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第二章 国渡りへ
第四十七話 逢いに行く
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私達は数日ぶりに魔軍騎士団本部へ来ていた。
本当はこんな所に来たくなかったんだけど‥‥。
ナディアを見送りたかった。
なのに、モノンが強引に魔軍本部へ連れて来たのだ。
「どうしても行きたいんだ!」とごねると、代わりに使いを出すからそれに伝言させると言って、私を説得した。
何だか、モノンもとても困ってる風だったし‥‥これ以上我儘を言うのも悪いかなと思い、仕方なく首を縦に振った。
まぁ‥‥二度と会えないわけじゃないんだし‥‥
私が会いに行けばいいんだ。
ただそれだけの事‥‥。
私が伝言を伝え終わると、背後から「シロナ~!」と呼ぶ声が。
振り返ると、手を振りながらニコニコして歩いてくるジェイトが居た。
「え‥‥ジェイト?何でここに?」
「何でって‥‥モノじぃに来いって呼ばれたんだ。‥‥もしかしてルークとシロナも?」
「先生の無理矢理だがな…。呼ばれた理由も俺達は聞かされてない」
「ふ~ん」
てっきり私達二人だけだと思ってた…。
ジェイトも呼ばれてたなんて‥‥。
この先の出来事を色々想像してみたが、全く先が読めない。
不安は募る一方‥‥。
「皆さ~ん!何ぼーっとしてるんですかー?行きますよぉ」
長い階段を登った先でモノンが叫ぶ。
考えても仕方ないので、とりあえず3人はあとをついて行くことにした。
着いた先は、やはり団長執務室。
モノン先頭にルークが続き、その後をジェイトと私がついて中に入る。
「団長!連れて来ましたよ~」
スカーレットはいつもの椅子に座り、何やら書類を片付けていた。
いつもなら窓を眺めていたりするのに、今日は忙しいらしい‥‥。
やっぱり何かあったのか?
「あぁご苦労。少し待ってくれ」
しばらく棒立ちでスカーレットを待っていると、肩に乗っているコハクが何かに反応し突然周りを警戒し始めた。
あたりをキョロキョロして落ち着きがなく、爪が肩にくい込んで少し痛い‥‥。
「?
どうしたコハ‥──キュッッ?!?」
コハクの頭を撫でようとしたその時!
突然私のお尻を何かが触った!
「ほぅほ~ぅ·····。ナルホドー?胸は寂しいけどコチラは中々の柔らかさ·····!
まるでマシュマロのようだね~!」
聞いた事のある声。
忘れる訳が無い!この声の主は間違いない!
このクソ忌々しいおちゃらけた態度!!
カーッと顔が熱くなるのが分かった。
その様子を部屋にいる全員が見ているのだから余計に恥ずかしくなる。
「こ、こここ、このっ!!!
クソエロフーーーーーーーー!!!!!」
わあーーー!と叫び散らかしながら私は背後のレヴォルに回し蹴りを放つ。
しかし、その攻撃は空振りに終わり、レヴォルはニヤニヤと笑いながら簡単に躱して頭の後ろをポリポリとかいていた。
「いやいや、最近の若者は口が悪いなーもー
オレ、こーわーい~
触り心地が最高だよって褒めただけなのにね」
これがいつもの事なのだろうか‥‥。
スカーレットやモノンは深ーいため息をついているし、ジェイトはクスクス笑い、ルークは何故か硬直している。
私は触られたお尻を両手で隠し、超!警戒態勢をとっていた。
「だ!!だだだ、誰がっ!そんなの喜ぶかっ!!!!バカっ!!!」
《シロナがボサっとしてっからだろ、阿呆》
精神世界でボソッと呟くロギ。
最近私の言葉が荒くなってきているような気はしていた。
クソとか言ってしまうようになってしまっているし‥‥。
それは‥‥完全に!ロギとの口喧嘩のせいだろう。
ロギめ‥‥後で覚えとけよ‥‥!
最後の書類を片付け、棚にしまっているスカーレットが「さて」と言いながら棚の扉を閉めた。
「その辺にしておいてくれ師父。
私はこの後も予定があるんだ·····。時間が惜しい」
「いや~ゴメンって!手が勝手に動いちゃってね~
あ、もしかしてヤキモチ妬いちゃった?
や~も~、オレってば可愛い弟子をもったな~!」
一瞬風が吹いた。
レヴォルの方へ向かってヒュッと風が吹き、髪が流れた。
でも窓など空いていない。
空いていないが‥‥スカーレットが何かを投げた後のポーズをとっている。
バッと振り返りレヴォルの方をむくと、レヴォルの顔スレスレで木の扉に直剣が突き刺さっていた。
シーンと静まり返る空間。
この状況で血の気が引かない人間がどこに居るだろうか‥‥。
‥‥‥‥いや、いたな‥‥二人。
レヴォルは冷や汗一つかかず、笑顔を保ったまま。
そしてその光景を、何故かモノンもニコニコと見つめていた。
この二人‥‥結構似てる‥‥のか???
