推しと行く魔法士学園入学旅行~日本で手に入れた辞典は、異世界の最強アイテムでした~

ことのはおり

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三章 入学旅行三日目

3-11   言読町での寄り道

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 24班の一行は、『繋がりの塔/レンデュアル北』の飛行者用到着ポートから、塔の内部を通って地上に降り立ち、賑わう街へと繰り出した。
 目指すは、図書塔方面。
 繋がりの塔と図書塔は、一本の道でまっすぐ繋がっている。その大きな道を目の前にして、霧は口をポカンと開けて立ち尽くしていた。

「ふわぁ~、すご……。道幅、100メートルぐらいあるんじゃない? 壮観……」

 日本のように有害物質を吐き出すガソリン車は存在しないので、空気もよく、道は快適に歩けるように整備されていた。木々や花壇で飾られ、ベンチが設置されているのも見える。
 そして多くの人が行き交うその大通り沿いには、様々な店舗が軒を連ねていた。中でも一番多いのは書店で、本好きにはたまらない眺めだ。もちろん霧は図書塔へと向かう道すがら、興奮して大喜びしている。

「わあ、すごい、すごい、すごい。本屋さん、いっぱい! うわぁ、見てあのショーウィンドウに飾ってある本、見事な装丁! きれーっ!! あっ、その隣の店、古書店? ほわぁ……なんというおもむき。天井まで本、ぎっしり。床にもぎゅうぎゅう。店内通路、狭っ! なになに、『絶対見つかる掘り出し物。宝探しの店にようこそ』だって。もうワクワクしてきた……」

 霧はフラフラと店に吸い寄せられ、リューエストに引き戻された。リューエストは霧が迷子になるのを心配して、今回は初めから手を繋いでいる。彼は満面の笑みをたたえて歩きながら、霧に話しかけた。

「この街の名前は言読町ことよみちょうといってね、図書塔の存在で古くから栄えてきた本の街なんだ。図書塔と言読町ことよみちょうの歴史は、すなわち新暦の歴史。およそ1500年前、ダリアの改革後に図書塔が建立されると、この地に多くの人々が集まるようになって、自然に街ができ、大きく発展してきたんだ」

 リューエストの解説通り、図書塔のそびえるエリアを中心にして、周辺には多くの建物がひしめき合っている。
 セセラム競技場付近の賑わいもすごかったが、あちらは屋台が中心で、お祭りのような雰囲気があった。それに対してこちらは、歴史ある街に相応しい威厳が漂い、まるで街全体が美術館のような趣を醸し出している。
 表通りに整然と並んだ店はいずれも重厚なたたずまいのレンガ造りと見られる建物だ。歴史を感じさせる建築物の美と、人々の暮らしの息吹が見事に調和した街並みは、とても美しく活気に満ちている。
 そんな風情のある街中を歩きながら、霧たちは今、図書塔に向かう前に昼食を摂る店を探していた。

「ね、ここなんかどう? 席数が多くて、テーブル席も空いてる。雰囲気もいいし、メニューも豊富みたいよ」

 アデルの提案を受け入れ、24班の面々は大通り沿いにある一軒のレストランに入った。そして思い思いに料理を注文し、空腹を満たす。
 学園標準時間はただいま15時半。このレンデュアル島の現地時間は幸いにも霧たちの時間とあまり開きはなく、ただいま16時半だった。

「もうこんな時間。今日はもう、たいして読書できそうにないわね」

 アデルが残念そうにそう呟くと、トリフォンが頷きながら言った。

「うむ、そうじゃな。どれ、わしはこのあと、今夜の宿泊場所を確保しに行くかの。近くに、友人が経営しているホテルがあるんじゃ。とても可愛らしい趣向を凝らしたホテルでの。特に女性に人気なんじゃ。実は昨日、近々行くことになると、知らせを飛ばしておいたんじゃよ。6室分空けておくと返事があったから、先にわし一人で挨拶に行こうと思う。みんな、今夜の宿泊所はそこでいいかの?」

「もちろんですわ! 女性に人気の可愛らしいホテルだなんて、楽しみですわ! ありがとうございます、トリフォン」

 リリエンヌがそう言うと、続けてみんなもトリフォンに礼を言い、一行はレストランを出て歩き出した。くだんのホテルも同じ方向にあるらしく、みんな揃って図書塔方面に向かう。

 その道中で、霧はみんなに質問をしながら歩いていた。訊きたいことは、山ほどある。

「ねえ、図書塔の本って、持ち出しできないの?」

「できないよ。持ち出し禁止。本はどれも、図書塔内で読むんだ。だから大抵の人は、図書塔で気に入った本を見つけたら、街に繰り出して同じものを探すんだよ。そういうわけで書店がたくさんあるんだ」

 リューエストがそう答えたのを聞き、霧は次の疑問を口にしようとした。
 そのとき。

「ん……? どした、ミミ?」

 霧の『辞典妖精』、ミミが『辞典』から飛び出してきて、表通りと交わる脇道の一本、細い路地に向かって指をさす。

【キリ……あっちに、向かって。お願い】

「あっち? いいけど……何があるの?」

 立ち止まって薄暗い路地を覗き込んでいる霧に、リューエストが声をかけた。

「どうしたの、キリ? あっちに何かある? フラフラすると、迷子になるよ。表通りからそれると、複雑な裏路地が無数にあるから」

「う~ん……寄り道したい。ごめん、みんな」

 そう言いながら路地に足を踏み入れた霧の背中を、24班の面々は追いかけた。

「いったいどうしちゃったのよ、キリ? 何があるっての?」

 アデルの問いかけに、霧が首を振って答える。

「よくわからない。けど、呼ばれてる……。誰か、困ってる……みたいな」

「みたいな、って、……ん? 前にもあったよね……こんなこと……」

「あったのぉ……。昨日。セセラム地方の、『繋がりの塔』へ向かう道中のことじゃった。あのときは、性急に助けが必要な男の子がおったの。ふむ、ふむ……ここは黙ってキリについて行くのが得策じゃろうて」

 トリフォンの言葉に無言で同意した一行は、ほぼ一列になって狭い路地を突き進んだ。
 道はカクカクと細かく折れ曲がりながら続き、一行は右に左に行ったあげく、小刻みに表れる5~6段の階段を経て、上ったり下りたりしながらひたすら進む。ぼーっと歩いていればたちまち転びそうな道ゆきである。
 いったい何があるのだろうとみんな不思議に思っていると、前方からよく知る声が聞こえてきた。

「俺様を誰だと思ってるんだ、いにしえの貴族、カワードゥ家の血を引くガスティオール様だぞ! しかも魔法士学園一の優等生だ! この俺様が一緒に遊んでやると言ってるんだ、ありがたく思え!」
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