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23 人面魚のお家
しおりを挟むここはあの神殿の地下深く。黄金の山が積まれたドラゴンの寝床の一角だ。
地下にある洞窟だけれど、辺りはわりと明るい。壁や天井には鏡が幾つもあって、それが縦穴から落ちる日の光を反射するように置かれているのである。
洞窟の片隅には大きな穴が開いていて。穴の底に、この池があるのだ。
卵は池の底、私は池の中。ドラちゃんは池のほとりがそれぞれの住みか。
そうして三人、というか三匹?で長閑に暮らしてる。
まあ傍目には。ドラゴンが生け簀のお魚を眺めている不思議な絵に見えるのかなあ。
……………それで、ええと。
なんで私はまた魚になったのか。そしてどういう経緯でこうなったのか、と言いますと。
まず。人面魚は子供ができると魚の姿に戻る仕様だったのだ。
そんなの私は知らなかったけど!
急に体に異変がおきたときには本当にビックリしたわー。
海、海、海!!それしか考えられなくて。
ともかく慌てて海に戻った。
だけどドラちゃんは泳いで付いて来ようとするし、私も、こう、遠くに行きづらいというか……。
結局、浜から離れられないまま一晩がすぎて。それで翌朝、目を覚ますと。
海の中に。前日までは存在しなかった大きな穴がぱっくりと開いていた。
ドラちゃんに促されるままその穴に入ると、それが結構な長さの地下水路で。
やがてたどり着いたのがこちらのお池だった……という訳。
あれは、もしかしなくても。ドラちゃんが一晩であの水路を掘った、っぽい。
ううむ。ドラゴンパワー恐るべし。
また私は人型をとれるのか、とれるとして何時ごろそうなるのか。それは全く分からない。
でも。今の暮らしはなかなかに楽しい。
おかしなもので。魚型だと、ドラちゃんに好意を示す方法に困らないんだよね。
ドラちゃんが腕やしっぽを池に入れてきたとき。何のためらいもなくスリスリして、ピターーッとくっ付くことができる。
あなたが好き、側にいたいのだと。
間違いなく行動して見せられる。
ああ。
人型ってなんであんなに困るかなー。
初めて人型になったときには、もうずっと人型でいてやりたい!ぐらいに思ってたのに。
今は。もう少しこうして魚型でいたいなー、なんて。ちょっと思ったりもしているのだから。
我ながらまあ、現金なものだ。
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