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第2章 マーセル冒険者学校編 1年目
2ー4 ここで一度お別れらしい
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ナックスは俺からすると嫌な予感しかしない笑いを浮かべて、<トライデント>にも視線を振る。最初から俺のことについては値踏みしていたようだ。
まぁ、冒険者ギルドなんだからある程度は値踏みされることはわかってはいたが、まさか直接くるとは思わなかった。
「買いかぶりすぎですよ。入学もこれからの駆け出し未満に何を期待してらっしゃるんですか。」
まぁ、最初は俺も破竹の勢いで駆け上がってやろうとも思っていたが、今の世の中それは許してくれなさそうだし。最年少記録なんてものは到底無理だと思っている。
「駆け出し未満にしちゃ、随分な装備なんだよ。使い込まれてこそいないが、手入れがしっかりできてるってことは仕込まれたことがあるってことだ。」
よく見てるマスターだな。 あまり団体生活の中で目立つと妬む連中がいるから正直濁したい。
<トライデント>は巻き込まないでくれと言いたげな視線を向けてくるし、ホランさんに至っては初めて気がついたような顔をしている。やっぱり商人はタヌキだ。
「もしかしてそれだけで買い被ってるんですか?手入れは確かに両親にも仕込まれましたけど、これらを売って下さった方にちゃんと聞いたまでです。特別なことはしてませんよ。」
装備のランクには触れなかったが、これじゃやや弱いか、なんて思ってるとナックスはさらに踏み込んで来た。
「その革、アーマード・ベアーだと思うが、何か仕込んでるしな。体つきもここ最近の入学希望者にはありえんくらいにしっかりしてやがるし、何より、俺と対峙してもビビらない入学希望者なんざここ数年じゃ見なかったくらいだ。」
ナックスはニヤニヤしながら俺がどこまで耐えるか、楽しんでいるようだった。
「挙句装備の方向性が玄人好みなんだよ。普通お前くらいの年齢ならグレートソードを持ちたがったり、片手剣でもナイトシールド、勘がいいヤツでバックラーが大概あるが、それだけの装備を持っていながら盾を持たないなんざ、相当仕込まれてるとしか思えねぇよ。反論があれば伺うが?」
しまった。装備のチョイスから既にバレていたか。
「いえ、参りました。ランクは聞いていませんが、両親は元冒険者です。今じゃ狩猟がちょっと出来て畑仕事が生活の中心にある夫婦ですけどね。」
「なるほどな。それじゃあ学校なんぞ退屈だろうなぁ。武器は片手剣のようだが、そのままでいくのか?」
「若いうちから戦術は狭めるな、と言われてますが、基本はそれでいこうかと。」
ナックスが満足気に頷いているところを見ると、回答としては正解だったらしい。
「いいことだ。使えるもんは何でも使え。だが、軸足は決めておかねぇと極限状態で何も出来なくなるからな。そこまで分かってるヤツが仕込んだんだったら、まぁ問題ないか。」
「名声を得た際には是非、我が商会もよろしくお願いしますね。」
ホランさんはまた一足飛びで先の話をしてくる。それに対しては苦笑いで済ませておいた。
そんな話をしていると、突然バーンとドアがあいた。
「マスター、いい加減仕事してください。書類が山積みです!」
先程までの気品のある雰囲気はどこへやら、エリスさんがブチ切れていた。
「お、おう。今行く。」
もしかしたら、本当のマスターはエリスさんなんじゃないだろうか・・・。
ーーーーーーーーーー
1階のロビーに来て見ると、そこは冒険者が20名ほど雑談していた。
もう夕方ではあるが、酒が入って気が大きくなっているような冒険者がいないことを考えると、もしかしたらこちらの冒険者たちは荒っぽいことだけが上手いんじゃないのかもしれない。
カウンターは、「依頼受理・受付・報告」のものと「換金・報酬引渡」の二つのカウンターがあったが、昼過ぎになると「換金・報酬引渡」のカウンターばかりが混んでくるらしく、今日も例外ではなかった。
「僕はこういう待ってる時間嫌いなんだよねー。」
「報酬がなくってもイイってんなら、テーブルに座っててもいいぞ。」
