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第三章 辺境派遣軍
第四十九話 鼠人の生態と皇太子の上申
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--反攻作戦 開始から二日目の夜。
帝国機甲兵団を率いるヒマジン伯爵の副官ロックス大佐がジークの部屋を訪れ、部屋のドアをノックする。
「帝国機甲兵団のロックスです」
部屋の中からジークが答える。
「入れ」
ロックスは、ジークの部屋の入り口で一礼する。
「失礼します」
ジークは机で執務中であり、ソフィアとアストリッドがジークの傍にいた。
机で執務中のジークがロックスに尋ねる。
「どうした?」
ロックスは、深刻な面持ちでジークに告げる。
「殿下に御見せしたいものが。ご足労願います」
「判った」
ジークとソフィア、アストリッドの三人は、ロックスに連れられて部屋を出ると、飛行空母の倉庫区画の一室に入る。
ジークたちが部屋に入ると、中には鉄格子の付いた四メートル程の檻があった。
檻を見たジークが口を開く。
「これは!?」
ロックスが答える。
「鼠人の母子です。昨日の我が軍の反攻作戦時に捕えました」
檻の中には、鼠人の母子が捕えられており、母親らしき鼠人が一体と、その子供らしき鼠人が八体いた。
ジークは、ロックスに尋ねる。
「こんな奴らを捕えて、どうするつもりだ?」
ロックスが答える。
「調査結果ですが、鼠人は一度の出産で六~十体ほど子供を産むようです。鼠人の繁殖力は極めて強く、生後三ヶ月から出産可能で一年に六~七回出産し、一度に六~十体程の子供を産むということです。算術的には、鼠人の一組のつがいから、一年で九千四百三十四体に増加するという計算になります。……まさに爆発的な繁殖力です」
「何が言いたい?」
「……仮に帝国領内から鼠人を追い払っても、爆発的繁殖力を持つ鼠人は、直ぐに勢力を立て直し、食糧を求めて、再び帝国領内に侵攻してくるでしょう」
「つまり?」
「……鼠人の本拠地、生息地を叩く必要があります」
「鼠人の本拠地は、東のトラキア連邦領内だぞ? 我が軍にトラキア連邦領に越境し、鼠人の本拠地を叩けと言うのか?」
「おっしゃるとおりです」
「ふむ。越境作戦となれば、いささか私の手に余るな。私から父上に上申しよう。良く知らせてくれた。礼を言うぞ」
ジークの言葉にロックスは一礼する。
「ありがとうございます」
「この鼠人《スケーブン》は、帝国魔法科学省に送れ。『機密扱い』だ」
「了解致しました」
ジークたち三人は、倉庫の一室からジークの部屋に戻る。
ジークは、羊皮紙に上申書をしたためると、フクロウ便で皇宮にいる父であるラインハルトに上申書を送った。
--翌朝。
アレクたちがいつもどおり飛行空母のラウンジで朝食を取っていると、ジカイラがアレクたちの元にやってくる。
ジカイラが口を開く。
「食事中のところ、すまないな。アレク、ルイーゼ。二人は食べ終わったら、オレのところに来てくれ」
「判りました」
アレクがジカイラに答えるとエルザが冷やかす。
「ジカイラ中佐から呼び出しなんて。アレク、また、何かやらかしたの?」
「え!?」
アレクが驚くと、エルザの冷やかしにナディアが便乗する。
「きっと、二人が子作りするのは、まだ早いってことでしょ?」
ルイーゼは、顔を真っ赤に赤面させてナディアに反論する。
「ナディア! 『子作り』なんて、まだしてないわ! 朝から冷やかさないでよ!」
すかさずエルザは、ルイーゼにツッコミを入れる。
「『まだしてない』って事は、『これからするつもり』って事ね!」
「ええっ!?」
エルザの言葉にアレクとルイーゼは驚いて絶句するが、絶句する二人を見てアルは呆れたように口を開く。
「まぁ……、そういうことだろうな」
ナタリーも苦笑いしながら口を開く。
「二人は、大人の階段を登っているから……ねぇ?」
ドミトリーも口を開く。
「まるで煩悩の塊のようだ……」
トゥルムも呆れたように口を開く。
「お前達は、本当に朝から元気だな」
小隊の仲間たちから冷やかされながら朝食を食べ終えたアレクとルイーゼは、ジカイラの部屋に向かう。
