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日常ノ怪②
九、免許
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ある日、学校から帰ると母が上機嫌で台所に立っていた。
私が部活に励む間、両親は田舎に住む母方の祖父母の家に行ってきたらしい。
母方の祖父母宅に行くと必ずと言っていいほど巻き起こる論争が「免許返納する・しない」だ。
もう八十後半になって思考も衰えてきた祖父に、危険だから免許を返納しなさいと迫る母と祖母。
それを祖父は老いたと馬鹿にするな、車なしで田舎暮らしが成り立つはずがないと一蹴するばかりだった。
ところが、祖父が死ぬまで終わることはないと思われていたその論争についに決着がついたのだという。
きっかけは祖父の家の隣に住むおじいちゃんだった。
このおじいちゃんも祖父とさほど年が変わらないのだけれど、つい最近事故を起こしてしまったのだという。
その時の恐ろしさを懇々と説かれ、最近地域の乗合タクシーができたからそれを使って一緒にどうにかしようと誘われた。
それが胸に引っかかったまま、今日の両親の説得があって頑固な祖父もついに折れたらしい。
「でね、途中で気が変わったら大変じゃない?」
ざくざくと野菜を切りながら、母の口は止まることを知らない。
鬼の首でも取ったかのように意気揚々と語り続けた。
「そのまま真っすぐ警察に免許を返納しに行かせたのよ。ばあちゃんを見張りにつけて。そしたらね、じいちゃん帰ってきた途端に庭の木に車ぶつけたのよ!」
言わんこっちゃないでしょ? と母が同意を求める。
けれど、祖母は元々免許を持っていないはずでは? ということは、運転手は……――。
両親は“それ”に気付いていないようで、私は呆然と立ち尽くすしかなかった。
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