「それじゃ新しいロッド用の貯金が出来ないからだめー。」
今のマルクの杖もちょっと<鑑定>するとさほど悪いものではない。魔法関連の素材は高いだろうし、本人の好みに合わせてオーダーメイドするとなると、やはり高いのだろうか。
「この前王都行った時に見かけた限定のロッドがすごいんだからね?あれが欲しいんだよ。」
限定品がただ好きなだけだった。
「総ミスリルが300万グローで売られるなんてホントないんだから!すっごいんだからね!」
1人で興奮するマルクにバルガスとビルドはまた始まったと呆れている。道中をかなりの期間共にしていたホランさんも慣れたもののようだった。
「次の方ー、あ、<トライデント>さんたちですね。エリスから伺っていますので少々お待ちください。」
そう言って引っ込んでいった受付嬢はすぐに戻ってきて3つの袋をおいた。
「えーと、まず<トライデント>に対しては有益な情報提供として2万グローですね。ホランさんには依頼人責務の遵守、エドワードさんは第三者証人としての報酬でそれぞれ1万グローになります。」
にこー、と笑う受付嬢から各々報酬を受け取る。
「俺、何もしてないのにこんなもらっていいんでしょうか。」
「ギルドの定めた報酬ですし、ありがたく頂戴しておきましょうよ、坊ちゃん。」
金額に見合った働きをしてないと思うんだけどな。
「じゃあ、ホランさん、エドワード俺たちはここでお別れだ。次もまたよろしく頼むぜ。」
「そうでしたね、商会の方でも信用のおける方々として報告しておきますので、どうぞよろしくお願いします。」
「色々教えてくださってありがとうございました。」
バルガスは右手を上げるだけ、ビルドはこちらに一礼して、マルクはばいばーいと子供のように手を振ってギルドから出て行った。
おそらく自分達の拠点に行くのだろう。
「さて、坊ちゃん、私が請け負いました仕事もここまでですね。私はしばらく商会におりますので、何かあればご相談ください。」
「わかりました。マルシオス商会でしたよね、ここまでありがとうございました。」
そうして2週間近い時間を共に過ごした<トライデント>とホランさんと別れた。
じゃあ受験の手続きをしたら、寮に入れてもらおう。
まぁ、冒険者ギルドなんだからある程度は値踏みされることはわかってはいたが、まさか直接くるとは思わなかった。
「買いかぶりすぎですよ。入学もこれからの駆け出し未満に何を期待してらっしゃるんですか。」
まぁ、最初は俺も破竹の勢いで駆け上がってやろうとも思っていたが、今の世の中それは許してくれなさそうだし。最年少記録なんてものは到底無理だと思っている。
「駆け出し未満にしちゃ、随分な装備なんだよ。使い込まれてこそいないが、手入れがしっかりできてるってことは仕込まれたことがあるってことだ。」
よく見てるマスターだな。 あまり団体生活の中で目立つと妬む連中がいるから正直濁したい。
<トライデント>は巻き込まないでくれと言いたげな視線を向けてくるし、ホランさんに至っては初めて気がついたような顔をしている。やっぱり商人はタヌキだ。
「もしかしてそれだけで買い被ってるんですか?手入れは確かに両親にも仕込まれましたけど、これらを売って下さった方にちゃんと聞いたまでです。特別なことはしてませんよ。」
装備のランクには触れなかったが、これじゃやや弱いか、なんて思ってるとナックスはさらに踏み込んで来た。
「その革、アーマード・ベアーだと思うが、何か仕込んでるしな。体つきもここ最近の入学希望者にはありえんくらいにしっかりしてやがるし、何より、俺と対峙してもビビらない入学希望者なんざここ数年じゃ見なかったくらいだ。」
ナックスはニヤニヤしながら俺がどこまで耐えるか、楽しんでいるようだった。
「挙句装備の方向性が玄人好みなんだよ。普通お前くらいの年齢ならグレートソードを持ちたがったり、片手剣でもナイトシールド、勘がいいヤツでバックラーが大概あるが、それだけの装備を持っていながら盾を持たないなんざ、相当仕込まれてるとしか思えねぇよ。反論があれば伺うが?」
しまった。装備のチョイスから既にバレていたか。
「いえ、参りました。ランクは聞いていませんが、両親は元冒険者です。今じゃ狩猟がちょっと出来て畑仕事が生活の中心にある夫婦ですけどね。」
