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第12話
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「とりあえず、実際に街で戦ってみると、いくら暴走した住民や魔族を抑えたところでキリがないってことは分かった。
この事件を根本的に解決するには、やっぱりあのロリババアを倒すしかねーな」
「僕もそう思います」
「どうやってあの女の居場所を突き止めるか……ワトソン君、何か良いアイデアはあるかね?」
ルシフが急に探偵ぶって聞いてくる。
「僕はワトソン君じゃなくてベル君です。……そもそもあんた、シャーロック・ホームズなんて読んだことあるんですか?」
「オリエント急行殺人事件なら知ってるぞ」
「それホームズじゃないし。ポアロだし。しかも、それ先週たまたまドラマでやってたの見ただけだろ。そんなミステリーど素人なのに、よく探偵業やってますね」
そんな突っ込みを入れつつ、僕は少し考えてから、こう提案した。
「魔法屋に戻ってみませんか?」
「何故だね、ポアロ君」
「僕はポアロ君じゃなくてベル君です。というか、他人に頼ってばかりいないで、自分で推理したらどうです、ホームズ君」
「俺はホームズ君じゃなくてルシフ君だから推理は出来ん」
「ルシフ君だったのかよ」
「どうして壊れかけの魔法屋に戻る必要があるんだ?」
不思議そうな顔をしているルシフの耳元に唇を寄せ、僕は囁いた。
「だって、僕ら、屋根裏であんなに乱闘したんですよ?あの女が遺したものが一つや二つはあるはずでしょう。髪の毛とか、服の糸くずとか。そういうのから、魔法で記憶を読み取って、居場所を探るんですよ」
ルシフは目を丸くして呟いた。
「ベル、お前……天才だな」
「ルシフが馬鹿なだけでしょ」
そう軽く笑ってあしらいながら、内心ではちょっと嬉しいと思ってしまっている自分が非常に恥ずかしい。
「よし、そうと決まればすぐに魔法屋に行くぞ」
そういう経緯で、僕たちは魔法屋に戻ってきたのだが。
改めて見ると、酷い有り様だ。
魔法書が雪崩れ落ちた本棚。穴の空いた壁。血に染まり真っ赤になった床。綿が飛び出したソファー。壊れかけたベッドやテーブル……。
「ルシフ、何か手がかりになりそうなものはありましたか?」
「急かすなよ。まだ探してるところだ」
「うーん……」
僕は這うようにして床に何か落ちていないか見渡してみた。
すると、ソファーの下に、黒い鴉の羽が落ちているのが見えた。
「ルシフ!ありました!」
床とソファーの隙間に手を伸ばし、引っ張り出した羽を、ルシフに手渡す。
「お手柄だ、ベル」
ルシフが飼い犬を褒めるみたいに僕の頭を撫でてきたので、僕はちょっとイラッとしながらその手を退けた。
「早速、その羽の記憶を読み取ってみてくださいよ」
「ああ」
ルシフは羽に杖をかざした。
杖から放たれた光は、天井をスクリーンへと変えた。
「これは……」
映像は砂嵐のように乱れている。
その合間に、薄暗い部屋の様子がちらちらと映る。
蜘蛛の巣が張り巡らされ、埃にまみれたその部屋には、薬瓶があちこちに散らかり、標本や魔法書が山積みになっている。部屋の中央には、鎖で雁字搦めになったベッド。壁際には、謎の拷問具が並んでいる。
「あの女の家だな」
ルシフがふと呟いた。
「な……」
なんでそんなことが分かるんですか。
とうっかり言いかけて、踏みとどまった。
そうだ。ルシフは昔、この女の眷属にされてたんだ。
ルシフの横顔は、憂鬱そうだった。
昔のことを思い出させる映像なんて、見たくないんだろう。
そう思っていたのだが、意外なことに、ルシフは自分の記憶を自ら語り始めた。
「あの部屋では……、魔法の研究が行われていた。要するに、人体実験だ」
「趣味悪いですね……」
「あのベッドに括り付けられて、なんやかんやされるわけだが……俺が何されたか、聞きたいか?」
「聞きたくないです」
「だよな」
ルシフはふっと笑った。悪戯っぽくもあり、自嘲のようにも見えた。
僕は溜め息を吐いて、ルシフに言った。
「ルシフが話したいなら聞きますけど……。それって、言葉にするの辛くありません?なんでわざわざ自分で自分の傷を抉るような真似をするんですか?」
僕の疑問に、ルシフは不意を突かれた様子だった。
「俺のこと、心配してくれてんのか」
「は?当たり前でしょ」
僕がそう言うと、ルシフはまた笑い出した。
「俺、お前のそういうところ、好きだぞ」
「そういうところって、どういうところだよ」
「優しいところ」
「優しいって……僕が?」
そんなことを言われたのは初めてだ。僕は人情より打算で動くタイプだし、僕がルシフのことを心配するのだって、ルシフに何かあったら、僕が困るからだ。
そんな僕のどこが優しいんだか、今ひとつ納得がいかない。
「俺は、お前に夢の中へ踏み込まれてから、お前になら何を知られてもいい、むしろ知って欲しいと思ってる。情報や感情の共有は、あの魔女を倒す上でも役立つはずだしな。だから、話すのが辛いってことはない。安心しろ」
「だったら、いいんですけど……」
急に心を開きすぎじゃないか?
今まで、あんなに頑なに、自分の秘密を守り通してきたくせに。
なんか、ルシフも吹っ切れた感じだな……。
僕とルシフが映像を眺めていると、変化は突然現れた。
あの魔女が、何かを引きずって歩いてきたのだ。
「何、あれ……」
嫌な予感がした。
ルシフの顔をちらっと見ると、ルシフはぼそっと口にした。
「死体だな」
それを聞いて、背中にぞわっと鳥肌が立つ。
ルシフは平然としているように見えたが、映像に目を凝らした途端、びくっと身体を震わせた。
「待て……!あの死体は……」
ルシフが青ざめた顔で僕を見た。
「まさか……」
僕も気がついてしまった。
間違いない。
先生だ。
ルシフがナイフを突き刺して殺したあと、魔法軍によって、どこかに連れていかれてしまった先生の死体、そのものだった。
魔女は先生の死体をベッドの上に乗せた。
この女は先生に何をする気なのか。
怖くてたまらないのに、目が離せなかった。
魔女は先生の腹に刺さったナイフを引き抜き、不気味な笑みを浮かべた。
そして、魔女はそのナイフを振り上げ……
「見ちゃ駄目だ!!」
ルシフが咄嗟に僕を腕で抱き寄せるようにして、顔を伏せさせた。
しばらくルシフは僕が顔を上げないように、頭をがっちりと押さえていたが、ふとそれが緩んだ。
僕は恐る恐るルシフの顔を見た。
ルシフの目には、激しい憎悪が宿っていた。
「ルシフ……」
僕が震える声で呼びかけると、ルシフは哀しげな目になって、僕の頭をそっと撫でた。
今度はもう、ルシフの手を振り払う気にはなれなかった。
「ベル。映像の場所が変わったぞ」
ルシフにそう言われ、僕はスクリーンに目線を戻した。
「これって……」
そこに映し出されていたのは、カラフルなコーヒーカップに、塗装が剥がれかけたメリーゴーランド、錆びついた観覧車……。
「遊園地……?」
「だが、小規模だな。とりあえず、富士急やユニバーサルスタジオではない」
