28 / 59
28
しおりを挟む
眩い空間の中に俺はいた。
涼さんと姉さんが幸せそうに並んで立っていて、俺は二人を微笑ましく見つめて、心の底から二人の幸せを願って。
だけど、次第に姉さんの上からドロドロの真っ黒な雨が降ってきて、涼さんが手を伸ばすけれど姉さんは瞬く間に溶けて行った。
雨はたちまち涼さんの頭上までをも覆って、俺は傘を開いて駆け寄るけれど、涼さんも溶けて行って。
やがて眩い空間にいた俺の頭上にも雨が降ってきて。
ドロドロと溶けていく傘を、足を、腕を、呆然と見つめるけれど三人で消えられるなら幸せだ……このまま消えてしまえればいいと、そっと目を閉じる。
そこで、朧気に瞳を開けると、今度は真っ白な空間が瞳に映った。
目の前にカーテンが引かれていて、そっと腕を見遣ると点滴の針が刺さっていて。
──ここは?
みるみるうちに頭が覚醒していき、涼さんが倒れて、俺は救急車を呼んで、そこで記憶が途絶えて……。
「涼さんっ!」
大声で叫んで半身を起こすと、「葉梨さん⁉」と白衣に身を包んだ女性が声をかけてきて。
「葉梨さん、わかりますか?」
「俺……は……? 涼さんは……? ねぇ⁉ 涼さんは⁉」
看護師が、「落ち着いてください、葉梨さん!」と俺の両肩を押さえ込んできて、突然半身を起こしたせいか酷い眩暈に襲われる。
すぐに看護師が院内PHSで医師を呼んで、駆けつけてくる。
「葉梨さん、わかりますか? 極度の栄養失調です。安静にしてください」
「俺のことはどうでもいいんです! 先生! 涼さんは⁉ 涼さんは大丈夫ですか⁉ 俺の……俺のせいで……」
医師が沈痛な面持ちを見せて、その表情に絶望感のようなものを覚える。
「立てますか? 水樹さんに会いますか?」
ゆっくり頷いて起き上がり、点滴をぶら下げたまま医師の後ろに着いていくと、一室の前で立ち止まってそっと室内に入った。
そこで──。
涼さんと姉さんが幸せそうに並んで立っていて、俺は二人を微笑ましく見つめて、心の底から二人の幸せを願って。
だけど、次第に姉さんの上からドロドロの真っ黒な雨が降ってきて、涼さんが手を伸ばすけれど姉さんは瞬く間に溶けて行った。
雨はたちまち涼さんの頭上までをも覆って、俺は傘を開いて駆け寄るけれど、涼さんも溶けて行って。
やがて眩い空間にいた俺の頭上にも雨が降ってきて。
ドロドロと溶けていく傘を、足を、腕を、呆然と見つめるけれど三人で消えられるなら幸せだ……このまま消えてしまえればいいと、そっと目を閉じる。
そこで、朧気に瞳を開けると、今度は真っ白な空間が瞳に映った。
目の前にカーテンが引かれていて、そっと腕を見遣ると点滴の針が刺さっていて。
──ここは?
みるみるうちに頭が覚醒していき、涼さんが倒れて、俺は救急車を呼んで、そこで記憶が途絶えて……。
「涼さんっ!」
大声で叫んで半身を起こすと、「葉梨さん⁉」と白衣に身を包んだ女性が声をかけてきて。
「葉梨さん、わかりますか?」
「俺……は……? 涼さんは……? ねぇ⁉ 涼さんは⁉」
看護師が、「落ち着いてください、葉梨さん!」と俺の両肩を押さえ込んできて、突然半身を起こしたせいか酷い眩暈に襲われる。
すぐに看護師が院内PHSで医師を呼んで、駆けつけてくる。
「葉梨さん、わかりますか? 極度の栄養失調です。安静にしてください」
「俺のことはどうでもいいんです! 先生! 涼さんは⁉ 涼さんは大丈夫ですか⁉ 俺の……俺のせいで……」
医師が沈痛な面持ちを見せて、その表情に絶望感のようなものを覚える。
「立てますか? 水樹さんに会いますか?」
ゆっくり頷いて起き上がり、点滴をぶら下げたまま医師の後ろに着いていくと、一室の前で立ち止まってそっと室内に入った。
そこで──。
20
あなたにおすすめの小説
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
もうすぐ死ぬから、ビッチと思われても兄の恋人に抱いてもらいたい
カミヤルイ
BL
花影(かえい)病──肺の内部に花の形の腫瘍ができる病気で、原因は他者への強い思慕だと言われている。
主人公は花影症を患い、死の宣告を受けた。そして思った。
「ビッチと思われてもいいから、ずっと好きだった双子の兄の恋人で幼馴染に抱かれたい」と。
*受けは死にません。ハッピーエンドでごく軽いざまぁ要素があります。
*設定はゆるいです。さらりとお読みください。
*花影病は独自設定です。
*表紙は天宮叶さん@amamiyakyo0217 からプレゼントしていただきました✨
事故つがいの夫が俺を離さない!
カミヤルイ
BL
事故から始まったつがいの二人がすれ違いを経て、両思いのつがい夫夫になるまでのオメガバースラブストーリー。
*オメガバース自己設定あり
【あらすじ】
華やかな恋に憧れるオメガのエルフィーは、アカデミーのアイドルアルファとつがいになりたいと、卒業パーティーの夜に彼を呼び出し告白を決行する。だがなぜかやって来たのはアルファの幼馴染のクラウス。クラウスは堅物の唐変木でなぜかエルフィーを嫌っている上、双子の弟の想い人だ。
エルフィーは好きな人が来ないショックでお守りとして持っていたヒート誘発剤を誤発させ、ヒートを起こしてしまう。
そして目覚めると、明らかに事後であり、うなじには番成立の咬み痕が!
ダブルショックのエルフィーと怒り心頭の弟。エルフィーは治癒魔法で番解消薬を作ると誓うが、すぐにクラウスがやってきて求婚され、半ば強制的に婚約生活が始まって────
【登場人物】
受け:エルフィー・セルドラン(20)幼馴染のアルファと事故つがいになってしまった治癒魔力持ちのオメガ。王立アカデミーを卒業したばかりで、家業の医薬品ラボで仕事をしている
攻め:クラウス・モンテカルスト(20)エルフィーと事故つがいになったアルファ。公爵家の跡継ぎで王都騎士団の精鋭騎士。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
今からレンタルアルファシステムを利用します
夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。
◆完結済みです。ありがとうございました。
◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる