上 下
95 / 112
サムライ校での学園生活

容疑者リスト

しおりを挟む
上杉「大丈夫、君は【無重歩】ができるって副校長に聞いている・・・飛び降りても、死なないように身体を操作できるから、きっと大丈夫さ。」

友愛と上杉の2人は、校舎の一番最上階である江戸城の天守閣まで登ってきた・・・・

流石、江戸城の天守閣・・・最上階は純金で作られていて、とても美しい室内になっているが、
今はそんなものに見とれている場合ではない様子の友愛・・・

友愛「何言ってんの?頭おかしくなったの?!こんなところから飛び降りたら、確実に死ぬに決まってるじゃん!」

友愛は、半分キレたように、上杉にそう言う・・・

そりゃそうだ・・・・

だって、こんな高い場所から飛び降りろ、なんて言うんだもの・・・

江戸城の天守閣は恐らく60メートルぐらいの高さはある・・・・

そんな高さから落ちたら、確実にお陀仏だ・・・・


上杉「普通の人間ならな・・・でも【無重歩】を使える僕と君なら、身体を自由自在に動かすことができるから、ここから飛び降りて、地面に激突することはまずない・・・」

友愛「だから、その【無重歩】って何?」

怒ったように問う友愛。


上杉「体重や重力を関係なしに、身体を自由自在に動かすことができる技術だ。

普通の人間の身体の動かし方なら、この高さから落下した場合、重力に逆らえず、身体の重みに任せて、
かなりのスピードをつけたまま地面と衝突して死ぬだろう・・・

だが【無重歩】を使える者は、重力の影響を受けることがないから、身体の安定性を保ちながら、屋根の上を飛んだり、動物のように建物のどこかに掴まったり、仮に落下したとしても、スピードを緩めながら地面に着地できるはずだ。

君はそれを出来ているって、副校長から聞いたんだが・・・・」


そんなことあり得ます?

ていうか、それを僕が出来ていたってどういうこと?


友愛「え?僕ってそんなことまで出来ていたの?そんな技術を身につけた記憶なんてないんだけど・・・」

上杉「でも、副校長から君は壁走りや天井走りができるって聞いたんだが・・・その二つができるのは、紛れもなく【無重歩】ができる証拠なんだよ。」


え?え?え?

友愛が自分が何者かわからなくなってきた・・・・

劣等生の自分が、ごく自然にそんな凄いことをやっていたなんて・・・


一体、僕は本当に・・・

僕の中で、何が起きているんだ?

僕は・・・・何者??



上杉「まあ、安心しろよ・・・下を見な・・・・」

不安そうな顔する友愛に、上杉が、天にも届きそうな高さの天守閣から、下の風景を見るように言う。

思わず足が震えるほどの高さだ・・・底の見えない吸い込まれそうな真下を見る・・・

なんと先程までいた緑の芝生のグラウンドに、巨大な柔らかいクッションが置かれていた。


上杉「僕の友達が倉庫から出してきてくれた・・・万が一、【無重歩】が上手くいかずに、そのまま落下しても安全なようにね・・・」


なるほど・・・・落ちても衝撃を分散してくれる人命救助用のクッションか・・・・

だけど・・・それがあっても、やはり飛び降りるのは怖い・・・・・


上杉「大丈夫。【忍学科】の連中だって、夜になると、よく天守閣の屋根の上に登って、まさに忍者みたいに飛び回ったりして遊んだりしているんだ・・・・【無重歩】ができる君にとっては、ここから飛び降りるなんて、そんな難しいことじゃないよ。」

友愛「それは【忍学科】の子達が、もともと忍者になるための修行をしているからでしょ。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


でも・・・もう僕は、勝手に戦争部に入らされた・・・・やるしかない・・・・

あの時、どう身体を動かしたか覚えてないけど、やってやる・・・

友愛は、震える足を前に出し、妙に汗ばんだ手で、天守閣の手すりに掴んだ。

そして、「もうどうとにでもなれ!」と言わんばかりに全身を空へ押し出した・・・・


ガ!!


窓から飛び降りる友愛・・・・



その時、また友愛の中で何かが目覚めた・・・・


いつか、どこかで感じた同じ「生命の危機」に、身体が自然に反応する・・・


まるで、彼の中に隠された本能が目覚めたかのように・・・・


そして、小島友愛は、完全に自分の身体を支配出来ていた。


まず、始めに空中で一回転・・・・それから、屋根に捕まって、屋根中をF1のレースカーのように走り回る・・・・

そして、何度も屋根の上でバク宙を繰り返し、さらには身体のバネが解放されたかのように大跳躍を繰り返す・・・

何度も何度も風を切って・・・



その姿は、サーカスの曲芸師さながら・・


そして、ついに屋根から、飛び降りた!!


そして、急激なスピードの落下の最中・・・まるでブーメランか駒のように、己の身体を何度も何度も回転させている・・・・

まるで、身体にかかる重力を分散させるかのように・・・

何度も何度も身体を円運動させることで、落下のスピードが落ちていく・・・


そして、最後の回転が終わったところで、友愛は綺麗に救命用クッションに着地し、クッションのゴムで
ポーンと跳ねる!


