毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

文字の大きさ
47 / 158
第六章 学園生活

第四十七話 恋の結末

しおりを挟む
部屋でティアとメリルは、取り留めのない話をしながらのんびり過ごしていた。
 そんな時――コンコン、とドアを叩く音。

「誰だろ?」
ティアが立ち上がって扉を開けると、そこには涙で頬を濡らしたナターシャが立っていた。

「……ナターシャ!」
驚いたティアは、すぐに彼女を部屋の中へ招き入れた。

「え?な、ナターシャ!
どうしたの?」
真っ先に声を上げたのはメリルだった。

 けれどナターシャは言葉を発さず、重たい足取りで椅子に腰を下ろす。
 ティアもメリルも、無理に問いたださず、彼女が話し出すのを静かに待った。
メリルはおどおどして落ち着かない。

 やがてナターシャは、震える声でぽつりと告げる。
「……あのね。
ブライトンと話をしたの。
……振られちゃったの」

 ティアは心の奥で――やはり、と悟っていた。

「え?ど、どういうこと?」
事情を知らないメリルだけが目を丸くする。

「ナターシャ。
……勇気を出したんだね。
偉かったよ。」
ティアの優しい言葉に、ナターシャは唇を噛んで嗚咽を漏らす。

「……ブライトンは、好きな人がいるって。
わかってた……わかってたけど……
どうしようもなくて……」
 言葉はそこで途切れ、ナターシャは堰を切ったように涙を流した。

うわぁ~!

「え?え?え?え? えぇぇぇ?」
メリルは混乱して、両手をばたつかせる。

 しばらく泣き続けたナターシャは、やっと涙を拭い、赤い目でティアを見つめた。
「……でも、私。
諦めないわ。
ティアにも……負けないつもりだから」

 ティアは小さく息を吐き、静かに頷いた。
「……うん。
偉い」

 二人は互いの熱を確かめ合うように抱き締め合った。
 その光景を見つめながら、メリルは「わたしだけ置いてけぼりだよぉ……」と涙ぐみ、三人の間に奇妙な絆と緊張感が生まれていった。

翌朝、ホテルのレストランにはクラスメイトたちが次々と集まってきていた。
 メリルとティア、そしてナターシャ。さらにブライトンや男子たち、そして女子達も続々と姿を見せる。

 席に着くと、メリルがため息をつきながら呟いた。
「……なんだか気が重いわ」

「どうして?」
ティアが首を傾げると、メリルは少し口を尖らせた。
「どうしてって……昨日あんな話を聞かされたんだもん。そりゃ気も重くなるでしょ」

「ああ、ナターシャのことね」
ティアは小さく頷いた。
「そうね……私も関わってるから、複雑っていえば複雑だけど」

 レストランはビュッフェ形式。二人は料理を取り分けながら話を続ける。

「もう、ティアったら。
もう少し落ち込んでもいいと思う」
まだ膨れた顔のメリルに、ティアは苦笑した。
「ごめん。
そうよね……ナターシャの気持ちを考えたら、私もちゃんと答えを出さなきゃ」

 席に戻り、二人は食事を始める。
 ナターシャは女子グループと一緒に、少し元気のない笑顔を見せていた。
 ブライトンは男子たちと賑やかに談笑している。――一見すると、いつも通りの光景。

 食事を終えたティアとメリルが食器を返却してレストランを出ようとしたとき、声がかかった。
「ティア! ちょっと話があるんだ」

 振り返るとブライトンが立っていた。
「メリル、ごめん。
先に戻ってて」

「……うん。わかった」

 ティアはブライトンと共に砂浜へ向かい、波音の響く浜辺を並んで歩いた。

「昨日……ナターシャから告白されたんだ。
俺のことが好きだって。
でも俺は、ティアが好きだからって断った」

「うん。ナターシャから聞いたよ」

 ブライトンは一度深呼吸をして、真っ直ぐにティアを見つめる。
「急かすつもりはない。
でも……ティアの答えが聞きたい。
今ここで」

 ティアは短く目を伏せ、そして真剣な瞳で応えた。
「……ごめんなさい。
私はブライトンとは付き合えない。
他に好きな人がいるわけじゃないけど……まだそういう気持ちになれないの。
ごめんね」

