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二章 入学旅行二日目
2-13b 戦う准魔法士、加勢する24班 2
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准魔法士は居住まいを正すと、24班の男性陣に笑顔を見せて言った。
「皆さん、ご助力感謝します。その制服、古城学園の新入生の方たちですよね?」
「然り。しかしどうしたことじゃ? あの粗暴な男は、辞典魔法に長けていた。任務にお主一人では、危険であったろうに」
トリフォンが心配げにそう言うと、准魔法士は頷いた。
「おっしゃる通りで。本来なら今回のような任務は正魔法士が二人組で当たるところですが、正魔法士はみな、別件で出払っておりまして。しかし近所の方々からの通報では、この家の子供の保護は急を要する案件とのこと。そこで准魔法士三人で、ということになったのですが、あいにく予定していた者が二人とも病欠で、動ける者が私一人となってしまったのです。とりあえず一人で様子を見に来たのですが、思った以上に話の通じない御仁でして……いや、わが身の経験不足と判断の甘さを恥じ入ります」
「いやいや、自分を恥じることなど何一つ、ありはせん。立派であったぞ。しかしなるほど。最近は特に、正魔法士も准魔法士も人手不足で難儀しとるからのぉ……」
「そうなのです。とにかく、助かりました。これで男の子を無事に保護できます。……おや……あの子はどこに……」
男の子の姿を捜して准魔法士がキョロキョロしていると、通りの向こう側から、アデルが走ってきた。
「男の子はこっちにいるわ。向かいの家の人がこの騒ぎを見ていて、家の中に避難させてくれたの」
「おお、良かった。男の子は、無事ですか」
「はい。今はもう、すっかり落ち着いています」
准魔法士にそう答えたアデルは、次にリューエストに向かって言った。
「リューエスト、キリったら『癒術免許』を持っていたのね! びっくりしちゃった!」
赤い瞳をキラキラと輝かせ、いつになく興奮した様子のアデルに、リューエストは少々驚いた。霧のことを語る彼女の瞳には、間違いなく霧に対する尊敬の気持ちが宿っている。霧に対して辛辣だった今までの雰囲気は、微塵も無い。
「ねっ、聞いてる? リューエスト、すごかったのよ、キリの癒術! あれを見たらリール叔母さまもきっとすごく驚くわ!」
「……ん? ……ああ、そういえば、リール叔母さんがなんか言ってたな。適性があるからキリの癒術免許を申請したって。僕の免許も前にリール叔母さんが申請してくれたんだけど、正魔法士の推薦があればスピード発行されるんだ。アデルも欲しいなら叔母さんに頼んでごらん。君の実力なら問題ないと思うよ」
一般人は、他人を対象とした辞典魔法を行使することができない。辞典魔法による暴力被害を極力抑えるために、『辞典』にはあらかじめ制限がかかっているのだ。
そのため直接的に人を対象とした攻撃系の辞典魔法は使えないし、あらかじめ対象者を決めて施術される癒し系の魔法もまた、使えない。
しかしそれらは、試験に合格し免許をもらうことによって『辞典』の力が開放され、使用可能となる。『正辞典魔法士』や『准辞典魔法士』、『辞典魔法癒術士』などは、いずれも『辞典』の力が解放されているため、その力を他人に向かって行使できるのだ。
その、他人に向けて行われる『癒術』を霧が実行したと聞き、リューエストは詳細を知ろうとアデルに問いかけようとした。しかしアデルは顔を紅潮させて、熱の冷めやらない様子で一人で話し続けている。
「リリエンヌも『癒術免許』を持っているから私は施術を見慣れてるんだけど、キリのは自然現象系言獣を合わせて使ってたから、もうびっくりしちゃった! あれができるのはお父さんだけだと思ってたのに!」
そばで聞いていた准魔法士が、感心して口を挟む。
「ほう、自然現象系言獣を! それは高度だ! 私も見たかったな。今年の新入生は、とても優秀なのですね。先程ご助力いただいた皆さんの魔法も素晴らしかった。ところでお嬢さん、私にはこの件に関する報告義務がありますので、詳細を聞かせていただいても?」
「いいですよ。じゃあ……あなたが、あの熊みたいな男に怒鳴られて、家の外に投げ出されたところから、話しますね」
