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8 神殿がある町
しおりを挟む一晩じゅう歩き続けて。ちょうど開門のころにどこかの町に着いた。
町は高い壁でぐるりと囲まれており、その壁の分厚さがちょっとえげつない。
コレはいったい何に備えているんだろう。
でも出入りはわりとノーチェックかなー。門番は座っているだけで、その横を次々と人が通過。よほど挙動不審でなければ止められないっぽい。
つまり今は平和なのね。よーしよし。
それでは、門をくぐるぞー!
今生で初めての人間の町を拝ませて頂こう。
★ ★ ★
そこは小さな町だった。
通りは歩道も車道もなくて、ついでに街路樹もない。石で舗装された道を家畜が歩き、うねうねした細い道の先に広場がある。
奥の坂の上にあるのは神殿か……?
ひええーーっ、異文化~~っっっ。
そして視界にあふれるモノ、建物、ヒト。
これが文明だーー!わっはっは。
ふわふわと浮かれた気分のまま、通りすがりの人の良さそうなおばさんに話しかけてみる。
『すみませーん。』
はて。言葉は通じるかな?
おばさんはこちらを見つめたまま沈黙。
ううう、緊張の一瞬だ。
ていうかコレ日本語だしなー。まず通じてないだろなー。でもほら、人間だし。分かることは分かると思うんだ……多分。
『あの、この辺に宿はありますか?』
旅人を助けておくれ。そんなオーラを控えめに出してみる。
すると、おばさんが口を開いた。
「宿は今、みんな閉まっていますよ。泊まれるのは、神殿のとこぐらいじゃないかしら。」
えええええーーっっっ!?
まさかの言葉通じたよ。
こ、これが異世界あるあるか……!
私は内心で動揺しつつも、しれーっとした外面をどうにか保って社交スマイルをキメたのだった。
『あ、神殿のところで泊まれるんですね。行ってみます。ありがとうございまーす。』
いやー、まさか。
日本語でいけるとは思わなかった。
え。あれ、ってことは、もしかして。今まで私が歌いまくったアレやソレの歌詞もバッチリ周りに分かってたってこと?
……ええと……。
世の中、考えない方が良いこともある。
私は心を無にして坂を登って行った。
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