「じゃあ、ディズニーかな?」
「ミッキーがこんな寂れた遊園地にいるわけねーだろ」
「あ、そういえば。この遊園地、テレビで見ましたよ。たしか……境界わくわくパーク……だったっけ?」
「なんだそのダサい名前の遊園地」
「何十年も前から境界にある遊園地です。老朽化で、数日前に閉園したそうですよ」
「へー……。そんな遊園地が、なんで映ってるんだ?」
僕らは顔を見合わせた。
「ひょっとして……魔女の、潜伏地……?」
その後も、羽から読み取れる記憶は全て読み取ってみたが、魔女の居場所の手がかりはほとんど掴めなかった。
「やっぱり、怪しいのは遊園地ですよね」
「ああ……。実際にあの女がいるかは分からんが、調べてみる価値はありそうだ」
「もし、魔女がそこにいるとしたら……」
「また、命懸けの闘いになるな」
ルシフは窓の外に目を遣った。
僕も釣られてルシフと同じ方向を見た。
穏やかな青空が、かえって胸をざわつかせた。
「ベル」
「はい」
「一人で死ぬなよ」
「分かってますよ。僕たちは、共に闘って共に滅びる……そういう契約ですもんね」
ルシフは頷くこともせず、ただ沈黙した。
同意が得られるものと信じ込んでいた僕は、あれ?と思って、同じように沈黙した。
ルシフはふと、呟くように言った。
「……俺を、独りにしないでくれ」
僕は顔を上げて、ルシフを見た。
ルシフの表情はいつもと変わりない。
むしろ、「何か変か?」とでも言いたげだ。
僕は不意に切なくなった。
ルシフには、僕しかいないんだ。
僕がいなくなったら、ルシフはまた孤独に戻ってしまう。
それを改めて突きつけられた気がした。
「行こう、ベル。時間がない」
ルシフは踵を返して部屋から出て行こうとする。
「待って」
僕は無意識のうちに、ルシフの腕を掴んで引き止めた。
「何だよ?」
「僕は、あんたを二度と独りになんてしません」
ルシフが目を逸らそうとするので、僕はルシフの腕をさらに強く握った。
ルシフの隣にいることに、『先生との約束だから』なんて理由をつけるのは、もうやめてやる。
僕はルシフなんか嫌いだ。無愛想だし、気まぐれだし、ポンコツだし。
だけど、ルシフはずっと、不器用ななりに僕のことを想い続けてくれていた。
その想いには、きちんと応えるのが筋だと思うから。
「誓いますよ。……ルシフ、あんたに」
この事件を根本的に解決するには、やっぱりあのロリババアを倒すしかねーな」
「僕もそう思います」
「どうやってあの女の居場所を突き止めるか……ワトソン君、何か良いアイデアはあるかね?」
ルシフが急に探偵ぶって聞いてくる。
「僕はワトソン君じゃなくてベル君です。……そもそもあんた、シャーロック・ホームズなんて読んだことあるんですか?」
「オリエント急行殺人事件なら知ってるぞ」
「それホームズじゃないし。ポアロだし。しかも、それ先週たまたまドラマでやってたの見ただけだろ。そんなミステリーど素人なのに、よく探偵業やってますね」
そんな突っ込みを入れつつ、僕は少し考えてから、こう提案した。
「魔法屋に戻ってみませんか?」
「何故だね、ポアロ君」
「僕はポアロ君じゃなくてベル君です。というか、他人に頼ってばかりいないで、自分で推理したらどうです、ホームズ君」
「俺はホームズ君じゃなくてルシフ君だから推理は出来ん」
「ルシフ君だったのかよ」
「どうして壊れかけの魔法屋に戻る必要があるんだ?」
不思議そうな顔をしているルシフの耳元に唇を寄せ、僕は囁いた。