 ブライトンはしばらく黙ったまま空を見上げ、波音に耳を傾けていた。
「……わかった。
受け止めるよ。
でも、俺はまだ諦めたわけじゃないから」

「……うん。
わかった」
 ティアは小さく手を振り、ブライトンを浜辺に残して部屋へ戻った。

「おかえり」
迎えたメリルの顔は、複雑そうに曇っていた。

「どうしたの?
メリル。
元気ないね。
前は“興味あります!”って感じで根掘り葉掘り聞いてきたのに」

「さすがにそんな無神経なことはできないよ」

「ブライトンとは話して……付き合えないって断ったわ」

「……そっか」
メリルは沈んだ声で返す。

「メリル。
そんなに神妙にならないで。
メリルは明るいのが一番の取り柄なんだから」

「ちょっと!
ティア!
“それだけ”が取り柄ってどういうことよ!」

「ほらほら、それそれ! 
怒った顔も笑顔も可愛い。
それがメリルだから」
ティアの言葉に、メリルは思わず吹き出した。

「ブライトンのことはもうおしまい! 
気分変えて街に出かけよ」

「……うん! 行こう!」

 すっかり笑顔を取り戻したメリルとティアは、肩を並べて楽しく街へと繰り出していった。

 街を散策していたティアとメリルは、お土産屋をひやかしたり、可愛い雑貨を買ったり、カフェで甘いパフェを食べたりして、穏やかで楽しい時間を過ごしていた。
 店を出て歩いていると、不意に賑やかな声が響いた。

「おお! ティア! メリル!」

 声の主はマイセル。
そしてその隣にはノッティスとクラウドがいる。
「ん? 
マイセルにノッティス、それにクラウド。三人で散策してたの?」

「そのつもりだったんだけどさ!」
マイセルが勢いよく説明を始めた。
「今流行りの“ミュージックオーケストラ”って知ってるか? 
個室で好きな歌を歌える店! 
クラスの女子を誘って行きたかったんだけど、誰も行ってくれなくて。
ちょうど会ったし――ティア! メリル! 
一緒に行かないか?」

「ああ、ミュウオケでしょ! 
知ってる! 
今めっちゃ流行ってるよね! 
行きたい!」
ティアは目を輝かせ、メリルの腕を揺さぶった。
「メリル、どうする?」

「え、あはは……。
ティアが行くなら、いいけど……」
メリルは苦笑しながら答えた。乗り気ではなさそうだが、断る気もない。

「よっしゃぁぁ!」
男子三人は声を揃えてガッツポーズ。まるで勝利の雄叫びのように盛り上がった。

「ふふっ、なんか楽しそう」

「う、うん……」
ティアの無邪気な笑顔とは裏腹に、メリルは少し複雑そうな表情を浮かべていた。

 店は街の中心部にあり、外からでも賑やかな歌声と楽器音が漏れ聞こえてきた。
中に入ると、すでに大勢の客でごった返している。

「混んでるな……。
俺、ちょっと聞いてくる!」
マイセルは猛ダッシュで受付へ突撃した。

 五分ほど待つと、汗をにじませたマイセルが走って戻ってくる。
「一部屋空いてた! ラッキー!」

「やった!」
ティアは両手を叩いて大喜び。

 五人は店内を抜け、個室の部屋に案内された。扉を開けると、中にはふかふかのソファと不思議な水晶のようなマイクが置かれている。
壁には魔法のスクリーンがあり、歌に合わせて光景が映し出されるらしい。

「すごーい! 
本当に歌う場所なんだ!」

「さぁさぁ、誰が最初に歌う?」
クラウドがにやりと笑ってマイクを差し出すと、ティアの目がさらに輝いた。

「はいっ! 私からいく!」
勢いよくマイクを受け取るティア。
そのテンションに男子たちは「おおー!」と盛り上がり、メリルは肩をすくめながらも笑って見守っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

処理中です...