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第11話
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しばらく飛んでいくと、豊かな緑に覆われた純白の教会が見えた。
その中には、次々と怪我をした境界軍の兵士が運び込まれている。
教会の前に降りると、レヴィは自分の足で立ち上がった。
僕の背中に乗っている間に足が治っていたらしい。アスに「不死が唯一の長所」と言われていただけあって、やはり自分の身体を癒やすのは得意みたいだ。
ただ、イリスさんにやられたという目もとの傷は依然血まみれでグロテスクな状態だった。
教会の大きな白い扉は開け放たれていた。
「すみません」
僕が中に向かって呼びかけると、ミネルウァさんが入口まで来て迎えてくれた。
ミネルウァさんは、ずっと人々の救護に追われていたのだろう。顔色や仕草に、溜まった疲れが表れている。
「怪我人だな?こっちに来てくれ」
とミネルウァさんに促され、僕たちは教会の中に入った。
ミネルウァさんは祭壇の前にアスを横たわらせると、傷の様子を観察し始めた。
険しい面持ちでミネルウァさんはレヴィに告げた。
「手は尽くしてみるが……、これは正直、致命傷とも言える傷の深さだ。助かるかどうか……」
「そんな……。神様の力でもアス兄を助けられないの……?」
泣きそうな顔をしているレヴィに対し、ミネルウァさんは申し訳なさそうに言った。
「私はあくまで神に仕える身……。神のご加護を受けているだけで、神から力そのものを与えられているわけではない。
それに……境界の主テルミヌスだって、全能ではない。神にも越えてはならない一線がある。神であろうと、生死という運命に抗うことは許されない」
ミネルウァさんはふと顔を上げ、レヴィを真っ直ぐに見つめた。
「だが、彼の生命力が完全に失われていない限り、私も諦めるつもりはない。まだ、希望はある」
レヴィが頷くと、ミネルウァさんは祭壇に置かれていた聖書のような本を手に取った。
その本のページが開かれると、暖かな春の日差しのごとく神聖な白い光がアスへと降り注いでいく。
ミネルウァさんは心地よく響く優しい声で呪文を唱え始めた。神社で聞く祝詞にも聞こえるけれど、まるで子守唄のようでもある。
「アス兄……」
レヴィは生死を彷徨う兄の手を、強くぎゅっと握った。
そのとき、アスの指先がピクリと震えた。
「……レヴィ」
絞り出されたその声は掠れていて、苦しげだった。アスは弟に握られた自分の手を見て、力ない笑みを浮かべた。
「馬鹿だな、お前……。俺のことなんて、助けようとしなくていいのに……」
「何言ってるんだよ、アス兄……」
「俺は……、こんな、神聖で、澄みきった空気は苦手だ……。薄汚い地下牢の、澱んだ空気の方が、よっぽど落ち着く……」
無理して喋っていたのだろう。アスは激しく咳き込んだ。
「そんな状態で喋っちゃ駄目だよ……!!」
「うるさい……もう、いいんだ……。どうせ、俺は、誰からも、必要とされない人間なんだから……」
「なんでそんなこと言うの……アス兄は俺よりもずっと強いのに……」
「人を怖がらせるだけの強さだろ……。
俺は、人から魔法を奪うことしか出来ない、魔法使い殺しだ……。孤独と劣等感ばかりの人生を送ってきた……。
普通の魔法が使えるお前に嫉妬してたし、王室の中で落ちこぼれ扱いされるお前の姿を見ると、俺自身を見ているみたいで、腹が立った……。弟のお前が俺より強くなることを恐れてもいた……。何より……、せめて弟に対してだけでも、優越感に浸っていたかったんだ……。
そんな下らない理由で、たった一人の弟をいつも傷つけて……。最低の兄貴だろ……?
