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軍事編
第8話 演習
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宰相が王都へと帰った3日後、ハーンブルク家が所有する軍およそ8千の内のシュヴェリーン駐留部隊およそ2千とSHSによる合同軍事演習を行う事となった。シュヴェリーンの川を挟んだ北側にある通行禁止区域に指定されている軍事演習場の中で新兵器のお披露目を行う事となった。
「放てっ!」
SHSの将校の掛け声とともに、一斉に銃を発砲した。
いつか襲いかかるであろう外敵に対して、優位に立ち回れるように開発された1つ目の兵器は、銃である。
この世界にも、もちろん銃は存在する。火薬を用いて遠距離を攻撃できる銃は、戦争において重要な役割を担っているが、火薬の消費スピードが高い点や命中率が低い点、作るのに技術が必要で大量生産ができない点からあまり注目されていなかった。
使っていても、一部の精鋭部隊のみでサーマルディア王国軍でも全体の30万の兵力の内、鉄砲隊はわずか1000名である。
それに対して、ハーンブルク家では5000丁の銃を用意していた。
『アイ』によって、現在の技術力で量産可能な最高レベルの銃が作られた。ボルトアクション式の単発銃ではあるが、この世界の水準を考えると2世代ぐらい先を進んでいる兵器だ。弾丸の方も、少しずつ量産体制に入っていっている。
この銃の製造法については、蒸気機関と同様に最高レベルの機密情報に指定されており、製造法を全て知っているのは俺とお母様のみだ。
これをSHSに1000丁、軍部に4000丁渡し、それぞれ訓練を行う事となったのだ。銃の存在は知っていたものの、最新式の銃がこれ程までに発展していた事に、軍部の兵達の多くが驚いていた。
ちなみにここでいう軍部というのはハーンブルク家当主代理であるお母様直属の部隊の事を指し、国防軍はまだ到着していない。
50mほど離れた目標を、次々と穴だらけにしていくその銃の命中率はとてつもないものであった。
「最新式の銃の調子はどうですか?」
「はっ!正直、文句の付けようがございません。命中率、次弾装填までの速さ共に最高レベルであります!」
「実戦で使えそうですか?」
「はい!中遠距離であれば、この銃に敵う者はいないでしょう。これは、これまでの戦術を大きく変えるほどの兵器であります!」
「けっこうです、ではそれぞれ練習をして、命中率精度を高めて下さい。」
SHSの方は、開発にも携わっているので、何度か試し撃ちをしていたが、軍部の方は新型の銃が開発されたらしいという噂程度で、この銃を使った訓練は初めてであった。
そして、訓練に参加した全ての兵士がこの最新式の銃の凄さを肌で感じ取った。
俺とお母様は、少し離れた所から訓練の様子を視察していた。
予想していたよりも、銃の扱い方を学ぶスピードが速いな。
【ライフリングや照準がしっかりと付いているので命中率が高く、ボルトアクション式を採用しているので弾丸の装填が従来よりもずっと楽なはずです。】
よく量産体制できたよね、本当に尊敬するわ。
【ありがとうございます。】
『アイ』は何でもないようにそう応えたが、珍しく照れている感じがした。
そんな雑談をしていると、お母様が俺に話しかけてきた。
「よくやりました、レオルド。流石私の自慢の息子です。」
「ありがとうございます。」
お母様は、とても満足そうな顔をしていた。お母様の周りにいる軍部の将校達も、最新式の銃に満足している様子であった。
「ところで、戦術ドクトリンの共有などはもうしたのですか?」
戦術ドクトリンというのは、戦術のようなもので、例えば4人1小隊制を導入したり、中隊、大隊ごとに役割を与えたりする事もその内の1つだ。
この最新の戦術ドクトリンは、これまでの戦術を大きく変えるもので、今回演習の際に軍部に伝授しようと思っていたものだ。
