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ステージ4 へラル編
第91話 誘導されようが【side:ヘラル】
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「……よし。服は確保できた」
全裸だった三人はここに置いてあった衣服を着て戦闘準備を終える。
私と天汰は外の様子を見ながら魔力を探ってみるが悪魔の魔力は微塵も感じられない。
「天汰、逃げられたのかな」
「いや、多分だけど僕達を泳がせているかもしれないな。けど僕が皆を蘇らせたことは想定内なのかが分からない」
「二人は気にしなくていいっす。ツバキ達に任せてくださいっす」
「ああ、俺達で天汰達をしっかり守ってやるから任せろ」
「アタシも同じです」
三人が強くなったのは一目瞭然だが、それで悪魔に太刀打ち出来るかと言ったら微妙だ。
あの女は強い、今いる五人が阿吽の呼吸で戦ったとしても五分五分くらいか。
「外に出よう。ワタシは真世界から元の世界に帰れる場所を知ってるからついて来て」
「分かった、三人も来て」
四人を引き連れて部屋を出て地上に向かう。ここからさらに北へ20分走った先にある場所に辿り着きさえすれば、ルドベキアまで逃げ込める。
クローン室を駆け抜けて落下した場所とは違う道を進み、階段を昇る。
「……ヘラル、戦う覚悟出来てんのか?」
「……逃げ切るしかないね、真正面からぶつかって」
「行くっす」
ツバキがワタシの前に出て階段を昇りきり、真っ先に悪魔に飛びかかる――と思いきや、辺りを見渡して足を止めた。
遅れてワタシ達も上の階に辿り着くと、その答えが分かった。ワタシ達はその光景に深く驚き、絶望する。
「……なんでツバキが――」
「――避けろッ!」
無数の忍者達がこの階を埋め尽くしている。悪魔も年寄りの男もどこかに逃げたか。
クローンツバキの攻撃を避けつつ、無詠唱で天井にへばりついていた何体かを無力化する。
「ツバキの攻撃より随分弱いっす!」
「散る生命ッ!」
「殺――ッ」
ダイアの銃撃が以前の何十倍にも広がりクローンを一撃で砕いていく。
「ダメージ500億! 俺はもっといけそうだぜ!」
「当たってもアタシがいますからね!」
「ツバキは技使わなくっても自分のクローンに勝てるっす!」
……凄い、あの時の皆よりも何百倍も強くなってる……!
「だけど……どこから沸いてるんだ? これじゃ僕達が消耗し切るだけだ……2階か?」
駄目だ、クローンが多すぎてどこに扉があるか見えない。こうなったら強行突破しかないか。
「【青薔薇】ッ!」
「【火炎球】! ヘラル、あのドアから抜けるぞ!」
「ここは……俺達に任せろ!」
ダイアがワタシの肩を叩いて笑う。クローンの撃破は他の三人に任せてまずは悪魔を追いかけるしかない。
正確な位置も分からないがクローン地帯を抜けた先にアイツらがいる可能性は高いと予測している。
「ヘラル行くぞ!」
天汰が火炎を纏ってワタシの手を掴む。前方に青薔薇を放出しながら地面を蹴ってクローンの群れに突撃していく。
……脆いな、クローンの身体は。やっぱり、戦闘向けに作られていないのにわざわざプレイヤーと一緒に戦える仲間として量産しているのは何のメリットがあるんだ?
クローピエンスに活かすわけでもなく、プレイヤーの実質奴隷としての位置付けに理由があるとするなら、戦力の封印くらいか。
反乱因子になりかねない奴ら、自由奔放で縛られず放し飼いするのは危険だと判断されて攫われた。
消えた奴らを捜索されると真世界の存在がバレてしまう。だから奴らもクローンとして弱体化させて利用出来る奴隷にした方が良いと考えた。
正しいかどうかは別として、シェンやニーダは運営に従っていたから無事だったと説明はつく。
「ヘラル、集中しろ!」
「……分かってるってば!」
襲い来るクローンを次々撃破して別のフロアに流れ込んだが、こっちにもクローンばかりで戦況は変わらない。
いやむしろ、こっちの方が大分苦しいかもしれない。
「今度はダイアさんか……! 【火炎球】!」
「散弾……天汰庇ってよ!」
ダイアは一発2万のダメージだったとしても1000発当たったら2億は超えるし、それ以上のダメージだって簡単に出されてしまう。
ここも急いで抜けなければならないが……このまま行くと更に上へ駆け上がることになっちゃう……本当にそれでいいのか? 誘導されているんじゃないのか?
