41 / 90
軍事編
第13話 死兵
しおりを挟む勝敗はすぐに決着した。
10倍以上の兵力差があったので、まともにぶつかったなら勝って当たり前の戦いであった。
もちろん勝利はした、勝利はしたが・・・
「なんだと・・・・・・」
「ソラーノ将軍が?そんなはずはないっ!もう一度調べて来いっ!」
「馬鹿な・・・・・・」
「間違いございません。この場に将軍がいない事が何よりの証拠でございます。」
報告に来た男は泣いていた。ところどころに返り血を浴びており、手にはかつてソラーノ将軍が愛用していた槍を持っていた。
戦死の報告を聞き、国王を含むその場にいた多くの者が俯いた。
サラージア王国国王にとって、右腕とも呼べる存在であるソラーノ将軍を失ったのだ。
部隊を2万、2万、4万の3つに分けて挟撃を行い、敵を1人も残さずに殲滅するというソラーノ将軍の作戦は大成功であった。しかし、肝心な本人が戦死した。
「敵は、それほどまでに勇敢だったのか?」
「それが・・・・・・兵と兵がぶつかり合う直前に、敵の流れ弾が運悪く側頭部に当たってしまい・・・・・・」
死体解剖などをすれば、ソラーノ将軍を葬った弾丸の形状が普通の弾丸とは違う事に気づけたかもしれないが、もちろんそんな事はしなかった。
「そうか・・・・・・惜しい友人ともを亡くしたな・・・・・・」
国王は涙をぐっと堪える。国王にとって、ソラーノ将軍は良き友であった。同年代という事もあり貴族学校に通っていた頃から仲が良く、最近では気軽に会話ができる数少ない人物の内の1人であった。
そんな友人を失ったショックは大きい。
後悔と同時にふつふつと怒りが込み上げてくる。
「陛下、恐れながら申し上げます。もしかしたら敵には銃の達人がいるのかも知れません。ですので陛下は後方の安全な所で待機し、私に兵を預けていただけませんか?ソラーノ将軍の仇を討ちたいと思います。」
「弔い合戦か、いいだろう。お主に2万5000の兵をつける。このまま真っ直ぐ進めばハーンブルク領のドレスデンがあるはずだ、そこを落としてみよ。」
「はっ!必ずやご期待に応えます!」
「頼んだぞ。」
そして、サラージア王国軍は隊を2つに分けると、国王率いる本隊はその場に留まり、ライカ将軍率いる別働隊がハーンブルク領ドレスデンに向けて進軍を開始した。
『アイ』の策略に既にハマってしまっているとは知らずに・・・・・・
✳︎
「ハァハァハァ・・・・・・どれぐらい減った。」
「残ったのは3部隊合わせて1000にも満たない数でございます。」
「くそっ!!」
6000対8万という絶望的な戦力差はひっくり返らなかった。
勝ち目が薄い戦いだという事は当然知っていたが、まさか本当に正面から殴り合うとは思っていなかった。その結果、戦場はさながら地獄絵図のような状態となっていた。
また、騎馬部隊による挟撃によって退路を絶たれた結果、ほぼ全滅に近い打撃を受けていた。
命かながら逃げて来たこの将校は、後ろを振り返って気づいた。
「他の2人はどうした・・・・・・」
「「「・・・・・・」」」
兵達は答えず皆下を向く。ここにいないという事は、生き残った可能性は限りなく低いという事だ。
そのような事実は、誰の目にも明らかであった。仮に生き残ったとしても、自分達から飛び出したハーンブルク領に逃げるわけにはいかず、敵の捕虜となったか、現在も自分達と同じように逃亡中という事だ。
ともにハーンブルク領を飛び出した2人の将校は若かった。2人とも自分と同じ下級貴族出身で、年は離れていたが妙な親しみがあった。
2人とも勇ましくて、これならば例え10倍の兵力差であっても勝てるかもしれないと考えていたほどだ。
だが、現実はそう甘くはない。
部隊は壊滅状態になり、2人の将校はおそらく命を落とした。勝つどころか、惨敗としか言いようがない結果であった。
そして、ひたすら自分を責めた。
「わしがあの時、女傑殿と共に戦う道を選択していれば・・・・・・」
サラージア王国国王と同じく、彼もまた自分の取った選択を後悔していた。
後から後悔してももう遅い。そんな事は分かっている、分かっているが・・・・・・
「わしは、敗軍の将としておめおめ王都に戻るような真似はしない。」
もう一つ、男は後悔している事があった。
それは、自分だけ戦場から逃げ、生き残った事だ。男は覚悟を決め、部下に自分の選択を告げる。
「今一度攻勢を仕掛け、なんとしてもサラージア国王の首を取る。全員反転っ!!!」
「「「おぉー!!!」」」
部下の兵達も、心は同じであった。誇り高き王国軍の兵士として、このままでは終われない。
ならば・・・・・・
「全員突撃ー!!!」
「「「おぉー!!!」」」
日も沈み始め、遠くがよく見えなくなった頃、わずか800名ほどの敗残兵の一味が、別働隊の監視を抜けてサラージア王国軍本陣に最後の奇襲を行った。さらに、それに合わせて捕虜として捉えられていた国防軍兵達も発起した。
死兵となった彼らは猛威を振るい、サラージア王国軍に恐怖を与えるとともに散っていった。この戦いにおける国防軍の生き残りは100名にも満たず、サラージア王国の損耗率は2割にも登った。
✳︎
国防軍の生き残りが最後の突撃を仕掛ける少し前、ライカ将軍を先頭としたサラージア王国の別働隊が進軍を開始した。
当然その動きは丘で身を潜めら俺たちにも届いていた。
「敵部隊、隊を2つに分け進軍を開始しました。」
「先行部隊の兵力は?」
「およそ2万5000ほどだと思われます。」
「そうか、やはり隊を2つに分けたか。」
「いかがいたしますか?」
「撤退だ。国防軍と軍部の連中にゲリラ戦を任せて俺たちは補給線と連絡線の寸断と、敵の兵糧を潰すぞ。」
「「「了解っ!」」」
俺たちは、次なる作戦を遂行するために別のポイントへと移動を始めた。
敵の方が兵力が多い時の基本は、分断して各個撃破である。
上手く噛み合えば、こちらの被害を出さずに敵を踏み躙れるかもしれない。
_______________________________________________
どうでもいい話
全部が全部ダメダメなキャラを書くのはあまり好きではないので、こうなりました。
3
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。
絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。
辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。
一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」
これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる