転生しても、皆んなで楽しく過ごしたいだけなんですけど。

馳 影輝

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第二章 魔王と勇者と、時々覚醒。

第6話 うん、仲間集めよう。

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朝日を浴びて珠洲音は目を覚ました。
昨日まで泊まっていた宿屋に比べるとベッドの具合はあまり良く無い。
日差しに導かれる様に外に出てみた。

「ん~。早く起きすぎたかなぁ~。」

女子高生の時は朝が苦手だったのに、この世界に来てからは早起きが平気になった。

「さて、皆んなを起こすぞ。」

まだ寝ていた3人は珠洲音に寄って強制的に目覚めさせられて。

「おい、何だ朝から元気だな。」

真っ先に目を覚ましたのはフゼンだった。
セリザワも釣られて目を覚ます。
遅れてセラフィも眠そうにベッドから起き上がった。

「さあ、今日から気合い入れて行くよ。」

「なんで、そんなに元気なんだ。」

「フゼン!私達は仲間を集めるよ。」

朝食を作るために、森の動物と植物など採取すると、珠洲音とセラフィが料理を始めた。
料理に関しては、珠洲音が作ってセラフィが盛り付ける。
味に関しても美味しいと喜ばれた。

「仲間ってどうやって集めるんだ?」

「やっぱり今の私達の人数では太刀打ち出来ないから、あと数人は戦える精鋭が欲しいよ。」

「それならやっぱりレジスタンスじゃないか?」

「あのう~。」

2人の会話にセラフィが割って入ってきた。

「セラフィさん何?」

「ここから東に行くと国境を超えた山に城砦都市バラン-カランがあります。
元々は東国のミストラン帝国が西の要所として建設されましたが、帝国が滅んでしまってからは、ドワーフやエルフ、人間も住んでいます。ですが、この城砦都市の領主、雷撃の竜人と呼ばれている竜人族のガルドゥールが協力してくれるかですね。」

「情報ありがとうございます。私達の拠点にはピッタリね。
早速フゼン。
行くよ。」

小屋の前に転送用の魔法陣を設置して、帰りは転送で帰れる様に準備した。

カイザードラゴンならば数分で近くまで到着できる。
2人は背に乗ると。

「師匠。行ってきます。セラフィさんの事よろしくお願いします。」

そう言うとカイザードラゴンは翼を広げて飛び立った。
思った通りかなりのスピードだ。
珠洲音とフゼンは振り落とされない様にしがみ付いていた。

少し上空を旋回しつつ地上に向かって下降すると、山の麓に大きな門が見えている。
それが、城塞都市バラン-カランへの入り口。
あまりカイザードラゴンで近づきすぎると警戒されるので、離れた位置に降ろしてもらった。

城塞都市の入り口近くまで歩いてきた。
周りは一面の荒野で何もない。

「正面からに決まってる。」

「だな!」

丁度その頃、シャルネゼ国王都では。
珠洲音達が指名手配されていた。

「この女とその仲間達を発見したら報告する様に。」

王国兵達が街に指名手配書を貼っている。
懸賞金もかけられていて。
発見して捉えたら金貨500枚と書かれている。
手配書には
国王陛下暗殺未遂
と書かれている。

冒険者達も賞金目当てで動き出す者も居るだろう。
状況は珠洲音達にとって必ずしも良い状態とは言えない。

そんな事は全く知らない珠洲音とフゼンはバラン-カラン城塞都市の門の前に来ている。
門は大きな鉄製の扉で閉ざされている。
外部からの攻撃に備えてか、兵士が数人、弓兵が数人城壁の上で見張りをしている。
門の近くには2人の兵士が中に入る者の対応をしていた。
珠洲音達以外にも数人人間の商人らしき一団が入る為の手続きをしているようだ。
2人の兵士に珠洲音達も歩いて近づくと、兵士の方が気がついて。
「待て、お前達は何処から来た?」

かなり警戒されている。
珠洲音は兎も角、フゼンの容姿は少し強面と言うこともあって警戒されているのだろう。

「シャルネゼ国の王都グランポリスから来ました。」

「商人では無さそうだが、何をしに来た?」

「冒険者です。」

「冒険者か、ギルドの証明書を見せろ。」

証明書を見せると意外とすんなり中に入れた。
冒険者とはかなり便利な職業だ。

城塞都市バラン-カラン。
東西に伸びる山を利用した天然の城塞でこの先大陸の東側に向かうには、城塞都市の裏側の山を越える必要があるため、流通の要所として栄えた。
東のミストラン帝国が滅亡してからは自由都市として交易の中心地になっている。
都市の中には様々な人種が生活をしていて、その中でも竜人族は勢力の中心となっていた。

