大好き!あ、間違えました。

可悠実

文字の大きさ
上 下
18 / 20

いつもの毎日

しおりを挟む
月曜日朔はいつものように朔より少し出勤する元を桃と一緒に見送り、陽子と桃と一緒に家を出た。
「にーちゃ、いってきましゅ」
「お母さん、桃いってらっしゃい」
「朔も気を付けていってらっしゃい」
2人に手を振って学校に向かう。
途中同じ制服の男女に見かけたが、誰かに声を掛けたり反対に声を掛けられたりしなかった。
真っ直ぐ前を見て、余計なことを考えず学校を目指して歩いた。
学校ではいつもの授業、昼は教室の窓際の自分の席で一人で食べた。
午後の授業で出席番号順で教師から指され、どぎまぎしながらも正しい答えを言えた。
ホームルームが終わり、帰る準備をしていると倫が教室を覗いて朔を呼んだ。
「もう帰るのか?」
「うん、中村君はバスケでしょ」
「そう。明日部活ないからうち来る?豆太と遊ぶ?」
「桃のお迎えがなかったら行くね」
「おっけ、じゃあな」
そんな会話をした後、桃のお迎えに行き一日が終わる。
そんな感じの日を5日過ごした。


土曜日の朝いつもの時間に起きてリビングへ行くと、陽子が朝食の準備をしていた。
「おはようございます」
「おはよう」
陽子は目玉焼きを4つ並べたお皿の上に1つずつ分けて乗せた。
「今日私お休みだからお出かけしても大丈夫よ」
「えっ」
朔は戸惑ったように陽子の顔を見つめた。
「あら?いつものお友だちのとこに行かないの?」
じーちゃに会いに行く時、友達に会いに行くと言って出掛けていた。
朔は何と答えていいか分からず下をむいた。
じーちゃのことはこの5日間考えないようにしていた。
ピンポーン。
呼び鈴が鳴った。
「あら、こんな朝から誰かしら」
陽子はフライパンをコンロに置くと、リビングを出ていった。
「どうしよう」
どうしたらいいか分からず立ったままでいると、元がパジャマのままあくびをしながら入ってきた。
「朔おはよう、お母さんは?」
それに答えようと口を開けた時、陽子が戻ってきた。
珍しく困ったような表情で。
「どうしたんだ?誰か来てるのかい?」
玄関に人の気配を感じたのか、元がそちらを向きながら尋ねた。
「それがね、森屋敷さんて方が…」
「えっ?」
元が慌てて玄関に向かう。
「おはようございます。どうしてうちが」
「朝早くから申し訳ありません。朔くんをお借りしたいのですが」
「うちの子ですか?」
客と元が話す声が聞こえてきた。
陽子は縮こまる朔を見て、
「お断りする?」
心配そうに尋ねた。
その顔を見て、朔はほっと息を吐き首を左右に振った。
「出掛けてきます」
玄関に元といたのは森屋敷治朗。
「朔、いいかな」
治朗もいつもの彼らしくなく少し困ったような表情をしていた。
「おはようございます」
普通に朔に挨拶され、戸惑いながら答える。
「ああ、おはよう」
「お父さん、出掛けてきます」
「えっ?なんで?」
質問しようとする元を陽子が止めた。
「遅くならないようにね。森屋敷さん、朔を宜しくお願いします」
「はい、お預かりします」
そうして朔はあの図書館のある屋敷へ連れていかれた。
しおりを挟む

処理中です...