冥界の愛

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仮初の姿と本来の姿

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騒ぎ過ぎた太陽が眠りにつき、静寂なる夜に戻ると、多くの物が本来の姿を取り戻す。

デーメテールの神殿では、眠りについたコレーを心配する母のデーメテールが、娘の部屋を訪れていた。



「全く。娘の部屋に入るのにどれだけ力を使わないといけないのかしら。
あんな事があったから、守護(オーラ)を鉄壁にしたんだけど。それにしても、私に身に覚えない結界オーラが多すぎるわ」

デーメテールは、母親である自分以外のコレーを守る結界の多さに驚き、部屋の中に入る為の結界解除に辟易していた。

しかも、部屋に入っても、娘自身の周りにまだまだ守りのオーラが幾重にも視えている。

 デーメテールはうんざりしながらオーラを数えていた。

 コレー自身のオーラでしょ、母親である私のオーラ、不本意にも肉体上のコレーの父親のあいつ(ゼウス)のオーラもあるし、もっと不本意なのは、コレーにとっては祖母(レア)のオーラなんていつの間につけたんだろう。まぁ あちらさんにとっては、次代の継承者らしいけど。
もう、なんで甥っ子やあの子の幼馴染のオーラがあるのよ。
不本意のオーラは守護じゃなくて、監視の目の纏わりつきのオーラだと思っていたんだけど。やっぱり守りの結界のオーラよね。
もう。他にもどこで知り合ったと思う様ぐらいのオーラの数だわ。まぁ昔からたらし込みはあったし、いつの間にか懐かれていたから。

だけど、一番厄介で心配なこのオーラ。分厚く、半分コレーと溶けかかっているオーラ。
実は、私の周囲にもあるけど、ここまでぶ厚くは無いわねぇハデス兄さん?
こんなオーラ纏っていて、この娘暑苦しくないのかしら。

「はぁ。ここからよね」

あまりに多いオーラのせいで、全くの別人の姿に見えるのかしら?
昼には、たまに幻想の様に被る程度だったけど。今はバッチリ黒髪で、しかも背も体型もずっと大人びてる姿だわ。これはコレーがただ成長した姿というよりトランスフォーマーだわ。別人。
基本はコレーだけど。
今は、コレー以外の何かが物?者が混じっている。完全融合している?うーん、やっぱりこんな混ざり方は見た事ないんだけど。全ての細胞に、別の何かが溶け込んでいるなんて。こんな高度な技はあり得ないわ。
しかも、精神には作用させていないなんて。本人に気づかせていないって事よね。完全に乗っ取って精神を操るなら、精神にだけ溶け込ませれば簡単。肉体に完全融合させる意味がない。
いったい、何が目的なんだろう。
結界の中で、決して異物では無いとオーラが認識している。じゃあ何?



そうこう考えている間に、今まで別人でも穏やかだったコレーの表情が陰り、イヤイヤと首を振っている。そして悲しそうに涙を流している。寝ていても、泣き声を立てる事なく、啜り泣いている。しかし、ここしばらく、その哀しそうな泣き声が部屋から漏れ出ている。

思わず駆け寄って、慰めてやりたくなるのを我慢して見守っている。

すると、コレーは起き上がり部屋から飛び出していく。


どこに行くのか?
半分違っていて欲しいと思いながらも、コレーの後をついていく。
部屋を出るとコレーの子守り妖精のメンテが灯りをもって待っていた。彼女もずっと気掛かりだったのだろう。妖精王の娘であるメンテにはコレーの変化がわかっていたんだろう。



人は眠りについて、闇の属性の物達は目覚める。人の中にも夜にならないと覚醒できない者もいてる。いや、できない物もいてる。獣も虫もそうだ。本来ならそちらの姿こそが自然で尊ばれる形だったのだが。
時代なのだろうか?
昼にこそ安眠する物達は眠りの性質を正しく捉えているのかもしれない。仮初の肉体を置いて魂の解放は本来の姿を取り戻すその瞬間を。

暗い暗いただ暗闇の中、コレーの透き通る霊は迷いなく森の中に入っていく。
ニンフのメンテーと二人で小さな灯りを持ち、静寂の中で後を追いかける。
見失う事はないが、お互いに無口で。外の気温の寒さに二人して少し震える。


私、なんでこんな事してるのかしら?
こうなる前に娘に正直に聞いてみることもできたんじゃないかしら?
あの娘は、なんでも無いふりをしていたわ。だから聞いても「大丈夫だ」としか言わないだろうと、勝手に思っていただけかも。きちんと聞く姿勢なら答えを出したかもしれない。
いいえ、その答えが恐ろしくて。思い出させるのは可哀想だと、忘却の術がかかっているから、その問いに答えれる訳がない筈だと私自身にそう言い聞かせていたんだわ。
こうなると予感していて。
もう戻れないの?
いったいコレーは何になったの?

そんな事を考えながらふと気がつくと
随分と懐かしい場所に着いた。

本当に久しぶりだわ、ここに来るのは




「久しぶりです」

あら? 声に出ちゃってた?



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