「かなり活気がある街ね。」

「商人が多い様だが、中には傭兵も居るな。」

「ガルドゥールに接触する方法を探さなきゃ。」

セラフィの話ではガルドゥールは嘗て勇者と共に旅をした仲間の一人らしい。
竜人族は勇者と仲が良かったと言う話だ。
珠洲音とフゼンは街の中を見て回っていた。
珍しい品物もよく見るとある。

「酒場で聞いてみたら何か知ってる人が居るかも。」

「酒場か、俺はオススメしないがな。」

「どうして?」

「酒場にいる奴は、柄が悪いと相場が決まっている。」

「ん~、可愛い女の子が頼んでも優しく教えてくれないかな?」

「あ?やってみれば良いだろう。」

街中でも人の出入りが多い酒場を見つけた。
看板も大きく目を引く物だった。
店の名前は、ガトラの酒場。
名前の由来は恐らく人の名前だろう。

店内に入ると多くの男達が昼間から酒を呑んでいる。
見渡す限り店員以外女性の客はいない様だ。
空いているテーブルに2人は腰掛けると店員が近づいてきた。

「何にします?」

店員はドワーフの女性で体格も男性顔負けの筋肉質だ。

「アルコール以外の飲み物は何がありますか?」

「アルコール以外なら、ミルクか水ですね。」

「じゃあ、ミルクで、フゼンは?」

「俺は水でいい。それより食べるものを頼む、この店のオススメで。」

「わかりました。お待ちください。」

店内の男性達が、珠洲音の事を見ているのにフゼンは気が付いていた。
若い女性がこの様な酒場に来る事は珍しいのだろう。

「よお、姉ちゃん。歳は幾つだ?」

と周りを見ていると、歳は40前後の男性が酒の匂いをプンプンさせながら、珠洲音の横に来ると机に手を突いて、顔を覗かせた。

「おじさん!酒臭いよ!」

「そりゃそうだろう。ここは酒場だぜ。こりゃ~中々の美人さんじゃないか。」

男の顔は珠洲音の顔を覗き込んで見るなりニヤけていた。

「おい!オッサン!珠洲音に触るな。」

男が珠洲音の肩に手を掛けた瞬間フゼンは男の手を握って怖い顔をしている。

「フゼン。やめて、喧嘩しないで。」

男はフゼンの手を払い除けた。

「それよりおじさん?ガルドゥールってこの街の領主知ってる?」

ガルドゥールの名前を出した瞬間、店内の男性何人かが一斉に反応した。
それは殺気ではない。
どちらかと言うと恐れに近い反応だ。

「何だ、ガルドゥールだと、この町で知らない奴は居ないだろう。良い意味でも悪い意味でも。」

「そうなんだ。どうすれば会えるか知らない?」

「ガルドゥールに会いたいだって?無理だろう、そりゃぁ。」

「え~、そうなの?ガルドゥールは強いって聞いたから、私強い男好きなの。」

普段の声のトーンと違って少し裏返っている。
明らかに媚びる様な声だ。
その様子をフゼンは呆れた様な顔でただ見ている。

「あ~、そうだな~、お嬢ちゃんが強ければバトルドームで優勝するとかしたら会えるかもな。ガルドゥールは強い戦士を募ってるからな。何せ魔王バロンがこの街を狙ってるって噂だからな。」

バトルドーム。
その用語を聞いた瞬間。
珠洲音とフゼンはニヤリとして目で会話した。

"これだ"

「おじさん。ありがとう。」

暫くして料理と飲み物が運ばれてきた。
食べ物は肉料理だ。
味付けは濃いめで、塩と香辛料で味付けされている。
美味しい。

「バトルドームか~、面白そうだな。」

「私が行くわ。」

「俺も出たい。」

「チーム戦もあるかも知れないから見に行きましょ。」

食事を済ますと店を出た。
おじさんの話だとバトルドームはすぐに分かると言われた。
ドーム型の闘技場だからと言う事だ。

「あ、あれね。」

店を出ると距離は少しある様だが、ドームが見えている。
天井は黒い鉄製の様な外観で外壁はコンクリート?の様な素材の様式で建てられている。

ドームには入り口があり、そこから珠洲音とフゼンは中に入れた。
中は広い空間になっている。
カウンターらしき所が部屋の一番奥にある。
恐らく登録などの手続きは必要だろう。