それで、柄にもなくお前を守ろうとしたら、このざまだ……」
アスはレヴィの手を震える手でそっと握り返した。
「こんな、どうしようもない兄貴で、ごめん……」
「謝らないでよ……俺、ずっとアス兄の背中を追いかけてきたんだからさ……。
俺なんて、叔父さんや叔母さんたちだけじゃなくて、使用人にまで出来損ない呼ばわりされてたくらいだけど、それでも、魔法を諦めなかったのは、強くなって、兄貴たちに認めてもらいたかったからだよ。結局、兄貴たちはいつまでも俺を子供扱いして、全然相手にしてくれなかったけどさ……。昔から兄貴は俺の憧れで……大好きな存在だった」
「大好きって……正気か……?散々酷いことされて、あんなに怯えてたくせに……。忘れちまったのかよ……」
「ううん。ちゃんと覚えてるよ。一番ヤバかったのは……やっぱり、吐血するまで蹴られ続けたときかなぁ……肋骨が何本か逝ってたよね。完治させるのに一晩かかっちゃった。あのときは、死ぬかと思ったよ」
「いや……それ、そんな、懐かしの思い出話風に語る内容じゃないだろ……」
「思い出だよ。苦しかったことも、怖かったことも、俺にとっては、大切な思い出。血反吐を吐かされたって、骨を折られたって、同じ場所で育った兄弟だもん。嫌いにはなれないよ」
「おかしいだろ、そんなの……。お前、気が狂ってるよ……」
「うん……俺の愛情は、普通じゃない。
でも……。俺、いつか、アス兄もシェム兄もイブ兄も一緒に、みんなで食事がしたいんだ。だからさ、生きてよ、アス兄。死んじゃ駄目だよ……」
レヴィは横たわるアスの胸に顔を埋めるようにして抱きついた。
「やめろ、そういうの……。優しい励ましとか、暖かい体温とか……。甘ったるくて、吐き気がする……」
アスは相変わらずの面倒そうな表情で、レヴィの背中に手を回し、そっと撫でた。
「ほんと、鬱陶しい弟だよ、お前は……」
レヴィの背をさするアスの手は、徐々に弱っていき、とうとう力尽きて、動きを止めた。
虚ろだった瞳は瞼の中に閉じこめられて、ついにアスは深い眠りに落ちてしまった。
「アス兄……!」
レヴィはアスに向かって必死に声をかけ続けた。
「ねえ、しっかりしてよ……!返事して……!!」
それでも、弟の呼びかけに、兄が応じることはなかった。
「アス兄……っ、アス兄……!!」
レヴィは人目も憚らず泣きじゃくり出した。
「ったく……教会で大きい声を出すんじゃねーよ……」
頭上から声が降ってきた。
吸い込まれそうなほどに高い教会の天井を見上げてみると、金色の輝きを放って宙に浮かんでいる男が一人。
境界神……テルミヌスだ。
「だって、俺の兄貴が……っ」
テルミヌスは「やれやれ」とでも言いたげに溜め息を吐いた。
「よく見ろ。眠ってるだけだ。ミネルウァの魔法は、そう易々と人を死なせちまうほどヤワじゃねーぞ」
「え……」
レヴィはさっきまでの涙もすっかり忘れ、ぽかんとしてテルミヌスを見上げた。
「持てる感覚全てを研ぎ澄ませるんだ」
神様に言われるがまま、レヴィは眠っているアスの胸に耳を当てた。
「感じないか?微かな心音。呼吸。体温。魔力と血が全身を巡る感触。生命の輝き。魂の声」
「……?たましいの、こえ……?」
レヴィが混乱しているのを見て、テルミヌスは「しまった」と呟いた。
「すまない。人間は神様と違って繊細すぎるものは感じ取れないんだったな」
「あ……、でも、何となく、安らぎは感じる……」
「ああ。ミネルウァの魔法はただの治癒じゃないからな。〈あなたが愛と温もりに包まれますように〉……そういう祈りを込めた呪文だ。全ての者を愛する、俺様の使者らしい魔法だろ」