「だって、僕ら、屋根裏であんなに乱闘したんですよ?あの女が遺したものが一つや二つはあるはずでしょう。髪の毛とか、服の糸くずとか。そういうのから、魔法で記憶を読み取って、居場所を探るんですよ」
ルシフは目を丸くして呟いた。
「ベル、お前……天才だな」
「ルシフが馬鹿なだけでしょ」
そう軽く笑ってあしらいながら、内心ではちょっと嬉しいと思ってしまっている自分が非常に恥ずかしい。
「よし、そうと決まればすぐに魔法屋に行くぞ」
そういう経緯で、僕たちは魔法屋に戻ってきたのだが。
改めて見ると、酷い有り様だ。
魔法書が雪崩れ落ちた本棚。穴の空いた壁。血に染まり真っ赤になった床。綿が飛び出したソファー。壊れかけたベッドやテーブル……。
「ルシフ、何か手がかりになりそうなものはありましたか?」
「急かすなよ。まだ探してるところだ」
「うーん……」
僕は這うようにして床に何か落ちていないか見渡してみた。
すると、ソファーの下に、黒い鴉の羽が落ちているのが見えた。
「ルシフ!ありました!」
床とソファーの隙間に手を伸ばし、引っ張り出した羽を、ルシフに手渡す。
「お手柄だ、ベル」
ルシフが飼い犬を褒めるみたいに僕の頭を撫でてきたので、僕はちょっとイラッとしながらその手を退けた。
「早速、その羽の記憶を読み取ってみてくださいよ」
「ああ」
ルシフは羽に杖をかざした。
杖から放たれた光は、天井をスクリーンへと変えた。
「これは……」
映像は砂嵐のように乱れている。
その合間に、薄暗い部屋の様子がちらちらと映る。
蜘蛛の巣が張り巡らされ、埃にまみれたその部屋には、薬瓶があちこちに散らかり、標本や魔法書が山積みになっている。部屋の中央には、鎖で雁字搦めになったベッド。壁際には、謎の拷問具が並んでいる。
「あの女の家だな」
ルシフがふと呟いた。
「な……」
なんでそんなことが分かるんですか。
とうっかり言いかけて、踏みとどまった。
そうだ。ルシフは昔、この女の眷属にされてたんだ。
ルシフの横顔は、憂鬱そうだった。
昔のことを思い出させる映像なんて、見たくないんだろう。
そう思っていたのだが、意外なことに、ルシフは自分の記憶を自ら語り始めた。
「あの部屋では……、魔法の研究が行われていた。要するに、人体実験だ」
「趣味悪いですね……」
「あのベッドに括り付けられて、なんやかんやされるわけだが……俺が何されたか、聞きたいか?」
「聞きたくないです」
「だよな」
ルシフはふっと笑った。悪戯っぽくもあり、自嘲のようにも見えた。
僕は溜め息を吐いて、ルシフに言った。
「ルシフが話したいなら聞きますけど……。それって、言葉にするの辛くありません?なんでわざわざ自分で自分の傷を抉るような真似をするんですか?」
僕の疑問に、ルシフは不意を突かれた様子だった。
「俺のこと、心配してくれてんのか」
「は?当たり前でしょ」
僕がそう言うと、ルシフはまた笑い出した。
「俺、お前のそういうところ、好きだぞ」
「そういうところって、どういうところだよ」
「優しいところ」
「優しいって……僕が?」
そんなことを言われたのは初めてだ。僕は人情より打算で動くタイプだし、僕がルシフのことを心配するのだって、ルシフに何かあったら、僕が困るからだ。
そんな僕のどこが優しいんだか、今ひとつ納得がいかない。
「俺は、お前に夢の中へ踏み込まれてから、お前になら何を知られてもいい、むしろ知って欲しいと思ってる。情報や感情の共有は、あの魔女を倒す上でも役立つはずだしな。だから、話すのが辛いってことはない。安心しろ」
「だったら、いいんですけど……」
急に心を開きすぎじゃないか?
