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第11話 キアヌと影の勇者
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「ここが、りんご帝国か……」
アクエリアスのダンジョンクリアから2週間後。俺たちはついにアリアンロッド王国とりんご帝国との国境までやってきた。
『りんご帝国』と名のつく通り、あちこちにりんごの木が植えられている。
俺たちはりんご帝国の村へと突入した。
露店がたくさん出ていて、魔法使いが作った野菜や、魔物の肉、怪しげな魔法道具などが売られていて、活気に溢れている。
「ヒュー様のご帰還だぞ!!」
露店の商人の一人が叫ぶと、歩いていた村人たちは一斉に道を開け、頭を下げた。
「お帰りなさいませ!ヒュー様!!」
「みなさん、顔を上げてください……!」
ヒューが恥ずかしそうに顔を赤らめる。
村の女性たちは、ヒューを見て色めきだっていた。
「ヒュー様だわ……!」
「素敵……!」
「優しそう……!」
「結婚したい……!」
この人たちは、ヒューがヤンキーだってこと知らないんだろうな。
「りんご帝国の『恋人にしたい有名人ランキング』魔王様に次いで第2位だものね……!」
そんなランキングあんのか……。で、アーノルドが1位なのか……。
「なんか、平和そうな国だね」
「はい。この国に住まうのは、もともとアリアンロッド王国で差別され、苦しんできた魔法使いたちですから、この国の人々は平和を好むのです」
「そっかぁ。なおさら、兄さまに会って話をしたくなってきたな」
青空の下、商店街を歩いていく。
「いい天気だなぁ」
キアヌが呑気に呟いたそのとき。
「キアヌ!」
そう呼ぶ声がして、キアヌの魔法の杖からジェミニが現れた。
「ジェミニ、どうしたの?」
「現在、この商店街に、女神ピスケスに守護されし勇者、コブラ・ヘッドが来ている」
「この商店街に……?」
「ああ、すぐ出くわすに違いない。気をつけろ」
「そっか、少し警戒しながら進んだ方がいいかもね」
キアヌは周りを見ながら商店街を進んでいく。露店には面白い商品がたくさん並んでいる。
「あ、ウィル。見て。イケメンになれる薬だって」
「マジかよ!さすが、魔法使いの国……!俺も飲みてえ!」
「ウィル、人間には見えないんだから、飲んでも意味ないじゃん」
「たしかに……。あっ、これは、魔法の絨毯だってよ」
「魔法のホウキもあるよ」
「魔法のちりとりもあるな……。ちりとりが空飛んだところで何なんだ?」
「魔法のゴミっていうのも売ってるよ」
「なんだよ、魔法のゴミって。要らねーよ」
俺たちが魔法グッズを見て楽しんでいると。
「待テ、ソコノ金髪」
と後ろから声がした。
振り返ると、全身黒ずくめの服を着た少年が立っていた。小麦色に焼けた肌をしたその少年の黒い髪はボサボサで、前髪が目にかかるほど長い。少年は渦を巻いた黒い杖を持っていた。
「オマエ、勇者……?魔王ハ、オレガ、倒ス……。オマエ、邪魔……」
「あ……。君が、コブラ・ヘッド?」
「ナゼ、オレノ名ヲ、知ッテイル……」
「ほんとにすぐに出くわしたな……というか、こいつ、外国人か?」
「オレハ、女神ピスケスニ選バレタ勇者……コブラ・ヘッド……。離島育チノ15歳……」
アリアンロッド王国は、いくつか島を所有している。離島になると方言が強すぎて、もはや別の言語であり、何を言っているのか全然わからなくなる。コブラ・ヘッドは、標準語で話そうとしてくれているおかげで、こんなカタコトになっているらしい。
「僕はキアヌ。女神ジェミニに選ばれた勇者」
「キアヌ……。オレト、勝負シロ……」
コブラ・ヘッドは、突然杖をキアヌに向けて振り下ろした。
すると、突然コブラ・ヘッドの姿が視界から消えた。
