異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。

古嶺こいし

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四章・四精獣を知りまして

『VS職員』

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 さっきからターリャの歩みが遅くなるなと思ったら、あのポスターのせいだったのか。
 でも俺達には関係ないがな。

 俺が受付に行くと職員がビックリしていた。

「え!?もう狩られたんですか!!?」
「? ええ、はい。これが証です」

 何をそんなに驚いているのか知らないが、バッグから証の魔石と牙を取り出して置く。
 それをスタッフが確認して依頼内容と照らし合わせた。

「はい、確認いたしました。えと、こちらが報酬になります」

 魔石と牙とトレードでお金が手に入った。
 これをそのまま財行へ移行しよう。

 お金をすっかり預けた。
 残金確認して変化無し。
 俺のギルド信用度が少し上がった。

 帰り際、掲示板を見てみた。

 やっぱりこの時間だとめぼしい依頼も張り出されてないので、また明日辺り顔を出すか。
 そうだ。
 今日は久しぶりにチーズが食べたいな。

「そういえばトキって人間相手でも強いの?」

 唐突にターリャからそんな質問。

「どうした急に」
「ターリャが攫われたときにたくさんの悪人をボコボコにしたって聞いた」
「あー……」

 そんなこともあったなぁ。
 強さねぇ。
 まぁ確かに戦時中に白兵戦ばっかだったから喧嘩は得意ではあるけど、俺くらいのはそこそこいる。
 なので、

「……そこそこ」
 と、答えておいた。

「そこそこって、どのくらい強いの??」
「なんでそんなに強さの確認を──」

 ターリャが壁一面に貼られたポスターをガン見していた。

「……参加はしないぞ」
「ぷー」

 目立つ行為はしない。

 ていうか、そんなに大会見たいのか。
 チケット買って観戦でもするか?
 そもそも女の子が見て良い大会じゃないぞ。

「!」

 なにやら視線を感じてその方行を見ると、よく俺の受付をしてくれる職員と別の職員がなにやら早足でこちらへやってきていた。

 うっすらと嫌な予感。

「よし!ターリャ帰ってチーズ専門店へ──おお!!?」

 さっさと逃げようとしたらいつの間にか包囲されていた。
 嘘!?いつの間に!!?
 もう魔法具の効能無くなったのか!!?

 予想外の事態に固まっていると、顔見知りの職員が大変困った顔でこんなことを言ってきた。

「お願いします!助けてください!」
「………………は?」

 いきなり何??

 困惑していたら、聞いてもないのに助けてほしい内容を勝手に話し始めた。
 どうやらこの腕試し大会はギルドも絡んでいるイベントで、毎回何かしらサプライズをするのだが、今回ギルドからサプライズ参加の有名人が直前の事故で怪我をしてしまって来れなくなったらしいので、代わりに出てほしいとの事。

「嫌」
「そこをなんとか!!」
「目立つことしたくない!」
「わかりました!変装オーケーです!!偽名もオーケーです!!」
「全然わかってない!」
「トキの活躍見てみたい」
「賞品の一つにティアラがありますよ!!!」
「ティアラ???」

 言葉の応酬の果て、女の子にとって魅力的な言葉が飛び出してしまった。
 てか、なんで腕試し大会でティアラ??
 彼女にプレゼント的なやつか??

「ティアラ…」

 もちろんその言葉にターリャが反応しない訳もなく。
 横目でチラ見したらターリャが目をキラキラさせていた。

「…………ティアラ欲しいの?」
「欲しい…、被ってみたい…」
「………………」

 ティアラ被ったターリャか。
 …………このくらいの女の子は好きそうだもんな、そういうの。
 …………………珍しくターリャが女の子らしい反応しているもんなぁぁぁ……。

「…………」

 さんざん悩んだ。

「…………一回だけだぞ」

 仕方なく承諾したら、ターリャが大喜び。
 喜びすぎて跳び跳ねている。
 つくづく俺はターリャに甘い気がする。

「ありがとうございま──「ただし!!!条件付きだ!!!」──はいなんでしょう!!!」

 顔見知り職員に一通り要望を伝えたら、大丈夫です!!とすぐに返ってきた。

「では書類に纏めますので、出来上がるまでこちらへどうぞ!!」






 応接間に通された。

 机には甘いお茶(ビックリするほど凄い甘い。おそらく砂糖が死ぬ程入ってる)と甘いお菓子が用意された。

「ターリャ、俺の分も飲んでいいぞ」
「いいの?美味しいよ?」
「俺はそのお茶少し苦手だ」
「やったぁ、ありがとー!」

 日本でのお茶概念が邪魔して体が嫌がる。

 チビチビお菓子食べていると、書類がやって来た。

「できましたよ!ご確認ください!」

 渡された書類を確認する。
 ドラゴン装備一式(兜付き)をレンタル(無料、壊れても文句無し)
 盾は幻覚魔法で形を変化できるように魔法具を支給。

 どうせ有名人代わりだからとわがまま言ったら全部叶えてくれた。
 ……あえて無茶振りして「やっぱ無しで」と言われるようにしたのに、まさかオールオーケーするとは思わなかった。
 ギルドの本気が伺えた。

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 周囲から職員達のありがとう合唱。
 なんだろう、この逃げ場を無くされた感じ。
 罠だった??

「それではすぐに鎧の見本を持ってきますね」
「はい。……あの」
「なんですか?」

 さっきから気になる事を訊ねてみることにした。

「ところで、俺は今魔法具で気配を希薄にしているはずなのですが……、なにか着けてます?」

 反発する魔法具的な何かを。

 意図を察した職員が、服に着けているタグを裏返す。
 そこには魔法陣が。

「精神介入系の魔法を解析して中和するものを身に付けてます」
「あ、そうなんですね」

 侮っていた。
 すげーなギルド職員。







 そうしてなんやかんやと準備が整ってしまい、大会当日になってしまった。


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