血の気が引く中、スカーレットは殺気を放ちながら椅子にかけた。
「‥‥では‥話を進めようか。
‥‥精霊術師」
ゴクンと唾を飲み込み、気を引き締める。
一体何が話されるのか‥‥。
────────────────────
その頃ナディアは比較的見た目が人間に近い保母さんに連れられ、村の近くまで来ていた。
保母さんは頭に布を巻き、魔物であることを隠して人間の所まで来たのだが、本来人間慣れしていない魔物がこの様に村の近くまで来ることは無い。
ナディアは例外中の例外なのだ。
それだけ、人間は魔物にとって危険な存在だったから‥‥。
しかし、人間であるナディアに抱かれている兎のぬいぐるみには、可愛らしい花の冠が飾られていた。
施設を出る時、いじめっ子達が花を集めて作ってくれた。
「あの時はごめんよ。僕達の事を忘れないでね」と言葉を添えて‥‥。
怪我が絶えなかった日常。
癒えない心の傷。
それは、ドラゴンを連れた灰色の髪のお姉ちゃんが現れてから全てが変わった。
私を見る目が変わり、虐めてくる子はいなくなって一緒に遊んでくれる友達になってくれた。
嬉しかった‥‥。
ここでずっと暮らしてもいいとも思えた。
でも、私を引き取ってくれる人が居るって言われて‥‥。
それは喜ばしい事‥‥なのに、ここから離れたくない。そういう感情が込み上げてくる。
せっかく仲良くなれたのに。
犬のお兄ちゃんも優しくしてくれたのに。
カッコよくて笑顔の可愛いお姉ちゃんも出来たのに‥‥。
花飾りを貰った時、正直まだ迷ってた。
このままサヨナラしちゃっていいのかなって。
今ならまだ断れるんじゃないかって。
その時、魔軍の使いの人がやって来た。
「闇精霊術師からの伝言だ」と言って‥‥。
そんな長くはなかったけど、その言葉は私の足を動かす決め手となった。
前を向く覚悟をくれた。
勇気をくれた!
お姉ちゃんとお揃いの白いローブを羽織り、空を見上げ‥‥
私は‥‥‥‥足を前に出す。
《住む場所が違ったとしても、住む世界は同じだから。私は会いに行くぞ‥‥この空が繋がっている限り‥‥》
その言葉を胸に‥‥‥‥。
本当はこんな所に来たくなかったんだけど‥‥。
ナディアを見送りたかった。
なのに、モノンが強引に魔軍本部へ連れて来たのだ。
「どうしても行きたいんだ!」とごねると、代わりに使いを出すからそれに伝言させると言って、私を説得した。
何だか、モノンもとても困ってる風だったし‥‥これ以上我儘を言うのも悪いかなと思い、仕方なく首を縦に振った。
まぁ‥‥二度と会えないわけじゃないんだし‥‥
私が会いに行けばいいんだ。
ただそれだけの事‥‥。
私が伝言を伝え終わると、背後から「シロナ~!」と呼ぶ声が。
振り返ると、手を振りながらニコニコして歩いてくるジェイトが居た。
「え‥‥ジェイト?何でここに?」
「何でって‥‥モノじぃに来いって呼ばれたんだ。‥‥もしかしてルークとシロナも?」
「先生の無理矢理だがな…。呼ばれた理由も俺達は聞かされてない」
「ふ~ん」
てっきり私達二人だけだと思ってた…。
ジェイトも呼ばれてたなんて‥‥。
この先の出来事を色々想像してみたが、全く先が読めない。
不安は募る一方‥‥。
「皆さ~ん!何ぼーっとしてるんですかー?行きますよぉ」
長い階段を登った先でモノンが叫ぶ。
考えても仕方ないので、とりあえず3人はあとをついて行くことにした。
着いた先は、やはり団長執務室。
モノン先頭にルークが続き、その後をジェイトと私がついて中に入る。
「団長!連れて来ましたよ~」
スカーレットはいつもの椅子に座り、何やら書類を片付けていた。
いつもなら窓を眺めていたりするのに、今日は忙しいらしい‥‥。
やっぱり何かあったのか?
「あぁご苦労。少し待ってくれ」
しばらく棒立ちでスカーレットを待っていると、肩に乗っているコハクが何かに反応し突然周りを警戒し始めた。
あたりをキョロキョロして落ち着きがなく、爪が肩にくい込んで少し痛い‥‥。
「?
どうしたコハ‥──キュッッ?!?」
コハクの頭を撫でようとしたその時!
突然私のお尻を何かが触った!
「ほぅほ~ぅ·····。ナルホドー?胸は寂しいけどコチラは中々の柔らかさ·····!