部屋には、ジカイラとヒナがいた。
部屋を訪ねてきた二人にジカイラが告げる。
「皇太子殿下がお前達を呼んでいる。一緒に来てくれ」
アレクとルイーゼは、ジカイラ中佐とヒナ大尉に連れられて皇太子である兄ジークの元へ向かった。
ジカイラとアレクたちはノックしてジークの待つ貴賓室に入る。
「失礼します」
皇太子である兄ジークは、ソファーに座り、護衛である二人の美女ソフィアとアストリッドと共に貴賓室にいた。
傍らにはヒマジン伯爵とロックス大佐が立っていた。
貴賓室のテーブルには、この地域一帯の地図が置いてあった。ヨーイチ男爵領とその東のトラキア連邦の地図であった。
ジークが口を開く。
「よく来たな。まぁ、座れ」
「はい」
アレクとルイーゼは、貴賓室のソファーに座り、ジカイラとヒナは別のソファーに座る。
呼び集めた者たちがソファーに座ったことを見届けたジークは、口を開く。
「揃ったな。皆、聞いて欲しい。実は、私から父上に『トラキア連邦への越境作戦』を上申した」
部屋にいる者たちはジークの言葉に驚く。
ジークが続ける。
「鼠人の繁殖力は爆発的であることが判った。計算上は、鼠人の一組のつがいから、一年で一年で九千四百三十四体に増加するという計算になる」
ヒマジンが口を開く。
「驚いたな。そんなに凄いのか」
ロックスは無言で頷く。
ジカイラも口を開く。
「それじゃ、いくら食糧があっても足りなくなるわな」
ジークが続ける。
「……信じられるか? ……仮に我が軍が国境まで鼠人達を駆逐しても、奴らは直ぐに勢力を立て直し、食糧を求めて再び帝国領内に侵攻してくる事が予測される。それで、トラキア連邦領内にある鼠人達の本拠地を叩く必要がある」
アレクが口を開く。
「……それで、兄上が父上に『越境作戦』を上申したと?」
「そうだ」
「外国と……。トラキア連邦と戦争になりますよ?」
「それは、父上が決めるだろう。……この件で、父上たちが間もなくここへ来られるそうだ」
アレクが驚く。
「父上がここに!?」
「そうだ。久しぶりにお前も父上に会うと良い。それでここに呼んだのだ」
ジークとアレクの話が一段落したところで、貴賓室の一角に転移門が現れる。
転移門から現れたのは、アレクとジークの父であるバレンシュテット帝国皇帝ラインハルトであった。
帝国機甲兵団を率いるヒマジン伯爵の副官ロックス大佐がジークの部屋を訪れ、部屋のドアをノックする。
「帝国機甲兵団のロックスです」
部屋の中からジークが答える。
「入れ」
ロックスは、ジークの部屋の入り口で一礼する。
「失礼します」
ジークは机で執務中であり、ソフィアとアストリッドがジークの傍にいた。
机で執務中のジークがロックスに尋ねる。
「どうした?」
ロックスは、深刻な面持ちでジークに告げる。
「殿下に御見せしたいものが。ご足労願います」
「判った」
ジークとソフィア、アストリッドの三人は、ロックスに連れられて部屋を出ると、飛行空母の倉庫区画の一室に入る。
ジークたちが部屋に入ると、中には鉄格子の付いた四メートル程の檻があった。
檻を見たジークが口を開く。
「これは!?」
ロックスが答える。
「鼠人の母子です。昨日の我が軍の反攻作戦時に捕えました」
檻の中には、鼠人の母子が捕えられており、母親らしき鼠人が一体と、その子供らしき鼠人が八体いた。
ジークは、ロックスに尋ねる。
「こんな奴らを捕えて、どうするつもりだ?」
ロックスが答える。
「調査結果ですが、鼠人は一度の出産で六~十体ほど子供を産むようです。鼠人の繁殖力は極めて強く、生後三ヶ月から出産可能で一年に六~七回出産し、一度に六~十体程の子供を産むということです。算術的には、鼠人の一組のつがいから、一年で九千四百三十四体に増加するという計算になります。……まさに爆発的な繁殖力です」
「何が言いたい?」
「……仮に帝国領内から鼠人を追い払っても、爆発的繁殖力を持つ鼠人は、直ぐに勢力を立て直し、食糧を求めて、再び帝国領内に侵攻してくるでしょう」
「つまり?」
「……鼠人の本拠地、生息地を叩く必要があります」
「鼠人の本拠地は、東のトラキア連邦領内だぞ? 我が軍にトラキア連邦領に越境し、鼠人の本拠地を叩けと言うのか?」