テルミヌスは自信たっぷりに笑ってみせた。
「それに、神様は、自らの過ちを認め、悔いている者を簡単に見捨てるなんてことはしない。特に俺は、慈悲深い神様だ、って評判なんだぜ?」
テルミヌスが手のひらを掲げると、真上に向けて白と金色の混じった眩しい光が一直線に発射され、天井を跳ね返り、教会全体にぶわっと広がった。
その光に飲み込まれた途端、熱を持った強風に、僕の身体は一瞬で吹き飛ばされた。
教会の外まで弾かれて、僕は土の上に転がった。
全身が熱い。
とろけてしまいそうだ。
これが、テルミヌスの真髄……。
魔族はもともと神聖なものが苦手ではある。
とはいえ、僕はルシフと契約しているおかげで、ある程度の浄化には耐えられるのに。
一瞬で外に弾き出されるなんて……。
身体の外側は電気が流れているようにビリビリと痺れ、内側は血がぐつぐつと煮え滾るように熱が湧き起こる。
それが最高潮に達すると、外も内も何がなんだか分からなくなってきて、僕はふわふわと宇宙を漂っているような妙な快感に包まれた。
気持ちいい……。
でも、この快楽は、堕ちたら駄目なやつだ……。
麻薬とか、そういう感じの……。
…………。
……。
「はっ!!」
その酔いから醒めるのは、唐突だった。
僕は慌てて起き上がった。
これは、ヤバイ……。
僕が契約済じゃなかったら、本当にそのまま死んでたかも……。
まあ、これだけ強い力がテルミヌスにあるなら、アスは大丈夫だろう。
いずれにせよ、僕はテルミヌスが力を使っている限り教会にはいられない。
それに、ゾンビと戦っているルシフをこれ以上放っておくわけにもいかない。
うっかりアスとレヴィの兄弟愛に見入ってしまったせいでかなり時間が経過してしまっているのだから。
立ち上がって、土埃を払う。
ルシフのところに戻ろう。
僕は真っ白に輝く教会を背にして飛び立った。
その中には、次々と怪我をした境界軍の兵士が運び込まれている。
教会の前に降りると、レヴィは自分の足で立ち上がった。
僕の背中に乗っている間に足が治っていたらしい。アスに「不死が唯一の長所」と言われていただけあって、やはり自分の身体を癒やすのは得意みたいだ。
ただ、イリスさんにやられたという目もとの傷は依然血まみれでグロテスクな状態だった。
教会の大きな白い扉は開け放たれていた。
「すみません」
僕が中に向かって呼びかけると、ミネルウァさんが入口まで来て迎えてくれた。
ミネルウァさんは、ずっと人々の救護に追われていたのだろう。顔色や仕草に、溜まった疲れが表れている。
「怪我人だな?こっちに来てくれ」
とミネルウァさんに促され、僕たちは教会の中に入った。
ミネルウァさんは祭壇の前にアスを横たわらせると、傷の様子を観察し始めた。
険しい面持ちでミネルウァさんはレヴィに告げた。
「手は尽くしてみるが……、これは正直、致命傷とも言える傷の深さだ。助かるかどうか……」
「そんな……。神様の力でもアス兄を助けられないの……?」
泣きそうな顔をしているレヴィに対し、ミネルウァさんは申し訳なさそうに言った。
「私はあくまで神に仕える身……。神のご加護を受けているだけで、神から力そのものを与えられているわけではない。
それに……境界の主テルミヌスだって、全能ではない。神にも越えてはならない一線がある。神であろうと、生死という運命に抗うことは許されない」
ミネルウァさんはふと顔を上げ、レヴィを真っ直ぐに見つめた。
「だが、彼の生命力が完全に失われていない限り、私も諦めるつもりはない。まだ、希望はある」
レヴィが頷くと、ミネルウァさんは祭壇に置かれていた聖書のような本を手に取った。
