冥界の愛

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界を渡るのは、ヒガンバナ科のスイセンの花

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ヒガンバナ科の花ならどんな姿にも擬態できる。



カロンお爺さんは ゆっくりと流れに沿う様に舟先を少し変えて櫂をとめた。
タバコに火をつけて 川面を見つめてながら話し始めた。



「 お嬢さんが、持っている花にも一見で水仙には見えない様に、少し細工をしているな。じゃが、ヒガンバナ科でそれもスイセンの花には間違いない。

水仙の花言葉はな
 花の種類や色んなによって、もちろん違うが、


黄色い水仙の花言葉には、「もう一度愛してほしい」「私のもとへ帰って」という意味で 憐憫、大切な人を失ったなどを示しておる。

白い水仙の花言葉には、「尊敬」「神秘」という意味で 尊敬の念を伝えたい相手と渡す時もある。


同じ水仙の花でも種類のよって「尊敬」「報われぬ恋、想い」の花も有れば「自己愛」「自惚れ」「自死」なんて意味のある水仙もあるな。


他にも
鈴蘭に擬態した鈴蘭水仙は一見間違いやすい。
花言葉は
「純粋」「純潔」「汚れなき心」「皆をひきつける魅力」


クチベニスイセンの花言葉には、「素敵な装い」「詩人の心」で、
見た目の美しさと繋がる意味を持つ物は覚えやすい。花心が赤く染まり、まるで口紅をしているようなです姿だからそこが重要じゃな。」



カロンのお爺さんが私を慰める様に、花が好きなのを知ってお話してくれた。


なのに、ミノスさんが



「俺、カロンの爺さんがこんなに話すの初めて見た。1672文字も喋った。
普段はホント無口なんだぜ。だからわかりにくいけど、好き嫌い激しいんだ、お嬢さんはよっぽど気に入られたんだなぁ。」

なんて言うから また静かに櫂を漕ぎ始めた。


そんなミノスさんは ニコニコしてカロンのお爺さんを見ながら、

「俺なんて花なんてさっぱりわからねえ。爺さんは、すごく詳しいね 
さすが亀の甲より年の功だね。

しっかし カロンの爺さんに花言葉なんて似合わねー。案外ロマンチックなんだ。」

そう言うと、今度はカロンお爺さんが、


「ロマンが何かわからないが、花言葉は隠し言葉じゃよ。

例えば道で咲いてる花を何本かわからない様に手折って置く。他にも、ここには咲きそうに無い花をさりげなく飾るとかじゃな。

もうすぐ来るとか、二度と会えないとか 反対に会いたい 嬉しい知らせ あなたを思うとか。そんな暗号に乗せて誰にもわからない様に その後に来た仲間に花言葉を使って知らせるんだ。
援軍すぐ来る、反対に来ない。戦況悪し、大将は脱出済みとか。
他にも押し花やら何気なく荷物に紛れ込ませて 夜の奇襲を中にいてる仲間に知らせるとか色んな隠語で使うんだ。さっきのクチベニスイセンとかも口には気をつけろ、つまり口から入るものに気をつけろは毒入りの食べ物や飲み物などをその花の絵を示す。
擬態しておる花の意味は、あいつは裏切り者だとか、偽者だとか、間者だとかじゃな。花の名前をさりげなく入れて知らせる時もある。

まぁ 花にくわしいのはそんな隠し言葉だけの為ではないがの。 
な?お嬢さん」


カロンのお爺さんは私にニッコリ笑ってくれた。


「はい!何よりこの子達 花の気が大好きです。泣いている人をみるとそっと慰めて咲いてくれて、嬉しい時には一緒に揺れてくれます。絶望してる人のそばでじっとただ寄り添って見守り続けてくれてます。ある日その花の美しさに気がつくんです。美しいと感じる事ができたら絶望からの脱却の一歩なんですね。
こんなに悲しんでいるのに 花はなんて呑気に咲いているんだって、怒っても、ただ見守り咲いてくれてます。
そのうち、蕾から一生懸命に咲き始めて枯れて行く姿を見て、私達も移り行く景色の中の花の一本に過ぎないって同化するわ。
私達の悲しみも執着も もちろん喜びでさえ花の枯れるまでの過程と何も違わないって。

だから、その身を持って教えてくれたり、慰めてくれるこの子達が大好きなんです。」


「どうしたら その子ヒガンバナ科の花が元気になるか、じゃったよな?
それは そのミノの方が知ってるわ」


急に振られてミノスさんはビックリした顔で首を振った。

「いやいや、知らないよ!
ただ、主の所に持って行くんだ。
『電池切れですー。充電よろしく』って預けると  しばらくして元の姿で帰って来る。
そしたらまた異界に植えて来るだけ。『ご苦労さん、またよろしくねー』ってお願いして。
そんな この子??この花と心を通わせた事なかったからさ。」


ウフフ、ミノスさんなんだか焦ってる。じっと私の手のひらの花を見つめている。 ちょっと可愛いかも。


そんな事を思っていると カロンなお爺さんが

「向こうに 白い花畑が見えるかい?
アスポデロスと言って、大きく分けると百合の仲間なんじゃが、ここでは一番多く咲いている。
あれを抜けると もうすぐハデス様の館じゃな」

って教えてくれた。だけどその名前を聞いてドキッとした。









「冥界の王様、ハデス様はどんな方なのかしら?」








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