「いえ、まだです。今回の演習で銃の有効性を知ってもらった後に伝授しようと考えております。」
「そうですか。文字通り、戦争の戦い方がガラッと変わるのですね。」
「はい、今回の戦争では、兵士と兵士が正面から殴り合うような機会が大きく減ると考えております。既に、SHSでは剣や槍を活用する機会を大幅に減少させております。」
「剣や槍を使わない戦争ですか・・・・・・」
俺とお母様の会話を聞いていた多くの軍人は、俺の発言に驚いた顔をしていた。
これまでの戦争といったら、互いに陣形組んで正面から殴り合うものばかりだ。それが一変するという話に驚きが隠せない。
すると、それまで黙っていた将校の1人が口を開いた。
「恐れながらレオルド様、本当に剣や槍を使う機会は減るのでしょうか。私にはどうも、そのような未来が見えないのですが・・・・・・」
「剣や槍を持った兵士では、銃を持った部隊に近づく事がほぼ不可能になります。例えば銃を持った兵士100名と槍を持った兵士100名の兵士が対戦する場合、弾薬が尽きないかぎり、槍を持った兵士が勝つ可能性はほぼ0です。槍を使った兵士が攻撃可能な距離に接近するよりも断然早く、撃たれます。これは、たとえ1万人の兵士がいたとしても同じです。」
「なるほど、たしかにわざわざ接近して剣を振るうよりも、遠くから銃を撃った方が断然強いですね。」
「では、軍部側の将校も集まってきた事だし、講義を始めよう。」
「「「よろしくお願いします」」」
そして俺は、軍部の将校達に2時間に渡る講義を行った。銃を使った本格的な戦争の仕方から、行軍の仕方や野営の仕方など色々な事を伝授した。
敵が戦争の準備をしているというのに、こんなにゆっくりでいいのかよって思ったが、俺はこの世界の行軍速度の遅さを舐めていた。
サラージア王国の王都からハーンブルク領まで最短で1ヶ月、行軍となるとその2倍ほどの時間がかかる。
つまり、サラージア王国が攻めて来るのは早くても2ヶ月後の筈だ。
その間、ゆっくりと準備をし、最高の結果になるように頑張ろうと誓った。
__________________________________________
どうでもいい話
楽しんでいただけると嬉しいです
「放てっ!」
SHSの将校の掛け声とともに、一斉に銃を発砲した。
いつか襲いかかるであろう外敵に対して、優位に立ち回れるように開発された1つ目の兵器は、銃である。
この世界にも、もちろん銃は存在する。火薬を用いて遠距離を攻撃できる銃は、戦争において重要な役割を担っているが、火薬の消費スピードが高い点や命中率が低い点、作るのに技術が必要で大量生産ができない点からあまり注目されていなかった。
使っていても、一部の精鋭部隊のみでサーマルディア王国軍でも全体の30万の兵力の内、鉄砲隊はわずか1000名である。
それに対して、ハーンブルク家では5000丁の銃を用意していた。
『アイ』によって、現在の技術力で量産可能な最高レベルの銃が作られた。ボルトアクション式の単発銃ではあるが、この世界の水準を考えると2世代ぐらい先を進んでいる兵器だ。弾丸の方も、少しずつ量産体制に入っていっている。
この銃の製造法については、蒸気機関と同様に最高レベルの機密情報に指定されており、製造法を全て知っているのは俺とお母様のみだ。
これをSHSに1000丁、軍部に4000丁渡し、それぞれ訓練を行う事となったのだ。銃の存在は知っていたものの、最新式の銃がこれ程までに発展していた事に、軍部の兵達の多くが驚いていた。
ちなみにここでいう軍部というのはハーンブルク家当主代理であるお母様直属の部隊の事を指し、国防軍はまだ到着していない。
50mほど離れた目標を、次々と穴だらけにしていくその銃の命中率はとてつもないものであった。
「最新式の銃の調子はどうですか?」