「な、なんだ……!?」
俺がキョロキョロしていると、いきなりキアヌの身体が後ろにズサッと吹っ飛ばされた。
「キアヌ!どうした!?」
「今……お腹を蹴られた……」
「蹴られた!?何も見えなかったぞ!?」
キアヌは立ち上がって杖を構えた。
しかし。
「手が……」
「今度はなんだよ……!?」
「手が、押さえつけられてるみたいに、動かない……」
突然、再び何かに蹴飛ばされたようにキアヌの身体は吹っ飛ばされた。
商店街の人々が驚いたような声を上げた。
ヒューは急いで商人たちを少し離れたところに避難させた。
「何なんだ、こいつの魔法は……?透明になってるのか……?」
その瞬間、俺はハッとして叫んだ。
「キアヌ!!」
「何?」
「影だ!影を見ろ!こんなにいい天気だ。透明になってても、影はちゃんと見えてる!」
コブラ・ヘッドの影が、キアヌに殴りかかってくる。
「避けろ、キアヌ!!」
キアヌは影を見てさっと屈んだ。
すると、コブラ・ヘッドの影の中から、ぬうっとコブラ・ヘッドが現れた。
こいつ、てっきり透明になっているのかと思ったが、そうではなく、影の中に隠れてキアヌの影を攻撃していたらしい。影のダメージはキアヌのダメージに繋がるようだ。
「なるほど。君の魔法は、影の中に入れるってことか……」
「オレノ魔法ハ、ソレダケジャナイ……」
コブラ・ヘッドが杖を振るうと、コブラ・ヘッドは動いていないのに、彼の影がひとりでに動き出した。
影はキアヌの影に向かって一直線に走っていき、キアヌの影を蹴ろうとした。
キアヌはさっと屈んでそれをかわす。
その間に、コブラ・ヘッド本人が走ってくる。キアヌは杖を振るって氷柱を発射させた。
コブラ・ヘッドがそれをかわしながら、キアヌに殴りかかる。
キアヌがそれを避けると、今度はコブラ・ヘッドの影がキアヌの影を殴りつけた。キアヌは勢いよく地面に倒れた。
影と本体。キアヌは実質、2人と戦わなければならないということだ。
キアヌが杖を振るって氷柱を放つと、コブラ・ヘッドは影の中にスッと吸い込まれていった。
コブラ・ヘッドの影がキアヌの影に蹴りを入れる。
キアヌは苦しそうな声を上げた。
コブラ・ヘッドが再び姿を現す。
キアヌはすぐに立ち上がってコブラ・ヘッドから距離をとった。
劣勢だ……。どうする、キアヌ……。
俺はハラハラしながらキアヌを見つめていた。
しかし、キアヌは自信満々の表情を見せた。
「……読めたよ。君の魔法の攻略法が」
キアヌの言葉に、コブラ・ヘッドはピクッとして動きを止めた。
キアヌは杖を大きく振り上げた。
「僕が今から君を処す」
ドドドドド……と、地面に氷の柱が何本も高く生えていく。
氷の柱は、キアヌとコブラ・ヘッドを取り囲むようにそびえ立つ。
太陽の光が柱に照りつける。
光は柱から柱へと反射していく。
地面は光に包まれ、黒い影が見えなくなった。
「オレノ魔法ガ、封印サレタ……」
コブラ・ヘッドは顔を上げてキアヌを睨みつけた。
彼の真っ黒な杖が、剣の形に変わる。
それを見て、キアヌも氷の剣を出現させた。
2人は向き合い、同時に剣を振りかざした。
剣と剣が激しくぶつかり合う。
キアヌの剣さばきは、確実に成長していた。ヒューと剣術の稽古を地道に積んでいたからだ。貴族生まれのヒュー仕込みの、どこか上品な剣の扱い。相手の体力をじわじわと消耗させていく。
コブラ・ヘッドは息を切らしている。
「今だ、キアヌ!」
「うん」
キアヌは剣を振り下ろした。
「ウッ……!」
コブラ・ヘッドの身体が氷漬けにされていった。
「ふぅ……危なかった……」
キアヌが息を吐く。
「彼が追いかけてこないうちに、早く行こう」
俺たちはコブラ・ヘッドから逃げるようにその場を去った。
「これで、勇者を全員撃破したな!」
俺はキアヌの肩をバシッと叩いた。
「あとは、兄さまの城に向かうだけだね」
