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「俺、真白さんの気持ちがなんとなくわかるよ」
要先輩が作ってくれた夕飯をご馳走になりながら、真白のことを二人に相談していると、唐突に孝太郎さんがそう言った。
スーツの上着のポケットの中で、さっきからスマートフォンが絶えず振動しているが、俺は全て無視していた。
「真白の……気持ちですか?」
「俺も、要に近付く男や女は許せないし、なんならミルクにだって嫉妬してる。要の愛情は俺だけに注いでほしい。俺から離れていかないか心配で心配で仕方がないんだ。さっき、伊吹くんと初めて会った時も、軽く嫉妬した。俺の知らないところで要と仲良くしてるのかな、と思うと」
孝太郎さんの言葉で、要先輩が頬を染めて俯くのを見て、また尊いものを見てしまったような気分になる。
要先輩は、そんな孝太郎さんの執着心を聞いても、嫌な顔を見せるどころか、嬉しそうにしていて。
俺と要先輩の違いはなんだろう──と、考える。
「こんなことを訊いたら失礼だとは思いますが……孝太郎さんは要先輩への執着心で酷く抱いたりしますか?」
あまりにも明け透けな質問に、孝太郎さんが驚いたように沈黙した。
訊かなきゃ良かった……と、後悔しても時すでに遅し。
「……それはないかな。俺は要を傷つけたくないから。でも、行動に移していないだけで、そういう感情が芽生えたりもする」
そこだ、と思った──。
孝太郎さんと真白の決定的な違いはそこだ。
真白は、俺を傷つけていることに気付きもせずに平気で行動に移す。
そこで、ポケットの中でブブッと、電話ではないメッセージアプリの振動がした。恐る恐るポケットから出してアプリを開いてみると案の定、真白だった。
『どこに居るの? 誰と居るの? 僕を裏切ったらどうなるかわかってるよね? あまり僕を怒らせないで? これ以上、伊吹を痛めつけたくないんだ。伊吹もこれ以上、苦しみたくないよね?』
俺の瞳からポロリと涙の粒が落ちて、要先輩と孝太郎さんが目を丸くしていた。それを合図に、堰を切ったように涙が溢れた。
要先輩が作ってくれた夕飯をご馳走になりながら、真白のことを二人に相談していると、唐突に孝太郎さんがそう言った。
スーツの上着のポケットの中で、さっきからスマートフォンが絶えず振動しているが、俺は全て無視していた。
「真白の……気持ちですか?」
「俺も、要に近付く男や女は許せないし、なんならミルクにだって嫉妬してる。要の愛情は俺だけに注いでほしい。俺から離れていかないか心配で心配で仕方がないんだ。さっき、伊吹くんと初めて会った時も、軽く嫉妬した。俺の知らないところで要と仲良くしてるのかな、と思うと」
孝太郎さんの言葉で、要先輩が頬を染めて俯くのを見て、また尊いものを見てしまったような気分になる。
要先輩は、そんな孝太郎さんの執着心を聞いても、嫌な顔を見せるどころか、嬉しそうにしていて。
俺と要先輩の違いはなんだろう──と、考える。
「こんなことを訊いたら失礼だとは思いますが……孝太郎さんは要先輩への執着心で酷く抱いたりしますか?」
あまりにも明け透けな質問に、孝太郎さんが驚いたように沈黙した。
訊かなきゃ良かった……と、後悔しても時すでに遅し。
「……それはないかな。俺は要を傷つけたくないから。でも、行動に移していないだけで、そういう感情が芽生えたりもする」
そこだ、と思った──。
孝太郎さんと真白の決定的な違いはそこだ。
真白は、俺を傷つけていることに気付きもせずに平気で行動に移す。
そこで、ポケットの中でブブッと、電話ではないメッセージアプリの振動がした。恐る恐るポケットから出してアプリを開いてみると案の定、真白だった。
『どこに居るの? 誰と居るの? 僕を裏切ったらどうなるかわかってるよね? あまり僕を怒らせないで? これ以上、伊吹を痛めつけたくないんだ。伊吹もこれ以上、苦しみたくないよね?』
俺の瞳からポロリと涙の粒が落ちて、要先輩と孝太郎さんが目を丸くしていた。それを合図に、堰を切ったように涙が溢れた。
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