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サムライ校での学園生活

原爆パンチ

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レカミエ「【原爆パンチ】をですか・・・??」

いつも無表情なレカミエだが、この時は、ほんの少しばかり戸惑いが伺えた。

友愛「そう、稲西先生が授業で披露してくれた、あの最強のパンチを教えてほしいんだ・・・」

レカミエ「ですが、あの拳技は、プロである軍事関係者でも中々マスターできない必殺術でございます。素人のお2人が2、3時間練習したところで習得できるようなものではありませんよ。それに、【原爆パンチ】は4年生になってから本格的に学ぶものですし、まだ1年生である私たちの試験範囲ではありませんよね?・・・なぜ、それを学びたいのですか?」


友愛と麗太は、その質問は無視し・・・・


麗太「で、でもレカミエは授業で出来ていたじゃん!!稲西先生の前で鉄骨を割ってしまうぐらいの見事なパンチを披露していたじゃん!」

レカミエ「私は、まだ戦地にいた頃、【ある人】から教えてもらいましたから・・・・」


【ある人】?ある人って誰だ・・・・??


友愛「と、とにかく教えて欲しいんだよ!!頼むよ!」


レカミエはしばらく、その綺麗な顔で2人をジッと見て考え込んでいたが・・・

やがて、決心したように・・

レカミエ「わかりました、断る理由もありませんし、できる範囲で伝授いたします。」




友愛、麗太、レカミエは【個】の寮棟から出て、生徒たちが普段自由に利用できる【戦闘術訓練室】に入った・・・

訓練施設には、戦争で実際に使用するナイフや銃、ボディーアーマー、軍棒などが備え付けられていた。
(もちろん全て本物ではなく、練習用のモデル品)

後は格闘技ジムのようなリングもあり、ボクシングで使うグローブもあった・・・

完全に兵士になるための訓練施設だ。




水色のパジャマ姿のレカミエは、相変わらず無表情だが、本気で指導してくれるようだ。

レカミエ「まずは、お2人に【原爆パンチ】の威力を体験してもらいます。これを装着してください。」

レカミエはそう言って、2人に兵士が戦場で着用するボディーアーマーをわたした。


麗太「え?ちょっと待って・・もしかして、それって君が今から僕らにパンチするってこと?」

麗太の顔がみるみる青ざめてく・・・

レカミエ「はい、実際に体験していただければ、ご習得するのも早いのではないかと・・・」

レカミエは恐ろしいことを、普通に無表情で言うから、めちゃ怖い・・・


友愛「ちょ、ちょっと待って!!タンマ!タンマ!【原爆パンチ】って一瞬で相手を殺害するパンチでしょ!実戦経験のある君の本気のパンチを喰らったら僕ら死んじゃうから!即あの世行きだから!」

レカミエ「ご安心ください・・威力は最大限に緩めますから。多少呼吸が困難になるだけで【死】には至りません。」

友愛「え?呼吸困難って、それってヤバいんじゃないの!!」


レカミエ「行きますよ!早くボディーアーマーをご装着ください!」


無表情の彼女の顔で、目だけがギラリと変わる!


友愛 麗太「ひええええええ!!」



ドス!ゴス!


鈍い音が部屋に響きあたり、男2人は床に突っ伏して悶えていた・・・・

ボディーアーマーをつけていようと、その威力は2人の体内にしっかりと刻み込まれていたようだ。


友愛「おええええ・・・」

麗太「な、なんか吐き気がヤバい・・・」



レカミエ「素人の方や格闘技の選手と、兵士が使う軍隊用のパンチ・・・両者の主な違いは、【殺人を目的としてるかどうか】なのです。例えば格闘技の選手のパンチなら、対戦相手を倒すためのものですが、あくまでも【競技用】であり、人を殺すことは目的にありません。

