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二章 入学旅行二日目
2-19a リューエストのコテージ 1
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30分もしないうちに、魔法柵を点検し終わったクレアが戻ってきて、見事にすべての穴がふさがっていることを24班の面々に告げた。
クレアはそれはもうすごい喜びようで、全員の手を一人ずつ握って、お礼を言いながら大はしゃぎしている。よほど魔法柵の穴が気がかりだったらしい。聞けば彼女にも小さな子供がいるらしく、この島の子供が危険地帯で倒れていた事件には、相当な心的ストレスを被っていたようだ。
偶然現れた24班の手品のような魔法で一気に問題が解決し、悩み事から解放されたクレアは、晴れ晴れとした表情で言った。
「みなさん、うちに寄って行ってくださいな! 夫の料理をご馳走します! リューエストさん、今日はもう遅いから、コテージに泊まるんでしょ? あ、みなさんは学園標準時間で行動してるんだっけ? じゃあ、まだ休むのは早い?」
「いや、どうだろ、もう僕たちの時間も17時過ぎてるし、今日はもうこれで終了だね。無事に課題7を終えることができたし。現地時間は……22時過ぎか。みんな、今日は僕のコテージに宿泊でいいかな?」
みんなは頷き、クレアと一緒に森を出た。
クレアの夫はこのルルシャンリニアン島でレストランを営んでいて、リューエストの話では彼はかなり腕のいい料理人とのこと。
そのレストランは、『繋がりの塔』から森に続く表通りにあり、来る途中で霧がメニュー看板を見て「美味しそう……」と感想を漏らしていた、あの店だった。
クレアの夫はとても気のいい中年男性で、夜おそい来訪にも嫌な顔一つせず、霧たちを大歓迎して美味しい料理をふるまってくれた。
お腹が空いて疲れ切っていた24班の面々は、思いがけないご馳走に舌鼓を打ちながら、明日からの課題のことを相談した。
そしておのおの、辞典を開いて気付く。課題5の『ツアーメイトと協力して、人々の困り事を5件解決せよ』――この課題の、5件のうち2件が完了となっていることに。
1件はセセラム地方で偶然出会った男の子。
そしてもう1件は先程の、魔法柵修復。
少し前に霧が「違う課題こなしている間に偶然頼まれごとするかも」と言った、その通りになっていた。
順調な進捗具合に、24班の面々は気を良くして、明日からも頑張ろうと張り切る。そこへクレアがデザートを持ってきてくれたため、みんなは歓声を上げた。
やがてお腹いっぱいになった一行は、クレアたちに別れを告げると、リューエストのコテージへと向かった。
このククリコ・アーキペラゴの世界では、誰でも好きな場所に住居をもらうことができる。日本のように土地や家に多額の金を払う必要はなく、住宅を得るために対価を支払う必要はない。日本に住んでいた霧には、とてもありがたい夢のような話だ。
しかし、住む場所以外に家を持つことはできないので、リューエストのように別荘を持つ場合は、期間契約で借りるしか方法はなく、それにも特別な認可が必要になる。リューエストの場合は、言獣ハンターと呼ばれる所以が役に立った。
「このルルシャンリニアン島は、『言魂界』への道が開いているせいで、主のいない、いわば野良言獣がらみの問題がよく起こるんだよ。言獣のほとんどは無害だけど、中にはちょっと癖のある種もいるからね……」
「ああ、それでリューエストの出番と言うわけね。言獣に関する事柄を解決する代わりに、コテージの年間契約権を、ほぼ永続的に提供してもらってる――そんなとこ?」
「さすがアデル。その通り。僕ほど言獣に詳しい人間は他にいないと、自負しているからね。クレアから申し出があったとき、即決で引き受けたよ。この場所に別荘を借りられるのは、僕にとっても都合が良かったしね」
ほどなくして一行は、リューエストのコテージに辿り着いた。見晴らしのいい丘の一角、森と海の眺望を両方楽しめる、一等地ともいえる場所に建っている。
24班の面々はリューエストの案内で中に入ると、たくさんある個室にそれぞれの部屋を割り当ててもらった。
このコテージは、昔は観光客用の宿泊施設だったらしく、どの部屋にもベッドと、トイレや浴室などの水回り一式が用意されている。リューエストは1階の部屋にアルビレオとトリフォンを案内した後、2階の見晴らしのいい部屋に女性陣を招き入れた。途端に、アデルが驚きの声を上げる。
