おっさん転生 〜神に惜しまれ、転生させられました〜

第１章 成長期編

１－３ 鍛えられるらしい

「魔法契約、ですか。」

聞き慣れない言葉に少し表情が歪んだらしい。

「ただの契約じゃなくて、契約者間で行動の制限を、するものね。制限に対する効果は色々あるけど、このの場合、一方が契約に反した時には書類が反応して違反がするのと、本人には猛毒よりキツい仕掛けがされてたの。」

「タチの悪いことにそういうペナルティは全く周知されてなかったからな。中堅どころのいくらかは引っかかってやがった。」

そこまで酷いものだと王族らの評判も酷いものになりそうだが・・・

「あとはその契約内容には、本人が冒険者のうちに命を落としたときに残された家族には相応の恩賞が別途定められていたのよ。
それが、けっこうな金額だけに冒険者を引退する理由に『家族が出来た』って理由は少なくなって、冒険者はある意味で安定的な生活になったことはあるわね。」

「まさに金にモノを言わせて、を地で行く利益の取り方・・・。」

それなりの金が出るならそれにかけてもいいのかもしれない。

「そういう事もあって、大都市に近いダンジョンは冒険者の旨みは相当な勢いでなくなっていった。
圧倒的な人数でもって騎士団連中がローテーションして狩り尽くしていったからな。
いくら広いフィールドが主戦場の騎士団とはいえ、十把一絡げの冒険者よりも対人戦に優れてる奴らは少なくない。
挑む馬鹿野郎どもも居たが、多くの冒険者にとっては大都市から離れたところを主戦場にするか、引退して無職になるかのどっちかしかなかったんだ。」

どう言う原理かは解明されてないが、ダンジョンは大都市に近いほどその内容は凶悪になり、ダンジョン内で得られるものは価値を増す。

その大都市圏のダンジョンが騎士団に抑えられてしまうと、冒険者にとってはリスクに見合わない地方の小型ダンジョンに挑まざるを得なくなってしまう。

「まぁ、そんな事もあってな。俺たちはパーティを解散したんだ。」

片手剣持ってる母さんなんて他に聞かないし、足の運びからただの夫婦だとは思って居なかったが、まさか二人揃って一流どころだとは思わなかった。

「エルレード、大事なところ端折ってるじゃないか。」

「それは・・・まだいいだろう？」

ニヤニヤしたマリアはエルレードの言葉を聞かなかったかのように続けた。

「エルレードはね、騎士団でも将来を有望視されてた男なのよ。」

「騎士団で！？なんで冒険者に！」

普通騎士団で有望視されているともなれば、それは騎士団長候補のことだ。

騎士団長候補ともなれば、将来は安泰。

大概の女は寄ってくる。

「それもまた色々あったんだよ・・・。」

それはエルレードの恥部なのか、避難の視線をマリアに向けるが、マリアはどこ吹く風だ。

「取り敢えず、手伝いをさせて身体が出来てから始めるつもりだったが、ここまで話したらもう良いな。」

「そうねー。始めるなら早い方がいいでしょうし。」

さっきまでの空気は何処へやら、二人は視線を合わせるとニヤニヤし始めた。

「おい、エド。明日から手伝いは朝食前に済ませろ。」

何いってるのこの親父。5歳にはやたらハードなんですけど。

だが、マリアまで乗り気なのであれば口答えは悪手だ。

「な、何をするんでしょう？」

「母さんと二人で決めていたんだ。この話をした時は、訓練の始まりだってな。」

「大丈夫、死なない程度にシゴくだけだから。間違っても死にゃあしないわよ？」

こうして、「何の為の」訓練かは聞かされないまま、俺の今世のエドワードは訓練が開始された。