姫さまを倒せ!

ねね

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7 デート……?

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 自分の姿を眩ませてはみたものの。

 どうなることやら気になって帰るに帰れず、私は物陰から一行の様子を伺っていた。

 背中に大きなお昼ご飯を背負ったまま。

 一般人のフリして護衛をしている人間たちの視線が地味に突き刺さる。

 彼らって、求婚者さまたちの護衛だよね…。ここで隠れると無駄に怪しまれそうだし、もう残念な使い魔っぷりを丸出しにしておこう。

 うちの護衛がニヤついているのが視界の端に映った気もするが、それは全力でスルーあるのみ。

 今は勤務中。奴らに構ってはいけない。真面目な私は姫さまに集中するのである。

 ちくしょー、あいつら後でみてろよ。

★ ★ ★

「こちらの川岸は、公園になっておりま~す。川沿いに美味しいお菓子のお店があるので、ちょっと買って来ますねー。皆さまはどうぞ座ってお待ち下さい。」

 このデートのコンセプトは、食べ歩きかな。先程から買い食いばかりしている。人間にも食べられるものを選んで、ひたすら食べまくっているようだ。

 初対面同士のお出掛けなんだし、まあこんな物だろう。

 お腹が満ちると緊張が緩んだのか、求婚者さまたちの固さも徐々にほぐれてきた。

 一方、姫さまを含む使い魔グループは、案内に徹して一口も物を食べていない。

 これは姫さまの空腹が、かなり、心配になってくる展開である。

 う~ん。使い魔その1セレクトの貴公子さまたちは、姫さまのお目に、果たしてどれくらい美味しそうに見えているのか。

 人間との約束に則って相手を食い殺すのと、いきなり相手に襲いかかるのでは、全くワケが違う。姫さまもその辺、お考え頂けているものと思いたいが。

 ……ああ。姫さまだからな~。

 よし。もしも、万が一急が迫ったら、物陰から飛び出して姫さまの口に弁当を突っ込むぞ!

 私はひとり決意を固めてスタンバイしたのだった。

★ ★ ★

 やがて使い魔その2が、大きなアイスクリームをいくつも買ってきた。姫さまと手分けして、求婚者の皆さまにお渡しする。

 すると姫さまからチーズケーキ&チョコクッキーのアイスを受け取った“ぽちゃぽちゃ君”が、ぼそっと呟いた。

「これ、太るよな…。私たちのこと太らせて食べるつもりかな…。」

 さりげなくもヘビーな話題である。

 いや、今日の目的は違うから!
 むしろそこから何とか軌道修正しようと、我々は躍起だよ!

 使い魔その2も慌てたのか、頭上のアホ毛が触覚のごとく揺れ始めた。彼女の側にいた“中年君”が飛び退る。

 使い魔その2よ、マジで落ち着け。君が慌てるとゴッキーぶりに磨きがかかるんだ。

 一方、緊迫したその場の空気に気が付いているのかいないのか、姫さまは至極おっとりとお口を開かれた。

 曰く---、

「お城の食事の量は足りております。

 女性が食べることを想定するのであれば、わざわざ太らせて嵩増しするより、脂控えめのあっさりした赤身肉を用意するのではないでしょうか。」

 “筋肉君”がぎょっとして振りむく。彼にとっては嫌な情報だったようだ。

 姫さまは楽しげにコロコロと笑った。

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