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サムライ校での学園生活

ダークウェブの世界

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友愛と麗太は走りながら、一旦ボディーアーマーを脱いだ。

汗でびしょ濡れの2人だったが、これだけ走っても、不思議と疲れなかったし、息切れも起こしていなかった。


友愛「毎朝の光速反射訓練のせいか、全然疲れないし、ボディーアーマーをつけていても身体が軽い感じがするね。」

麗太「ほんとさ、気づいてなかったけど、意外と僕ら体力ついていたのかもね。」


サムライ校に来る前は、2人とも体育の成績なんか最低で、運動なんか全くできなかったが、本格的な軍隊の訓練を経験した今の彼らは違う。

かつては、全く体力がなかった友愛も、今は息切れせずに走っている・・・


稲西先生が言ってた・・・

「戦場は食うか食われるか・・・どれだけ己を鍛えた勇者でさえも、戦場の非情さと残酷さにはなすすべもない時があるのです。優秀な策略家がたてた100%上手くいきそうな作戦も、1人で1000人を殺せる勇猛果敢な豪傑も、全くに役に立たない時がある・・・それが戦場という予測不可能な世界なのです。」


そう・・・戦場とは、決して自分たちが考えたように上手くはいかない世界・・・

どんな作戦も、どんな強者も、通用しないかもしれない世界・・・

机に座って、予習復習した所が、絶対に出るテストの世界じゃないんだ・・・

僕らは、今そこへ行こうとしてるんだ・・・





2人は、港に到着し、朝九時出発の東京行きの大型船に乗って、島を出た。

そう、なぜならリリは東京にいるからだ!





船に乗りながら友愛は、アノニマス先生の部屋に不法侵入して木村と、リリの居場所を特定した時のことを
思い出す。



木村「犯罪者を見つける方法?簡単だよ、まずダークウェブに入ればいい。」

麗太「ダークウェブって何?」

キョトンとした顔で聞く麗太・・・


木村は、アノニマス先生と一緒に開発した最強ソフト【human Wisdom】を使って、ダークウェブにアクセスしようとしている。


木村「簡単に言えば、ヤバい奴らのネット上のたまり場だよ。犯罪者の情報や国家の闇などが色々隠されているインターネットで最も一番危なくて、一般人がアクセスしちゃいけない部分だ。毎日ヤバい奴らが、拳銃やライフルなどの武器を普通に売買してたり、麻薬取引や人身売買なんて日常茶飯事のように、ここを通して行われてる。

普通のソフトじゃ、まずアクセス不可能だけど、この最強ソフトならダークウェブにだって簡単で安全に侵入できる。海外のサーバーをどれだけ経由してようが、犯罪者がアクセスした跡だって簡単に追えることができるんだぜ。

なんせ、僕とアノニマス先生が作ったものだからね。」


麗太「ていうかさ、まず君とアノニマス先生は、いつその【最強ソフト】を作ったの?そもそも君とアノニマス先生の関係性が、全然見えてこないんだけど・・あの先生、全く喋らないじゃん!ほとんど会話はチャットじゃん!よく、あんな人と仲良くできるね。」

麗太は、疑問に思ったことを怒涛のように聞きまくる。

木村「このソフトを作ったのは、ごく最近だよ。僕が【サイバー技術部】での部活動が、あまりにつまらなさすぎて、即刻退部しようとしたら【君ほどの天才には、この部活動はつまらないだろう。どうだ?僕と一緒に世界最強のソフトを開発しないか?】と先生のほうから誘ってくれてね。

それで、一緒にこのソフトを開発したわけさ。

先生は、共同開発者である僕のことは信用してくれてるから、僕だけは部屋のセキュリティに引っかからず、自由に入れるようにしてくれてるってわけだ。」


そうか・・つまりアノニマス先生の部屋に入れるのは、先生自身と木村だけってことなのか・・
逆に言えば、友愛や麗太みたいな一般の生徒が、勝手に入ろうとすればセキュリティが作動して警報装置が鳴り、その情報はアノニマス先生のスマホに送られてしまう・・・