その本のページが開かれると、暖かな春の日差しのごとく神聖な白い光がアスへと降り注いでいく。
ミネルウァさんは心地よく響く優しい声で呪文を唱え始めた。神社で聞く祝詞にも聞こえるけれど、まるで子守唄のようでもある。
「アス兄……」
レヴィは生死を彷徨う兄の手を、強くぎゅっと握った。
そのとき、アスの指先がピクリと震えた。
「……レヴィ」
絞り出されたその声は掠れていて、苦しげだった。アスは弟に握られた自分の手を見て、力ない笑みを浮かべた。
「馬鹿だな、お前……。俺のことなんて、助けようとしなくていいのに……」
「何言ってるんだよ、アス兄……」
「俺は……、こんな、神聖で、澄みきった空気は苦手だ……。薄汚い地下牢の、澱んだ空気の方が、よっぽど落ち着く……」
無理して喋っていたのだろう。アスは激しく咳き込んだ。
「そんな状態で喋っちゃ駄目だよ……!!」
「うるさい……もう、いいんだ……。どうせ、俺は、誰からも、必要とされない人間なんだから……」
「なんでそんなこと言うの……アス兄は俺よりもずっと強いのに……」
「人を怖がらせるだけの強さだろ……。
俺は、人から魔法を奪うことしか出来ない、魔法使い殺しだ……。孤独と劣等感ばかりの人生を送ってきた……。
普通の魔法が使えるお前に嫉妬してたし、王室の中で落ちこぼれ扱いされるお前の姿を見ると、俺自身を見ているみたいで、腹が立った……。弟のお前が俺より強くなることを恐れてもいた……。何より……、せめて弟に対してだけでも、優越感に浸っていたかったんだ……。
そんな下らない理由で、たった一人の弟をいつも傷つけて……。最低の兄貴だろ……?
それで、柄にもなくお前を守ろうとしたら、このざまだ……」
アスはレヴィの手を震える手でそっと握り返した。
「こんな、どうしようもない兄貴で、ごめん……」
「謝らないでよ……俺、ずっとアス兄の背中を追いかけてきたんだからさ……。
俺なんて、叔父さんや叔母さんたちだけじゃなくて、使用人にまで出来損ない呼ばわりされてたくらいだけど、それでも、魔法を諦めなかったのは、強くなって、兄貴たちに認めてもらいたかったからだよ。結局、兄貴たちはいつまでも俺を子供扱いして、全然相手にしてくれなかったけどさ……。昔から兄貴は俺の憧れで……大好きな存在だった」
「大好きって……正気か……?散々酷いことされて、あんなに怯えてたくせに……。忘れちまったのかよ……」
「ううん。ちゃんと覚えてるよ。一番ヤバかったのは……やっぱり、吐血するまで蹴られ続けたときかなぁ……肋骨が何本か逝ってたよね。完治させるのに一晩かかっちゃった。あのときは、死ぬかと思ったよ」
「いや……それ、そんな、懐かしの思い出話風に語る内容じゃないだろ……」
「思い出だよ。苦しかったことも、怖かったことも、俺にとっては、大切な思い出。血反吐を吐かされたって、骨を折られたって、同じ場所で育った兄弟だもん。嫌いにはなれないよ」
「おかしいだろ、そんなの……。お前、気が狂ってるよ……」
「うん……俺の愛情は、普通じゃない。
でも……。俺、いつか、アス兄もシェム兄もイブ兄も一緒に、みんなで食事がしたいんだ。だからさ、生きてよ、アス兄。死んじゃ駄目だよ……」
レヴィは横たわるアスの胸に顔を埋めるようにして抱きついた。
「やめろ、そういうの……。優しい励ましとか、暖かい体温とか……。甘ったるくて、吐き気がする……」
アスは相変わらずの面倒そうな表情で、レヴィの背中に手を回し、そっと撫でた。
「ほんと、鬱陶しい弟だよ、お前は……」
レヴィの背をさするアスの手は、徐々に弱っていき、とうとう力尽きて、動きを止めた。