俺たちは商店街を抜け、原っぱに出た。
遠くに丘が見え、その上に黒い城が見える。
「あれが、りんご帝国の城です」
ヒューが城を指さす。
「いよいよ見えてきたな、魔王の城が!」
アクエリアスのダンジョンクリアから2週間後。俺たちはついにアリアンロッド王国とりんご帝国との国境までやってきた。
『りんご帝国』と名のつく通り、あちこちにりんごの木が植えられている。
俺たちはりんご帝国の村へと突入した。
露店がたくさん出ていて、魔法使いが作った野菜や、魔物の肉、怪しげな魔法道具などが売られていて、活気に溢れている。
「ヒュー様のご帰還だぞ!!」
露店の商人の一人が叫ぶと、歩いていた村人たちは一斉に道を開け、頭を下げた。
「お帰りなさいませ!ヒュー様!!」
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「素敵……!」
「優しそう……!」
「結婚したい……!」
この人たちは、ヒューがヤンキーだってこと知らないんだろうな。
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「はい。この国に住まうのは、もともとアリアンロッド王国で差別され、苦しんできた魔法使いたちですから、この国の人々は平和を好むのです」
「そっかぁ。なおさら、兄さまに会って話をしたくなってきたな」
青空の下、商店街を歩いていく。
「いい天気だなぁ」
キアヌが呑気に呟いたそのとき。
「キアヌ!」
そう呼ぶ声がして、キアヌの魔法の杖からジェミニが現れた。
「ジェミニ、どうしたの?」
「現在、この商店街に、女神ピスケスに守護されし勇者、コブラ・ヘッドが来ている」
「この商店街に……?」
「ああ、すぐ出くわすに違いない。気をつけろ」
「そっか、少し警戒しながら進んだ方がいいかもね」
キアヌは周りを見ながら商店街を進んでいく。露店には面白い商品がたくさん並んでいる。
「あ、ウィル。見て。イケメンになれる薬だって」
「マジかよ!さすが、魔法使いの国……!俺も飲みてえ!」
「ウィル、人間には見えないんだから、飲んでも意味ないじゃん」
「たしかに……。あっ、これは、魔法の絨毯だってよ」
「魔法のホウキもあるよ」
「魔法のちりとりもあるな……。ちりとりが空飛んだところで何なんだ?」
「魔法のゴミっていうのも売ってるよ」
「なんだよ、魔法のゴミって。要らねーよ」
俺たちが魔法グッズを見て楽しんでいると。
「待テ、ソコノ金髪」
と後ろから声がした。
振り返ると、全身黒ずくめの服を着た少年が立っていた。小麦色に焼けた肌をしたその少年の黒い髪はボサボサで、前髪が目にかかるほど長い。少年は渦を巻いた黒い杖を持っていた。
「オマエ、勇者……?魔王ハ、オレガ、倒ス……。オマエ、邪魔……」
「あ……。君が、コブラ・ヘッド?」
「ナゼ、オレノ名ヲ、知ッテイル……」
「ほんとにすぐに出くわしたな……というか、こいつ、外国人か?」
「オレハ、女神ピスケスニ選バレタ勇者……コブラ・ヘッド……。離島育チノ15歳……」
アリアンロッド王国は、いくつか島を所有している。離島になると方言が強すぎて、もはや別の言語であり、何を言っているのか全然わからなくなる。コブラ・ヘッドは、標準語で話そうとしてくれているおかげで、こんなカタコトになっているらしい。
「僕はキアヌ。女神ジェミニに選ばれた勇者」
「キアヌ……。オレト、勝負シロ……」
コブラ・ヘッドは、突然杖をキアヌに向けて振り下ろした。
すると、突然コブラ・ヘッドの姿が視界から消えた。
「な、なんだ……!?」
俺がキョロキョロしていると、いきなりキアヌの身体が後ろにズサッと吹っ飛ばされた。
「キアヌ!どうした!?」
「今……お腹を蹴られた……」
「蹴られた!?何も見えなかったぞ!?」
キアヌは立ち上がって杖を構えた。
