推しと行く魔法士学園入学旅行~日本で手に入れた辞典は、異世界の最強アイテムでした~

ことのはおり

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二章 入学旅行二日目

2-22   親ガチャ、大ハズレ――日本での暮らしはリアルクソゲー

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 日本――霧の生まれた世界。
 霧の両親を生んだ世界。
 残酷クソな世界。
 「自助」を叫ぶ日本という国は、苦しむ霧に手を差し伸べてはくれなかった。
 苦境に立っているのははあなたの努力が足りないせい――世間は、霧にそんな言葉を投げつけてくる。
 何も持たずに生まれてきたどころか、マイナスから始まった霧にとって、生きることは苦行でしかない。ハズレくじを引いた人間にとって、この世はリアルクソゲーなのだ。

 日本での霧の暮らしは、ひどいものだった。

 親ガチャおおハズレのクズ両親の元に生まれた霧は、両親のネグレクトと父親からの性的搾取を経て児童養護施設に入所し、社会に出るために必要なあらゆる資源――学歴や経済的基盤などを持たずに働き始めた。
 18歳で自立することを求められ、何とか一人暮らしを始めた霧だったが、最初の正規雇用先は一年も経たず倒産、再就職先はなかなか見つからず、アルバイトを掛け持ちする毎日となった。何とか正規雇用の職を見つけたら、そこは従業員を使い捨ての奴隷としか思っていないようなブラック企業。心も体もズタボロになり、辞めなければ自殺か過労死の二択、という状況で退職。またもやアルバイト掛け持ちに逆戻り。

 霧と同じような生育環境を経た女性の中には、苦境に立たされた挙句、風俗の道に入る者もいる。彼女たちは霧が貧乏のどん底にいるのを知ると、仕事を紹介すると誘ってきた。けれど霧にとって、その選択肢は無いも同然。なぜなら霧は、性交渉への嫌悪感が強すぎて、男性に触れられるだけで気分が悪くなり、実際に吐いてしまうのだ。しかしもし仮にそのような症状が出なくても、霧はそちらへは行かなかっただろう。金銭と引き換えに男たちの慰み者になるぐらいなら、死んだ方がマシだという思いが、常にあったのだから。だから霧は歯を食いしばって、低賃金のアルバイトで食いつないだ。

 そうやって、無為な労働に時間を費やす日々がむなしく過ぎてゆき。
 やがて掛け持ちに体力的・精神的な限界を感じるようになった霧は、アルバイト先を一本に絞った。しかしその職場も人件費を削って常に人手不足の状態で、労働環境は最悪。既存のスタッフは最低賃金の長時間労働に追われ、体調が悪くても事実上休めない。その上雀の涙のような給金からごっそり税金や社会保険料その他を持っていかれ、日々の生活費ですら困窮する始末。

 その挙句――霧はつい最近、クビになった。雇用側の身勝手な理由で。

(……でも、今思えば、クビになって良かった)

 霧はしみじみと、そう振り返った。
 『竜辞典』に選ばれた今、失職していたのは好都合だったと。出勤してこない霧のせいで、バイト仲間が穴埋めに追われて困ることも無い。

 日本での胸糞悪い出来事の数々を思い出してしまった霧は、自分の心に暗い影を落とすそれらを払拭するように首を振ると、最新刊の続きに立ち返った。

(やめよやめよ。あんなクソな社会のことなど、思い出したくもない。さあさあ、続き続き。いったいチェカに、何があったんだ?)

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