異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。

古嶺こいし

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四章・四精獣を知りまして

『見た感じ、外国でのとんでも間違い漢字である』

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「首都に戻ってきてしまった…」

 いっそこのままUターンして村に戻りたい気分。

「トキダメだよ」
「はい」

 諦めるか。

 とりあえずあの占い師から貰った魔法具を身に付けているけれど、本当に効果があるんだろうな?
 チラリと横を見ると、つい先日俺達を追い掛け回していた連中がいたが無視された。
 これは、魔法の効果か?
 それとも心底やつれていたように見えたから普通にこっちに気付いてないのか?
 判断ができない。

 でも本当に効果があるってわかったのは、門を入ってすぐだった。

 身分証のタグを見せたときに門番にバレたけど、俺達がそそくさと通過したら視線が消えた。
 まるで何事もなかったように仕事をしている。

「トキ、ターリャあの人少し見直した」
「ああ、俺もだよ」

 お帰り俺の安寧ライフ。

 ルシーを預けて、宿屋へ向かう。
 この間のとは違う宿屋だ。
 そちらでも効果抜群で一瞬反応があるけど、数秒したら同姓同名の別人扱いになった。
 俺もうこれ手放せないや。

「これからギルド行くの?」
「そうだ。リープッタさんが教えてくれた紋様入力ってのをしに行く」

 マジックバッグの中の大金が怖い。
 というか、最近報酬そのまま放り込んでいるせいで所持金がいくらなのかわからない。
 50万はいっててほしいところ。

「ターリャはどうする?留守番するか?一緒に来るか?」
「もちろん行く」

 よいしょとベッドから飛び降りて、すぐに出かける用意を済ます。
 フットワークが軽いこと軽いこと。

「よし行くか」

 ギルドへと向かう。
 チラチラと視線を感じるものの、それは俺じゃなくて俺の着ている竜種装備に向けられていた。
 しまった。
 そういえばこれも十分に目立つんだった。
 とはいえ引き戻すのも億劫だ。
 幸いにもこれにも魔法具の効果が効いているようで、視線を感じても突撃されない。
 ならなにも問題はない。

 ただしそれはギルドでは例外である。

「おおお!戻ってきて頂けたんですか!!!」
「……まぁ、はい」

 声のボリュームを小さくお願いしたい。

「いやぁ大変だったんですよ??途中姿が見えなくなってしまったものだから、記者や冒険者がギルドに詰め掛けて──」

 要約すると、俺を出せとギルドにアホみたいな数のひとが押し寄せてスタッフが死にかけていたらしい。
 離れていてよかった。
 というか、みんなおかしくないか?
 俺盾しか能ないぞ。

「──で、最近ようやく落ち着いてきたところなんですよ」
「はぁ、そりゃ大変でしたね」
「まったくでした。とと、つい愚痴ってしまいましたね、申し訳ありません。ところで本日はどのような用事で?」

 ようやく俺の話のターンが巡ってきた。

「この辺りのドラゴンの情報を知りたいのですが」
「えーと、それはソロで討伐可能なとドラゴンでよろしいですか?」
「それでいいです」
「少々お待ちください」

 ごそごそと机の下で書類を漁っている音が聞こえる。
 しばらく待っていると十枚ほどの紙を机の上に並べた。

「今のところはこれくらいです。近場になるとこの三枚ですね」

 三枚を俺の前にスライドさせる。

 内二枚は土竜(ミミズとヤツメウナギを合体させたみたいな気持ち悪いやつ)。
 一枚だけ四足竜だった。
 種俗名がガラゴウド。
 ヤギに似た特徴を多く持つ竜種だけど、全然大人しくなく、そこらの草木、果ては岩も食べるというとんでもない悪食竜だ。

「これを受注します」
「承りました」

 一連の手続きを経て依頼受理が終わる。

 依頼受理の証をタグと同じように下げる。
 よし、次だ。

「あと、紋様入力をしたいのですが」
「結構値段が張りますが大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
「…かしこまりました。ではこちらへどうぞ」

 受付を他の職員へと替わってもらい、個室に案内された。

「お嬢様はこちらでお待ちください」
「一緒にはダメなのですか?」
「ええ、魔力反応が増えると装置が誤作動をしてしまいます」

 そういうものなのか。

「仕方がない。ターリャお留守番よろしく」
「トキ痛くても泣いたらダメだよ」
「どういう心配…?」

 最近ターリャのなかの俺のイメージがよくわからん。

 個室前の椅子にターリャが腰かけるのを見てから個室に入った。
 中はこぢんまりとした部屋で、机と椅子が二脚、そして机の上にスタンドライト付きのパソコンみたいなのが置かれていた。

「タグを失礼します」

 タグを預けると、パソコンみたいな物体の凹みのところに設置された。

「こちらに座って、お好きな方の腕をこの装置の下に置いてください」

 とりあえず邪魔にならなさそうな右腕にすることにした。(左は盾を着けている)
 上腕まで覆う手甲を外して、装置の下に設置する。
 よく見れば、腕を置いた所には真っ黒な下敷きみたいなのがあった。

「ちょっと痛いですが我慢してくださいね」

 職員が言うや装置を起動。
 ウォンと不思議な音と共にスタンドライトみたいなものから光が放たれて、下敷きから黒色が立ち上がって腕に巻き付いた。

「!!??」
「動かさないでくださいねー」

 黒色がゆっくり動いて腕を覆うと、突然静電気が走ったみたいな痛みが来て、黒色が溶けて下敷きに戻った。
 腕に文字みたいな模様が浮かび上がっていた。

 々と北と甲の下が長くて“电”みたいになった感じ。

 てっきりお洒落な模様が出ると思ったのに残念だ。

「あとは財行(銀行)受付で通常通りの手続きで終わりです」
「ありがとうございました」

 紋様入力の必要書類を受け取って個室を出た。

「どうだった?」
「ちょっと痛かった」
「あとで模様見せて!」
「わかったわかった」

 とりあえず先に口座を作らないと。

 そのあとはサクサクと口座を作って、書類を提出。
 名前を書いているときに俺だとバレたけど、愛想笑いで誤魔化しつつ現在持っているお金の七割を預けた。

 あとは猫ババされてないよう祈るだけだ。

「さて、ドラゴン狩りに行きますか」

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