ラストヒーロー:魔王軍全戦力vs.僕1人

混沌世界終焉

文字の大きさ
11 / 31
第1章/レゾット王国

第10話/夜明け

しおりを挟む
ニエンテは、僕らの攻撃を避けずに、正面で
受け止めた。
ここでニエンテは、戦いの中で初めて、
身体が震えていた。

「…はぁ、ふ、あぁ…これは少し、予想外
 の強さだったなぁ…
 初めての感覚だよ、痛いってのは、こんな
 感覚だったんだな…」

ニエンテがそう言った瞬間、王国に太陽の光が差した。
僕らは、夜通しで戦ったんだな…
疲労が蓄積されすぎている。
さっきの攻撃で、僕は完全に動けなく
なった。
立ち上がるのさえも困難な状況だ。

「魔王エルデには”朝日が昇ったら、戦い
 をやめて、魔王城に帰ってこい”って
 言われてたな…

 今日はこれくらいで帰るよ…
 まあ、王国を襲撃するっていう任務は
 遂行できた。
 もう、この国に用はない、じゃあな。

 次会った時は、

 今度こそ、コロス…カラナ..?」

そう言って、ニエンテは王国を去った。

その瞬間、僕はその場に倒れ込んだ。

「守り、きれたの…かな…?」

*   *   *

目が覚めた時には、すでに太陽は沈みかけて
いた。昼は一度も、目を覚まさずに寝ていた
らしい。
ひとまず、自分とセレネや、王国の人々が
生きている事に、ホッとした。

周辺では、襲撃によって破壊された、家の
瓦礫や、倒れた木々などを運んでいた。

「僕も、何かしないとな。
 ずっと寝てるのも申し訳ない。」

まずは、周りの人に、手伝う事はないかを
聞いてみようかな。
そして、僕は立ち上がった。
ずっと寝ていたせいで、かなり頭が痛い。
立ちくらみもする。

「ヤバい、倒れそう…
 やっぱり、一日中寝るのは良くないな。」

僕は、ふらふらと前に歩いていった。

しばらく歩くと、そこにはエーレル(この国の兵隊のリーダー)がいた。

「エーレル、僕も何か手伝いたい。
 仕事はないか?」

「あっ!ライメルじゃないか!
 ようやく目を覚したんだな…
 君が一日中目を覚まさないから、みんな
 心配していたんだよ。」

「心配かけて、すいません。
 エーレルも、王国のみんなも。」

「謝らないでくれ。私たちは、また君に
 助けられたんだ。
 俺らが人々の避難活動をしている時、君
 たちはずっと、ニエンテって言う敵と
 戦っていたんだろう?
 
 私たちだけでは、この王国は守りきれて
 いなかった。
 感謝するよ、英雄ライメル。」

エーレルはそう言ってくれたが、おそらく、
僕のせいで、この襲撃は起こったのだ。

戦いの途中に、ニエンテは言ってた。
“魔王の逆鱗にでも触れたか?”って。

僕が、本当に魔王の逆鱗に触れていて、その
せいでこの国が襲撃されたなら、街が壊され
たことも、たくさんの人が死んだことも。
全部、全部僕のせいになる。

だから、僕は感謝される身ではないんだ。

僕はその事を、エーレルに言う事は出来な
かった。怖かったんだ…
この国の人々から、非難される事が。

*   *   *

次の日、僕はこの国を出ることにした。
理由は単純だ。僕がこの国に居ることで、
再びここが襲撃されるかもしれない。
それだけは、絶対にあってはならない。

「でも、この国を出るとなると、パーティ
 メンバーのセレネも、一緒にこの国から
 出ないといけないよな…」

僕は一旦、セレネに相談する事にした。

「セレネ、一緒にこの国を出てほしい。」

僕は、国を出ないといけない理由を、何度も
細かく説明した。
もちろん、彼女には、生まれ育った故郷を
出ろと言っている様なものだ。
流石に、嫌と言うなら僕も強制はしない。
そのために、今こうして、話をしている
のだから。

