推しと行く魔法士学園入学旅行~日本で手に入れた辞典は、異世界の最強アイテムでした~

ことのはおり

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三章 入学旅行三日目

3-04a 入学旅行3日目の朝

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 1階部分の広いリビングには、海側の庭に出るためのき出し窓がある。そこからアデルが顔をのぞかせると、庭にいるリリエンヌが笑いながら声を上げた。

「アデル、見てちょうだい! 遂に念願のラフィノースと出会って、契約できたの!」

 リリエンヌはその腕の中に、琥珀色をした可愛らしい言獣げんじゅうを抱いている。コロンとした丸いボディに小さな足と手が生え、頭から豊かな葉に包まれた黄色い花が咲いている。つぶらな瞳と笑っているような口元が、かなり愛らしい。この言獣は遭遇確率がとても低いので、稀少きしょう言獣のくくりに入っている。アデルは子供の頃図鑑で見た、「可愛い言獣ベスト10」のページのラフィノースを思い出しながら、リリエンヌの元に駆け寄った。

「わ、すごいじゃない、リリエンヌ! ラフィノースの現物なんて、初めて見たわ、私」

「わたくしもよ! ああ、嬉しい! なんて素晴らしい日なのかしら! リューエストとキリのおかげよ!」

「僕の知識が役に立ってよかったよ。『言魂界ことだまかい』への道が開いているこのルルシャンリニアン島なら、きっと呼び寄せることができると思ったんだ。キリもいるしね」

 リューエストのその言葉を聞き、アデルはドキッとしてキリに視線を向けた。昨晩のつらそうな様子が嘘のように、今朝のキリはすっかりいつもの調子で奇声を上げている。

「うきゃああぁ、ほんときゃわいいぃお~! ラフィちゃん、最高っス! こっち向いて、むきゃぁあああ、もほぉうぅぉ! ……ん、どした、アデル? あ、あたしうるさい? キモい? ですよね、ごめん」

「いや、えっと……。もう慣れたわよ、キリの奇人変人ぶりには。……なるほど、キリの『辞典』は桁外れに強力だから、言獣ホイホイに使ったのね、リューエスト?」

「ご明察。言獣は強い『辞典』が大好きだからね。言獣の気配が濃厚なこの地で、オリゴ系を呼び寄せる特殊な技を使えば、高確率でキリの『辞典』に惹かれてやってくるだろうと思ったんだ」

 アデルは頷きながら、辺りに転がっている無害で可愛い、ありふれたオリゴ系の言獣を見ながら言った。

「はあ、なるほどね。それでこの子たちも惹かれてやってきたというわけね。可哀相に、すがるような瞳でキリを見てるじゃない、この子たち。キリと契約したくてたまらないって感じ」

「そうなんだけど、この子たち、あたしのそばまで来たらなんか弾かれるんだよね」

 キリがそう言った瞬間も、足元にすり寄ってきたオリゴ系の白いふわふわの言獣が、弾かれてポーンと3メートルぐらい先に飛ばされた。それを見ながらリューエストが口を開く。

「キリの『辞典』には、この子たちと同じ種類の個体がすでに契約済みで宿ってるんだと思う。言獣は同種類の別個体と、あるじを共有するのを嫌うからね」

「こんな可愛い子、もうこのりゅ……、いや、あたしの『辞典』にいるのか!」

 嬉しそうにそう言ったキリに、リリエンヌがびっくりして声をかけた。

「あら、覚えていないんですの、キリ? 契約したことを?」

 その質問に答えたのは、リューエストだった。

「キリが目覚めた直後、いっぱい言獣が群がってきて、キリってば手当たり次第に契約してしまったらしいんだよね。ほとんど無意識に。きっと『嘆きの雨雲』も、そのとき契約したんだろうね。他にもきっと、稀少種や固有種がいるんだろうな。今度、一緒に言獣チェックしようよ、キリ。お兄ちゃんが色々教えてあげる」

 リューエストがそう言うのを聞きながら、キリは何やらブツブツ言っている。

「あっ……そうなんだ……へぇ……そういう、ことに、なってるのか……ふぅん……そっかぁ……あたし、手当たり次第に……ほほう……」

 他人事ひとごとのように呟くキリに、アデルは呆れた表情で小さく叫んだ。

「そういうこと……って……、無意識って、そんなこと、ある?! いくらキリが規格外だからってそこまで馬鹿なこと……いや、キリならあり得る、のかな、驚異の非常識ぶりだもんね……」

「馬鹿で非常識でごめんなしゃい……ほぼその通りかと思いましゅ……」

 幼児みたいな発音でシュン、と縮こまるキリの様子に、アデルはハッとして口をつぐんだ。「ごめ、言い過ぎた……」と素直に謝ってきたアデルに、キリはにこーっと笑って「いやいや、正直にズバッと言ってくれた方がアデルらしくてあたしは好きだ! 前も言ったような気がするけど、何回でも言う!」と叫ぶ。
 その二人のやり取りを微笑みながら見ていたリューエストが、静かな声でアデルに話しかけた。

「キリは目覚めてから半年間、ずっとぼんやりしていてね、僕やリール叔母さんが話しかけたら反応はするものの、いつも心ここにあらずって感じだったんだ。だからその間の色んなことを覚えていないのも、無理はない。僕たちとこんな風に長い会話ができるようになったのも、最近のことなんだよ。あのときは嬉しかったなぁ……キリが僕に向かって言った、初めてのお願い事……」

「なんて言ったの?」
 
 興味津々という感じで、アデルが食いつく。
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