「えーっ、嘘ぉ!! 今夜は雑魚寝かなって想像してたのに、すごい、ちゃんとしたホテル並みじゃない! 何これ、バルコニーまであって、海が見える最高の眺め! めっちゃ贅沢じゃない!」
クレアはそれはもうすごい喜びようで、全員の手を一人ずつ握って、お礼を言いながら大はしゃぎしている。よほど魔法柵の穴が気がかりだったらしい。聞けば彼女にも小さな子供がいるらしく、この島の子供が危険地帯で倒れていた事件には、相当な心的ストレスを被っていたようだ。
偶然現れた24班の手品のような魔法で一気に問題が解決し、悩み事から解放されたクレアは、晴れ晴れとした表情で言った。
「みなさん、うちに寄って行ってくださいな! 夫の料理をご馳走します! リューエストさん、今日はもう遅いから、コテージに泊まるんでしょ? あ、みなさんは学園標準時間で行動してるんだっけ? じゃあ、まだ休むのは早い?」
「いや、どうだろ、もう僕たちの時間も17時過ぎてるし、今日はもうこれで終了だね。無事に課題7を終えることができたし。現地時間は……22時過ぎか。みんな、今日は僕のコテージに宿泊でいいかな?」
みんなは頷き、クレアと一緒に森を出た。
クレアの夫はこのルルシャンリニアン島でレストランを営んでいて、リューエストの話では彼はかなり腕のいい料理人とのこと。
そのレストランは、『繋がりの塔』から森に続く表通りにあり、来る途中で霧がメニュー看板を見て「美味しそう……」と感想を漏らしていた、あの店だった。
クレアの夫はとても気のいい中年男性で、夜おそい来訪にも嫌な顔一つせず、霧たちを大歓迎して美味しい料理をふるまってくれた。
お腹が空いて疲れ切っていた24班の面々は、思いがけないご馳走に舌鼓を打ちながら、明日からの課題のことを相談した。
そしておのおの、辞典を開いて気付く。課題5の『ツアーメイトと協力して、人々の困り事を5件解決せよ』――この課題の、5件のうち2件が完了となっていることに。
1件はセセラム地方で偶然出会った男の子。
そしてもう1件は先程の、魔法柵修復。
少し前に霧が「違う課題こなしている間に偶然頼まれごとするかも」と言った、その通りになっていた。
順調な進捗具合に、24班の面々は気を良くして、明日からも頑張ろうと張り切る。そこへクレアがデザートを持ってきてくれたため、みんなは歓声を上げた。
やがてお腹いっぱいになった一行は、クレアたちに別れを告げると、リューエストのコテージへと向かった。
このククリコ・アーキペラゴの世界では、誰でも好きな場所に住居をもらうことができる。日本のように土地や家に多額の金を払う必要はなく、住宅を得るために対価を支払う必要はない。日本に住んでいた霧には、とてもありがたい夢のような話だ。
しかし、住む場所以外に家を持つことはできないので、リューエストのように別荘を持つ場合は、期間契約で借りるしか方法はなく、それにも特別な認可が必要になる。リューエストの場合は、言獣ハンターと呼ばれる所以が役に立った。
「このルルシャンリニアン島は、『言魂界』への道が開いているせいで、主のいない、いわば野良言獣がらみの問題がよく起こるんだよ。言獣のほとんどは無害だけど、中にはちょっと癖のある種もいるからね……」
「ああ、それでリューエストの出番と言うわけね。言獣に関する事柄を解決する代わりに、コテージの年間契約権を、ほぼ永続的に提供してもらってる――そんなとこ?」
「さすがアデル。その通り。僕ほど言獣に詳しい人間は他にいないと、自負しているからね。クレアから申し出があったとき、即決で引き受けたよ。この場所に別荘を借りられるのは、僕にとっても都合が良かったしね」
ほどなくして一行は、リューエストのコテージに辿り着いた。見晴らしのいい丘の一角、森と海の眺望を両方楽しめる、一等地ともいえる場所に建っている。
24班の面々はリューエストの案内で中に入ると、たくさんある個室にそれぞれの部屋を割り当ててもらった。
このコテージは、昔は観光客用の宿泊施設だったらしく、どの部屋にもベッドと、トイレや浴室などの水回り一式が用意されている。リューエストは1階の部屋にアルビレオとトリフォンを案内した後、2階の見晴らしのいい部屋に女性陣を招き入れた。途端に、アデルが驚きの声を上げる。
「えーっ、嘘ぉ!! 今夜は雑魚寝かなって想像してたのに、すごい、ちゃんとしたホテル並みじゃない! 何これ、バルコニーまであって、海が見える最高の眺め! めっちゃ贅沢じゃない!」
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