浜辺のスローライフ~カニさんたちとの異世界生活日誌~

かにすごくうまい

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113話:パンを焼こう!

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異世界生活百七十九日目

昨日、ベススさんに聞いた、虹色カビの特性が本当なら、全ての発酵食品は、虹色カビがあれば作ることができるはず。

というわけで今日もベススさんの研究所を訪ねる。

「ベススさーん」

「ん?おはよう、メグミ。今日も何かやるのか?」

「うん、今日はパンを焼こうと思って、生地を発酵させるために、虹色カビを貰いにきたよ」

「ふむ。昨日も言ったが、使うときに物騒なことは、念じないようにな」

「大丈夫!美味しくなれ、としか考えないようにするよ」

使いやすい虹色カビの粉末を分けてもらうと、わたしはキッチンに向かう。

「メグミ殿、今日の朝ごはんは、なんですかな?なんですかな?」

「あ、ケイちゃん。今日の朝ごはんは……なしです!」

「食料が尽きたのですぞ!?」

「今日はパンを焼くので、それまでは何もありません!」

「パン、ですぞ?」

「小麦粉を練って、発酵させて焼いたものだよ!ご飯とはまた違った、人間の代表的な食べ物だよ」

「おお、それは楽しみですな!それで焼くということは、石板で焼くのですぞ?」

「あ……パンを焼くための『オーブン』が、ない!」

「焼く道具がないですぞ!?」

「オカちゃん!ヤマトくん!ホリくん!助けてー!」

わたしは窯業エリアにいるであろう3匹の下へ向かう。

「なんだい、慌てて」

「オーブンというか石窯?を作ってほしいの!超特急で!」

わたしはミコちゃんを通してイメージを送る。

「ははあ、これはまた、陶器の窯と似たような作りで良さそうだな」

「パパッと作っちまうか」

「徹くんに、金属扉もあつらえてもらおう」

「フフ、仕上げは任せて」

「あ、おっきく作りすぎないでね!パンが取り出せなくなっちゃうから!」

「メグミは力持ちだから、引き出せるような取っ手を付ければいいだろ」

「重くても大丈夫だけど、熱いのはダメだよ!あ、そうだ!トレイと分離する取っ手なら、熱くならないから、大丈夫かも」

わたしは取っ手のイメージを共有する。

「ほう、そんなものもあるのか、ちょっと俺たちのハサミに似てるな」

「フフフ、だいぶピカピカで仕上げがいがありそうだね」

「キッチンの近くに作ってね!わたしは先にパン生地を作ってるから、オーブンが出来たら教えて!」

「わかったぜ」

頼りになる3匹に、オーブン作りは任せたからいいとして、今度こそ生地作りだ!

小麦粉に、塩と、はちみつ、バター、生クリーム、卵を入れて良く捏ねる。

生地が丸くなったら、虹色カビをイースト菌の代わりに加えてよく混ぜる。

念のため、良く膨らめ~と虹色カビに語り掛けておく。

(ここだけ、虹色カビのせいで、なんか怪しい儀式みたいになっちゃうよなあ)

とりあえず、今日はみんなの朝ごはんを抜きにしているので、材料がある分だけ、どんどん生地をこねて発酵させる。

虹色カビの効果は絶大で、しばらく待つと、生地が二倍以上になっていた。

(これはちょっと発酵が早すぎるかも……焼くオーブンがまだできてないよ~)

「メグミ!ちょっと来てくれ!」

ヤマトくんの呼ぶ声がする。オーブンができたのかな?

「はーい、なに~?」

キッチンから外に出ると、そこには巨大な石窯が出来ていた。

「なんでこんなに大きいの!?釘を刺しておいたのに!」

「そりゃもちろん、一度にたくさん焼くためだ」

そこにはハサミを組んでエヘンとしている徹くんが居た。あ、なるほどね~。また徹くんね~。

わたしはちょっと遠くを見つめると、とりあえず立派な石窯の出入り口を確認する。

重厚な鉄扉があつらえられていてしっかりと中を塞ぐことができていそうだ。

問題はとてつもなく重厚すぎて、普通の人間には開けれなさそうなとこである。わたしは開けられるが。

中には巨大な金属プレートがあり、石窯の脇を見ると、巨大な取っ手が立てかけてあった。

とりあえず、発酵も進むのが早いしパンを焼いていくとしよう。

巨大金属プレートの上に大きく膨らんだパン生地を均等に並べていく。

正直、遠くて届かないところはアッシーくんに手伝ってもらった。

プレートを石窯の中に入れて扉を閉め、火を……火を点ける場所がない!?

「この石窯どうやって火を点けるの!?」

「コメちゃんズに、石窯自体を熱してもらって、焼く方式だ。煙も出ないし、木材も節約できるぞ」

「へ~、魔法ならではだねえ」

というわけでコメちゃんズ達が集まって加熱を始めた。

わたしは、鉄扉の、のぞき穴から、パンの焼きあがりを観察する。

石窯全体で加熱しているおかげか、素早くいい感じにパンが膨らんで焼け始めているようだ。

しばらくすると、周囲にいい匂いが漂い始める。

わたしは焼き色を確認すると、コメちゃんズに加熱を止めるよう指示を出し、鉄扉を開いた!

シュウウウウ。

一気にパンの焼けた匂いに包まれた。

わたしは取っ手でプレートを取り出し、焼けたパンを手に取る。熱々だ!

ひと千切りして実食!

「うん!これは美味しい!最初から贅沢材料仕様にして正解だった!」

「どれどれ」

徹くんがパンを丸ごと一口で食べてしまった。

「おお!美味いな!これ。でも全然量が足りないぞ」

「徹くんが大きすぎるんだよ……今回は試作だし、あんまり大きいのは作ってないよ。皆にも食べてもらわないといけないから、徹くんは我慢してね」

「む、まあそうか、俺にとって食事は必須じゃないからな。わがまま言うわけにもいかんな」

「みんな~!パンが焼けたよ~!」

「おお!待っておりましたぞ!」

「作業してない奴が最速で来るんじゃない!」

ケイちゃんはオカちゃんにどつかれてしまった。

「拙者は養鶏をがんばっておりますのに~」

「はいはい、みんなの分はちゃんとあるから、仲良く分けて食べようね」

「「はーい」」

こうしてなんとかパン作りに成功したのであった。
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