2人はカウンターで座っている女性に声をかけた。
人間だ。

「バトルドームの利用をしたいのですが。」

「バトルドームに出場で宜しいですか?」

「そうですけど、あまり分かってなくて。」

「では、説明いたします。
バトルドームは毎日賞金をかけて対戦方式で強さを競う競技でこの国の大きな娯楽となっております。
対戦方式は個人戦とチーム戦が選択できます。
個人戦の場合は、一対一の対戦方式。
チーム戦は4人までのチームで対戦します。
参加には登録が必要です。
勝利条件は相手が動けなるか、死亡。もしくは降参する事で勝利となります。」

「生死は問わないのね。
わかりました。
チーム戦で登録します。」

「それでは、ここにお名前を。」

一通り手続きを済ませると、カウンターの傍から奥につながる通路を通って待合室らしい大きな部屋に通された。

部屋の中には如何にも戦士らしい男性が多数居て、身体を動かす者や瞑想する者、よく見ると女性も何人か居る。
ここはチーム戦用の控室らしい。
受付で貰った番号札、鉄製で珠洲音は32、フゼンは33の番号を鎧に付けた。
その番号札は魔法が施されていて金属に付く様に出来ている。

それから数組通されてきた。
最後らしい組みが部屋に入ると、一緒に受付の女性が入ってきた。

「それではエントリーは以上になります。
試合は間もなく開始です。
番号が呼ばれたらこちらから出て頂いて右側が闘技場になります。
お待ち頂いている間は外に出れませんのでお気をつけてください。
闘技場の試合を観戦したい場合は奥にあります扉から出て頂くと観戦可能です。」

そう言うと最初の試合の番号が呼ばれた。
次の試合の番号も呼ばれたが、珠洲音達はまだ試合では無いので観戦してみることにした。

奥のドアを開けると、会場の歓声が聞こえて来る。
観客席の一角の様だ。
ちゃんと観戦用の椅子もある。

「生死は問わないか~、殺し合いなのかな?」

「娯楽とは言え、刺激を求めての事だろう。あるんじゃないか。」

「ん~、魔物ならともかく、人間同士はキツイなぁ~。」

「良い機会だ。珠洲音もこれから人間同士の殺し合いもしなきゃいけない事もあるかも知れないからな。」

「だよね~、それは分かってるけど。」

「魔王とも戦っていくなら、覚悟は決めたほうがいいぞ。」

「……。わかったわ。」

そろそろ対戦が始まるのか、対戦するチームが登場してきた。
チームは4人までなので、何処も4人で登場している。

「あ、4人だね。」

「だろうな。人数多い方が有利だからな。」

「こんな事なら、師匠とセラフィも連れてくれば良かったね。」

「そうか?まあ、お前の出番さえ恐らく無いぞ。」

「あら、フゼン。頑張って!」

「任せろ。俺の得意分野だからな。」

「じゃあ、私、フゼンの後ろで控えめに大人しく可愛いく見てるね。」

「ふん、言ってろ。」

試合は始まった。
どちらもいろいろな職業が集めている。
魔法で耐性アップや能力向上、防御を担当するもの、攻撃や魔法攻撃なんでもありだ。

「まあ~、このチームならフゼン1人でも全然楽勝ね」

「当たり前だ。」

試合は15分ほどして終了した。
相手の降参で終わった。

観客はもっと刺激が欲しいのか、降参の瞬間大きな声でブーイングが起こっていた。

その後何試合か見た後、珠洲音達も呼ばれて試合が始まろうとしていた。

対戦前は闘技場の入り口で待っている様だ。
対戦相手は反対側から出て来ていたのでその場所には居なかった。

どうやら、試合が終わったのかアナウンスが読まれている。
そして、扉が開くと闘技場は熱気に溢れていた。
どうやら、前の試合で死者が出た様だ。
興奮は絶頂に達している。

