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第1章/レゾット王国

第6話/最強の雷魔術師”セレネ”

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「全員まとめてやっちゃえ、セレネ!」

「分かりました…」

 魔力解放50%”紫電”

「私はもっと強くなって、いつか、友達も
 家族も1人で守れるように、強くっ!
 強くなる!」

セレネがそう言った瞬間に、杖から雷鳴が
轟いた。
彼女が手に持っている杖から放たれる稲妻が
ケルベロスの体を突き抜けて、洞窟中を駆け巡った。
無数の稲妻の矢が轟いたき、その稲妻の光は
鮮やかな紫色だった。
セレネの努力が、その光に全て詰まっている様な感じがした。
その光から、僕は目が離せなかった。
そして、ケルベロスたちは一瞬で全員が灰と
なった。

「まさか、一撃でやるなんて…!
 元々強いとは思っていたけど、ここまで
 強かったとは。」

間違いなく、現時点ではレゼット王国最強の
雷魔術使いだな。
ここまで強い雷魔術を使える人間は、世界的
に見ても、ほとんど居ないだろう。

「セレネ…チョー強いじゃんッ!
 こんなに強いなんて~もっと早く言って
 くれても良いじゃん~!」

僕がセレネをベタ褒めすると、彼女の顔は
りんごの様に真っ赤に染まった。

「もしかして照れてんのぉ~(笑)
 メチャ可愛いじゃんッ!」

セレネはもっと照れて、ついに固まって
しまった。
褒められるの苦手なのかな?

*   *   *

僕たちは、ケルベロス討伐の証として、
コイツらの肉を大量に持って帰った。
これを冒険者協会に渡せば、討伐したと
分かる。
これで、また大量に金が入る…グヘヘッ。
でも、今回はセレネの強さが見れたし、
このお金はセレネにあげよう。

「じゃ、このお金は今回はセレネに全部
 あげるよ。
 結局僕は、まだお金残ってるし。」

「ダメですよ!そんなの…ダメです!
 これは貴方のおかげで出来たクエスト
 なんですから。
 私は今回、そんなに多くは貰えません。
 せめて貴方も、半分は貰って下さい!」

あまり喋るのが得意じゃ無いセレネが
こんなにいっぱい喋るなんて…
セレネって結構プライド高いんだな。

「じゃ僕も、半分はありがたくいただくと
 するよ。」

そして報酬のお金を貰って、僕たちはその場で解散することにした。

*   *   *

その日僕は夢を見た。
どこの都市だかは分からないが、その都市が
崩壊する夢だった。

街は丸焼けになり、人は瓦礫に潰され、空に
は灰が舞っていた。
僕は、1人で泣いていた。
仲間を全て失って、たった1人で。
でも、泣いている理由は分からなかった。
しかも、なんでこの都市に居るのかも。
何もかも分からなかった。
そして、僕も瓦礫に潰された。

その時、僕は目が覚めた…

*   *   *

何だったんだろう、さっきの夢。
これは推測に過ぎないが、多分あの都市は、
この世界で最大の国”アムネジア帝国”だ。
面積は世界で1番大きく、人口も世界3位
を誇る国であり、更に、その都市は農業が
盛んで、世界で最も美味しい野菜が取れる
らしい。

「そんな都市が崩壊する理由って…
 うーん、いくら考えても分かんないものは
 分かんないな…よし、考えんのやめよ!」

そして、僕はいつも通り、宿の美味しい
朝食を食べて、宿を出た。

「今日は何しようか。
 ん、カジノ?この国にカジノなんてある
 のか。暇だしやるか。」

その日、僕は100エリー(10万円)を
カジノで失うことになった。

*   *   *

「ギャァーッアッー!
 こんなに負けるなんて思わないって!
 何なん?このカジノッ!
 いや、もうしょうがない。
 美味い飯食べて、今日はすぐに寝よう。」
僕は今日、久しぶりに悲しい気持ちで眠りに
着くことになった。

*   *   *

~魔王城-最上階 アビタシオン~

「つい最近、私と戦った魔術師。
 ライメルの居場所は掴めたか?」

「もちろん掴めたさ。
 俺を誰だと思ってんだよ。」

「もちろん、アムネジア帝国の反逆者に
 して、深淵の統率者、ニエンテ様だろ?
 まあ良い、ニエンテ。
 今夜、レゾット王国を襲撃して、ライメル
 の居場所を完全に掴んでこい。」

「魔王エルデに言われちゃ、仕方ない。
 行ってきてやるよ。」

*   *   *

俺は魔王軍の幹部”ディバイン•ラメント”の
1人、ニエンテだ。
さっき、魔王エルデにとある王国を襲撃して
こいという命令を下された。
その王国は”レゾット王国”だ。
俺の調査によると、魔王エルデを襲った
魔術師である、ライメルは今、この王国に
滞在しているらしい。

「とりあえず、すぐに王国を破壊して、
 早く魔王城に帰ろう。
 行くぞ、下っ端ども。」

俺は、魔王軍の隊員を、100人ほど連れて、
一緒にレゾット王国に向かった。

「レゾット王国までは、歩いたら丸一日。
 今から歩いたら、間に合わない。
 命令は、今夜中に襲撃しろって事だから
 何としても、すぐに辿り着きたい。」

隊員たちを待っていては、王国に辿り着け
ずに夜が明けてしまう。

仕方ない、今日は1人で行くか。
たとえ1人でも、1つの都市くらいは壊滅
出来るだろう。

「俺が呼び出したのに、すまない。
 今日は1人で王国に行く。
 お前らは、先に城へ帰っておけ。」

よし、これで良い。
俺1人で王国に行けば、絶対に間に合う。

「まってろ、魔術師ライメル。」

ここから、魔王軍が世界を支配する計画が
ついに開始する。この襲撃は、その計画を
始める合図だ。

今、この瞬間から、世界は恐怖で埋め尽く
されていく…

「さあ、宴(襲撃)の始まりだっ…!」

第6話/最強の雷魔術師”セレネ”








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