しかし。
「手が……」
「今度はなんだよ……!?」
「手が、押さえつけられてるみたいに、動かない……」
突然、再び何かに蹴飛ばされたようにキアヌの身体は吹っ飛ばされた。
商店街の人々が驚いたような声を上げた。
ヒューは急いで商人たちを少し離れたところに避難させた。
「何なんだ、こいつの魔法は……?透明になってるのか……?」
その瞬間、俺はハッとして叫んだ。
「キアヌ!!」
「何?」
「影だ!影を見ろ!こんなにいい天気だ。透明になってても、影はちゃんと見えてる!」
コブラ・ヘッドの影が、キアヌに殴りかかってくる。
「避けろ、キアヌ!!」
キアヌは影を見てさっと屈んだ。
すると、コブラ・ヘッドの影の中から、ぬうっとコブラ・ヘッドが現れた。
こいつ、てっきり透明になっているのかと思ったが、そうではなく、影の中に隠れてキアヌの影を攻撃していたらしい。影のダメージはキアヌのダメージに繋がるようだ。
「なるほど。君の魔法は、影の中に入れるってことか……」
「オレノ魔法ハ、ソレダケジャナイ……」
コブラ・ヘッドが杖を振るうと、コブラ・ヘッドは動いていないのに、彼の影がひとりでに動き出した。
影はキアヌの影に向かって一直線に走っていき、キアヌの影を蹴ろうとした。
キアヌはさっと屈んでそれをかわす。
その間に、コブラ・ヘッド本人が走ってくる。キアヌは杖を振るって氷柱を発射させた。
コブラ・ヘッドがそれをかわしながら、キアヌに殴りかかる。
キアヌがそれを避けると、今度はコブラ・ヘッドの影がキアヌの影を殴りつけた。キアヌは勢いよく地面に倒れた。
影と本体。キアヌは実質、2人と戦わなければならないということだ。
キアヌが杖を振るって氷柱を放つと、コブラ・ヘッドは影の中にスッと吸い込まれていった。
コブラ・ヘッドの影がキアヌの影に蹴りを入れる。
キアヌは苦しそうな声を上げた。
コブラ・ヘッドが再び姿を現す。
キアヌはすぐに立ち上がってコブラ・ヘッドから距離をとった。
劣勢だ……。どうする、キアヌ……。
俺はハラハラしながらキアヌを見つめていた。
しかし、キアヌは自信満々の表情を見せた。
「……読めたよ。君の魔法の攻略法が」
キアヌの言葉に、コブラ・ヘッドはピクッとして動きを止めた。
キアヌは杖を大きく振り上げた。
「僕が今から君を処す」
ドドドドド……と、地面に氷の柱が何本も高く生えていく。
氷の柱は、キアヌとコブラ・ヘッドを取り囲むようにそびえ立つ。
太陽の光が柱に照りつける。
光は柱から柱へと反射していく。
地面は光に包まれ、黒い影が見えなくなった。
「オレノ魔法ガ、封印サレタ……」
コブラ・ヘッドは顔を上げてキアヌを睨みつけた。
彼の真っ黒な杖が、剣の形に変わる。
それを見て、キアヌも氷の剣を出現させた。
2人は向き合い、同時に剣を振りかざした。
剣と剣が激しくぶつかり合う。
キアヌの剣さばきは、確実に成長していた。ヒューと剣術の稽古を地道に積んでいたからだ。貴族生まれのヒュー仕込みの、どこか上品な剣の扱い。相手の体力をじわじわと消耗させていく。
コブラ・ヘッドは息を切らしている。
「今だ、キアヌ!」
「うん」
キアヌは剣を振り下ろした。
「ウッ……!」
コブラ・ヘッドの身体が氷漬けにされていった。
「ふぅ……危なかった……」
キアヌが息を吐く。
「彼が追いかけてこないうちに、早く行こう」
俺たちはコブラ・ヘッドから逃げるようにその場を去った。
「これで、勇者を全員撃破したな!」
俺はキアヌの肩をバシッと叩いた。
「あとは、兄さまの城に向かうだけだね」
俺たちは商店街を抜け、原っぱに出た。
遠くに丘が見え、その上に黒い城が見える。
「あれが、りんご帝国の城です」
ヒューが城を指さす。
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