だが今回は、木村が2人を間一髪、部屋の中に入れてくれたし・・

それに、木村がパソコンからの遠隔操作で、アノニマス先生のスマホの警報情報を勝手に消してくれたから、なんとかバレずにすんだが・・・・


友愛「で、でも大丈夫かな・・・本来なら君と先生しか入れない部屋なんだろ?」

木村「安心しなよ。このソフトは凄いんだ。遠隔操作が簡単にできちゃうから、君らがこの部屋に入った証拠を映した監視カメラや赤外線カメラも、すぐにハッキングして、映像を丸ごと消し去ることができちゃうんだ。」

木村は、部屋の周辺にあった何台ものカメラを一斉に乗っ取り、友愛と麗太が写っている映像を丸ごと削除した。

麗太「ス、スゲー・・・」

木村「しかし、君たちの計画はあまりにずさんすぎるね。今まであらゆる警備セキュリティを様々な方法で破ってきたような先生が、自分でも破れないようなセキュリティの研究をしてないと思ったのかい?あの警報セキュリティは、近づいてきた人間の全身から発せられる体温や微細な振動、そしてオーラや神経網までも探知して識別するかなり高性能な最新技術を搭載したものなんだよ。つまり誰が侵入しようとしたかもわかってしまう装置なんだ・・僕が先生のスマホから警報情報を消し去ったからよかったようなものの・・・」

友愛「へ~、じゃあ、どんなに姿を隠して誤魔化そうとしたりしても、無駄ってこと?」

木村「そういうこと・・・お、ダークウェブにアクセスできたよ。」


友愛と麗太は、生まれて初めて噂に聞くダークウェブというものをその目で見た・・・


真っ暗な画面の中で、拳銃や麻薬がかなり安価で取引されてる様子や

「死にたい」 「殺したい」 などヤバいユーザー同士の会話があったり

一番、衝撃的だったのは【殺人実況中継】なんて行っているイカれた奴が映し出されていたことだ・・・

「今から人を殺しまーす!」って笑顔で言うサイコパス犯罪者が画面に映し出され・・・その後は、あまりに残酷すぎるから説明は省かせてもらう・・・


まさにダークウェブとは、カオスだ・・・

ヤバい奴らが好き放題できる公園のような場所だ・・・


友愛「こ、こんなことしてる人たちがいるのに、警察は何をやっているの?」

当然の疑問だ。友愛は少し震えながら聞く。

木村「24時間体制で見張ってるらしいよ。でもいかんせん数が多すぎるし、立証不可能なものだってある。それにダークウェブ上には、警察自身の闇が隠されているっていうからね。」

麗太「警察自身の闇?」

木村「例えば、一般では公開されないような警察上層部の汚職や隠蔽などの秘密情報、警察が自分達の保身のために一般人を殺したりしたこと、後は本当は真相が分かってるのに、国民には黙っているような未解決事件の真相も、ダークウェブでは見れちゃうらしいからね。だから警察も簡単には手出しできないんだ。
あんまりダークウェブの中をひっかきまわすと、犯罪者たちから自分達の闇をバラされるという反撃をくらう可能性があるからさ。

国際テロリストが中々捕まらないのも、このダークウェブがあるからなんだろうな・・」


友愛「なるほどね・・・」


あ!

ダークウェブの画面に友愛の目を引く文字があった!

【南関東連続幼児誘拐殺人事件に関する真相】と書かれたページが映し出されていた・・・

図書室で最黒先生が調べていた事件だ!!

友愛は、ちょっとページを開きたい気持ちがあったが、今はそれよりもリリを助けることが先決だと、その好奇心を抑えた。


だが、画面に次の文字が出てきた時は、好奇心を抑えることができなかった。


【アメリカ358テロ事件に関する真相】と書かれたページだ。


友愛の父、冬樹の死のきっかけとなった事件のページが、画面に映し出されていたのだ。










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