そこに気が付くとは、良いね!高評価!」
「つけてみても良い?」
「どうぞどうぞ」
魔術師がいそいそとターリャにマジックバッグを付けてやった。
なんだこの人、子供好きなんかな。
ものすごい笑顔だった。
「わぁ!見てよトキ!亀のキーホルダーまである!」
「ほぉー、可愛いな。……この亀尻尾長くない?」
亀の癖に尻尾が蛇みたいだった。
しかも自分のからだに巻き付いている。
「いいの!それで!それで正しいんだから、無知は黙ってなさい!」
指を思い切り指された。
こんな妖魔がいるのかな。
俺は見たこと無いけど。
「容量はお墨付きだけど、ちゃんと入れないと詰まるから注意。あと、これはあまりで作ったヤツ。サービスしとく」
「なんですか?これ」
魔術師に渡されたのは、宝石を小さく加工したのをチェーンに嵌め込んだもの。
「これは、これを巻いた武器の大きさを小さくすることができる、という優れものだ。そんなデカイの持ち歩くのはめんどくさいだろ?」
確かに、重さは気にはならないけど、ちょっと邪魔だなとは思ってた。
「では、試しに」
チェーンを巻いてみると、盾がキーホルダーのように小さくコンパクトになった。
しかも手首に下げられる形状に変化もした。
凄いな、魔法って万能すぎる。
「おおっ!これは凄い便利…。本当にお代は要らないんですか?」
「いいよ。私は事前に珍しいものが見られたしね」
「?」
そんな珍しいもの見せた覚えはないけど。
本人が言うなら、ありがたく貰っておこう。
最後にお礼を言って店を出た。
ターリャの「ありがとう」に魔術師はデレデレだった。
うん。やっぱりあの人子供好きなんだな。
「さて、次はグンジさん所だな」
「うん。早く行こう!」
スキップをするターリャが迷子にならないようにフードの先に指を引っ掻けている。
俺も子供の時に親にこれをやられていたが、身長差があるとこれが一番楽だと分かった。
しかもターリャも気にならないみたいだし。
そうこうしているうちに素材屋に来た。
「こんにちは」
グンジさんがこちらを見て、かすかに笑う。
「はいはい、よく来たな。で?どうだった?」
「換金ついでに申請できました」
「ターリャも貰った!」
タグを見せた。
ターリャに至ってはカウンターに駆け寄ってタグを見せた。
「おお、良かったじゃないか」
「うん!」
グンジもデレデレだ。
やっぱりターリャは人を癒すスキル持ってそうだな。
「おお、そうだ。やっと金が集まったんだ。今カバンの容量はどうだ?」
マジックバッグを撫でる。
「バッチリです」
牙とお金を交換した。
凄いな。
あんなに貧困であえいでいたのに、ここ数日で大金持ちだ。
「ところで、その牙って何に使うんですか?」
「ん?まー、色々?」
悪い顔だ。
ターリャもいるし、聞かないでおこう。
「そうだグンジさん。地図とか売ってません?」
「地図?ギルドで売ってんじゃねーか」
「周辺地図ではなく、世界規模の」
「おバカなの?」
グンジさん、バカって言い方ちょっと可愛いのなんなの?
顔いかつい癖に。
「なんでそんな使いどころがほとんど無いものを…」
「これからちょっと神域って所に行かないといけないので」
「ん?お前らこの街出るのか??」
「ええ。重要なものは揃いましたし、資金も出来ましたから」
そう言うと、グンジはシュンとした。
え、落ち込んでる?
