冥界の愛

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気になるあの花

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 ヘルメスの観察眼


「コレーが持ち帰った鉢植えの花はどうなりましたか?」


 ヘルメスは珍しく正直にデーメテールに、自分が気になった事を話した。

 冥界の結界線、コレーの場合は冥界からの出口だったネクロマンディオの洞窟から出てきた際の様子だ。

 デーメテールが「えーと?花?鉢植え?」と、思い出そうと怪訝な顔をしている間にも続ける。


 「あの時、ただ、一つ気になった事はありました。

 向こうでコレーは、覚醒済みになったはずなのに、界渡りの花が必要だったのか?持ち帰った時には萎れていたから、やっぱり界渡りの花の力を使い切った筈なんですが。
 てっきり、忘却術で覚醒した事さえも冥界での出来事の一つとして、忘れていると思った。だから覚醒による力の使い方さえも忘れているか、理解していないんだろうなと、考えた。それならば結界を自身では結界超過は無理だろうと。それでその時は納得したんだ。
本当にコレーが嘘をついて黙ってるだけには見えなかったし。

 だけど、その後のコレー自身の御力ってやつ、花や木や畑を一瞬で再生する力を見せつけられて、十二分に覚醒の力を使いこなしてると思ったんです。
もしかしたら、覚醒した事や覚醒した際の何か出来事だけが忘却術で綺麗に記憶から消されてるんでしょう。
 だって、覚醒には何かきっかけになるイベントが普通あるでしょ?人にもよるけど(神にもよる?)覚醒のきっかけになるイベントって、なかなか忘れなれない出来事だよね?それさえも強烈な忘却術がかけられている。

 
 だけど、あの花が妙に気になったんです。何がだろう?大事そうに持ってたから?
 でもコレーは元々、どんな花でも大事にしますよね?そりゃ地上の花の娘で、天界でも花の女神だしね。
 あの花が、まるで二人して私を前に沈黙しているような。そう、嘘はついてないけど黙っているだけ、言わないだけってそんな感じです。
 なんか言ってる事、はっきりしなくて申し訳ないですが。」



忘れられたイベント。

使用済みの結界超過の花を持ってる。

覚醒後の御力は実は十分使えている。


 ヘルメスの白銀の神はサラサラの長髪で後ろに一つに纏めている。その面立ちはどちらかと言うと母譲りなのだろう。
少年さを残ると言うよりも、中世的でもあり、いつもは他人を斜に見る癖も今は出てなくて本気でコレーの事を考えてくれているのがわかった。
 横でヘルメスの話しを静かに聞いていたアポロンも、その頤に細くて長い指を当てて何かかんがえている。

「ありがとうございます。教えてくれて。あまりそのまま植木鉢🪴の事は記憶がないのだけど、部屋にあるはずだから見てみます。
とりあえず、帰って植木鉢や花の事を聞いてみるわ。」


 デーメテールは考えてる。

 あの子が迷い込んでしまった冥界。暗い暗い死者の世界。それに繋がる物が例え鉢植えの花の一本だとしてもまだあの子の傍にあると思うと途端に不安になる。
早く帰って処分したいが、そう言うとあの子は傷つくだろうから。せめて家から遠くに置きたい。なんとか説得して鉢から大地に帰してあげようと、あの子の部屋から見える庭ではなく野原にでも植え替えるようにしよう。
 でも、もう力を使って枯れてる筈なんだけど。コレーの力が強大なんだろうか?ギリギリ萎れる程度に力を注ぎ込ん出るのかしら?

 実は、あの子はどんな花とも会話ができたり、その花が見てきた映像が見えてしまう事は、言わない方がいいだろう。そう、花が咲いてる所で秘密の会話なんてコレーにかかれば全く無意味になってしまう。そんな事がバレれば、また狙われてしまうかもしれない。


 ヘルメスとアポロンに御礼を告げて別れる時に、二人ともコレーの状態が続くようならばまた冥界に使いに行ってもよいと話してくれた。またゼウスに相談して力を貸して貰えるように掛け合う事もできると、何やら弱みを握ってると笑っていた。何か有れば知らせてほしいと迄言ってくれた。
 コレーの事、どこかの下手に乱暴な馬鹿に狙われるよりは、幼馴染でコレーとしても気心が知れている相手の二人のどちらかならば求婚相手として考えてやってもいいと母は考え始めた。
 
 まぁ、まだまだ先だけどね。もう少し私の娘のままでいて頂戴ね、コレー。







 そうして、デーメテールは地上のコレーと暮らす神殿に帰ってきた。



 天界と、地上界でも 流れる時の時間が違う。デーメテールが辿りつくと何やらコレー付きのお世話ニンフのメンテが急いでやってきた。


「お帰りなさいませデーメテール様。お待ちしておりました。」

「何かあったのね?」

「はい、最近この辺りでおかしな噂話があって。皆が怖がっております。それが実は、コレー様に関係してるのでは無いかと思っております。」

「え?コレーが関わってる?おかしな噂ってどんな?」

「それが、まぁ語られる噂の中には随分と誇張されてまるで怪談の様になってるものもありますが…」

「怪談??またコレーとは究極と言うか反対側みたいな話ね」

「全くそうです。しかしここしばらくの夜中のコレー様に至っては。そんな風になってしまうのもわからなくないのです。」

「コレーはまだ夜中に苦しんでるの?泣いてる?」

メンテは妖精の中でもとびきり美女だったが綺麗な儚げな顔を曇らせて頷く。
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