推しと行く魔法士学園入学旅行~日本で手に入れた辞典は、異世界の最強アイテムでした~

ことのはおり

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一章 入学旅行一日目

1-11a セセラム競技場への道のり 1

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 入学旅行に旅立った新入生たちが、ツアーメイトと最初に取り組む課題――それは毎年同じで、辞典魔法専用の競技場体験となっている。

 この世界――『ククリコ・アーキペラゴ』では、誰もが辞典魔法を使うことができる。
 しかしその種類や威力などは個人の特性により幅があり、様々だ。正規の辞典魔法士のように強力な技を行使できる者もいれば、ありふれた魔法を日常のちょっとした雑用に生かす程度の者、また、魔法が苦手でほとんど使わない者もいる。魔法を使わなくても『辞典』さえ持っていれば特に不便なく暮らせるため、そこは個人の自由だ。
 いずれにしろ、辞典魔法は人々にとって身近な現象で、競技場では辞典魔法を使った様々な競技が繰り広げられる。魔法の派手さを競うものや、芸術的な美しさを競うもの、複雑なルールを決めて競うものなど、多種多様だ。
 その中でも、課題にもある『表現バトル』は、誰でも楽しめる娯楽として人気がある。
 『表現バトル』は言葉を使うスポーツのようなもので、華々しいプロチームの競技観戦は、熱狂的なファンでほぼ毎回満場となるほどの人気だ。
 また、個人で競技用コートを借りることもできるので、競技場は多くの人に愛されるイベント会場として、常にたくさんの人で賑わっている。

 そんな風に人々の暮らしに娯楽を提供している施設、競技場。もちろん一つでは足りないので各地に建設されているのだが、一般的に競技場と名の付くものは、いずれも最先端の設備が整った規模の大きなもので、世界に五つある。
 そのうちの一つで毎年、魔法士学園新入生の実習が行われるのだ。
 今年の競技場は、今霧たちが向かっているセセラム競技場。
 この辺りの地理に詳しいトリフォンが教えてくれたところ、セセラム競技場は霧たちがり立った草原から、歩いて30分ほどで着くという。
 いつも世界中の大空を移動している空飛ぶ古城学園は、この日のために計画的に飛行し、昨日からセセラム競技場のそばにある大草原の上空に辿り着いていた。新入生たちをこの場所に下ろし、入学旅行へと旅立たせるために。

 霧はツアーメイトと共にセセラム競技場への道を移動しながら、キョロキョロと辺りを見回し、草原を渡る風を思いっきり吸い込んだ。大空を仰ぎ見れば、空飛ぶ古城学園が、まだそこに留まっている。
 白い雲に彩られた青い空をバックに、その勇壮で麗しい空飛ぶ城は、刻まれた歴史に相応ふさわしい威厳を伴って生徒たちの旅立ちを見送っている。まるで飛び立ったばかりのひな鳥を見守る母親のように。

(ああ……! スぺクタルだなあ!)

 霧はいちいち感動しながら、いくつもの尖塔せんとうをそなえた優美な学園城の勇姿に見とれた。
 自由で爽快な、辞典魔法士たちに守られた理想郷、それが『ククリコ・アーキペラゴ』。
 この世界には身分の別はなく、女も男も老いた者も若い者も黒い肌も黄色い肌も白い肌も、みな平等に扱われ、尊厳が与えられる。生まれ持った能力の差で不当な扱いを受けることもなく、誰もが伸び伸びと、自分の好きな道を歩いて行けるのだ。

 そんなこの世界で、子供たちが将来の夢を思い描くとき、大人気なのが辞典魔法士だ。辞典魔法士は、この『ククリコ・アーキペラゴ』で一番の花形職業なのである。
 辞典魔法士とは、一冊の特別な、自分だけの『辞典』を使って編み出される辞典魔法を数多く習得し、使いこなし、様々に世のため人のために力を尽くす、名誉ある職業なのである。
 辞典魔法士には正魔法士とじゅん魔法士の二種類があり、後者は突出した才能が無くても努力次第で資格が得られるが、前者の正魔法士は難関で、魔法士学園の厳しい試験に合格し、なおかつ日々学問の探求と魔法技術の鍛錬たんれん邁進まいしんし、優秀な成績を収めて同学園を卒業しなければならない。
 だからこそ、特に正魔法士は多くの人々の尊敬と憧れの的なのである。

 その正魔法士への道の入り口に、霧は立っているのだ。

(ううっ、ほんと、信じられない!!)

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