アデルはこの30分ほどの間に起こった出来事を思い出しながら、准魔法士の男性に、順を追って話し始めた。
「皆さん、ご助力感謝します。その制服、古城学園の新入生の方たちですよね?」
「然り。しかしどうしたことじゃ? あの粗暴な男は、辞典魔法に長けていた。任務にお主一人では、危険であったろうに」
トリフォンが心配げにそう言うと、准魔法士は頷いた。
「おっしゃる通りで。本来なら今回のような任務は正魔法士が二人組で当たるところですが、正魔法士はみな、別件で出払っておりまして。しかし近所の方々からの通報では、この家の子供の保護は急を要する案件とのこと。そこで准魔法士三人で、ということになったのですが、あいにく予定していた者が二人とも病欠で、動ける者が私一人となってしまったのです。とりあえず一人で様子を見に来たのですが、思った以上に話の通じない御仁でして……いや、わが身の経験不足と判断の甘さを恥じ入ります」
「いやいや、自分を恥じることなど何一つ、ありはせん。立派であったぞ。しかしなるほど。最近は特に、正魔法士も准魔法士も人手不足で難儀しとるからのぉ……」
「そうなのです。とにかく、助かりました。これで男の子を無事に保護できます。……おや……あの子はどこに……」
男の子の姿を捜して准魔法士がキョロキョロしていると、通りの向こう側から、アデルが走ってきた。
「男の子はこっちにいるわ。向かいの家の人がこの騒ぎを見ていて、家の中に避難させてくれたの」
「おお、良かった。男の子は、無事ですか」
「はい。今はもう、すっかり落ち着いています」
准魔法士にそう答えたアデルは、次にリューエストに向かって言った。
「リューエスト、キリったら『癒術免許』を持っていたのね! びっくりしちゃった!」
赤い瞳をキラキラと輝かせ、いつになく興奮した様子のアデルに、リューエストは少々驚いた。霧のことを語る彼女の瞳には、間違いなく霧に対する尊敬の気持ちが宿っている。霧に対して辛辣だった今までの雰囲気は、微塵も無い。
「ねっ、聞いてる? リューエスト、すごかったのよ、キリの癒術! あれを見たらリール叔母さまもきっとすごく驚くわ!」
「……ん? ……ああ、そういえば、リール叔母さんがなんか言ってたな。適性があるからキリの癒術免許を申請したって。僕の免許も前にリール叔母さんが申請してくれたんだけど、正魔法士の推薦があればスピード発行されるんだ。アデルも欲しいなら叔母さんに頼んでごらん。君の実力なら問題ないと思うよ」
一般人は、他人を対象とした辞典魔法を行使することができない。辞典魔法による暴力被害を極力抑えるために、『辞典』にはあらかじめ制限がかかっているのだ。
そのため直接的に人を対象とした攻撃系の辞典魔法は使えないし、あらかじめ対象者を決めて施術される癒し系の魔法もまた、使えない。
しかしそれらは、試験に合格し免許をもらうことによって『辞典』の力が開放され、使用可能となる。『正辞典魔法士』や『准辞典魔法士』、『辞典魔法癒術士』などは、いずれも『辞典』の力が解放されているため、その力を他人に向かって行使できるのだ。
その、他人に向けて行われる『癒術』を霧が実行したと聞き、リューエストは詳細を知ろうとアデルに問いかけようとした。しかしアデルは顔を紅潮させて、熱の冷めやらない様子で一人で話し続けている。
「リリエンヌも『癒術免許』を持っているから私は施術を見慣れてるんだけど、キリのは自然現象系言獣を合わせて使ってたから、もうびっくりしちゃった! あれができるのはお父さんだけだと思ってたのに!」
そばで聞いていた准魔法士が、感心して口を挟む。
「ほう、自然現象系言獣を! それは高度だ! 私も見たかったな。今年の新入生は、とても優秀なのですね。先程ご助力いただいた皆さんの魔法も素晴らしかった。ところでお嬢さん、私にはこの件に関する報告義務がありますので、詳細を聞かせていただいても?」
「いいですよ。じゃあ……あなたが、あの熊みたいな男に怒鳴られて、家の外に投げ出されたところから、話しますね」
アデルはこの30分ほどの間に起こった出来事を思い出しながら、准魔法士の男性に、順を追って話し始めた。
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