「なるほどな。それじゃあ学校なんぞ退屈だろうなぁ。武器は片手剣のようだが、そのままでいくのか?」
「若いうちから戦術は狭めるな、と言われてますが、基本はそれでいこうかと。」
ナックスが満足気に頷いているところを見ると、回答としては正解だったらしい。
「いいことだ。使えるもんは何でも使え。だが、軸足は決めておかねぇと極限状態で何も出来なくなるからな。そこまで分かってるヤツが仕込んだんだったら、まぁ問題ないか。」
「名声を得た際には是非、我が商会もよろしくお願いしますね。」
ホランさんはまた一足飛びで先の話をしてくる。それに対しては苦笑いで済ませておいた。
そんな話をしていると、突然バーンとドアがあいた。
「マスター、いい加減仕事してください。書類が山積みです!」
先程までの気品のある雰囲気はどこへやら、エリスさんがブチ切れていた。
「お、おう。今行く。」
もしかしたら、本当のマスターはエリスさんなんじゃないだろうか・・・。
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1階のロビーに来て見ると、そこは冒険者が20名ほど雑談していた。
もう夕方ではあるが、酒が入って気が大きくなっているような冒険者がいないことを考えると、もしかしたらこちらの冒険者たちは荒っぽいことだけが上手いんじゃないのかもしれない。
カウンターは、「依頼受理・受付・報告」のものと「換金・報酬引渡」の二つのカウンターがあったが、昼過ぎになると「換金・報酬引渡」のカウンターばかりが混んでくるらしく、今日も例外ではなかった。
「僕はこういう待ってる時間嫌いなんだよねー。」
「報酬がなくってもイイってんなら、テーブルに座っててもいいぞ。」
「それじゃ新しいロッド用の貯金が出来ないからだめー。」
今のマルクの杖もちょっと<鑑定>するとさほど悪いものではない。魔法関連の素材は高いだろうし、本人の好みに合わせてオーダーメイドするとなると、やはり高いのだろうか。
「この前王都行った時に見かけた限定のロッドがすごいんだからね?あれが欲しいんだよ。」
限定品がただ好きなだけだった。
「総ミスリルが300万グローで売られるなんてホントないんだから!すっごいんだからね!」
1人で興奮するマルクにバルガスとビルドはまた始まったと呆れている。道中をかなりの期間共にしていたホランさんも慣れたもののようだった。
「次の方ー、あ、<トライデント>さんたちですね。エリスから伺っていますので少々お待ちください。」
そう言って引っ込んでいった受付嬢はすぐに戻ってきて3つの袋をおいた。
「えーと、まず<トライデント>に対しては有益な情報提供として2万グローですね。ホランさんには依頼人責務の遵守、エドワードさんは第三者証人としての報酬でそれぞれ1万グローになります。」
にこー、と笑う受付嬢から各々報酬を受け取る。
「俺、何もしてないのにこんなもらっていいんでしょうか。」
「ギルドの定めた報酬ですし、ありがたく頂戴しておきましょうよ、坊ちゃん。」
金額に見合った働きをしてないと思うんだけどな。
「じゃあ、ホランさん、エドワード俺たちはここでお別れだ。次もまたよろしく頼むぜ。」
「そうでしたね、商会の方でも信用のおける方々として報告しておきますので、どうぞよろしくお願いします。」
「色々教えてくださってありがとうございました。」
バルガスは右手を上げるだけ、ビルドはこちらに一礼して、マルクはばいばーいと子供のように手を振ってギルドから出て行った。
おそらく自分達の拠点に行くのだろう。
「さて、坊ちゃん、私が請け負いました仕事もここまでですね。私はしばらく商会におりますので、何かあればご相談ください。」
「わかりました。マルシオス商会でしたよね、ここまでありがとうございました。」
そうして2週間近い時間を共に過ごした<トライデント>とホランさんと別れた。
じゃあ受験の手続きをしたら、寮に入れてもらおう。
応援ありがとうございます!
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