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「――ふふ、妾が本当に神だったと理解して態度を改めよったのか。お主も現金の奴よのぉ」
相変わらず変わった口調で喋っている神様は、手で扇を弄りながらどこか嬉しそうだ。
名前は長くて覚えていないが、神様は高天原から来たと言っていた。
高天原といえば天照大御神の話が有名だろう。
昔から語り継がれていた事が本当だったという事には驚きが隠せない。
だけど神様の様子を見るに、なんだか相手をしてもらえて嬉しそうに見える。
この神様はもしかして神の中でも孤独だったのだろうか?
「お主も懲りぬのぉ……そんなにその命を捨てたいのか」
本当に心を読めているのか、神様は全身から怒りをほとばしらせながら扇を構える。
会った時から思っていたが少々短気すぎるんじゃないだろうか。
向かい合っていて汗が止まらなくなってしまう。
「えっと、どうして神様はここにいらっしゃるのですか?」
「話を誤魔化そうとしてもそうはいかぬぞ?」
「いえ、純粋に気になっているんです」
「……ふむ」
神様は俺の言葉を聞いて何やら考え始める。
意外と話を聞いてくれるところがあるよな、この神様。
変な喋り方で脅しをかけてきたり、実は優しそうな雰囲気を見せてきたりとよくわからない人――いや、神様か。
だけど俺はこの方には感謝しなければならない。
神様のおかげでもう一度安心院さんと会う事が出来、そして彼女を救えるチャンスをもらえた。
感謝をしてもしきれないくらいだ。
「妾はお主の監視役じゃよ」
「監視役……?」
「そうじゃ。一つはお主が役目をちゃんと果たせるかどうかの監視。そしてもう一つは――お主が、必要以上に歴史を変えようとしないかどうかの監視じゃ」
一つ目はわかるが、二つ目はどういう事だろう?
安心院さんを助けようとしている時点で歴史を変えようとしている。
だけどそれはそういう約束で過去に戻ったのだから問題はないはずだ。
安心院さんを救う事に関わる以外で歴史を変えてはならないって事か……?
例えば宝くじの当たり番号を知っているからといって、その番号を買う事は許されないとか、元いた世界であった歴史的大発表をこの世界で発表されるよりも前に俺が打ち明けてはならない、と考えればいいのかな?
漫画などではお決まりのルールだし、元々下手な事をするつもりはないから何も問題はないはずだ。
「大丈夫ですよ、別に余計な事なんてしませんから」
「本当にそう言い切れるのかのぉ?」
「どういう事です……?」
「さぁの。それよりもよいのか? このままだと十中八九、心優は命を落とすぞ」
唐突に告げられた言葉。
神様の雰囲気からそれが脅しではない事を俺は察する。
「もしかして神様は……安心院さんが命を絶つ理由を知っているのですか?」
「むしろ逆になぜ知らぬと思っておるのじゃ。妾は神ぞよ? 知っていて当然で――」
「――教えてください! いったい安心院さんはどうして自ら命を絶ったのですか!」
俺は神様の両肩をガシッと掴み、まっすぐと目を覗き込む。
無礼とかそんなの知った事じゃない。
安心院さんが命を絶った理由を知れるのだったらどんな天罰だろうと甘んじて受け入れてやる。
――しかし、俺の意気込みは空回りで終わってしまう。
というか、神様の目がグルグルと回り出した。
「あわ、あわわ、ち、ちかい……!」
「えっと、神様? あの、どうされました……?」
まるで漫画のキャラが目を回しているかのように本当に目がグルグルとしている。
さすが神様、宴会芸もお持ちなのか。
だけどどうして今そんなものを見せてくれているのだろう?
もしかして話を誤魔化そうとしているのか?
「神様! 誤魔化そうなんてずるいですよ!」
「ち、ちが……あぅ……!」
更に顔を近付けると、なんだかプシューという音が聞こえた気がした。
見れば神様は気が抜けたような表情をしていて、全身からも力が抜けている。
というか、気を失ってないか……?
あれ、神様って本当は男が苦手だった……?
でも、そんな素振りなかったはずだけど……?