闘技場に入ると反対側からは4人のチームが現れた。

「2人か~、ラッキーだな。それに1人は女の子だぜ。」

「楽勝だな。」

明らかに珠洲音達に聞こえるように言っている。

「フゼン。殺さないでね。」

「まあ、やってみる。」

フゼンは指をボキボキと鳴らすと首を回したりしながら、軽くウォーミングアップを始めた。

「久々だな。この感じ。」

「私の事は気にしなくて良いからね。」

「ふん。分かってるよ。珠洲音がクソ強いのはよ。」

会場にアナウンスが流れてそれぞれのチームが紹介された。
ちなみに
珠洲音はアスナ。
フゼンはジャッキーだ
偽名で登録した。
何故ジャッキーなのかと、珠洲音はフゼンから聞かれたが、そう言う名前のヒーローがいた事を教えてあげると喜んでいた。

試合の開始の合図が会場に響くと、対戦相手は攻撃担当にいろいろな能力向上と防御系の魔法をかけた。

まだ、フゼンは立ったまま動かなかった。

相手の攻撃担当は剣と弓だ。
剣でフゼンに斬りかかる。
それを弓と魔法で同時に仕留める攻撃のようだ。

フゼンに剣が当たるかと思ったその時、軽く交わして弓も魔法も難なく交わした。

その時チラッと珠洲音の事を見たが、珠洲音は確かにフゼンの後ろで前で手を組み、真っ直ぐ立って微笑んでいる。
あれが、珠洲音の言う控えめに大人しく可愛らしくらしい。

だが、剣士は目標をフゼンから珠洲音に変更して、そのまま珠洲音に向かって攻撃を放った。

「ジャッキー~?私の所に来たよ~。」

高速で移動したフゼンは剣士の攻撃よりも早く脇腹に軽く一撃を入れて闘技場の壁に激突するほど吹き飛ばした。
「はい、はい、お嬢様。」

珠洲音はパチパチと手を叩いた。
「凄い~。」

「言ってろ。」

そのままフゼンは弓使いに移動して同じように軽く一撃を入れて闘技場の壁に激突させた。
相手の剣士と弓使いは失神している。

「どうする?まだやるか?」

残ったのは2人の男性だが、魔法使いだ。

「こ、降参です。」

アナウンスで相手チームの降参が告げられた。
だが、会場は静まり還っていた。
恐らく、フゼンの攻撃に皆がビックリしているのだろう。
アナウンスが流れて暫くしてから割れんばかりの大歓声が騰がった。

「楽勝だな。」

「やっぱりジャッキーは強いなぁ~。」

「そのジャッキーやめろ。」

試合が終わり控室に戻った。
だが、最初控室に入った時とは皆からの視線が違う。
化け物でも見るかのような視線が注がれている。
フゼンはそんな事を全く気にしていないが。

それから何試合か行ったが、珠洲音の出番は無いまま勝ち進んでいた。

特に強い相手もいる訳でも無くフゼン1人でも十分な相手ばかりだ。

そして、決勝。

相手は4人。
フゼンとタイプが同じの格闘家が1人、剣士が2人、魔法使いが1人。
魔法使いが女性で後の3人は男性のチームだ。

流石に決勝だけあって今までの相手とは少し違うオーラを感じる。
特に格闘家の男性は凄まじいオーラを放っている。

これまでの試合も珠洲音達同様、この格闘家が1人で全員を倒す試合が多かった。
手の内は見せずに来たようだ。

アナウンスが会場に流れると試合が始まった。

「そろそろ私も戦おうかしら。」

「あの格闘家。かなりやるな。」

「仕方ないわね。残りは私が面倒見るわ。」

相手はそうしている内にも魔法使いが男性達に能力向上の魔法を施した。
続いて防御系の魔法、素早さ向上、などサポートはバッチリと言わんばかりだ。

早速、フゼンは格闘家と拳を交えた。
能力向上をしている効果なのか、互角に渡り合っている。
剣士2人は珠洲音を挟んで剣を構えた。

「こんなに下弱い女の子を男2人で虐めるなんて。」

2人の剣士は連携を取りつつ珠洲音との距離を縮めて来た。
左から近づいて来た剣士は、素早く剣を振り切った。
珠洲音は軽く交わすと右からもう1人の剣士が剣を振り下ろしていた。
珠洲音も剣を抜くと振り下ろされた剣を受け止めた。

息つく暇もなく右から先ほど交わした感じが剣を珠洲音の胴に向けて振り切ったが、珠洲音は神速スキルで別の場所に移動した。

「中々良い連携だけど。私には通用しないかな。」

少し距離を置いていた魔法使いが詠唱を始めていた。
それを補佐するかのように剣士2人は珠洲音に連続で攻撃を開始した。
程なくして、魔法使いは詠唱を終えると床に大きな魔法陣を展開させると、召喚獣イフリートを召喚した。
イフリートは上位精霊の召喚獣であり、魔法使いが上位召喚を使ったようだ。