虚ろだった瞳は瞼の中に閉じこめられて、ついにアスは深い眠りに落ちてしまった。
「アス兄……!」
レヴィはアスに向かって必死に声をかけ続けた。
「ねえ、しっかりしてよ……!返事して……!!」
それでも、弟の呼びかけに、兄が応じることはなかった。
「アス兄……っ、アス兄……!!」
レヴィは人目も憚らず泣きじゃくり出した。
「ったく……教会で大きい声を出すんじゃねーよ……」
頭上から声が降ってきた。
吸い込まれそうなほどに高い教会の天井を見上げてみると、金色の輝きを放って宙に浮かんでいる男が一人。
境界神……テルミヌスだ。
「だって、俺の兄貴が……っ」
テルミヌスは「やれやれ」とでも言いたげに溜め息を吐いた。
「よく見ろ。眠ってるだけだ。ミネルウァの魔法は、そう易々と人を死なせちまうほどヤワじゃねーぞ」
「え……」
レヴィはさっきまでの涙もすっかり忘れ、ぽかんとしてテルミヌスを見上げた。
「持てる感覚全てを研ぎ澄ませるんだ」
神様に言われるがまま、レヴィは眠っているアスの胸に耳を当てた。
「感じないか?微かな心音。呼吸。体温。魔力と血が全身を巡る感触。生命の輝き。魂の声」
「……?たましいの、こえ……?」
レヴィが混乱しているのを見て、テルミヌスは「しまった」と呟いた。
「すまない。人間は神様と違って繊細すぎるものは感じ取れないんだったな」
「あ……、でも、何となく、安らぎは感じる……」
「ああ。ミネルウァの魔法はただの治癒じゃないからな。〈あなたが愛と温もりに包まれますように〉……そういう祈りを込めた呪文だ。全ての者を愛する、俺様の使者らしい魔法だろ」
テルミヌスは自信たっぷりに笑ってみせた。
「それに、神様は、自らの過ちを認め、悔いている者を簡単に見捨てるなんてことはしない。特に俺は、慈悲深い神様だ、って評判なんだぜ?」
テルミヌスが手のひらを掲げると、真上に向けて白と金色の混じった眩しい光が一直線に発射され、天井を跳ね返り、教会全体にぶわっと広がった。
その光に飲み込まれた途端、熱を持った強風に、僕の身体は一瞬で吹き飛ばされた。
教会の外まで弾かれて、僕は土の上に転がった。
全身が熱い。
とろけてしまいそうだ。
これが、テルミヌスの真髄……。
魔族はもともと神聖なものが苦手ではある。
とはいえ、僕はルシフと契約しているおかげで、ある程度の浄化には耐えられるのに。
一瞬で外に弾き出されるなんて……。
身体の外側は電気が流れているようにビリビリと痺れ、内側は血がぐつぐつと煮え滾るように熱が湧き起こる。
それが最高潮に達すると、外も内も何がなんだか分からなくなってきて、僕はふわふわと宇宙を漂っているような妙な快感に包まれた。
気持ちいい……。
でも、この快楽は、堕ちたら駄目なやつだ……。
麻薬とか、そういう感じの……。
…………。
……。
「はっ!!」
その酔いから醒めるのは、唐突だった。
僕は慌てて起き上がった。
これは、ヤバイ……。
僕が契約済じゃなかったら、本当にそのまま死んでたかも……。
まあ、これだけ強い力がテルミヌスにあるなら、アスは大丈夫だろう。
いずれにせよ、僕はテルミヌスが力を使っている限り教会にはいられない。
それに、ゾンビと戦っているルシフをこれ以上放っておくわけにもいかない。
うっかりアスとレヴィの兄弟愛に見入ってしまったせいでかなり時間が経過してしまっているのだから。
立ち上がって、土埃を払う。
ルシフのところに戻ろう。
僕は真っ白に輝く教会を背にして飛び立った。
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