急に気を失った神様を抱きかかえながら、俺はどうしたらいいのかわからなくなってしまった。
相変わらず変わった口調で喋っている神様は、手で扇を弄りながらどこか嬉しそうだ。
名前は長くて覚えていないが、神様は高天原から来たと言っていた。
高天原といえば天照大御神の話が有名だろう。
昔から語り継がれていた事が本当だったという事には驚きが隠せない。
だけど神様の様子を見るに、なんだか相手をしてもらえて嬉しそうに見える。
この神様はもしかして神の中でも孤独だったのだろうか?
「お主も懲りぬのぉ……そんなにその命を捨てたいのか」
本当に心を読めているのか、神様は全身から怒りをほとばしらせながら扇を構える。
会った時から思っていたが少々短気すぎるんじゃないだろうか。
向かい合っていて汗が止まらなくなってしまう。
「えっと、どうして神様はここにいらっしゃるのですか?」
「話を誤魔化そうとしてもそうはいかぬぞ?」
「いえ、純粋に気になっているんです」
「……ふむ」
神様は俺の言葉を聞いて何やら考え始める。
意外と話を聞いてくれるところがあるよな、この神様。
変な喋り方で脅しをかけてきたり、実は優しそうな雰囲気を見せてきたりとよくわからない人――いや、神様か。
だけど俺はこの方には感謝しなければならない。
神様のおかげでもう一度安心院さんと会う事が出来、そして彼女を救えるチャンスをもらえた。
感謝をしてもしきれないくらいだ。
「妾はお主の監視役じゃよ」
「監視役……?」
「そうじゃ。一つはお主が役目をちゃんと果たせるかどうかの監視。そしてもう一つは――お主が、必要以上に歴史を変えようとしないかどうかの監視じゃ」
一つ目はわかるが、二つ目はどういう事だろう?
安心院さんを助けようとしている時点で歴史を変えようとしている。
だけどそれはそういう約束で過去に戻ったのだから問題はないはずだ。
安心院さんを救う事に関わる以外で歴史を変えてはならないって事か……?
例えば宝くじの当たり番号を知っているからといって、その番号を買う事は許されないとか、元いた世界であった歴史的大発表をこの世界で発表されるよりも前に俺が打ち明けてはならない、と考えればいいのかな?
漫画などではお決まりのルールだし、元々下手な事をするつもりはないから何も問題はないはずだ。
「大丈夫ですよ、別に余計な事なんてしませんから」
「本当にそう言い切れるのかのぉ?」
「どういう事です……?」
「さぁの。それよりもよいのか? このままだと十中八九、心優は命を落とすぞ」
唐突に告げられた言葉。
神様の雰囲気からそれが脅しではない事を俺は察する。
「もしかして神様は……安心院さんが命を絶つ理由を知っているのですか?」
「むしろ逆になぜ知らぬと思っておるのじゃ。妾は神ぞよ? 知っていて当然で――」
「――教えてください! いったい安心院さんはどうして自ら命を絶ったのですか!」
俺は神様の両肩をガシッと掴み、まっすぐと目を覗き込む。
無礼とかそんなの知った事じゃない。
安心院さんが命を絶った理由を知れるのだったらどんな天罰だろうと甘んじて受け入れてやる。
――しかし、俺の意気込みは空回りで終わってしまう。
というか、神様の目がグルグルと回り出した。
「あわ、あわわ、ち、ちかい……!」
「えっと、神様? あの、どうされました……?」
まるで漫画のキャラが目を回しているかのように本当に目がグルグルとしている。
さすが神様、宴会芸もお持ちなのか。
だけどどうして今そんなものを見せてくれているのだろう?
もしかして話を誤魔化そうとしているのか?
「神様! 誤魔化そうなんてずるいですよ!」
「ち、ちが……あぅ……!」
更に顔を近付けると、なんだかプシューという音が聞こえた気がした。
見れば神様は気が抜けたような表情をしていて、全身からも力が抜けている。
というか、気を失ってないか……?
あれ、神様って本当は男が苦手だった……?
でも、そんな素振りなかったはずだけど……?
急に気を失った神様を抱きかかえながら、俺はどうしたらいいのかわからなくなってしまった。
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