「そうか…寂しくなるな…」
「……、…用が終わったら遊びに来ますよ」
表情が明るくなった。
「そうか!お土産よろしくな!」
「ターリャが美味しいもの買ってくるね!」
「楽しみだなぁ!」
(お土産は焼き菓子にしよう。スッチェル(※フランスパン並に硬い長期間保存のきくクッキー)的なやつ)
「そういうことなら俺のやろう。実はちょっと昔まで地図集めに嵌まっていて世界地図も持っている。戦前のものだから手直しがいるが、どうだ?」
「さすがですグンジさん。ください!」
「よし!ちょっと待っとけ!」
上機嫌で裏へ下がり、地図をもって戻ってきた。
その地図をカウンターに広げる。
「こんな感じだが、良い地図だろ?」
「これは予想以上です」
「ターリャ見えない!」
「はいはい」
ターリャを抱き上げる。
「トキ凄いね、たくさん国があるねぇ」
「今いるのがここだ。この端っこ」
「そうなんだ」
精巧な地図だ。
こんなに細かく記載されている地図は高かったんじゃないか?
実はここでは地図もお高い。
それこそ書き込みがされるほど値段が上がる。
「本当にこれ貰っても良いんですか?」
「ああ。もうこの趣味は満足したからな。っと、手直ししないと」
先の戦争で通行できなくなったところ、無くなった所、地形が変わったところをペンで修正された。
地形が変わったところをなぞる。
元々は、確かにこんなだったな。
小高い丘で、麓は森があった。
今は見事に穴だらけだけど。
「こんなもんか。ほれ」
地図を受けとる。
「大事に使えよ」
「はい。ありがとうございます」
翌朝、街を出た。
あんなにたくさんあった荷物はすべてマジックバッグに収まってしまった。
魔法万歳である。
「また二人旅だね、トキ」
「そうだな」
手を繋いで、南へ向かう道へと歩みだした。
セドナ達が持ってたのよりも形が違う。
ベルトに固定して、前方に付けるのか。
しかも足の方にもベルトがあるから揺れないと言う、スリ防止仕様。
「見たところ、あんたソードマンじゃなさそうだったからね」
「見て分かるもんなんですか?」
「ソードマンは、普段から剣を体の片側に付けているから、重心が微妙にずれるもんなんだよ」
「言われてみれば確かに…」
思い返してみれば、セドナを始め、ソードマンは筋肉の偏りがあった。
そうか、あれは下げてる剣の重さと釣り合いを取る為なのか。
「あんたはがっちりしてるから、シールダーだろうと。どうだ?シールダーで正解だったろ?」
魔術師の視線が俺の盾に注がれてる。
「お見それしました」
やっぱり魔術師一筋系は観察眼が鋭いな。
ターリャが俺のマジックバッグの隣にあった小さいバッグを指差した。
「これはターリャの?」
「そうだよ。お揃いのデザインだけど、君のはワンピースだから肩掛けにしたんだ。勿論腰にベルトで固定してやればスリ防止にもなる」
「かわいい。お花ついてる」
「お?そこに気が付くとは、良いね!高評価!」
「つけてみても良い?」
「どうぞどうぞ」
魔術師がいそいそとターリャにマジックバッグを付けてやった。
なんだこの人、子供好きなんかな。
ものすごい笑顔だった。
「わぁ!見てよトキ!亀のキーホルダーまである!」
「ほぉー、可愛いな。……この亀尻尾長くない?」
亀の癖に尻尾が蛇みたいだった。
しかも自分のからだに巻き付いている。
「いいの!それで!それで正しいんだから、無知は黙ってなさい!」
指を思い切り指された。
こんな妖魔がいるのかな。
俺は見たこと無いけど。
「容量はお墨付きだけど、ちゃんと入れないと詰まるから注意。あと、これはあまりで作ったヤツ。サービスしとく」
「なんですか?これ」
魔術師に渡されたのは、宝石を小さく加工したのをチェーンに嵌め込んだもの。
「これは、これを巻いた武器の大きさを小さくすることができる、という優れものだ。そんなデカイの持ち歩くのはめんどくさいだろ?」
確かに、重さは気にはならないけど、ちょっと邪魔だなとは思ってた。
「では、試しに」
チェーンを巻いてみると、盾がキーホルダーのように小さくコンパクトになった。