まるでマシュマロのようだね~!」
聞いた事のある声。
忘れる訳が無い!この声の主は間違いない!
このクソ忌々しいおちゃらけた態度!!
カーッと顔が熱くなるのが分かった。
その様子を部屋にいる全員が見ているのだから余計に恥ずかしくなる。
「こ、こここ、このっ!!!
クソエロフーーーーーーーー!!!!!」
わあーーー!と叫び散らかしながら私は背後のレヴォルに回し蹴りを放つ。
しかし、その攻撃は空振りに終わり、レヴォルはニヤニヤと笑いながら簡単に躱して頭の後ろをポリポリとかいていた。
「いやいや、最近の若者は口が悪いなーもー
オレ、こーわーい~
触り心地が最高だよって褒めただけなのにね」
これがいつもの事なのだろうか‥‥。
スカーレットやモノンは深ーいため息をついているし、ジェイトはクスクス笑い、ルークは何故か硬直している。
私は触られたお尻を両手で隠し、超!警戒態勢をとっていた。
「だ!!だだだ、誰がっ!そんなの喜ぶかっ!!!!バカっ!!!」
《シロナがボサっとしてっからだろ、阿呆》
精神世界でボソッと呟くロギ。
最近私の言葉が荒くなってきているような気はしていた。
クソとか言ってしまうようになってしまっているし‥‥。
それは‥‥完全に!ロギとの口喧嘩のせいだろう。
ロギめ‥‥後で覚えとけよ‥‥!
最後の書類を片付け、棚にしまっているスカーレットが「さて」と言いながら棚の扉を閉めた。
「その辺にしておいてくれ師父。
私はこの後も予定があるんだ·····。時間が惜しい」
「いや~ゴメンって!手が勝手に動いちゃってね~
あ、もしかしてヤキモチ妬いちゃった?
や~も~、オレってば可愛い弟子をもったな~!」
一瞬風が吹いた。
レヴォルの方へ向かってヒュッと風が吹き、髪が流れた。
でも窓など空いていない。
空いていないが‥‥スカーレットが何かを投げた後のポーズをとっている。
バッと振り返りレヴォルの方をむくと、レヴォルの顔スレスレで木の扉に直剣が突き刺さっていた。
シーンと静まり返る空間。
この状況で血の気が引かない人間がどこに居るだろうか‥‥。
‥‥‥‥いや、いたな‥‥二人。
レヴォルは冷や汗一つかかず、笑顔を保ったまま。
そしてその光景を、何故かモノンもニコニコと見つめていた。
この二人‥‥結構似てる‥‥のか???
血の気が引く中、スカーレットは殺気を放ちながら椅子にかけた。
「‥‥では‥話を進めようか。
‥‥精霊術師」
ゴクンと唾を飲み込み、気を引き締める。
一体何が話されるのか‥‥。
────────────────────
その頃ナディアは比較的見た目が人間に近い保母さんに連れられ、村の近くまで来ていた。
保母さんは頭に布を巻き、魔物であることを隠して人間の所まで来たのだが、本来人間慣れしていない魔物がこの様に村の近くまで来ることは無い。
ナディアは例外中の例外なのだ。
それだけ、人間は魔物にとって危険な存在だったから‥‥。
しかし、人間であるナディアに抱かれている兎のぬいぐるみには、可愛らしい花の冠が飾られていた。
施設を出る時、いじめっ子達が花を集めて作ってくれた。
「あの時はごめんよ。僕達の事を忘れないでね」と言葉を添えて‥‥。
怪我が絶えなかった日常。
癒えない心の傷。
それは、ドラゴンを連れた灰色の髪のお姉ちゃんが現れてから全てが変わった。
私を見る目が変わり、虐めてくる子はいなくなって一緒に遊んでくれる友達になってくれた。
嬉しかった‥‥。
ここでずっと暮らしてもいいとも思えた。
でも、私を引き取ってくれる人が居るって言われて‥‥。
それは喜ばしい事‥‥なのに、ここから離れたくない。そういう感情が込み上げてくる。
せっかく仲良くなれたのに。
犬のお兄ちゃんも優しくしてくれたのに。
カッコよくて笑顔の可愛いお姉ちゃんも出来たのに‥‥。
花飾りを貰った時、正直まだ迷ってた。
このままサヨナラしちゃっていいのかなって。
今ならまだ断れるんじゃないかって。
その時、魔軍の使いの人がやって来た。
「闇精霊術師からの伝言だ」と言って‥‥。
そんな長くはなかったけど、その言葉は私の足を動かす決め手となった。
前を向く覚悟をくれた。
勇気をくれた!
お姉ちゃんとお揃いの白いローブを羽織り、空を見上げ‥‥
私は‥‥‥‥足を前に出す。
《住む場所が違ったとしても、住む世界は同じだから。私は会いに行くぞ‥‥この空が繋がっている限り‥‥》
その言葉を胸に‥‥‥‥。
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