「はっ!正直、文句の付けようがございません。命中率、次弾装填までの速さ共に最高レベルであります!」
「実戦で使えそうですか?」
「はい!中遠距離であれば、この銃に敵う者はいないでしょう。これは、これまでの戦術を大きく変えるほどの兵器であります!」
「けっこうです、ではそれぞれ練習をして、命中率精度を高めて下さい。」
SHSの方は、開発にも携わっているので、何度か試し撃ちをしていたが、軍部の方は新型の銃が開発されたらしいという噂程度で、この銃を使った訓練は初めてであった。
そして、訓練に参加した全ての兵士がこの最新式の銃の凄さを肌で感じ取った。
俺とお母様は、少し離れた所から訓練の様子を視察していた。
予想していたよりも、銃の扱い方を学ぶスピードが速いな。
【ライフリングや照準がしっかりと付いているので命中率が高く、ボルトアクション式を採用しているので弾丸の装填が従来よりもずっと楽なはずです。】
よく量産体制できたよね、本当に尊敬するわ。
【ありがとうございます。】
『アイ』は何でもないようにそう応えたが、珍しく照れている感じがした。
そんな雑談をしていると、お母様が俺に話しかけてきた。
「よくやりました、レオルド。流石私の自慢の息子です。」
「ありがとうございます。」
お母様は、とても満足そうな顔をしていた。お母様の周りにいる軍部の将校達も、最新式の銃に満足している様子であった。
「ところで、戦術ドクトリンの共有などはもうしたのですか?」
戦術ドクトリンというのは、戦術のようなもので、例えば4人1小隊制を導入したり、中隊、大隊ごとに役割を与えたりする事もその内の1つだ。
この最新の戦術ドクトリンは、これまでの戦術を大きく変えるもので、今回演習の際に軍部に伝授しようと思っていたものだ。
「いえ、まだです。今回の演習で銃の有効性を知ってもらった後に伝授しようと考えております。」
「そうですか。文字通り、戦争の戦い方がガラッと変わるのですね。」
「はい、今回の戦争では、兵士と兵士が正面から殴り合うような機会が大きく減ると考えております。既に、SHSでは剣や槍を活用する機会を大幅に減少させております。」
「剣や槍を使わない戦争ですか・・・・・・」
俺とお母様の会話を聞いていた多くの軍人は、俺の発言に驚いた顔をしていた。
これまでの戦争といったら、互いに陣形組んで正面から殴り合うものばかりだ。それが一変するという話に驚きが隠せない。
すると、それまで黙っていた将校の1人が口を開いた。
「恐れながらレオルド様、本当に剣や槍を使う機会は減るのでしょうか。私にはどうも、そのような未来が見えないのですが・・・・・・」
「剣や槍を持った兵士では、銃を持った部隊に近づく事がほぼ不可能になります。例えば銃を持った兵士100名と槍を持った兵士100名の兵士が対戦する場合、弾薬が尽きないかぎり、槍を持った兵士が勝つ可能性はほぼ0です。槍を使った兵士が攻撃可能な距離に接近するよりも断然早く、撃たれます。これは、たとえ1万人の兵士がいたとしても同じです。」
「なるほど、たしかにわざわざ接近して剣を振るうよりも、遠くから銃を撃った方が断然強いですね。」
「では、軍部側の将校も集まってきた事だし、講義を始めよう。」
「「「よろしくお願いします」」」
そして俺は、軍部の将校達に2時間に渡る講義を行った。銃を使った本格的な戦争の仕方から、行軍の仕方や野営の仕方など色々な事を伝授した。
敵が戦争の準備をしているというのに、こんなにゆっくりでいいのかよって思ったが、俺はこの世界の行軍速度の遅さを舐めていた。
サラージア王国の王都からハーンブルク領まで最短で1ヶ月、行軍となるとその2倍ほどの時間がかかる。
つまり、サラージア王国が攻めて来るのは早くても2ヶ月後の筈だ。
その間、ゆっくりと準備をし、最高の結果になるように頑張ろうと誓った。
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