友愛「で、できた・・・・助かった・・・・・」

友愛は、全ての緊張と恐怖と興奮と疲労を、全て預けるようにクッションに身体を沈めた・・・・

全身、汗をびっしょりとかいている・・・・

気持ち悪い・・・ずっと回転していたせいか、めちゃくちゃ目が回っている・・・・

震えがまだ止まらない・・・・・あんな高い場所から飛び降りて、僕は何をやっていたんだ?


今、僕がやったことは、全て現実なのか?

なんで、あんなことができる?

なんで、あんな超人的なことが、僕にできるんだ?

わからない・・・わからない・・・わからない・・・・

気がおかしくなりそうだ・・・・



友愛は、自分で自分の身体が怖くなってきた・・・

上杉も目を丸くして、ただただ呆然とするばかりだった・・・





この日の朝練は思った以上に辛いものだった・・・・

ずっと、上杉と一緒に【無重歩】の練習しまくったし、さらには試合で扱うの武器の使い方も
頭に入れなきゃいけなかった・・・

誰だ~、戦争部がサバゲーに近いものだとか言ったやつ・・・とんでもねえ・・・

昨日、リリは練習はハードとか言ってたけど、ハードどころの話じゃない!


友愛は、全身のエネルギーが吸い取られたように、授業中眠りこけていた・・・

ただでさえ、毎朝【光速反射訓練】があるのに、そこに【戦争部】の朝練が加われば、
そりゃあ充電切れもするだろう・・・

授業中、どんなに先生に頭をはたかれ、目が覚めても、一分後には友愛は、もう眠りこけていた・・・






リリ「【容疑者リスト】を作ってみたわ。」

昼休み、大広間で昼ご飯を食べた後、友愛・麗太・リリの仲良し三人組は、教室の近くにある休憩室の机で
何やらヒソヒソと相談をしていた。

休憩室は、1日のハードな学校生活の中で、疲れ切った生徒たちが休むことができるくつろぎの場所である。

ソファもあるから、熟睡してしまう子たちも多数おり、稀に午後からの授業に遅刻する者もたまに出てくる。


友愛 麗太 「容疑者リスト?」

2人は?マークを頭の中に作りながら、問う。


リリは、そんな2人の前に、サムライ校の全教職員の顔写真が貼り付けられた自作の資料を出す。


リリ「友愛の命を狙っている【0】の協力者の可能性が高い怪しい人達をリストとしてまとめたみたの。

私が朝本未春に連れ去られたあの日、職員室で【小島友愛は早めに処理すべきだ】って言っていた人物は誰なのか?

先生の中に怪しい人間がいないか、私なりに考えてみたのよ。」


友愛「そのことなんだけどさ・・・声聞いた時に、誰の声かわからなかったの?」

リリ「う~ん、聞き覚えのない声だったような気がする・・・それに一瞬のことだったから、どんな声だったか記憶も曖昧なの。」

リリは、ちょっと申し訳なさそうな顔をして、そう言った。

麗太「思ったんだけどさ・・・別に先生とは限らないかもしれないんじゃない?」

麗太が、このまま話が進むことに少しストップをかけるように、そう言った。

友愛「どうして、そう思うの?」

麗太「だって【0】に協力していたのは、小西だったじゃないか・・・・【0】はチャット上のやり取りで、小西の心を掴んで洗脳していたんだろ?だとしたら同じ手口で、この学校の生徒をまた誰か・・・」

リリ「よく考えてみて。確かに子供は大人より、きっと洗脳しやすいでしょうけど、協力者として仕事をしてもらうには、失敗しやすい存在なはず・・・それを影からサポートする大人が必要じゃない?」

友愛「じゃあ、小西の後ろに、彼をサポートしていた大人がいたってこと?」

リリが頷く。

リリ「この学校で生徒全員の名前から住所まで確認できる存在は?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その時、友愛は、前に保健室で冴鶴が言っていた言葉を思い出した・・・・


冴鶴「だが、しかしお前を殺そうとした正体不明のその【0】って奴は、なんで小西って生徒のことを知っていたんだろうな?」


ハ!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そうか・・・・


友愛「先生たち・・・・」

リリ「そうよ・・・つまり【0】に小西君という生徒の存在を教え、洗脳できるように協力したのも、きっと先生の中の誰か・・・

小西君を洗脳するにしても、小西君がどういう子なのかよく知らなきゃ、洗脳なんて出来ない。
だから、【0】には生徒の情報をよく知っている協力者が必要だったのよ。

そして、その人こそ【0】の協力者であり、小西君を裏からサポートしていた人物・・・」


麗太「例えば、この学校に【0】本人がいるってことは考えられない?【0】が先生の誰かになりすまして、小西を操っていたとか・・・」

リリ「だとしたら、直接友愛を殺しに来てるわよ。わざわざ小西君とチャットで連絡を取り合ったり、ポイズンを差し向けるようなめんどくさい真似をしないわよ。つまり【0】はどこか遠くにいて、学校の中に潜む協力者に、遠くから指示をしていると考えたほうが妥当よ。」


てことは、やはり先生たちの中に、協力者がいると考えて間違いはない・・・・


リリ「というわけで、先生方の中に怪しい人物がいないか【容疑者リスト】を作ってみたの。見てみて。」










しおりを挟む

処理中です...