でも、セレネは僕の予想とは違う答えを
言ってきた。

「私、一緒に行きます。
 貴方の元で、魔術を学ぶと決めたから。」

セレネは、いつも僕の欲しい答えをくれる。

「ありがとう、セレネ…」

僕の頬に、少し涙が滴っていた。
彼女の優しさと強さに、助けられてばかりな
気がするな。
セレネは、本当にいい人だ。

*   *   *

僕が今まで泊まっていた宿は、運良く被害を
受けなかった。だから、戦いが終わった後も
僕はここに泊まっていた。

でも、今日でそれも最後だ。
いよいよ今日の昼、僕はこの国を出る。

今は、ここで最後の朝食を食べている。

「あぁ、ここの料理、好きだったのに…
 もっと食べたいな…
 いいや、動けなくなると困るし、残念
 だけれど、これくらいで終わるか。」

今日は、いつもよりも食べる量が少なかった
気がする。

今日までありがとう、僕を泊めてくれて。
でも、もうお別れだね。

僕は、国を出る支度を済ませて、セレネの
家に向かった。

*   *   *

「あ、おはよう、ライメルさん。」

僕がセレネの家に行くと、彼女はすでに、
支度を済ませていた。

「国を出るのが、楽しみなの…?」

そう質問したのは、彼女の顔が、いつもより
笑っている様に見えたからだ。

「もちろん、国を出たくない気持ちも、
 無いわけじゃありません。
 でも、これから自分が強くなれると
 思うと、我慢できなくて!」

なるほど、笑っている理由はこれか。

そして僕たちは、国の人たちに、別れを
告げるために、王都を巡った。

セレネは、学生時代の友達の家や、通って
いた学校、担任の先生など、様々な人に挨拶
をしていた。
でも、僕が挨拶する人といえば、エーレル
くらいしか居ない。

だから、セレネがお別れを、みんなに言った
後に、エーレルに別れを告げる事にした。

*   *   *

「セレネ、これで全員?」

「はい、これでお終いです。
 ありがとうございます、付き合って
 いただいて。」

「そんな事ない、元々は、僕が国を出たい
 って言ったんだし、最後の挨拶くらい
 しっかりして欲しい。」

そんな事を話しながら、僕らはエーレルの
職場に向かった。

そこに着いたのは、昼頃だった。

「エーレル、今時間ある?」

「なんだ、ライメルか。
 時間はあるよ、なんだ?」

良かった、時間があって。

「少し、話したい事があって…
 一緒に、外へ行かない?」

そして、僕たちは外のベンチで話をした。

国を出ていく事を話したとき、エーレルは
驚いた顔をしていた。

「なんで、そんなに驚くんだよ。
 僕は冒険者なんだし、旅をするのは
 普通のことだろ?」

「いや、いきなり国を出てくといわれたら
 誰でも驚くだろう。」

本当は、こんな話をしに来たわけじゃない。
最後に伝えておかないといけない。
襲撃された理由は”僕がいるから”だと。

勇気をだせ、自分。
これくらい何ともないだろ。
言うんだ、言わないといけないんだ。

「…あの、実はさ。
 この王国が襲撃された理由は、僕が
 魔王の怒りを買ったからかもしれない。
 
 ずっと、謝りたかったんだ。
 僕のせいで、この国は襲われた。
 全部、僕の責任だったんだ。」

僕は、何度も謝った。
謝って済む事じゃないとは思っている。
でも、謝らないと、自分の気がすまない。

*   *   *

「そうだったのか…
 お前が、魔王の怒りを。
 でも、俺はこれを、誰にも言わない。」

「え、なんで?」

「だって、お前は魔王城で、俺たちを
 助けてくれた。
 だから、お前を売る様な真似はしない。」

エーレルはそう言って、笑顔で僕を送り出してくれたのだ。

*   *   *

なんだか、勇気を貰ったな。
エーレルのおかげで、自分に自信が持てた。

弱気な事は言ってられない、次も頑張るぞ!

「ここから1番近い国は、アイシクル王国
 なのかな?
 確か、黒い炎を扱える、魔剣士がいる
 国だったよな…
 美味しい料理も、たくさんあるのか。
 よし、次はそこに行こうよ、セレネ。」

「良いですね!一度行きたかったんです!」

よし、決まり。

アイシクル王国に向けて、僕らは歩みを
始めたのだった。

第10話/夜明け
 


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...