今まで、あんなに頑なに、自分の秘密を守り通してきたくせに。
なんか、ルシフも吹っ切れた感じだな……。
僕とルシフが映像を眺めていると、変化は突然現れた。
あの魔女が、何かを引きずって歩いてきたのだ。
「何、あれ……」
嫌な予感がした。
ルシフの顔をちらっと見ると、ルシフはぼそっと口にした。
「死体だな」
それを聞いて、背中にぞわっと鳥肌が立つ。
ルシフは平然としているように見えたが、映像に目を凝らした途端、びくっと身体を震わせた。
「待て……!あの死体は……」
ルシフが青ざめた顔で僕を見た。
「まさか……」
僕も気がついてしまった。
間違いない。
先生だ。
ルシフがナイフを突き刺して殺したあと、魔法軍によって、どこかに連れていかれてしまった先生の死体、そのものだった。
魔女は先生の死体をベッドの上に乗せた。
この女は先生に何をする気なのか。
怖くてたまらないのに、目が離せなかった。
魔女は先生の腹に刺さったナイフを引き抜き、不気味な笑みを浮かべた。
そして、魔女はそのナイフを振り上げ……
「見ちゃ駄目だ!!」
ルシフが咄嗟に僕を腕で抱き寄せるようにして、顔を伏せさせた。
しばらくルシフは僕が顔を上げないように、頭をがっちりと押さえていたが、ふとそれが緩んだ。
僕は恐る恐るルシフの顔を見た。
ルシフの目には、激しい憎悪が宿っていた。
「ルシフ……」
僕が震える声で呼びかけると、ルシフは哀しげな目になって、僕の頭をそっと撫でた。
今度はもう、ルシフの手を振り払う気にはなれなかった。
「ベル。映像の場所が変わったぞ」
ルシフにそう言われ、僕はスクリーンに目線を戻した。
「これって……」
そこに映し出されていたのは、カラフルなコーヒーカップに、塗装が剥がれかけたメリーゴーランド、錆びついた観覧車……。
「遊園地……?」
「だが、小規模だな。とりあえず、富士急やユニバーサルスタジオではない」
「じゃあ、ディズニーかな?」
「ミッキーがこんな寂れた遊園地にいるわけねーだろ」
「あ、そういえば。この遊園地、テレビで見ましたよ。たしか……境界わくわくパーク……だったっけ?」
「なんだそのダサい名前の遊園地」
「何十年も前から境界にある遊園地です。老朽化で、数日前に閉園したそうですよ」
「へー……。そんな遊園地が、なんで映ってるんだ?」
僕らは顔を見合わせた。
「ひょっとして……魔女の、潜伏地……?」
その後も、羽から読み取れる記憶は全て読み取ってみたが、魔女の居場所の手がかりはほとんど掴めなかった。
「やっぱり、怪しいのは遊園地ですよね」
「ああ……。実際にあの女がいるかは分からんが、調べてみる価値はありそうだ」
「もし、魔女がそこにいるとしたら……」
「また、命懸けの闘いになるな」
ルシフは窓の外に目を遣った。
僕も釣られてルシフと同じ方向を見た。
穏やかな青空が、かえって胸をざわつかせた。
「ベル」
「はい」
「一人で死ぬなよ」
「分かってますよ。僕たちは、共に闘って共に滅びる……そういう契約ですもんね」
ルシフは頷くこともせず、ただ沈黙した。
同意が得られるものと信じ込んでいた僕は、あれ?と思って、同じように沈黙した。
ルシフはふと、呟くように言った。
「……俺を、独りにしないでくれ」
僕は顔を上げて、ルシフを見た。
ルシフの表情はいつもと変わりない。
むしろ、「何か変か?」とでも言いたげだ。
僕は不意に切なくなった。
ルシフには、僕しかいないんだ。
僕がいなくなったら、ルシフはまた孤独に戻ってしまう。
それを改めて突きつけられた気がした。
「行こう、ベル。時間がない」
ルシフは踵を返して部屋から出て行こうとする。
「待って」
僕は無意識のうちに、ルシフの腕を掴んで引き止めた。
「何だよ?」
「僕は、あんたを二度と独りになんてしません」
ルシフが目を逸らそうとするので、僕はルシフの腕をさらに強く握った。
ルシフの隣にいることに、『先生との約束だから』なんて理由をつけるのは、もうやめてやる。
僕はルシフなんか嫌いだ。無愛想だし、気まぐれだし、ポンコツだし。
だけど、ルシフはずっと、不器用ななりに僕のことを想い続けてくれていた。
その想いには、きちんと応えるのが筋だと思うから。
「誓いますよ。……ルシフ、あんたに」
応援ありがとうございます!
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