イフリートは身体中を業火に包み、珠洲音に襲いかかった。
燃え盛る炎の一撃を珠洲音は片手で受け止めた。

とその瞬間イフリートは光の粒となって消滅してしまった。

「今度はこっちからいきますよ。」

スッと剣を抜くと神速スキルが発動。
剣士2人と魔法使いを斬った。
斬られた3人はその場に倒れた。
一瞬の出来事で観客も言葉を失っていた。

そうしている間にフゼンも格闘家を倒していた。

「楽勝だな。」

珠洲音達の勝利を告げるアナウンスが流れると観客席は割れんばかりの歓声が上がった。

「それでは、皆様お待たせしました。このまま特別対戦を行います。」

観客はより一層盛り上がりを見せた。

「特別対戦だってさ。」

「そんなの予定にあったか?」

そうしていると反対側の扉から4人の男達が出て来た。

1人は格闘家だろうか、体格の大きな男だ。
その後ろにはすらっとした剣士が居て、並んで髪の長い魔導士のような雰囲気の男。
最後に不思議なオーラを放つ男。

珠洲音とフゼンの前までゆっくりと歩いて来ると不敵な笑みを浮かべていた。

「一番後ろの男は悪魔族ね。」

「ちょっとは骨のある奴が出て来たか?」

アナウンスが試合の開始の合図を行なった。

先ず動いたのは相手の格闘家らしき男だ。
もの凄いスピードでフゼンの前に現れると連打を繰り出した。

一瞬フゼンの方に気を取られていたら、魔導士が詠唱を終えていて、珠洲音に黒い呪縛系の魔法を繰り出した。
この魔法は相手の行動を制限する魔法だ。
黒いオーラは珠洲音を取り込んでしまった。
黒いオーラが無くなると。

「捕らえましたよ。動けないでしょ。」

珠洲音の目の前まで歩み寄って来て、右手で珠洲音の顎を持ち上げた。
と、次の瞬間珠洲音の膝蹴りが魔導士の腹部を直撃し闘技場の壁に激突した。

「あら、動けるみたいよ。」

魔導士はそのまま動かなくなった。

フゼンと格闘家は激しい撃ち合いを繰り広げている。
剣士は腰の剣を抜くと、高速で珠洲音に斬りかかる。

「中々の速さね。だけど、私には及ばない。」

逆に珠洲音が速度を上げて斬りつける。
敵の剣士は受けるので精一杯でだった。
そして、神速で剣士の身体を斬りまくり着用していた鎧さえもぼろぼろに砕いてしまった。
その場に剣士は気絶してしまい倒れ込んだ。

珠洲音の前に残っているのは、悪魔族の男。
異様な黒いオーラを放っている。

床に姿を消してしまった。

姿が見えなくなって何処からか出てくるのは珠洲音も予想している。
珠洲音の影から飛び出すと背後から長い爪を背中に突き出すとサッと珠洲音は移動して悪魔族の背後に回った。
悪魔族の男は驚いて珠洲音から離れるように後ろに跳ねて距離をとった。

「惜しいわね。普通の相手なら致命傷くらい与えられたかもね。」

一瞬だった。
次の瞬間珠洲音は消えると悪魔族の後ろに通り抜けた。
誰も目で追えるような速さでは無かった。

悪魔族の男は、全身を斬り刻まれて軽く出血を吹き出して、そのまま意識を失った。

フゼンの方はと言うと、少し相手の感触を楽しんでいるようにも見えた。
相手もかなりの速さで攻撃を繰り出していたが、徐々に攻撃は当たらなくなり、その代わりフゼンの攻撃が当たり始めて、怯み始めた。
フゼンの攻撃は徐々に速くなり見えないほどの速さになって、格闘家の男は攻撃を浴び続けて八方からパンチを受け続けて、いつの間にか気を失っていた。

「おっと、ちょっとやり過ぎたか?」

「やり過ぎよ。」

「お前に言われたく無い。」

珠洲音は3人。
もう立ち上がれないほどボロボロに傷だらけで倒れている。
恐らく死んではいない様だ。

アナウンスが2人の勝利を告げると。

「俺の部屋に連れてこい。」

何処からか男の声で会場に響き渡った。
それは正しくガルドゥールの声だ。

珠洲音達はガルドゥールに会うためにその部屋に向かうのだった。


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