そもそも兵士が、実際の戦場でパンチを使う場面など、ほとんどありませんが・・もし銃を失い、素手で敵兵と戦うことになった場合、それでも目の前の敵兵を無理にでも殺害しなくてなりませんよね。

そういう状況を想定して、編み出されたのが【零距離戦闘術】であったり、他の様々な戦闘術なのですが・・・

代表的な戦闘術の技の中に、この【原爆パンチ】があるのです。」



レカミエのそんな説明を聞く暇もないほど、友愛と麗太は苦しんでいた・・・


友愛「な、なんか内臓がめっちゃ揺れてる気がする・・・」

麗太「ほ、本当に息が苦しい・・・マジで死にそう・・・」


レカミエ「人間の人体構造、身体の内部構造を理解した上で、確実に死へ誘うために開発された拳技ですから・・・」

友愛「で、でもそんなに力入れてなかったよね・・あれで、なんでこんな威力が出るの?」


確かに、レカミエが今2人に食らわせたパンチは、それほどスピードもなかったし、振りかぶって思い切り力を込めているようにも見えなかった・・・だが2人は身体に爆弾を落とされたような衝撃と痛みを感じた
ズシーンと重たい石を身体に入れられたような・・・


レカミエ「例えば、格闘技の選手の方がやるようなパンチというのは、とても威力はありますが、あれはあくまで身体の外側を攻撃しているだけに過ぎません。敵に対して外部から刺激しているだけなのです。ですから身体の表面は痛いのですが、しっかり身体の内部まで威力が浸透していないことが多いのです。

人を気絶させたり、殺したいなら、やはり体内・・特に内臓器官にしっかり威力を届けなくてはなりません。これを踏まえて、軍で開発されたのが【原爆パンチ】なのです。

人間の身体構造を理解し、外部にではなく内部に刺激を与える・・・

それによって、体内にまるで爆弾が落とされたような内臓爆破が起こる。

実際に威力がどれぐらいなのか、このパンチの開発者である稲西先生が、実際に戦場で使用したところ、敵の兵士の体内で、内臓が原爆のキノコ雲のような形になって、異常な破裂を起こし、口から血しぶきがまったそうなのです。その後、物理的な研究により、この拳技は、物質を異常な形にさせて破壊してしまうことが分かったそうです。」

友愛と麗太は、これ以上聞いていられなかった・・・
あまりに話が残酷過ぎて・・・・


友愛「わ、分かった・・・もう威力がヤバいのは分かった・・・なるほどな、つまり内部破壊に特化したパンチだから、鉄をも砕けてしまうのか・・・・」

レカミエ「そうです・・内部にダメージを伝えるのです・・これが繊細な感覚が必要なため、少し難しいのです。思いきり振りかぶって、力任せに打てばいいものでもないのです・・・筋肉には頼らず、身体の動かし方に集中してください。」

麗太「でも、俺たち素人って、どうしても振りかぶってパンチしたほうが、威力があるように見えちゃうんだよなあ・・・」

麗太がサンドバッグに向かって、パンチをしている・・・まあ、麗太の場合、普通のパンチでも大した威力は出ないのだが・・・

レカミエ「筋肉に頼ってはいけません。お2人とも・・身体の動かし方を1から変える必要がありそうですね・・・」

友愛「ていうか、やっぱ難しすぎるよー!!」


レカミエの個人指導は、朝まで続いた・・・・

2人は、さらに傷だらけになり、ボロボロになりながら、ヒイヒイと悲鳴を上げ、全てを投げ出したい気持ちになりながらも、必死に食らいついて、練習を続けた・・・・


レカミエは不思議だった・・・普段の2人は授業でも、こんなに一生懸命じゃないのに・・・
なぜ、こんなに死ぬ気で技を習得しようとするのか・・理解不能だった・・・


レカミエから、【原爆パンチ】以外にも様々な戦闘術を教わった2人・・・

果たして、2人はレカミエから学んだ技術を発揮して、リリを助けることができるのか?!





















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