しかも手首に下げられる形状に変化もした。
凄いな、魔法って万能すぎる。
「おおっ!これは凄い便利…。本当にお代は要らないんですか?」
「いいよ。私は事前に珍しいものが見られたしね」
「?」
そんな珍しいもの見せた覚えはないけど。
本人が言うなら、ありがたく貰っておこう。
最後にお礼を言って店を出た。
ターリャの「ありがとう」に魔術師はデレデレだった。
うん。やっぱりあの人子供好きなんだな。
「さて、次はグンジさん所だな」
「うん。早く行こう!」
スキップをするターリャが迷子にならないようにフードの先に指を引っ掻けている。
俺も子供の時に親にこれをやられていたが、身長差があるとこれが一番楽だと分かった。
しかもターリャも気にならないみたいだし。
そうこうしているうちに素材屋に来た。
「こんにちは」
グンジさんがこちらを見て、かすかに笑う。
「はいはい、よく来たな。で?どうだった?」
「換金ついでに申請できました」
「ターリャも貰った!」
タグを見せた。
ターリャに至ってはカウンターに駆け寄ってタグを見せた。
「おお、良かったじゃないか」
「うん!」
グンジもデレデレだ。
やっぱりターリャは人を癒すスキル持ってそうだな。
「おお、そうだ。やっと金が集まったんだ。今カバンの容量はどうだ?」
マジックバッグを撫でる。
「バッチリです」
牙とお金を交換した。
凄いな。
あんなに貧困であえいでいたのに、ここ数日で大金持ちだ。
「ところで、その牙って何に使うんですか?」
「ん?まー、色々?」
悪い顔だ。
ターリャもいるし、聞かないでおこう。
「そうだグンジさん。地図とか売ってません?」
「地図?ギルドで売ってんじゃねーか」
「周辺地図ではなく、世界規模の」
「おバカなの?」
グンジさん、バカって言い方ちょっと可愛いのなんなの?
顔いかつい癖に。
「なんでそんな使いどころがほとんど無いものを…」
「これからちょっと神域って所に行かないといけないので」
「ん?お前らこの街出るのか??」
「ええ。重要なものは揃いましたし、資金も出来ましたから」
そう言うと、グンジはシュンとした。
え、落ち込んでる?
「そうか…寂しくなるな…」
「……、…用が終わったら遊びに来ますよ」
表情が明るくなった。
「そうか!お土産よろしくな!」
「ターリャが美味しいもの買ってくるね!」
「楽しみだなぁ!」
(お土産は焼き菓子にしよう。スッチェル(※フランスパン並に硬い長期間保存のきくクッキー)的なやつ)
「そういうことなら俺のやろう。実はちょっと昔まで地図集めに嵌まっていて世界地図も持っている。戦前のものだから手直しがいるが、どうだ?」
「さすがですグンジさん。ください!」
「よし!ちょっと待っとけ!」
上機嫌で裏へ下がり、地図をもって戻ってきた。
その地図をカウンターに広げる。
「こんな感じだが、良い地図だろ?」
「これは予想以上です」
「ターリャ見えない!」
「はいはい」
ターリャを抱き上げる。
「トキ凄いね、たくさん国があるねぇ」
「今いるのがここだ。この端っこ」
「そうなんだ」
精巧な地図だ。
こんなに細かく記載されている地図は高かったんじゃないか?
実はここでは地図もお高い。
それこそ書き込みがされるほど値段が上がる。
「本当にこれ貰っても良いんですか?」
「ああ。もうこの趣味は満足したからな。っと、手直ししないと」
先の戦争で通行できなくなったところ、無くなった所、地形が変わったところをペンで修正された。
地形が変わったところをなぞる。
元々は、確かにこんなだったな。
小高い丘で、麓は森があった。
今は見事に穴だらけだけど。
「こんなもんか。ほれ」
地図を受けとる。
「大事に使えよ」
「はい。ありがとうございます」
翌朝、街を出た。
あんなにたくさんあった荷物はすべてマジックバッグに収まってしまった。
魔法万歳である。
「また二人旅だね、トキ」
「そうだな」
手を繋いで、南へ向かう道へと歩みだした。
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