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「風間先輩、この間はすみませんでした」
お昼休憩、オープンスペースで待ち合わせた南波ちゃんが、開口一番そう謝罪してきた。どう返事をしたらいいものかわからず「いや、俺こそごめん……」とだけ返した。
すると南波ちゃんが真っ直ぐ俺と視線を絡めた。
「風間先輩の好きな人って誰ですか?」
適当に誤魔化すことも出来た。
出来たけれど、今の俺は確かに真白のことが好きで、真白のことだけを考えているから、噓は吐けなかった。
「南波ちゃんにだから言うけれど、佐伯先輩なんだ。俺たち、付き合ってた。でも、俺の一時的な気の迷いで、佐伯先輩に別れを告げて……追い込んだ。だから、今度こそちゃんと佐伯先輩と向き合いたいと思ってる。ごめん、引いたよね」
南波ちゃんの瞳にうっすら涙の膜が張っていた。
無理もないだろう。好意を寄せていた男が、男を好きだなんて。
「そう、だったんですね……佐伯先輩がお休みしているのは何かあったからなんですか?」
「うん……ちょっと。今、入院中なんだ。まだ意識が戻らなくて、俺は佐伯先輩が目覚めるのを待ってる。もう一度やり直したいんだ。ごめんね、南波ちゃん……俺なんかのこと、好きだって言ってくれたのに」
すると南波ちゃんが少しだけ険しい表情を俺に向けた。
今にも涙がこぼれ落ちそうに瞳を潤ませて上目遣いで見つめてくる。
「……でも、それって佐伯先輩にも私にも失礼じゃありません? 風間先輩、私の家にあがりましたよね? キスしようとしましたよね? そんなフラフラした気持ちで佐伯先輩が好きなんですか?」
言葉に詰まった。
南波ちゃんの言うとおりだから。俺は真白にも南波ちゃんにも不誠実な行動を取ってしまって、結果、真白も南波ちゃんも苦しめた。
全部、全部、俺が悪い。
「ごめん……こんなこと言ったら南波ちゃんを傷つけるってわかってるけど、あの時は佐伯先輩と離れたくて、南波ちゃんを見ていけたらって思ってた……結果、二人共を傷つけた。最低だよね。本当にごめん」
でも、俺はやっぱりどうしようもなく真白が好きで──。
全部、全部、俺が悪い。
だけど、真白が好きで。
この気持ちだけはどうしても偽れなくて。
目の前の、瞳を滲ませた南波ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
真白を忘れるために“利用”してしまったことに。
真白を再確認するために“利用”してしまったことに。
こんな愚かな俺の前に、また真白は帰ってきてくれるだろうか。
目を覚ましてくれないのは、戻ってきてくれないのは、こんな最低な俺に怒っているからなのかもしれない。
罰なのかもしれない──。
お昼休憩、オープンスペースで待ち合わせた南波ちゃんが、開口一番そう謝罪してきた。どう返事をしたらいいものかわからず「いや、俺こそごめん……」とだけ返した。
すると南波ちゃんが真っ直ぐ俺と視線を絡めた。
「風間先輩の好きな人って誰ですか?」
適当に誤魔化すことも出来た。
出来たけれど、今の俺は確かに真白のことが好きで、真白のことだけを考えているから、噓は吐けなかった。
「南波ちゃんにだから言うけれど、佐伯先輩なんだ。俺たち、付き合ってた。でも、俺の一時的な気の迷いで、佐伯先輩に別れを告げて……追い込んだ。だから、今度こそちゃんと佐伯先輩と向き合いたいと思ってる。ごめん、引いたよね」
南波ちゃんの瞳にうっすら涙の膜が張っていた。
無理もないだろう。好意を寄せていた男が、男を好きだなんて。
「そう、だったんですね……佐伯先輩がお休みしているのは何かあったからなんですか?」
「うん……ちょっと。今、入院中なんだ。まだ意識が戻らなくて、俺は佐伯先輩が目覚めるのを待ってる。もう一度やり直したいんだ。ごめんね、南波ちゃん……俺なんかのこと、好きだって言ってくれたのに」
すると南波ちゃんが少しだけ険しい表情を俺に向けた。
今にも涙がこぼれ落ちそうに瞳を潤ませて上目遣いで見つめてくる。
「……でも、それって佐伯先輩にも私にも失礼じゃありません? 風間先輩、私の家にあがりましたよね? キスしようとしましたよね? そんなフラフラした気持ちで佐伯先輩が好きなんですか?」
言葉に詰まった。
南波ちゃんの言うとおりだから。俺は真白にも南波ちゃんにも不誠実な行動を取ってしまって、結果、真白も南波ちゃんも苦しめた。
全部、全部、俺が悪い。
「ごめん……こんなこと言ったら南波ちゃんを傷つけるってわかってるけど、あの時は佐伯先輩と離れたくて、南波ちゃんを見ていけたらって思ってた……結果、二人共を傷つけた。最低だよね。本当にごめん」
でも、俺はやっぱりどうしようもなく真白が好きで──。
全部、全部、俺が悪い。
だけど、真白が好きで。
この気持ちだけはどうしても偽れなくて。
目の前の、瞳を滲ませた南波ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
真白を忘れるために“利用”してしまったことに。
真白を再確認するために“利用”してしまったことに。
こんな愚かな俺の前に、また真白は帰ってきてくれるだろうか。
目を覚ましてくれないのは、戻ってきてくれないのは、こんな最低な俺に怒っているからなのかもしれない。
罰なのかもしれない──。
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