「どうする天汰! 悪魔を本当に追うの?」
「この数のクローンを動かしているのはあいつらだ。逃げたくてもクローンを止めないとどうしようもないからな、誘導されようが構わない。僕達よりも先に向こうの体力が切れる」
「……分かった」
天汰が言うなら間違いない。クローンをツバキ達に任せたからにはワタシで勝たないといけないんだ。
唯一渡り合える状態になるしかないけど、そうしたらまた意識が混ざって天汰が消えるかもしれないが……それも覚悟の上。
「越えるぞもう一回クローンの群れを!」
「――【冠】」
二人で魔力を重ね合わせて新たな魔法を作り出す。火花が暴れ周りに纏ってくるダイア達を次々ブッ壊し続ける。
的確に動き続けるクローンの身体だけをじわじわと燃やし尽くして突破口を生み出し、滑り込むようにワタシ達は飛び込んだ。
「ここは……やっぱりか、ゼルちゃん」
全裸だった三人はここに置いてあった衣服を着て戦闘準備を終える。
私と天汰は外の様子を見ながら魔力を探ってみるが悪魔の魔力は微塵も感じられない。
「天汰、逃げられたのかな」
「いや、多分だけど僕達を泳がせているかもしれないな。けど僕が皆を蘇らせたことは想定内なのかが分からない」
「二人は気にしなくていいっす。ツバキ達に任せてくださいっす」
「ああ、俺達で天汰達をしっかり守ってやるから任せろ」
「アタシも同じです」
三人が強くなったのは一目瞭然だが、それで悪魔に太刀打ち出来るかと言ったら微妙だ。
あの女は強い、今いる五人が阿吽の呼吸で戦ったとしても五分五分くらいか。
「外に出よう。ワタシは真世界から元の世界に帰れる場所を知ってるからついて来て」
「分かった、三人も来て」
四人を引き連れて部屋を出て地上に向かう。ここからさらに北へ20分走った先にある場所に辿り着きさえすれば、ルドベキアまで逃げ込める。
クローン室を駆け抜けて落下した場所とは違う道を進み、階段を昇る。
「……ヘラル、戦う覚悟出来てんのか?」
「……逃げ切るしかないね、真正面からぶつかって」
「行くっす」
ツバキがワタシの前に出て階段を昇りきり、真っ先に悪魔に飛びかかる――と思いきや、辺りを見渡して足を止めた。
遅れてワタシ達も上の階に辿り着くと、その答えが分かった。ワタシ達はその光景に深く驚き、絶望する。
「……なんでツバキが――」
「――避けろッ!」
無数の忍者達がこの階を埋め尽くしている。悪魔も年寄りの男もどこかに逃げたか。
クローンツバキの攻撃を避けつつ、無詠唱で天井にへばりついていた何体かを無力化する。
「ツバキの攻撃より随分弱いっす!」
「散る生命ッ!」
「殺――ッ」
ダイアの銃撃が以前の何十倍にも広がりクローンを一撃で砕いていく。
「ダメージ500億! 俺はもっといけそうだぜ!」
「当たってもアタシがいますからね!」
「ツバキは技使わなくっても自分のクローンに勝てるっす!」
……凄い、あの時の皆よりも何百倍も強くなってる……!
「だけど……どこから沸いてるんだ? これじゃ僕達が消耗し切るだけだ……2階か?」
駄目だ、クローンが多すぎてどこに扉があるか見えない。こうなったら強行突破しかないか。
「【青薔薇】ッ!」
「【火炎球】! ヘラル、あのドアから抜けるぞ!」
「ここは……俺達に任せろ!」
ダイアがワタシの肩を叩いて笑う。クローンの撃破は他の三人に任せてまずは悪魔を追いかけるしかない。
正確な位置も分からないがクローン地帯を抜けた先にアイツらがいる可能性は高いと予測している。
「ヘラル行くぞ!」
天汰が火炎を纏ってワタシの手を掴む。前方に青薔薇を放出しながら地面を蹴ってクローンの群れに突撃していく。
……脆いな、クローンの身体は。やっぱり、戦闘向けに作られていないのにわざわざプレイヤーと一緒に戦える仲間として量産しているのは何のメリットがあるんだ?
クローピエンスに活かすわけでもなく、プレイヤーの実質奴隷としての位置付けに理由があるとするなら、戦力の封印くらいか。
反乱因子になりかねない奴ら、自由奔放で縛られず放し飼いするのは危険だと判断されて攫われた。
消えた奴らを捜索されると真世界の存在がバレてしまう。だから奴らもクローンとして弱体化させて利用出来る奴隷にした方が良いと考えた。
正しいかどうかは別として、シェンやニーダは運営に従っていたから無事だったと説明はつく。
「ヘラル、集中しろ!」
「……分かってるってば!」
襲い来るクローンを次々撃破して別のフロアに流れ込んだが、こっちにもクローンばかりで戦況は変わらない。
いやむしろ、こっちの方が大分苦しいかもしれない。
「今度はダイアさんか……! 【火炎球】!」
「散弾……天汰庇ってよ!」
ダイアは一発2万のダメージだったとしても1000発当たったら2億は超えるし、それ以上のダメージだって簡単に出されてしまう。
ここも急いで抜けなければならないが……このまま行くと更に上へ駆け上がることになっちゃう……本当にそれでいいのか? 誘導されているんじゃないのか?
「どうする天汰! 悪魔を本当に追うの?」
「この数のクローンを動かしているのはあいつらだ。逃げたくてもクローンを止めないとどうしようもないからな、誘導されようが構わない。僕達よりも先に向こうの体力が切れる」
「……分かった」
天汰が言うなら間違いない。クローンをツバキ達に任せたからにはワタシで勝たないといけないんだ。
唯一渡り合える状態になるしかないけど、そうしたらまた意識が混ざって天汰が消えるかもしれないが……それも覚悟の上。
「越えるぞもう一回クローンの群れを!」
「――【冠】」
二人で魔力を重ね合わせて新たな魔法を作り出す。火花が暴れ周りに纏ってくるダイア達を次々ブッ壊し続ける。
的確に動き続けるクローンの身体だけをじわじわと燃やし尽くして突破口を生み出し、滑り込むようにワタシ達は飛び込んだ。
「ここは……やっぱりか、ゼルちゃん」
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