推しと行く魔法士学園入学旅行~日本で手に入れた辞典は、異世界の最強アイテムでした~

ことのはおり

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二章 入学旅行二日目

2-23c チェカからのメッセージ

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「『竜辞典』の新たな主として、ククリコ・アーキペラゴに戻った者よ、誰か一人でもいい、この8巻を読んでいることを切に願う」

(読んでるよ、チェカ。今、あなたのメッセージに辿り着いた。どんなことでも、力になる。安心して)

 霧は真剣にそう思いながら、チェカからのメッセージを読み進めた。

「どうかアデルに伝えてくれ。お父さんは必ず戻る、と。アデル、辛い思いをしているだろうな、本当にすまない。俺の部屋のクローゼットに、アデルへのプレゼントがしまってあるんだ。準備校に入りたいと言ったら渡そうと思ってた。ああ、娘の成長を見守れないなんて、何てことだ。いいか、アデル、父がいないからといって羽目を外すんじゃないぞ。おまえは賢いから大丈夫だと思うが、すごく可愛いからおかしな男に目を付けられないか心配だ。ああ、そばで守ってやれないなんて、俺は父親失格だ!……ハッ! そうだ、日本の防犯グッズ、しこたま買っておこう。それにアデルに似合うだろうと思ってたあの服とか、靴とか、帽子とか、バッグとか、アクセサリーとか、日本の素敵なグッズの数々をアデルへのお土産に用意しておかないと! 待ってろアデル、お父さんはお土産買って帰るからな! あっ、それから」

 固唾を呑んで読み進めるうち、霧はだんだん、チェカの親バカ具合に呆れてきた。
 チェカはさぞかし独りぼっちで寂しい思いをしているだろうと思っていたが、そういえば彼は最初から能天気で明るい性格だった、と思い出す。この人落ち込んだことあるんかいな?と思うほどに。

(いや確かに、アデルは賢いし可愛いけど、紙に刷ってまで自慢する? てか、これ『竜辞典』適合者へのメッセージというより可愛い娘への伝言頼む、的なメッセージじゃない! こんなにたくさん、覚えられねーよ! 全部そっくりそのまま伝えられるのか、あたし?! 紙に書いて……いやいや、誰にも文庫本見せるなって言われてるし、紙に書いて渡すのもアウトじゃね?! うううう、丸暗記とかしたくねぇっ!! 背中がぞわぞわするわ!)

 煩悶はんもんする霧をよそに、チェカの娘自慢とアデルへの伝言がだらだら続く。
 そして8巻の最後は、以下の文章で締めくくられていた。

―――――――――――――――――
 ――ククリコ・アーキペラゴの未来は、まだ見ぬ三人に委ねられた。
 世界の危機と共に目覚めた『竜辞典』は、誰の元にあるのか。
 果たして世界は救われるのか。
 チェカは、無事帰還を果たすのか。
 新たな物語が、今、始まる。
―――――――――――――――――

「………………」

 霧は呆然としながらも、ページを最後までめくり終えた。いつもそうだが、あとがきは無い。

(これって9巻に、続くのだろうか……。なんか、連載打ち切りになった漫画みたいな締めくくり方なんだけど……。ククリアンたち、騒いでんじゃないの? てか、『竜辞典』見つけたーって叫んでるユーチューバーとかさぁ……辞書類を片っ端から見分する書店荒らしとかさぁ……いるんじゃ……)

 霧はそう思いながら、反射的にバッグの中のスマホを取り出してネット上の反応を見ようとした。そして、ハッとする。当然ながら、ネットに接続することはできない。霧はがっかりして、『クク・アキ』新刊の感想を誰とも共有できない現状に複雑な感情を抱いた。

(奇跡の招待状をゲットして現地にいるんだもんな、この上みんなと感想を分かち合いたいなんて、贅沢だろ。ああ……でも、色々感想見たり聞いたり呟いたりしたい! あ……そういえば、他の『竜辞典』は、どうなったんだろう。まだ、日本だろうか? もしかしてチェカは今、適合者を探して日本全国行脚あんぎゃの旅に出てるとか……)

 そんな風に思いを巡らせながら、霧は溜息をついて文庫本とスマホをバッグに仕舞う。そのときスマホが、何か硬いものにコツンと当たった。

「ん……? ……あ、これか」

 それは、今日作ったストーリードームだった。

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