「おっしゃるとおりです」
「ふむ。越境作戦となれば、いささか私の手に余るな。私から父上に上申しよう。良く知らせてくれた。礼を言うぞ」
ジークの言葉にロックスは一礼する。
「ありがとうございます」
「この鼠人《スケーブン》は、帝国魔法科学省に送れ。『機密扱い』だ」
「了解致しました」
ジークたち三人は、倉庫の一室からジークの部屋に戻る。
ジークは、羊皮紙に上申書をしたためると、フクロウ便で皇宮にいる父であるラインハルトに上申書を送った。
--翌朝。
アレクたちがいつもどおり飛行空母のラウンジで朝食を取っていると、ジカイラがアレクたちの元にやってくる。
ジカイラが口を開く。
「食事中のところ、すまないな。アレク、ルイーゼ。二人は食べ終わったら、オレのところに来てくれ」
「判りました」
アレクがジカイラに答えるとエルザが冷やかす。
「ジカイラ中佐から呼び出しなんて。アレク、また、何かやらかしたの?」
「え!?」
アレクが驚くと、エルザの冷やかしにナディアが便乗する。
「きっと、二人が子作りするのは、まだ早いってことでしょ?」
ルイーゼは、顔を真っ赤に赤面させてナディアに反論する。
「ナディア! 『子作り』なんて、まだしてないわ! 朝から冷やかさないでよ!」
すかさずエルザは、ルイーゼにツッコミを入れる。
「『まだしてない』って事は、『これからするつもり』って事ね!」
「ええっ!?」
エルザの言葉にアレクとルイーゼは驚いて絶句するが、絶句する二人を見てアルは呆れたように口を開く。
「まぁ……、そういうことだろうな」
ナタリーも苦笑いしながら口を開く。
「二人は、大人の階段を登っているから……ねぇ?」
ドミトリーも口を開く。
「まるで煩悩の塊のようだ……」
トゥルムも呆れたように口を開く。
「お前達は、本当に朝から元気だな」
小隊の仲間たちから冷やかされながら朝食を食べ終えたアレクとルイーゼは、ジカイラの部屋に向かう。
部屋には、ジカイラとヒナがいた。
部屋を訪ねてきた二人にジカイラが告げる。
「皇太子殿下がお前達を呼んでいる。一緒に来てくれ」
アレクとルイーゼは、ジカイラ中佐とヒナ大尉に連れられて皇太子である兄ジークの元へ向かった。
ジカイラとアレクたちはノックしてジークの待つ貴賓室に入る。
「失礼します」
皇太子である兄ジークは、ソファーに座り、護衛である二人の美女ソフィアとアストリッドと共に貴賓室にいた。
傍らにはヒマジン伯爵とロックス大佐が立っていた。
貴賓室のテーブルには、この地域一帯の地図が置いてあった。ヨーイチ男爵領とその東のトラキア連邦の地図であった。
ジークが口を開く。
「よく来たな。まぁ、座れ」
「はい」
アレクとルイーゼは、貴賓室のソファーに座り、ジカイラとヒナは別のソファーに座る。
呼び集めた者たちがソファーに座ったことを見届けたジークは、口を開く。
「揃ったな。皆、聞いて欲しい。実は、私から父上に『トラキア連邦への越境作戦』を上申した」
部屋にいる者たちはジークの言葉に驚く。
ジークが続ける。
「鼠人の繁殖力は爆発的であることが判った。計算上は、鼠人の一組のつがいから、一年で一年で九千四百三十四体に増加するという計算になる」
ヒマジンが口を開く。
「驚いたな。そんなに凄いのか」
ロックスは無言で頷く。
ジカイラも口を開く。
「それじゃ、いくら食糧があっても足りなくなるわな」
ジークが続ける。
「……信じられるか? ……仮に我が軍が国境まで鼠人達を駆逐しても、奴らは直ぐに勢力を立て直し、食糧を求めて再び帝国領内に侵攻してくる事が予測される。それで、トラキア連邦領内にある鼠人達の本拠地を叩く必要がある」
アレクが口を開く。
「……それで、兄上が父上に『越境作戦』を上申したと?」
「そうだ」
「外国と……。トラキア連邦と戦争になりますよ?」
「それは、父上が決めるだろう。……この件で、父上たちが間もなくここへ来られるそうだ」
アレクが驚く。
「父上がここに!?」
「そうだ。久しぶりにお前も父上に会うと良い。それでここに呼んだのだ」
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